ペーパーレス化とは？導入するメリット・デメリットや成功事例を解説

ペーパーレス化とは、紙の文書や資料を電子化して活用し、紙の利用を削減することです。業務効率の改善やコストの削減に効果があります。

しかし、ペーパーレス化を進めるにあたっては闇雲にすべてデジタル化に進んでも、逆に不便になることもあります。

この記事では、ペーパーレス化の現状から、進めるにあたっての注意点まで詳しく解説します。

役立つツールや成功事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

ペーパーレス化とは

ペーパーレス化とは、紙の文書や資料を電子化して活用することです。

ビジネスの場においては、従来紙で扱われていた書類や資料をデジタルデータとして管理・運用することで、業務効率の圧倒的な向上とコスト削減を図ります。

ペーパーレス化の具体例は、以下のとおりです。

• スキャンによって紙書類をPDF化する
• 請求書の発行、送付、受取をすべてシステム上で行う
• 契約書や申請書類にデジタル署名を使用する

また、電子書籍や電子チケットなど、ペーパーレスになったサービスはみなさんも利用したことがあるでしょう。すでにビジネス以外の分野でも広がっており、人手不足の中、より便利で安価なサービスの実現につながっています。

ペーパーレス化の現状

政府が法整備によってペーパーレス化を推進しているため、多くの企業でペーパーレス化は導入されています。

具体的な法整備は、以下のとおりです。

• 2005年に法定文書について電子保存を容認する「e-文書法」を施行
• 2022年に国税関係帳簿・書類について定めた「電子帳簿保存法」の要件を緩和

しかし、システム導入にかかるコストや従業員間のITリテラシーの格差などによって、ペーパーレス化の推進が遅れている企業も少なくありません。

社会全体でペーパーレス化を根付かせるためには、システム導入コストやITリテラシーの格差などの課題を解決していく必要があります。

ペーパーレス化による4つのメリット

ペーパーレス化によるメリットは、以下の4つです。

• 社内DX促進の基盤になる
• コスト削減
• 業務効率化、生産性向上
• セキュリティの強化

自社の課題解決に活かせるように、順番に詳しく見ていきましょう。

社内DX促進の基盤になる

ペーパーレス化による文書のデータ化は、システムやツールとの連携が可能になるため、社内DXを促進する基盤となります。

社内DXとは、デジタル化によって効率性や生産性を上げて、企業全体の働き方や組織体制を変革する取り組みです。

たとえば、データ化された文書は、ツールによる分析が可能になるため、精度の高い顧客分析や売上予測によって生産性を高められます。

また、クラウド上にデータ化された文書を保存することにより、場所に縛られることなくリアルタイムで情報を共有することも可能です。

DXを実現させるポイントについて興味がある方は、以下の関連コンテンツもあわせて参考にしてください。

コスト削減

ペーパーレス化を推進すると文書をデータで取り扱うため、管理コスト削減のメリットがあります。

具体的に削減できるコストの例は、以下のとおりです。

• 印刷するための紙やトナー費用
• 複合機やプリンターのリースやメンテナンス費用
• 紙書類の配送・郵送費用
• 文書を保存、管理、廃棄する費用

大量に紙で文書を保管している場合には、保管するスペースを縮小できるため、オフィスの賃料削減にもつながります。

業務効率化、生産性向上

ペーパーレス化によって文書をデータで管理すると、業務効率化や生産性向上を期待できます。

たとえば、具体的な業務効率化の例は、以下のとおりです。

また、生産性向上の面では、必要な書類を端末上ですぐに閲覧できるため、外回りのすきま時間に日報を作成できたり、テレワークで会社と同様に業務が行えたりする点が挙げられます。

