2022年1月にドコモグループの一員となったNTTコミュニケーションズ。ドコモグループの法人事業を統合した法人事業ブランド「ドコモビジネス」を展開しています。グループ全体で約16,000名規模の運用を実施し、日本最大級のSalesforceユーザーを抱える同グループのDX戦略をSalesforce管理者として支えているのが山口 梓氏です。
今でこそSalesforce管理者として、コミュニティにも積極的に関わる山口氏ですが、元々は営業職出身でIT知識は持ち合わせていませんでした。ところが、Salesforceと出会ったことがきっかけで、IT技術者としてNTTコミュニケーションズへ転職することにつながります。
Salesforceとの出会い、転職、そして生成AI時代のこれからの展望……。人生を変えたSalesforce管理者としての成長の軌跡を語っていただきました。
Sales Cloud(セールスクラウド)で、成長を加速
Sales Cloud(セールスクラウド)の自動化機能、ワークフロー、電子メール同期、レコード更新を活用して、見込み客との関係構築とパイプラインを通じての誘導に時間を使えるようにします。
営業職から一転、独学でSalesforce管理者へ
NTTコミュニケーションズが法人ビジネスの拡大を図るために、営業部門ではCRMのCX向上に取り組んでいます。そこで山口氏は、営業の現場から寄せられる要望に応じて「Sales Cloud」の設計・開発を担当する役割を担っています。
今でこそ、自ら手を動かしSalesforceの改修をスピーディにこなす山口氏ですが、Salesforceに出会った当初は不動産業界の営業職に従事しており、IT知識は皆無でした。
「Salesforceを知った時には衝撃を受けました。プログラミングを学んでいない人間でも容易にシステムが構築できると感じたからです。前職は不動産業界で営業職に就いていたのですが、アナログ中心の非効率な業務を何とかしたいと調べているうちに、SFA(営業支援ツール)の存在を知り、Salesforceに行き着きました。これなら私でもできるかもしれないと考え、上司にかけあって導入の了承を取りつけました」
これ以降、山口氏は営業職を続けながら、「Sales Cloud」を独学で学び始めます。「自分で触れられたらきっと楽しいはず、人に頼むよりも自分で構築できればスピードは速い」との思いが大きなモチベーションになったと言います。
その結果、山口氏は「Sales Cloud」による顧客管理・営業支援システムの構築を果たします。それまでは、営業担当者がアプローチできていない顧客を把握することが難しい状況でしたが、「Sales Cloud」導入後はアプローチができていない顧客がいれば営業担当者にアラートを出しアクションが起こせるようになりました。
また、従来は営業担当者の経験と勘が頼りだった会議も、ダッシュボードを見ながら数字に基づいて的確な意思決定が下せるようになりました。
孤独にさせないコミュニティの存在
とはいえ、独学でSalesforceに取り組んでいた当初は単語の意味すらわからず、ひたすらWebで公開されている情報を検索して調べ続ける日々でした。もちろん、Trailhead※1にも取り組みましたが、当初は出てくる単語を一つひとつ調べる必要がありました。
ターニングポイントは、コミュニティ活動の中で訪れます。最初からコミュニティに参加していた山口氏ですが、初心者の自分は発言などしてはいけないと気後れしていたそうです。ところが、あるとき構築時の困りごとをつぶやいてみたところ、親身なアドバイスが次々と寄せられました。
「1年ほど誰とも交流を持たずにいたことを、心底後悔しました。初心者だからと気後れする必要はまったくありませんでした。私が困っていることにたくさんの方がアドバイスをくれたのです。Salesforceに携わる人々の世界は、誰一人取り残さずみんなでスキルを上げて、みんなで成功しようという文化なのだと感じ嬉しかったです」
山口氏はその後、SalesforceとDeloitteが共同で開発したDX人材育成プログラム「Pathfinder※2」を受講します。約5か月に及ぶPathfinderのプログラムでは、CRMのビジネススキルとSalesforceの基礎スキルを学ぶオンライントレーニングを経て、Salesforce認定アドミニストレーター資格試験の合格者のみ総合演習に進めるなど即戦力の実力を身に着けられます。
山口氏は、Salesforceを構築する中で自身がしてきたことが正しかったのかを検証する意味で、2期生としてPathfinderを受講し卒業しています。そして、卒業後は卒業生を対象としたコミュニティの運営に携わっています。
「Salesforceを学び直すことで自信を持つことができましたが、Pathfinderで得た最大の財産は年齢もバックグラウンドも異なる同級生です。当時まだPathfinder卒業生を対象にしたコミュニティが存在しなかったため、2期生3名とともに運営役を買って出ました。
社内に1人しかいないことも多いSalesforce管理者にとって、同じ目線で悩みを相談できる仲間がいることは心強いものです。私自身、もっと早く相談ができていればという経験があるので、コミュニティやイベントなどに参加することを躊躇している人の橋渡し的な存在になれたらと思っています」
