エンタープライズセールスとは、大企業や公的機関などアカウントとして大きい組織をターゲットにする営業手法のことです。効果的に実践することで、売上への大きなインパクトが期待できます。
大企業との契約は一度の売上額が大きいだけではなく、長期的な関係を築くことで更なる売上拡大を狙えるため、注力営業先としている企業もあるのではないでしょうか。
本記事では、エンタープライズセールスの意味をはじめ、効果的な進め方や必要なスキルを解説します。大企業向けの営業方法を知って、売上拡大や顧客との良好な関係構築を目指しましょう。
顧客企業との関係強化を図る「アカウントプラン」
Salesforceのベストプラクティスを組み込んだ「アカウントプラン」を生成AIを用いて作成する方法をご紹介します。
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目次
エンタープライズセールス(営業)とは
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エンタープライズセールスとは、大企業や公的機関などの大規模な組織をターゲットにした営業手法です。一度の契約で大きな売上が見込めるため、複数の部署への導入や長期的な顧客関係を目指すことを目的とした実施が一般的です。
エンタープライズセールスは、主にIT業界やソフトウェア業界で注目されており、近年ではSaaS(Software as a Service)企業が積極的に採用しています。
大企業は多くの部署を持つため、サービス導入後に部署をまたいで利用をされる可能性が高いのが特徴です。ひとつの契約から複数の追加契約が見込めるため、LTV(顧客生涯価値)を最大化する戦略として有効に機能します。
このように、エンタープライズセールスは単なる契約獲得にとどまらず、顧客との信頼関係を構築しながらビジネス拡大を目指す営業手法です。
SaaSやLTVについては以下の記事で解説しているので、詳しく知りたい方は、こちらもあわせて確認しておきましょう。
エンタープライズセールスとThe Model、ABMとの違い
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エンタープライズセールスとThe Model・ABMの主な違いは、以下の通りです。
エンタープライズセールス | The Model | ABM | |
---|---|---|---|
ターゲットの範囲 | 大企業や公的機関 | 幅広い見込み客層(中小~大企業) | 特定の企業(企業規模にはこだわらない) |
目的 | 大規模契約の獲得と顧客との長期的な関係構築 | リード育成と効率的な契約数の増加 | 選定した企業からの契約獲得 |
主な活動部署 | 営業が中心になって活動を行う | マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスが、それぞれの営業プロセスを分担して行う | 営業・マーケティングが中心になって活動を行う |
これらは深い関わりがあるものの、アプローチやターゲットが異なるため、目的に応じた使い分けが重要です。それぞれの違いについて詳しく解説します。
The Modelとの違い
エンタープライズセールスは、主に大規模な企業向けに特化した営業手法です。最初から特定の大企業をターゲットとし、その企業内で関係を深めていく「拡大型」の営業手法となります。
一方、The Modelは広く認知を拡大し、そこからリードを絞り込んでいく「絞り込み型」の営業手法です。営業プロセスを以下の4つの段階に分け、それぞれの役割を分担することで効率を最大化します。
- マーケティング
- インサイドセールス
- フィールドセールス(外勤営業)
- カスタマーサクセス
獲得した多数のリードから優先順位を決め、アプローチするリードを精査し、訪問や商談を経て契約に結びつけます。
The Modelで大企業にアプローチをかける場合は、「TAPS(ターゲット・アプローチ・醸成・支援)」の手法を使うのがポイントです。詳細は「エンタープライズ営業でのインサイドセールス実践法」の動画で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
また、The Modelについては以下の記事で解説しているので、こちらも確認しておきましょう。
ABM(アカウントベースドマーケティング)との違い
ABMは、特定の企業を対象に戦略的なアプローチを行うBtoBセールスの手法です。エンタープライズセールスと関連性があるものの、いくつかの点で異なります。
エンタープライズセールスは、主に大企業や公的機関などの大規模な組織をターゲットとし、営業部門が中心となって活動する営業手法です。大規模な契約の獲得や、顧客との長期的な信頼関係の構築を目的とします。
一方で、ABMは企業規模にこだわらず、特定の企業へのアプローチを目的とした手法のことです。特定した企業に十分なリソースを割き、見合ったアプローチをすることで成約へとつなげ、LTV(顧客生涯価値)の最大化を狙います。
ABMは、企業の成長を支える新しいアプローチ方法として国内でも関心が高まりつつあります。ABMについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
エンタープライズセールスの実施で得られる3つのメリット
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エンタープライズセールスの実施で得られる主なメリットは、以下の3つです。
- 高額契約の可能性がある
- 長期的な顧客関係を築ける