セキュリティを強化できる

ペーパーレス化によってデータ化された文書は、アクセス権限や閲覧権限など設定によってセキュリティを強化できます。

紙での文書管理は、置き忘れによる紛失や不正による持ち出しなど、情報漏洩するリスクが高い環境です。

情報漏洩は、顧客や取引先の信頼を失って企業存続に大きく影響する可能性があります。

不正な持ち出しや改ざんといったリスクをコントロールするために、ペーパーレス化によるセキュリティ強化が重要です。

ペーパーレス化は意味ない？3つの注意点

ペーパーレス化による注意点は、以下の3つです。

• 紙と比べて見やすさに問題がある
• ITリテラシーを求められる
• 機器やネットワーク環境の不具合による影響を受ける

ペーパーレス化を推進するコストを最適化できるように、それぞれ解説します。

紙と比べて見やすさに問題がある

ペーパーレス化によって、紙よりも見やすさが損なわれる可能性があります。

たとえば、タブレットやパソコンで閲覧する際には、細かい部分を拡大して見る必要があるため、全体像を把握しにくいと感じる方もいるでしょう。

また、複数の資料を比較する場合には、紙の方が並べて閲覧できるため、見やすいケースがあります。

見やすさの問題を解決するために、大きいディスプレイやデータ表示のレイアウトや構成を工夫して、デジタルデータとして見る前提で文書を作成しましょう。

ITリテラシーを求められる

ペーパーレス化には、タブレットやパソコンなど機器の導入が必要であるため、企業全体のIT化が欠かせません。

新しい技術を取り入れていない企業であれば、社内の環境が大きく変化する事態です。

IT機器の使用に不慣れな従業員が、機器の操作に不便を感じてしまうと、ペーパーレス化推進の停滞につながる可能性があります。

ペーパーレス化を推進するためには、自社の従業員への研修や説明会の実施をあわせて行いましょう。

機器やネットワーク環境の不具合による影響を受ける

ペーパーレス化によってデータ化した文書は、機器やネットワーク環境の不具合によって閲覧できなくなると業務に支障が出ます。

不具合への具体的な対策は、以下のとおりです。

• データのバックアップをクラウドと機器に保存する
• 予備のパソコンやタブレットを準備する
• 停電時の予備電源を用意する

データのバックアップは、クラウドと機器に保存することで、機器が故障した状況とネットワークがつながらない状況の両方に対処できます。

不具合の原因は、人為的なミスや災害などさまざまであるため、なるべく多くのケースを想定した対策が必要です。

ペーパーレス化を進める4つの方法

ペーパーレス化を進める方法は、以下の4つです。

• ペーパーレス化の必要性について理解を深める
• ペーパーレス化する書類を見極める
• 必要なサービスやツールを検討する
• 運用ルールを決めて社内に周知させる

