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保険の見直し体験から考えるUX改革のススメ

保険の見直し体験から考えるUX改革のススメ

SalesforceでIndustry advisorとして保険業界を担当する筆者が、一人の生活者として保険の見直しを体験して感じたUXのポイントをご紹介します。

筆者はSalesforceのIndustry advisorという立場で保険業界向けのビジネス推進を担当しており、保険業界特有の課題や注力ポイントを理解したうえで、さまざまなインサイトやソリューションの提案支援を行っています。

最近、その仕事の立場とは別に、顧客の立場で数年ぶりにがん保険を乗り換える機会がありました。本記事では、代理店からのフォローアップコールや契約申し込みを顧客として体験することで得た気づきをもとに、特にマイページ登録に関する課題認識を共有したいと思います。

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保険見直し体験談

保険見直しの電話連絡

時々ある、知らない番号からの着信。不在着信の時はわざわざ折り返しませんが、3回目は取れるタイミングだったので取ってみると、保険代理店からでした。

店舗の担当者ではなく本社部門の方で「ご加入から数年間経過したので、保険を見直ししてみませんか?」と。私は「今と同じ条件以上で、保険料が安くなる商品があるということですか?」と聞き返したところ、「そのようなご提案が可能かどうかを含めて、一度店舗でお話できればと思います」とのことでした。

契約から数年、話を聞く機会がなかったので、良いきっかけだと思い、来店することにしました。

店舗での面談と提案

来店時の募集人とのやりとりは、家族の話などの雑談に始まり、その後加入している保険の内容確認、見直しできそうな保険の提案といったかたちで、時間は5分、5分、20分くらいだったように思います。

がん保険は、同様の保障内容で保険料が安くなる商品が複数あるということで、紹介してもらいました。

提案内容の検討と決定

事前にご準備してくださっていたようで、印刷された保険設計書を蛍光マーカーで印をつけながら、説明を受けました。

実は現在の契約が保険料の払込を65歳で完了する契約になっていて、そのぶん目先の保険料が高くなってしまっていたんですよね。終身払いで契約し直したほうが良さそうだなと思いつつ、自分でもネットで調べてみたいので、一旦持ち帰ることにしました。

自宅に戻って、Webで自分で見積もりができる保険商品をいくつか調べてみましたが、結局は募集人さんに提案してもらったものが一番良さそうでした。募集人さん素晴らしい。募集人さんとメールでやり取りし、次回来店日時を決めました。

デジタル化された手続き

今回加入を決めた保険会社の申し込み手続きは、しっかりとデジタル化されていました。諸般の事情があって申込書を作り直してもらうことになってしまったのですが、PCでテキパキ作り直していただき、そこから私はタブレットで申し込み手続きを進めました。タブレットで手続きを進められるだけでなく、募集人さんのPCからもタブレットが操作できることが優れたUXを生み出していると感じます。

主な手続き内容は、今回の商品や契約内容が私の意向と合致していることや、募集人さんが入力してくれた氏名や住所の情報に間違いがないことの確認。

そのほか、途中でマイページの設定に必要なメールアドレスを任意で入力する欄がありました。後から設定するほうが面倒なので、その場で入力しようとしたんですが、タブレットの入力操作感がイマイチで。そうしたら募集人さんがPCからメールアドレスを入力してくれたんですよね。これは便利だなと。

特に契約者が高齢者だったりすると、このデュアル操作とでもいうのでしょうか、契約者側だけじゃなく募集人側さんも楽だろうなと思いました。

告知もタブレットで行って、手続きの最後の署名もタブレット。紙に何かを記入することは一度もありませんでした。半年ほど前にスマホのキャリアを変えたのですが、この手続きはまだまだ紙が多かったし、時間もかかったのですが、今回の契約手続きのUXは、それとは異なりとても心地よく、だいぶ進化しているように感じました。

一連の経験を通して得た気づき

さて、ここからが本題と言いますか、一連の手続きを経験した中で、ビジネス視点での気づきがいくつかありました。

本社部門の方との最初のやりとりについて

顧客に対するメリットの訴求

私が「今と同じ条件以上で、保険料が安くなる商品があるということですか?」と聞き返したところ、「そのようなご提案が可能かどうかを含めて、店舗でお話しお伺いできればと思います」という回答についてです。

「はい、安くなります!」とは言い切れないにしても、契約内容や近年の商品改定、新商品の発表状況を踏まえて「その可能性が高いお客様にご連絡を差し上げています」くらい言えると良かったのではないかと思うのです。

ただ単に「ご契約から数年経過したので話を伺いたい」というのは、企業側都合での打診です。お客様に店舗に足を運んでいただくのですから、それに見合うメリットは訴求すべきなのではないかと感じました。

