業務の効率化に役立つテクノロジーが続々と登場する中で、RPA(Robotic Process Automation)に興味をもっている方も多いのではないでしょうか。
RPAは事務作業の自動化を実現する技術で、定型的な業務を効率化し、人材不足や労働環境の変化などの課題への対応に活用できます。
本記事では、RPAのメリット・デメリットやツールの選び方、導入手順・事例まで詳しく解説します。
自動化/RPAを成功させるために
RPAと自動化ツールを無計画に導入すると、近い将来、運用が非効率になってしまいます。自動化のメリットを最大化させるためのアプローチとは?
目次
RPAとは
RPAとは、「Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)」の略称で、パソコン上の事務作業を自動化できるロボット技術です。
データの入力や定型的な業務の自動化を実現し、これまで人の手で行っていた事務作業の大幅な効率化が期待されています。
ここからは、RPAについて以下の4点を解説します。
- 得意とする作業
- 種類
- 3段階の自動化レベル
- AIやVBAとの違い
RPAの種類や得意分野などを押さえ、より詳しく理解していきましょう。
得意とする作業
RPAは、マウス操作やキーワード入力などの作業を記憶し、記憶した動作を実行するため、手順が明確な作業を得意としています。
具体的には、データ入力やチェック作業、レポート作成などが得意です。データ入力は、人の手でシステムに打ち込むのが一般的ですが、RPAに手順を記憶させれば、自動で入力できるようになります。
柔軟な判断や意思決定などが求められない作業であれば、RPAは幅広い活用ができるため、自社の定型的な業務を洗い出してみましょう。
種類
RPAの種類は、以下の2つです。
特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
デスクトップ型 | ツールをインストールしたパソコン内で使用できる | ・導入費用が安価・ツールをインストールしたパソコンのみで管理できる | ・部署・部門間の横展開が難しい |
サーバー型 | サーバー内で使用できる | ・複数のパソコンで使用できる・他部署・部門と連携しやすい | ・導入費用が高額 |
デスクトップ型は、RPAツールをインストールしたパソコン内だけで稼働するタイプです。サーバー型に比べて安価な場合が多く、担当者のパソコンのみにインストールすれば、コストを抑えて利用できます。一方で、インストールしていないパソコンでは使えないため、複数人での活用や他部署との連携が難しい点に注意が必要です。
サーバー型は、サーバー内で稼働するため、直接ツールをインストールしていないパソコンでも使用できます。複数の担当者で運用したり、各部署で使用したりできるため、横展開に適しています。デスクトップ型よりも費用は高額なため、コスト面に注意しましょう。
3段階の自動化レベル
業務の自動化は、RPAを含む3段階に分けて考えられています。
クラス | 業務範囲 | 具体的な作業 |
---|---|---|
クラス1:RPA | 定型業務の自動化 | ・情報の取得・入力作業・チェック作業 など |
クラス2:EPA(Enhanced Process Automation) | 一部非定型業務の自動化 | ・画像解析・音声解析・非構造化データの読み取り など |
クラス3:CA(Cognitive Automation) | 高度な自律化 | ・プロセスの分析・意思決定・自然言語処理 など |
RPAは、自動化レベルの1段階目に位置づけられています。入力やチェックなど手順が同じ定型作業の自動化を行うステップです。
EPAは、RPAでは対応できない非定型業務を一部自動化するステップで、AIを組み合わせて高度な自動化を実現します。
さらに自動化が進むと、ツール自ら分析や意思決定などができ、自律したシステムとして稼働できる段階に到達します。
AIやVBAとの違い
RPAは、AIやVBA(Visual Basic for Applications)と混同されるケースがありますが、どちらとも異なる技術です。
RPAとAIは役割が明確に異なります。RPAは記憶した作業を実行する役割がある一方で、AIは自ら思考・判断し指示を与える役割をもちます。異なる技術ですが関係性は深く、AIの指示をRPAで実行するといった連携も可能です。