企業全体で円滑にペーパーレス化を推進できるように、順番に詳しく解説します。

ペーパーレス化の必要性について理解を深める

ペーパーレス化を推進させるには、全社的に必要性を理解してもらい、協力する体制を構築する必要があります。

協力する体制の構築に効果がある方法は、以下のとおりです。

• 同業他社のペーパーレス化の成功事例を共有する
• 必要に応じて経営層だけでなく社員の意見も取り入れる
• IT機器に不慣れな社員に事前研修を実施する

理解を得られないままトップダウン方式で推進しても、業務効率化や生産性向上に結びつかない恐れがあります。

トップダウンだけでなく、現場の意見も取り入れながら進めることで、スムーズな導入と効果的な運用が可能です。

ペーパーレス化する書類を見極める

すべての文書を一度にペーパーレス化しようとすると、これまでの業務フローと合わず、業務効率が大幅に落ちてしまうことがあります。

そのため、改善する業務に優先順位をつけて、業務プロセスの見直しと合わせて徐々にペーパーレス化を推進することが重要です。

たとえば、経理担当者にテレワークを導入する場合は、経理関係の書類を優先的にペーパーレス化します。

段階的に進めていくことで、発生する問題を最小限に抑えらるため、結果的にスムーズにペーパーレス化を実現できるでしょう。

必要なサービスやツールを検討する

ペーパーレス化を推進するには、目的に合わせたサービスやツールの導入が必要です。

たとえば、契約関係のペーパーレス化だけが目的であれば、電子契約サービスの導入で推進可能です。

しかし、契約は顧客と結ばれるものです。どの顧客とどのような契約を結んだのかすぐに見つけることができなければ、メリットの半分も享受できません。顧客情報を一元管理したり、データ分析と合わせて行うことで、ペーパーレス = デジタル化による生産性の向上を最大限に活かすことができるでしょう。

導入するサービスやツールによって、コストや運用方法は大きく異なるため、事前にペーパーレス化を推進する目的やゴールを明確にしておきましょう。

運用ルールを決めて社内に周知させる

ペーパーレス化を運用する際には、現行と異なる業務フローが発生します。

そのため、運用ルールやマニュアルを策定し、従業員の混乱や業務の停滞を避けることが重要です。

たとえば、紙と電子データの両方を扱う必要がある場合に、明確なルールが定まっていないと、かえって管理がややこしくなる恐れがあります。

また、実際に運用しないと見えてこない改善点や課題もあるため、定期的に運用ルールの見直しが必要です。

ペーパーレス化に役立つツール3選

ペーパーレス化に役立つツールは、以下の3つです。

• オンライン文書管理サービス
• 電子契約システム
• SFA・CRM

自社の目的に合わせたツールが選べるように、一つずつ順番に見ていきましょう。

オンライン文書管理サービス

オンライン文書管理サービスは、オンライン上に文書データなどを保存して共有する際に有効です。

導入するメリットは、以下のとおりです。

• ファイル名の検索で文書を簡単に探し出せる
• 導入コストが少ない
• 複数名で同時に作業できる
• 情報漏洩や改ざんなどのリスクを軽減できる

シンプルな文書管理は理解しやすく、すぐに使えますがメリットも限定的です。

電子契約システム

電子契約システムは、紙の契約書に印鑑を押す代わりに、インターネット上の電子ファイルに電子署名やタイムスタンプを付与して契約を締結できる仕組みです。

契約の締結だけでなく、契約書の作成や保管に対応しているケースもあります。

ただし、事業用定期借地契約や任意後見契約書のように、法律によって紙での契約を求められるケースがあるため注意しましょう。

また、電子契約以外のペーパーレス化に適していないため、他の業務でのペーパーレス化を推進するためには、新たなツールの導入を検討する必要があります。

SFA・CRM

SFA・CRMとは、営業活動を支援するツールのことです。具体的には、以下のとおりになります。

• SFA：営業で扱われる多種多様な情報を記録・管理するツール
• CRM：顧客情報や行動履歴、顧客との関係性を管理するツール

SFAやCRMは、文書データの保存や管理に加えて、これまで文書ではほとんど管理することができなかった多種多様な顧客情報をデジタルデータとして管理することができます。多様なデータ分析に対応しているため、データにもとづいた営業活動やマーケティング施策の立案に効果的です。

現代のSFA・CRMは買い切り型ではなくサブスクリプション型を採用しているため、初期費用も抑えることが可能です。SFAやCRMの活用方法について興味がある方は、以下の関連コンテンツもあわせてご覧ください。

ペーパーレス化に成功した事例

実際にSalesforceを導入した企業で、ペーパーレス化に成功した事例を紹介します。

• 約1,500種の帳票のペーパーレス化を実現
• 1拠点あたり月間150時間の時短と全社で54万枚の紙の削減に成功
• 属人的になりがちな顧客情報のペーパーレス化によって営業効率を向上

成功事例をもとに、自社のペーパーレス化を推進する際の参考にしてみてください。

約1,500種の帳票のペーパーレス化を実現

会社名：三菱UFJ信託銀行株式会社
事業内容：銀行業

三菱UFJ信託銀行株式会社は、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）によるパンデミックの発生により、紙ベースの帳票を使う業務を早急にペーパーレス化する必要があり、Salesforceの導入に至りました。