- 安定した収益基盤につながる
ひとつずつ解説します。
1.高額契約の可能性がある
エンタープライズセールスは大企業を対象とするため、一度の契約で大きな売上を期待できる点が特徴です。大企業は複数の部署や多くの社員がいることから、製品やサービスの導入規模も大きくなります。
そのため、契約が成立すれば取引額が高額になる可能性が高く、大きな売上獲得を期待できるでしょう。ひとつの部署で契約を取れれば、ほかの部署への導入も促せるため、より多くの発注が生まれる可能性も高まります。
2.長期的な顧客関係を築ける
大企業との取引は、一度契約を結ぶと簡単には解約されにくい特徴があります。これは、意思決定に複数のステークホルダーが関与し、導入に多くの時間やリソースを費やすためです。
契約後は、継続的なサポートと価値提供を通じて顧客との信頼を深めることで、より強固なパートナーシップを築けます。一度の契約をきっかけに長期的な協力関係が生まれると、さらなる顧客企業の成長だけでなく、相互の利益にもつながるでしょう。
3.安定した収益基盤につながる
大企業と長期的な契約を結べると、収入基盤が安定します。契約が長期的に続くのは、大規模な導入と複雑な運用プロセスの影響で、簡単に他社製品へ切り替えることが難しくなるためです。
部署や社員数の多い大企業は、複数のプロセスを経て製品やサービスの導入を決定します。そのため、一度契約するとほかのサービスに切り替えるのが難しくなる仕組みです。
契約につながれば、継続的かつ大規模な売上を確保でき、LTV(顧客生涯価値)も最大限に高められるでしょう。
エンタープライズセールス実践における3つのチャレンジ
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エンタープライズセールスの実践におけるチャレンジは、以下の3つです。
- 営業対象の企業が少ない
- 契約締結までに時間がかかる
- ライバルが多い
それぞれの内容を把握し、自社にどのような影響をもたらす可能性があるか検討してみましょう。
1.営業対象の企業が少ない
エンタープライズセールスの対象となる大企業は、日本企業421万社中、約1.2万社程度しかありません。大企業の割合は企業全体の0.3%ほどしかないため、獲得可能なリードの数が少なく、接点を持つことすら難しいのが現状です。
また、大企業には日々テレアポやDMなど多くの情報が入るため、新規営業を断るケースも少なくありません。大企業側が自ら情報を探す必要がないため、アプローチ方法を工夫しないとアポイントの獲得も難しいでしょう。
2.契約締結までに時間がかかる
エンタープライズセールスでは、契約締結まで非常に長い時間が必要です。大企業では意思決定のプロセスに多くの部署やステークホルダーが関与するため、契約成立までに時間がかかります。
また、部署ごとに説明や承認が必要となり、一つひとつの決定にも時間を要するところが難点です。この長いリードタイムは営業サイクルを遅らせるため、短期的な成果は出にくいでしょう。
3.ライバルが多い
エンタープライズセールスは、一度契約が決まると大きな利益をもたらすため、多くの企業が大企業との成約を獲得しようと競い合っています。大企業側も1社だけでなく複数社を比較検討するケースが多く、自社が選ばれる確率が低い地点から営業活動が始まります。
強力なライバルに勝つために、積極的にターゲットへアプローチする「アウトバウンドマーケティング」を駆使して、商談までの激しい競争を勝ち抜きましょう。アウトバウンドマーケティングについては以下の記事で解説しているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
エンタープライズセールスの効果的な進め方
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エンタープライズセールスの効果的な進め方は、以下の通りです。
- 企業を特定する
- 企業内で人脈を拡張する
- タッチポイントを広げて関係構築を図る
- 商品やサービスを展開する
それぞれ解説します。
企業を特定する
エンタープライズセールスでは、営業をする企業の特定からはじめます。SFAやCRMに蓄積されている顧客情報や購買履歴、市場規模などから、ターゲットとなりそうな業界や部署などの属性を抽出していきましょう。
企業規模や業界ニーズなどを考慮しながら、自社の製品やサービスと親和性の高い企業を選定します。企業の絞り込みや企業にあったアプローチをする際には、ABMの実践が有効的です。
企業内で人脈を拡張する
大企業での意思決定には複数の部署や役職者が関与するため、企業内で幅広い人脈を構築していくことが重要です。部署ごとで意思決定をするキーパーソンや推進者となるチャンピオンを特定し、コンタクトをとって信頼関係を構築していきましょう。
ひとつの部署で営業活動を行うのではなく、企業全体をターゲットと捉えてエンゲージメントを高めることが大切です。企業内全体にアプローチをかける営業により、複数の部署での導入や新規プロジェクトへの参画機会が増えるでしょう。
タッチポイントを広げて関係構築を図る
エンタープライズセールスでは、多様なタッチポイントを通じて関係構築を図ります。その際に活用するチャネルは以下の通りです。
- 関係者とのコネクション
- 自社のウェブサイト
- メールマガジン
- SNS
- セミナー
- DM など
大企業の新規開拓は難易度が高く、アプローチするには「接点を作る」ことが重要です。営業担当者の訪問だけでなく、あらゆるチャネルを活用して企業とのコンタクトを増やしましょう。企業との良好な関係構築ができれば、営業活動が一歩前進します。
