業務量の増加によって優先すべきタスクを決められず、思うように進捗管理ができていないと、日々悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
限られた時間とリソースのなかで、タスクの優先順位を決めたり、担当者への割り振りをしたりするには、適切な手順・方法でのタスクマネジメントが必要です。
本記事では、タスクマネジメントの概要と具体的な手順、ツールを活用した管理方法について詳しく解説しています。企業の取り組み事例も紹介していますので、適正かつ効率的に業務の進捗管理をするために、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
タスクマネジメントの意味とは?

タスクマネジメントとは、目標を達成するためのタスクを洗い出し、抜け漏れのないように管理・進行する方法のことです。具体的には、細分化したタスクの緊急度・重要度を設定し、各担当者に割り当てたタスクの進捗状況を定期的に確認しながら業務を進めます。
タスクマネジメントは個々の作業効率を高めるだけでなく、チーム全体の状況をリアルタイムに把握・共有することで、業務の属人化の防止にもつながります。
以下の関連記事では、タスク管理をはじめる前の注意点やよくある失敗例を紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:タスク管理とは?おすすめのツールや上手くなるコツ、メリットを解説
タスク管理とToDo管理の違い
タスク管理は、期限がある業務(タスク)に対し、緊急度や重要度を検討したうえで、各担当の進捗状況を管理する方法です。ToDo管理は、明確な期限がない業務をリスト化して単純作業をこなしていく管理方法で、基本的には個人単位で行います。
つまり、ToDo管理は個々の作業を重視するのに対し、タスク管理はチーム全体の最適化を目指し、より広範かつ戦略的な視点で管理を行う方法だと言えます。
タスク管理とプロジェクト管理の違い
プロジェクト管理は、プロジェクト全体の計画や進行をマネージャーが統括する管理方法のことで、その業務のなかにはタスク管理も含まれています。したがって、複数のタスクを効率よくこなし、プロジェクトを成功に導くことがプロジェクト管理の基本です。
プロジェクト管理においては、目標達成に向けて進捗状況やリスクを可視化しながら、業務量やタスクを柔軟に計画・調整していくことが成功のカギと言えます。
タスクマネジメントによる5つのメリット

タスクマネジメントの実践により、以下の5つのメリットが得られます。
- 目標達成までのプロセスが明確になる
- タスクの優先順位が可視化される
- 作業の見落としを防止できる
- 業務の属人化を回避できる
- 限られたリソースを適切に配分できる
限られたリソースのなかで、効率よくタスクをこなせるようになれば、ムリ・ムダ・ムラのないチーム運営が実現し、目標達成への近道となります。
目標達成までのプロセスが明確になる
目標達成までのタスクを洗い出すことによって、どの順番・どのタイミングで行動するかがわかり、プロセス全体が明確になります。たとえば、新規顧客を獲得する場合、ターゲットリストをもとに営業先の優先順位を設定したうえで、以下のようなタスクを抽出します。
- 初回アプローチ
- 提案書の作成
- 商談
- 契約手続き
このように営業活動の一連の流れが明確になれば、さらにタスクを細分化でき、期限の設定や担当者の割り当てがしやすくなります。
タスクの優先順位が可視化される
タスクマネジメントでは、洗い出した各タスクの優先順位が可視化されるため、自分のやるべき業務がひと目でわかり、すぐ行動に移せます。
優先順位を決める際は、緊急度と重要度による「アイゼンハワーマトリクス」がよく活用されています。優先順位を判断・分類する基準は、以下の4点です。
- 緊急かつ重要
- 重要だが緊急ではない
- 緊急だが重要ではない
- 緊急でもなく重要でもない
チーム内の基準で優先すべきタスクを明確にできれば、各メンバーが同じ視座で業務を進められ、重要なタスクを後回しにしてしまうリスクも軽減されます。
作業の見落としを防止できる
業務プロセスの可視化によってタスクが整理されれば、どの業務をいつまでに誰がするのかが明確になり、作業の抜け漏れを防げます。たとえば、営業活動において以下のタスクが必要だったとします。
- テレアポ
- 商品・サービスの資料準備
- 見積書の作成・送付
- 顧客へのフォローアップ
各タスクの担当者・期限・タイミングを設定して情報共有することで、営業活動の進捗状況が可視化され、タスクの見落としがあってもメンバー同士でフォローができます。
業務の属人化を回避できる
タスクマネジメントは、ある業務が特定の人に依存してしまう「属人化」の回避にもつながります。タスク管理ツールやCRM(顧客管理システム)を活用し、個々のタスクがチーム内で共有されれば、担当者が不在でも他のメンバーによる対応が可能です。
たとえば、顧客から問い合わせがあった場合でも、契約までの進捗状況や提案内容の記録を確認しながら対応でき、顧客からの信頼も損なわれません。
業務の属人化を回避できれば「あの人がいないから業務を進められない」といった事象が起きにくいため、業務効率を低下させないチーム運営ができます。
限られたリソースを適切に配分できる
組織の目標を達成するためには、時間・人的リソース・予算などの制約があるなかで成果を上げなければなりません。そのため「どの程度のリソースをかけて業務を効率的に進めるか」を明確にする方法として、タスクマネジメントの実践が必要なのです。
たとえば、新製品のプロモーションを行う際に、既存顧客への営業活動と新規開拓を同時に進める必要があった場合、すべてのタスクを並行して進めるのは非現実的です。
タスクマネジメントで緊急度と重要度を評価することで、優先順位の高い業務にリソースを集中させたり、他チームから応援をもらったりと、業務の運営方針を検討できます。
タスクマネジメントの具体的な手順