導入後は、紙媒体で分散して行っていた「申請」「承認」などのワークフローをSalesforceに集約しました。業務ごとにワークフローのテンプレートを「Lightning Platform」を活用して用意し、迅速に約1,500 帳票のペーパーレス化を実現しています。

迅速にペーパーレス化に成功した要因には、ワークフローのテンプレート化に加えて、社長を含めたトップダウンの判断による企業全体の意識統一が挙げられます。

1拠点あたり月間150時間の時短と全社で54万枚の紙の削減に成功

会社名：セントラル警備保障株式会社
事業内容：警備事業

セントラル警備保障株式会社は、何度も発生する入力作業やFAXによる報告システムなど、業務の非効率性を改善するためにSalesforce導入に至りました。

Salesforceの導入によって、顧客への提案から受注までのプロセスを一元管理し、自動的に受注情報が反映される仕組みを構築しています。

Salesforce導入後に得られた成果は、以下のとおりです。

• 1拠点あたり月間150時間の業務時間削減
• 全社で年間54万枚（A4換算）の紙削減
• 二重三重の情報入力の解消
• リアルタイムな報告システムの構築

今後は、Salesforceで可視化できるようになったデータを、経営に役立つ情報へと昇華させることを目指しています。

属人的になりがちな顧客情報のペーパーレス化によって営業効率を向上

会社名：京葉ガス株式会社
事業内容：都市ガス事業

京葉ガス株式会社は、電力・ガスの自由化に伴い、顧客対応拠点となるサービスショップと一体となって、顧客を軸にしたビジネスを再構築するためにSalesforce導入に至りました。

Salesforceの導入によって、契約者情報やサービスショップが独自に管理している情報、紙ベースで管理されている書類などを一元管理し、顧客が加入しているサービスの可視化を実現しています。

Salesforce導入後に得られた成果は、以下のとおりです。

• 業務フローの標準化による業務効率化
• 顧客接点情報のリアルタイムで共有
• 現場でのリアルタイムな情報入力

今後は、データ分析を活用して、顧客ニーズを先回りした提案ができる体制の構築を目指しています。

ペーパーレス化はAI搭載のSFAツールの活用で社内DXを促進する

Salesforceの「Einstein」は、予測AIと生成AIによって同じ作業を何度も手動で行う業務を効率化して、紙媒体から取り込んだデータを営業サイクル全体で有効活用できます。

データ化された情報を「Einstein」によってDX促進に活用した例は、以下のとおりです。

• 繰り返し行う作業を自動化して集中力低下によるミスを防止できる
• AIによるスコアリングによって優先順位の高い商談先を特定できる
• 蓄積したデータをもとにパーソナライズされたメールを自動で作成できる
• 取引先と見込み客の自動調査を行える

また、AIはデータ分析にもとづく意思決定を支援してくれるため、担当者の感覚や経験に依存する属人化した営業から脱却し、データドリブンな組織文化の醸成に効果的です。

Salesforceの「Einstein」については、以下の記事で詳しく紹介しています。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。

ペーパーレス化による社内DXの促進で業務効率化を目指そう

ペーパーレス化は、紙の文書や資料を電子化することにより、業務効率の改善やコストの削減に効果的です。そのため、社内DXを促進する第一歩ともいえます。

しかし、ペーパーレス化を推進するためには、自社の目的に合わせたツールの導入が必要です。目的が定まっていないと、必要以上に機能を備えたツールの導入や、思ったように業務改善や生産性の向上を実現できない恐れがあります。

Salesforceなら無料トライアルを実施しているため、導入後の運用をイメージしながら検討可能です。また、お客様の課題やニーズに合わせてカスタマイズできる製品を多数取り揃えています。

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