商品やサービスを展開する
エンタープライズセールスでは、契約獲得後も継続的な展開が必要です。導入サポートや運用支援などのアフターフォローを通じて、顧客満足度を高めていきましょう。これにより、ほかの部署への展開や新規商材の導入機会も生まれます。
また、顧客企業の長期的な戦略や課題を理解することで、それにあわせた新たな提案も可能です。常に顧客のニーズに寄り添い、価値を提供し続けることでエンタープライズセールスが成功し、ビジネスの拡大を図れるでしょう。
エンタープライズセールス(営業)で求められるスキル
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エンタープライズセールスで求められる主なスキルは、以下の4つです。
- 情報収集・分析力
- 連携力
- 計画立案力
- コミュニケーション力
自社に備わっているスキルと比較し、実施を検討していきましょう。
情報収集・分析力
エンタープライズセールスは、企業の公式サイトだけでなく、組織図や経営状況・市場でのシェアなど、多角的なデータを収集・分析する能力が必要です。情報収集や分析によって自社の商材とニーズがマッチする企業を見つけ出すことで、効果的な提案につながります。
また、商談開始後も相手企業のニーズにあわせた提案を行うために、継続的な情報収集と分析が欠かせません。必要な情報を収集し、あらゆる視点から対象企業をセグメントするスキルを備えておきましょう。
連携力
エンタープライズセールスは営業部門を中心に進行しますが、状況に応じてインサイドセールスやSE、CS部門、さらにはエグゼクティブの協力を得ながら進めます。
各部門が役割を明確に分担し、専門性を活かすことでチーム全体が一体となり、スムーズで効果的な活動を実現できます。この協力体制が、エンタープライズセールスの成功のカギとなるでしょう。
顧客企業との関係強化を図る「アカウントプラン」
Salesforceのベストプラクティスを組み込んだ「アカウントプラン」を生成AIを用いて作成する方法をご紹介します。
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計画立案力
決裁までのリードタイムが長いエンタープライズセールスは、効率的な営業活動計画の立案が重要です。相手企業の購買プロセスを把握し、商談の回数や内容を適切に計画する能力が求められます。
また、予期せぬ事態にも柔軟に対応できる計画管理能力も必要です。決裁まで複雑なプロセスを経るエンタープライズセールスにおいて、計画立案、そしてそれを実行する力がスムーズな営業を実現するためのカギとなるでしょう。
コミュニケーション力
どのような大企業を相手にする場合でも、最終的には担当者や関係者とのコミュニケーションが大切です。商談化までにも時間がかかるエンタープライズセールスにおいては、「定期的に会いたい営業」として認識されることがまずは重要です。その前提をクリアした後は、商談やフォローアップを行いながら、相手企業の担当者と良好な関係を継続する能力が求められます。
複数の部署や役員など、異なる立場の人たちと接する機会も多いため、それぞれにあわせたコミュニケーションが不可欠です。ビジネスに関する会話だけでなく、相手の立場や状況に応じた柔軟なコミュニケーションを心がけましょう。
AIの活用でエンタープライズセールス活動の効率化を図れる
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顧客の絞り込みに多くの労力や時間を割くエンタープライズセールスは、AIを活用することで営業プロセスの効率化が可能です。
Salesforceの「Sales Cloud」は、顧客名をクリックするだけで取引に関するやり取りや情報がすばやく表示されます。
さらに、顧客の最新情報をAI「Einstein」に読み込ませれば、自動でデータ更新ができるので、自らデータ入力をする必要がありません。企業情報も外部と内部のCRMを要約して提供し、Einsteinから得た情報を踏まえて顧客に沿ったメッセージのやり取りができます。
また蓄積した情報をもとに、エンタープライズセールスでは必須の「アカウントプラン」もAIの力で作成することもできます。
これまで時間をかけていた情報収集や分析・計画立案などをAIに任せることで、空いた時間で営業活動や顧客との関係強化に専念できるでしょう。
エンタープライズにおけるAIの役割については以下の記事で解説しているので、こちらもあわせて確認してみてください。
エンタープライズセールスの成功で売上拡大を実現しよう
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エンタープライズセールスの成功を実現するためには、まずターゲット企業の選定が重要です。大規模な企業を対象にするため、顧客の業界動向やニーズを徹底的に分析し、最適なアプローチ方法を計画しましょう。
また、エンタープライズセールスは短期的な成果よりも、長期的な信頼関係を築くことで大きな成果が求められます。定期的なフォローアップやサポートを通じて、信頼関係を構築することが成功のカギです。
Salesforceでは、営業組織の効率化と売上拡大を実現するためのソリューションを提供しています。ぜひ、資料をダウンロードして、エンタープライズセールス成功への第一歩を踏み出しましょう。
顧客企業との関係強化を図る「アカウントプラン」
Salesforceのベストプラクティスを組み込んだ「アカウントプラン」を生成AIを用いて作成する方法をご紹介します。
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