6月11-12日、Salesforceが主催する国内最大級イベント「Salesforce World Tour Tokyo 2024」を開催しました。例年通り、オープニングセッションは基調講演。テクノロジートレンドやSalesforceの最新ソリューション、先進的な顧客事例を紹介しました。
基調講演の内容ほか主要なセッションの録画映像は、すでに無料で配信しており、下記(目次の下)から登録のうえ、ご覧になることができますが、本記事ではその前に基調講演のポイントをピックアップしました。
目次
Salesforce World Tour Tokyo 2024
AI Enterprise、AI企業への誘い
基調講演のテーマは「Welcome to the AI Enterprise〜データがビジネスの未来を切り拓く〜」。AIとデータを戦略的に有効活用して、「AI Enterprise=AI企業」になろうというメッセージを込めています。
メインスピーカーを務めた代表取締役会長兼社長の小出伸一は、この基調講演で主に
- 「AIの軌跡と未来」
- 「AIで企業変革を実現するための5つのステップ」
を解説。そのうえで、Salesforceをパートナーに選び、AI企業への変革を実践している2社の事例を、トップへのインタビューやデモンストレーションを用いて紹介しました。
本記事では、その中でもAIの軌跡と未来、そして5つのステップを解説します。
AI革命、4つの波
冒頭、AIの軌跡と未来について、「4つの波」という独特の表現を用いて解説しました。
第1波「予測AI」は収集したデータを活用し、未来に起こりうる出来事や事象を予測するAI。
第2波「生成AI」は、学習済みのデータを活用して、画像や音声、動画など多様なデータを自律的に生み出すAI。「Generative AI」ジェネレーティブAIとも言われる。
第3波「自律型AI」は、AIが与えられた指示に自律的に回答方法を導き出しタスクを完了するAIのこと。
第4波「汎用AI」は、人間の脳、思考に近い能力を持ち、特定の役割に限定せずに、想定外のことが起きても学習して最適な解決策を導き出すことができるAI。
第3波への突入──。ここで重要になるのは、一般向けAIとビジネスに活用するAIの違いを抑えることと強調しました。
信頼できる生成AIを実現するために準備すべき6つの戦略
・生成 AI がもたらす機会と影響
・生成 AI に関する懸念
・生成 AI に備えたデータのセキュリティ戦略 など
AI Enterpriseになるための5ステップ
しかし、信頼できる統合されたデータ基盤が必要不可欠にも関わらず、企業のデータは分断されていることも浮き彫りになっています。Salesforceの独自調査によれば、アプリケーションのデータが分断されている割合は実に72%にもおよびます。
また、分断以外にも、「セキュリティとプライバシー」「有害性の削除」「ハルシネーション対策」「信頼性の確保」など企業がAIを活用するために超えなければならない壁は多く多様です。
こうした課題を受けて、AI企業に変革するための5つのステップを紹介しました。
1. Customer360の構築
信頼できる唯一の顧客データ基盤を構築し、お客様を「360度」で理解するプラットフォームを構築することがファーストステップです。Salesforceはそのためのアプリケーションを包括的に用意しており、そのすべてにAIを組み込んでいます。
<Pick up Solution>
2. データ統合
前述の通り、現状は72%の企業がデータは分断されているという課題を抱えており、AIを実装する前に活用に統合されたデータ基盤を構築することが2つ目のステップ。
Salesforceはデータ統合基盤「Data Cloud」を用意しており、複雑な導入プロセスを一切踏まずに、あらゆる種類やプラットフォームにあるデータを用意に接続・統合します。
<Pick up Solution>
3. AIと働く環境の構築
3ステップ目は、「81%の企業がビジネスにおけるAI活用の必要性を感じる」(Salesforce独自調査)中で、ユーザーが身近にAIを活用できるテクノロジーの導入。Salesforceは、2014年からCRMのためのAI開発に着手しており、長年のR&D(研究開発)を通じてすでに複数のプロダクトを用意している。
たとえば、CRMのための対話型アシスタント「Einstein Copilot」では、各アプリケーションのAI機能を活用するコパイロットとして機能しており、身近にAIを感じられるようになっている。
また、 Einstein Copilot が日本語での対話が2024年10月から可能になることも発表しました。Sales Cloud と Service Cloud から開始する予定です。
Slack も進化を続けている。すでにリリースされている回答の検索や要約を可能にする Slack AIだけでなく、より CRM との連携を深め、レコードやデータの編集を可能にする予定だ。
<Pick up Solution>
4. AIによるデータ分析
データ分析に特化したAIアシスタントの活用によって、データ分析に関する特別な知識やスキルがなくても、誰でも容易にデータを準備し、分析。可視化できる環境の構築です。
ここでは、新たに日本語版が今年リリースされるTableau PulseとEinstein Copilot for Tableauをイベントでは紹介しました。
<Pick up Solution>
- Tableau Pulse
- Einstein Copilot for Tableau
5. 信頼できるAIを実装
最後の5ステップでは、セキュアな環境下における予測とアクションの自動化する環境の構築です。「業務の62%を反復作業に使っている」という独自データが表す通り、企業の生産性向上やイノベーションにおいて、こうした反復作業の削減は必要不可欠。
セッションでは、Einstein 1 Studioを活用して、ユーザーの指示に従ってAIがそれを実施するための方法を考え、実行し完了するためのソリューション群を紹介しました。
<Pick up Solution>
実際のプロダクトの優位性や活用方法は、ぜひ本編の録画映像をご覧ください。
Salesforce World Tour Tokyo 2024
挑戦するお客様事例を披露
小出は5つのステップを紹介した後、AI Enterpriseに向けてテクノロジーの活用における変革に挑む2社として、ソニーホンダモビリティとふくおかフィナンシャルサービスの事例を紹介。両企業のトップが登壇したほか、Salesforceを活用した業務、経営改革のデモンストレーションを披露し、先進性を強調しました。詳しくは、本編の映像をご覧ください。登録はこちら。
ソニー・ホンダモビリティ: 自動車業界
ふくおかフィナンシャルグループ: 金融
AIインフルエンサーの眼
Cynthialy株式会社 代表取締役 國本知里さんが感じたポイント
早稲⽥⼤学⼤学院卒業後、SAP Japanに入社。その後、AI スタートアップのシナモンAIに移籍。2022年10⽉に Cynthialyを創業し、企業向け生成AI人材育成・事業変革支援事業を展開。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。一般社団法人 生成AI活用普及協会 協議員。
データありきの生成AI。信頼できるデータ基盤をどう整備するかが生成AI導入の肝であること。Salesforceはその信頼できるデータ基盤を持ち、さらにあらゆるデータと連携できる。それによって、マーケティングや営業においてハイパーパーソナライズが進むでしょう。
特に今回はパートナー連携の話も多く、あらゆるデータレイクからもZero Copyで顧客データを統合できるのは素晴らしい(5つのステップのうちデータ統合の部分で本編の映像で触れていま)。Salesforceユーザーだけではなく、その先のお客様にとっても、AIによるシームレスなUXを感じられるでしょう。非常に興味深い内容でした。
*記事に掲載しているスライドの資料は、基調講演で投影された資料です。