VBAは、マイクロソフトが提供するアプリケーションで使用できるプログラムです。アプリケーション内で作業を記憶させると、処理を自動化できます。RPAはパソコン内の作業全般を自動化できるため、対応範囲が異なります。また、VBAは設定にプログラミングが求められるものの、RPAはプログラミングなしで利用できるのも違いです。
RPAが注目されている3つの背景
事務作業の自動化を実現するRPAは、以下のような背景があり、注目が高まっています。
- 生産年齢人口減少に伴う人材不足に対応するため
- 働き方改革に対応した労働環境を構築するため
- RPAの対応領域が拡大しているため
RPAには、人材不足や長時間労働の是正などさまざまな課題の解決を期待できる可能性があります。背景を正しく理解し、自社での活用シーンをイメージしましょう。
生産年齢人口減少に伴う人材不足に対応するため
生産年齢人口とは15歳以上65歳未満の人口を指し、生産活動を支える人口と定義されています。
生産年齢人口は1990年代をピークに減少を続け、2065年には2020年と比較して約2,900万人減少した約4,529万人になると予想されています。
多くの企業で人材不足が課題に挙げられ、人材を獲得する競争が起きているため、十分な人材の獲得は難しい状況です。
限られた人材で利益を生み出す手法のひとつとして、RPAの活用が注目を集めています。事務作業の自動化で業務効率が上がり、コア業務にあてる時間を生み出すことができれば、人材不足の影響を抑えられるでしょう。
限られた人材で生産性を高める方法は以下の記事で解説しているため、あわせて参考にしてください。
働き方改革に対応した労働環境を構築するため
政府が推進する働き方改革では、「労働時間の是正」「正規・非正規間の格差解消」「多様で柔軟な働き方の実現」という3つの柱を設定しています。
中でも「労働時間の是正」は、労働時間の見直しや時間外労働の規制などにかかわる柱であり、働き方に変化をもたらしました。
企業にとっては定められた時間内で成果を出す必要があり、労働環境の再構築を求められています。
RPAは、定められた労働時間を有効に活用するための手法のひとつとして注目されています。定型業務の自動化で時間やリソースを創出できれば、労働環境をよりよく改善できるでしょう。
RPAの対応領域が拡大しているため
RPAはこれまでよりも技術が進歩し、対応できる領域を広げています。自動化できる作業が増えたり、プロセス設定が容易になったりしたことで、導入を検討しやすくなったのが注目が集まっている背景のひとつです。
RPAそのものの向上はもちろん、AIやディープラーニングなどの技術を組み合わせたツールも誕生し、より高度な自動化を実現できるようになってきています。
対応領域の拡大で導入事例が増えているのも、RPAの導入が進んでいる要因です。RPAに限らず、他社事例を参考にツールを導入するケースは多く、事例の増加によってRPAの普及が後押しされています。
RPAを導入する3つのメリット
RPAの導入によって、以下に挙げる3つのメリットを期待できます。
- 既存の業務を効率化できる
- 作業の正確性を高められる
- 24時間365日稼働できる
自動化による効率アップはもちろん、ヒューマンエラーの防止や稼働時間の確保などさまざまなメリットがあります。自社の課題と照らし合わせながら、導入メリットを理解しましょう。
既存の業務を効率化できる
RPAを導入すると、既存の定型業務を自動化し、作業効率を大幅に改善できます。入力作業やチェック作業などをRPAに任せれば、定型業務に時間を取られることが少なくなるでしょう。
これまで大量の定型業務を繰り返し人力で実施していたなら、RPAが時間を生み出し、コア業務に注力できる環境を整えられます。
作業の正確性を高められる
RPAは記憶させたプロセスを忠実に再現するため、ミスが起こる心配はありません。定型業務でミスが起きていた場合には、RPAが作業の正確性を高め、ヒューマンエラーの低減に貢献するでしょう。
ただし、決められたプロセスにミスがあると、ミスが残ったままRPAは稼働します。正しいプロセスを設定し、定型業務を正確かつスピーディに自動化しましょう。
24時間365日稼働できる
RPAは24時間365日稼働できるため、人間では作業できない時間帯も有効に活用できます。
業務時間外や休日なども稼働し、スタッフがいない時間帯も業務を進行できるのがメリットです。