私は保険業界のビジネスに関与する立場だったので一度来店しようと思えましたが、そのような立場でもなかったらお断りしていたと思います。

顧客情報の共有と活用

この本社部門の方は、どれだけ私の情報を把握していたのかも気になりました。例えば、どの種目で、どのような保障内容で、どれくらいの保険料を支払っているのか。

もしかすると本社部門の方々は、店舗の方が利用するシステムとは違ったシステムを利用されており、アクセスできる情報にも制限があったのかもしれません。手持ちの情報がないのだとしたら、踏み込んだコメントをできないことも仕方ありません。

本当にそのような環境であれば、ちゃんとCRMで情報共有してもらいたいと感じました。

せっかくの顧客情報なのに部門の違いで活用できないというのは、従業員の方々のパフォーマンスに限らず、お客様への提供価値を下げることにも繋がってしまいます。

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JA共済連様 事例

来店時の募集人とのやりとりについて

担当者変更のフォローアップ

来店してみると、以前に担当していた募集人さんが変わっていました。担当者の変更は人によって受け止め方が様々だと思います。担当なんてどうでもいいと思う人もいれば、「私はあの担当者だったから保険加入したのに」と感じる人もいるでしょう。難しいところですね。理想を言うならば、この辺りのニーズや好みにも寄り添ったパーソナライズされた関係を築けると良いですよね。

担当の募集人さんが「担当変更になったらご連絡差し上げた方が良いですか?」と直接聞くのは野暮な気もしますが、本社部門によるフォローアップやアンケートで把握するというのは有効かもしれません。

再来店時の契約申込手続きについて

手続きはデジタル化されており、タブレットのデュアル操作も相まって、本当にスムーズでした。

一方で、改善の余地を強く感じたことがあります。マイページ登録についてです。

① 保険会社と募集人にとってのマイページ登録の価値

マイページは単に契約情報の確認だけでなく、顧客とのエンゲージメントを深める重要なツールです。保険会社にとっては、マイページを通じて顧客のニーズに応じた情報提供やサービスを行うことで、顧客満足度を高め、長期的な関係を築くことが可能です。

しかし私の体験では、代理店の募集人さんには顧客のマイページ登録にはなんのインセンティブもないのだなと感じました。申し込み手続きの際にも、「マイページは今登録いただかなくても大丈夫です」と案内されましたから。つまり、保険会社と募集人の間で、マイページ登録の価値にギャップが生じてしまっているのですよね。

② マイページ登録の完了率を上げるためには

私は今回、申込手続き完了後、帰宅途中にマイページ仮登録通知がメールで届いたことに気づきましたが、私がその後そのメールを開くことはありませんでした。

申込手続きで、わざわざ任意のメールアドレス入力に対応した私ですが、結局マイページの登録を完了していないということです。契約も成立したいま、追加で保険に手間をかけるインセンティブが、私(=顧客)にはないのです。ではどうすれば良いのか?

③ 募集人の評価指標(KPI)の再考

例えば中国平安保険の募集人は、生命保険を積極的に売ること以上に、見込み顧客にアプリ登録を完了させることが重要な業務になっていると聞いたことがあります。

中国平安保険の新規契約の実に3割がアプリ経由ということで、アプリユーザーになってもらうことが、新契約獲得への大きなステップになっている。だからこそ、募集人には業務としてアプリ登録支援を組み込んでいるわけです。

アプリの紹介ではありません。アプリの登録が完了するところまで、サポートしています。これによって、アプリ登録に至る各ステップでの離脱を完全に防ぐことができるわけですね。

提起してみたいです。日本の保険会社も、募集人の評価指標(KPI)に、マイページやアプリ登録の完了支援を加えてはどうか。「マイページ登録者の中から抽選でカタログギフトをプレゼント!」的なキャンペーンもしばしば目にします。しかし平安保険の事例も踏まえると、インセンティブを付与すべきは契約者ではなく募集人さん側なのではないか

募集人さんが契約手続きの中でマイページ登録までを一連でサポートする仕組みの方が、登録率は上がるのではないかと、今回の経験を通じて考えた次第です。

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まとめ

今回の顧客としての保険見直し体験を通じて、フォローアップコールや申込手続き、そしてマイページ登録に関して良い気づきを得ることができました。職務の中で業務プロセスを検討することはありますが、やはり机上だけでは気づけないこともあるのだと実感しました。

ちなみに、マイページやアプリの登録は保険会社にとって重要な指標ですが、登録だけで終わってしまっては片手落ち。登録で終わることなく継続して利用いただき、カスタマーエンゲージメントを築くためには、マイページやアプリそのものが顧客にとって価値あるものであり続ける必要がありますが、その施策についてはまた別の機会でお伝えさせてください。

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