タスクマネジメントの具体的な手順として、以下の5つのステップで解説します。
- タスクの洗い出し・細分化
- 優先順位の設定(緊急度・重要度)
- 担当者の割り当て・スケジューリング
- タスクの実行・進捗状況の確認
- 業務プロセスの検証・改善
適切な手順を踏むことで、取り組むべきタスクが明確になり、抜け漏れ防止と業務効率化につながります。各手順を一つずつみていきましょう。
1.タスクの洗い出し・細分化
タスクマネジメントの第1ステップでは、一つの業務におけるタスクをすべて洗い出し、さらにタスクを細分化していきましょう。たとえば、大枠の業務として「新規顧客の開拓」があった場合、以下のように実行可能なタスクに細かく分けていきます。
- ターゲット市場の調査
- 見込み顧客のリスト作成
- 初回アプローチの資料作成
- 提案メールの作成・送付
- テレアポや訪問
各タスクのスケジュールと期限を確認し、Excelや管理ツールなどを活用しながら、業務の全体像を可視化しましょう。
2.優先順位の設定(緊急度・重要度)
タスクをすべて洗い出したら、各タスクの緊急度と重要度を評価し、優先順位を決めていきましょう。前項でも紹介したアイゼンハワーマトリクスを活用し、タスクを以下の4つに分類します。

分類 | 概要 |
---|---|
緊急かつ重要 | 可能な限り早い段階で着手すべき最優先のタスク |
重要だが緊急ではない | 明確な期限はないが、重要度の高い長期的なタスク |
緊急だが重要ではない | 緊急ではあるが自分が取り組むほど重要度は高くなく、他のメンバーに依頼できるタスク |
緊急でもなく重要でもない | 取り組むだけ無駄で避けるべきタスク |
上記のマトリクスを活用すれば「どのタスクが重要で、なにから優先すべきか」が明確になり、タスクの実行もスピーディに判断できます。
3.担当者の割り当て・スケジューリング
タスクの優先順位が決まったら、各タスクに担当者を割り当て、具体的なスケジュールを設定していきましょう。具体的には、チーム全体の業務量を把握したうえで、各タスクに適性(経験・能力・スキルなど)のある担当者を割り当てます。
スケジューリングにおいては、タスクの開始日と終了日を設定し、調査・資料作成・先方へのアプローチなど必要なステップから逆算して、スケジュールに落とし込みましょう。
4.タスクの実行・進捗状況の確認
各タスクの担当者が決定したら、計画に沿って業務を円滑に進められるよう、ステップごとに指示を出しながらタスクを実行しましょう。タスク実行中は、計画通りに進んでいるか以下の点を定期的に確認します。
- 進捗状況や進捗率(%)
- 成果物の品質
- スケジュールとの乖離
- タスクが進まない原因
- 他部署との連携状況
計画よりも遅れている担当者がいる場合は、本人に任せきりにするのではなく、チーム全体でサポートし合いながら進めましょう。信頼関係が構築され、仕事へのモチベーションも高められます。
5.業務プロセスの検証・改善
タスク完了後は、業務プロセス全体を振り返って課題を洗い出し、次回の取り組みに向けた改善点を検討します。業務プロセスを検証する際は、以下の点を確認しましょう。
- タスクの抜け漏れがなかったか
- 優先順位が適切に設定されていたか
- リソース不足はなかったか
- 担当者間の連携はとれていたか
誰もが感じている課題だけでなく、資料のフォルダ分けや報告フォーマットの使いやすさなど、細かな改善点を見つけ出すことが業務効率化につながります。
以下の関連記事では、業務管理手法の一つ「PDCA(計画・実行・確認・改善)サイクル」について解説しています。業務プロセスの改善を行う際に、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:PDCAサイクルとは?運用のコツと事例を使ってわかりやすく解説
タスクマネジメントにおける4つの管理方法