生成AI活用 最新トレンド
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その後、山口氏は2023年4月にIT技術者としてNTTコミュニケーションズへ転職。営業職も大好きでしたが、自分で勉強したり努力したりしたことがより目の前で形になると感じられたSalesforce管理者の道を進むことに決めたのです。
Pathfinderの修了者には、Salesforceのパートナー企業への転職がサポートされますが、山口氏は自らの力でユーザー企業であるNTTコミュニケーションズへの転職を実現します。大規模統合に魅力を感じ、ユーザー数が1万名を超えるSalesforce環境のシステム構築・管理がどのようなものなのか、その中で自分を試し、楽しみたいとの思いでした。
Salesforceは心が踊るようなワクワクするアイテム
NTTコミュニケーションズほどの規模になると、管理者といえども何から何まで自ら手を動かして作業することは現実的ではありません。パートナー企業とどう協調して進めるかが重要となります。そんな環境でも、システムのポテンシャルを十分に引き出すためには、Salesforce管理者が全容を把握する必要があるというのが山口氏のポリシーです。
「たとえば表示する項目を追加したいという要望が出たら、そこにどのようなデータ型が入るのか、表示するデータはリストで見せるのがよいか、そうではないのか、実際に試作してみて営業部門と会話をしながら詰めていくこともあります。私自身がSalesforceを使いこんできたからこそ、このようなコミュニケーションができると感じています」
Salesforceを知らなければ、必要なシステムを適切に描くことはできません。そのため「Salesforceのパートナー企業と同じ知識レベルを身につけたい」と山口氏はその目標を語ります。
「Salesforceは私にとって、まさに“おもちゃ箱”。子どもがおもちゃ箱をのぞいて何で遊ぼうかと心が踊るように、Salesforceには便利に利用できる数多くの機能があってワクワクします。100人の管理者がいたら100通りの工夫ができ、社風や管理者の性格によって自分なりの使い方が可能です」
生成AIは管理者の仕事を劇的に変える
「管理者として現状に満足したら終わり」と語る山口氏は、SJAG(Salesforce Japan Admin Group)やSalesforce活用分科会、新機能Trailblazers分科会などのさまざまなコミュニティにアクティブに参加し、導入事例にもできるだけ触れて情報をキャッチアップしています。
当然、生成AIに関しても情報の収集は怠りません。高い知識レベルを身につけていく上で、管理者にとって新たな伴走者になると山口氏は「生成AI」に期待をしているからです。
「生成AIはこの先、システム構築の概念やこの仕事に携わる人々の立場を大きく変えるでしょう。管理者、開発者など現状それぞれが担っている役割も少し変わっていくかもしれません。これまで膨大に勉強をしないかぎり得られなかったものが、生成AIを活用することで誰でもその入り口まで容易に手が届くようになります。生成AIは私たちを伴走してくれる強力なパートナーになるのではと想像しています。
実は、私はフローの作成が苦手です。“フローと友達になりたい”と言い始めて1年くらい経ちますが、いまだに遠い存在です(笑)。私にとって“友達”というのは、変数をきちんと理解でき、1つの仕組みに何パターンものフローを描けるようになること。生成AIがサポートしてくれるようになれば、確実に顔見知りぐらいには距離を縮められる気がします」
NTTコミュニケーションズとしても、営業部門の支援だけでなく、顧客サポートの面からも積極的に生成AIの活用を検討しており、Salesforceに組み込まれるAI「Einstein」をどのように活用していくか、今まさに議論が進んでいると言います。
「バージョンアップが年3回あって、生成AIをはじめさまざまな機能が出てくるSalesforceのようなサービスを使い倒さないのはすごくもったいない。そのための情報を発信していく立場にあるのが、まさに私たち管理者だと思っています。
Salesforceに出会っていなければ、不動産業界にしか自分のニーズがないと思っていたでしょう。Salesforce管理者の道を選んだことで、自分自身のキャリアの幅が大きく広がりました。努力すれば人生はいくらでも広がることを教えてくれたのがSalesforceです。これからもSalesforceと一緒に生きていきたいと思います」
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※1 Trailhead :Salesforce が提供する無料のオンライン学習ツールです。初めての方も安心の「Trailhead スタートガイド」はこちら。
※2 Pathfinder:SalesforceとDeloitteが共同で開発したDX人材育成プログラムです。詳細はこちら