タスクマネジメントの管理方法には、主に以下の4つがあります。
- メモ帳・ノート(手書き)
- Excel・スプレッドシート
- ビジネスチャットツール
- CRM・SFA
業務内容に応じた適切な管理方法を選択することで、優先順位の明確化やリソースの有効活用など、成果の出るマネジメントが可能になります。
以下の関連記事では、タスクマネジメントに欠かせないDXの定義やメリットを詳しく解説しています。デジタル技術を用いた業務プロセスの改善にも、ぜひ取り組んでみてください。
関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や導入のメリット・デメリットを解説>
メモ帳・ノート(手書き)
メモ帳・ノートによる手書きの手法は、主に個人がタスクを管理するための方法で、手元にある道具で簡単にはじめられるのが特徴です。日々の業務での新たなアイデアや打合せ内容をすぐに記録でき、思考を整理するだけでなく、記憶への定着にもつながります。
また、手書きによるタスク管理は、デジタルツールに比べてすぐに取り出せるため、急いでメモを書いたりタスクを見直したりする際にも便利です。
チームでタスクを洗い出す場合は、付箋にタスクを書いてホワイトボードに貼り、並び替えをしながら優先順位を決めるといった方法も活用されています。
Excel・スプレッドシート
ExcelやGoogleスプレッドシートは、一般的な業務でもよく使われているツールで、表や数式を用いてタスクをリスト化して管理できます。具体例として、タスクを行に記載したうえで、列には以下の項目を設けます。
- 緊急度・重要度
- 開始日・終了日
- 業務内容の詳細
- 進捗状況(ステータス)
- 担当者
フィルターや並べ替えの機能を活用すれば、優先度の高いタスクをピックアップしたり、進捗が遅れているタスクを特定したりすることも可能です。
Googleスプレッドシートでは、オンラインでメンバーとの情報共有や共同作業もできるため、出先でのタスク調整や確認にも便利です。
ビジネスチャットツール
SlackやMicrosoft Teamsなどのビジネスチャットツールは、メンバー同士でチャットのやり取りをできるだけでなく、タスクのリスト化や進捗管理にも活用できます。
営業などの迅速なコミュニケーションが求められる部署においては、タスクを確認しながらリアルタイムで情報共有を行うときの強力なツールです。
たとえば、プロジェクトごとにチャンネルを作成することで、メンバーは必要な情報を瞬時に取得でき、自分がやるべきタスクの確認も容易です。
期限の設定とリマインダーを活用すれば、期限が近いタスクを通知させてチーム内で情報共有するなど、タスクの見落とし防止にもつながります。
CRM・SFA
CRMやSFAは、顧客情報の一元管理とデータ分析によって売上向上を支援してくれるツールで、システム上にはタスクの整理や進捗管理の機能があります。それぞれの概要と機能は以下のとおりです。
ツール | 概要 | 主な機能 |
---|---|---|
CRM(顧客関係管理) | 自社と顧客との関係を一元管理するシステム | ・顧客情報管理 ・ワークフロー機能 |
SFA(営業支援システム) | 営業活動を効率化するシステム | ・営業活動管理 ・報告支援機能 |
たとえば、営業担当者が商談を行う場合、CRMで案件のステータスや次のステップ(提案書作成・商談日程調整など)をタスクとして表示できます。さらにSFAを活用すれば、営業チームの進捗状況や予算をもとに、目標達成に向けた戦略を分析することも可能です。
以下の関連記事では、CRM・SFAそれぞれの概要やメリットを詳しく解説しています。タスクマネジメントツールとして活用を検討している方は、本記事と合わせて参考にしてみてください。
関連記事:
CRMとは?機能やメリット、活用法をわかりやすく解説【事例あり】
FAとは?CRM・MAとの違いや効率的な営業活動のための活用方法を解説
タスクマネジメントにはAIの活用も効果的

AIの分析機能があるツールを活用することで、タスクマネジメントにおける緊急度・重要度の評価精度が向上し、スムーズな意思決定が可能です。
たとえば、過去の購買データをもとにタスクの優先度が提案されれば、営業担当者は自分の直感や経験に頼るだけでなく、根拠のある意思決定によりアクションを起こせます。
SalesforceのCRM・SFAにもAI(Einstein)が搭載されており、生成AIを活用したAIアシスタントで「今やるべきタスク」を自動的に推測してくれます。
AIは顧客データをもとに契約の可能性を予測し、どのタスク(アクション)が効果的であるかを明確にできるため、業務効率化の面でも大きな効果を発揮するのです。
以下の関連記事では、AI導入による効果や企業の取り組みを解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:AI導入のメリット・デメリットは?日本の導入率や手順、事例も紹介
タスクマネジメントを実践している企業事例

タスクマネジメントを実践している企業事例について、2社の取り組みを紹介します。
- タスクの一元管理による進捗状況の可視化
- タスクリストを俯瞰して仕事の割り振りを適正化
タスクマネジメントは業務効率化のみならず、組織全体のパフォーマンスや顧客満足度の向上につながることを、事例を通して確認してみてください。
タスクの一元管理による進捗状況の可視化|AIST Solutions

会社名:株式会社AIST Solutions
事業内容:AI・半導体等のソリューション領域事業
株式会社AIST Solutionsでは新規事業の創出を目指して、部署ごとで業務を管理していた独自システムから、企業ニーズと技術をつなぐ基幹システムへと移行しています。
基幹システムとしてSalesforceを導入したことで、契約締結の手続きや決済など、業務フローが一つのプラットフォームに統一されました。
案件に関するすべてのタスクを一元的に管理できるため、プロジェクトの内容とステータスもひと目で確認でき、従業員の作業負荷も大幅に軽減しています。
今後は、システム上に「自分のやるべきタスク」をすべて集約させ、経営者が各データをもとに意思決定できる「経営全体の進捗管理システム」を構築する予定です。
タスクリストを俯瞰して仕事の割り振りを適正化|アマダ

会社名:株式会社アマダ
事業内容:金属加工機械の製造・販売等
株式会社アマダでは、各案件のサービスエンジニアが顧客情報の分析や電話対応をしていたため、日々の行動スケジュールは自分で管理する社内体制でした。
ベテラン従業員に作業量が偏るなどの問題が発生したため、個人に依存した業務の体制を「個から組織へ」の観点で変えるべく、Salesforceで基盤を強化しています。
業務管理アプリケーション「Field Service」の導入により、機械納入時の試運転や定期点検がタスクリストに蓄積・更新され、作業の進捗状況も可視化されました。
その結果、マネージャーがタスクリストをみて仕事を割り振り、サービスエンジニアは個々の仕事に集中できるようになり、スケジュールや業務量の最適化につながっています。
タスクマネジメントを実施する際の注意点

タスクマネジメントを実施する際は、以下のような点に注意しましょう。
- タスクを過剰に細分化して、作業を複雑化させない
- 各メンバーの進捗状況を報告させ、チーム内での情報共有を図る
- 状況変化に応じて業務プロセスやタスクを見直す
すべてのタスクを洗い出したとしても、メンバーの行動を促進させるマネジメントを行わないと、計画倒れや作業漏れが発生する可能性があります。週次で進捗状況を共有するミーティングを取り入れるなど、現状把握と軌道修正を行うための体制も必要です。
タスクマネジメントを取り入れて業務効率化を図ろう
タスクマネジメントは、業務効率化や生産性向上には欠かせない手法ですが、単にタスクの整理や優先順位づけだけでは不十分です。
業務内容に応じたツールを活用しながら、リソースの調整やタスクの進捗管理を行い、メンバーの行動を促すサポートを継続することがタスクマネジメントの基本です。
まずは、普段使用しているツールを活用できないか確認し、より効率的なマネジメントが必要な場合は、専用ルールやCRMの活用を検討してみてください。
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