人材が限られていたり、働き方改革への対応を求められたりする中で、時間をとわず稼働できるRPAが課題解決をかなえてくれるでしょう。
RPAを活用する際に気を付けたい3つのデメリット
RPA導入によるメリットは多いものの、注意したいデメリットが3つあります。
- RPAを活用できる人材が必要になる
- 適用できる業務に向き・不向きがある
- 運用ルールが定まっていないとトラブルが起きやすい
導入すれば結果が出るわけではなく、正しい活用によってメリットを得られます。デメリットを理解し、効果的な運用体制を構築しましょう。
RPAを活用できる人材が必要になる
RPAを導入するためには、自動化する業務の洗い出しやプロセスの設定などにスキルを求められるため、専門的な人材を確保しなければいけません。
簡単に設定できるツールもありますが、設定して終わりではなく、こまめな改善が求められるため、スキルや経験が重要です。
RPAに精通した人材を採用したり、外部の専門家と連携したりするなど、人材面の準備を欠かさず行いましょう。
適用できる業務に向き・不向きがある
RPAはすべての業務に適用できるわけではないため、自社の業務によっては効果的に活用できない場合があります。
手順やルールが決まっている業務は得意ですが、判断や意思決定などが必要な業務には対応できません。アクシデントや例外が生じた際には、作業がストップするため、トラブルへの対策が必要です。
運用ルールが定まっていないとトラブルが起きやすい
RPAは事務作業の自動化に便利ですが、ルールを定めずに運用すると、トラブルが起きやすくなります。
たとえば、むやみにプロセスの設定を増やしすぎると、目的がわからないRPAが乱立する恐れがあります。
事務作業に混乱が生じたり、機密情報の保管場所がわからなくなったりするなどの事態が考えられるため、管理者や設定のフローなどを決めることが重要です。
自動化/RPAを成功させるために
RPAと自動化ツールを無計画に導入すると、近い将来、運用が非効率になってしまいます。自動化のメリットを最大化させるためのアプローチとは?
RPAツールを選定する4つのポイント
RPAを導入するためにはツールが必要になりますが、さまざまなツールがあり、どのツールを選べばよいか迷う方も多いのではないでしょうか。
自社にあったRPAツールを選ぶためには、以下のポイントが重要です。
- 動作形態や目的にあった種類か
- システムを構築しやすいか
- 必要に応じてカスタマイズできるか
- セキュリティ対策が整っているか
4つのポイントを押さえ、導入目的や求める機能にあったツールを選定しましょう。
動作形態や目的にあった種類か
RPAツールには、デスクトップ型とサーバー型があるため、動作形態や目的にあった種類を選びましょう。
デスクトップ型は、個人のPCで設定したい場合やオフラインで使用したい場合に向いています。インストールしたパソコンであれば、インターネットにつながっていない状態でも使用可能です。インターネットを通じて情報漏えいするリスクがないため、セキュリティを重視したい場合にも相性がよいでしょう。
サーバー型は、サーバーに紐づいている端末すべてで利用できるため、社内全体で活用したいときに向いています。処理できるデータが増えるため、定型業務にかかわるデータが大量にある場合にも活躍しやすいでしょう。
システムを構築しやすいか
RPAを稼働するためには、対象の業務に関する操作を設定する必要があるため、システムやロボットを構築しやすいと快適な運用が可能です。
たとえば、クリックやドラッグなどシンプルな操作感だと、誰でも簡単に自動化の設定を完了できます。ツールの中には、無料トライアルやデモを提供している場合もあるため、一度使用感を試してみるのもおすすめです。
必要に応じてカスタマイズできるか
RPAの活用を徐々に広げていきたい場合は、カスタマイズ性に注目しましょう。
機能を後から追加できたり、使用する端末を増やせたりすると、運用の変化にあわせたカスタマイズが可能です。
将来的に全社的な活用を検討していたり、高度な運用にシフトしたりしたい場合は、あらかじめ拡張性の高いツールを選びましょう。
セキュリティ対策が整っているか
管理が行き届かないロボット「野良ロボット」が増えたり、権限が曖昧になったりすると、情報漏えいや紛失など大きなトラブルに発展する恐れがあります。
思わぬトラブルや人為的な不正などを防ぐためには、セキュリティに優れたRPAツールがおすすめです。
アクセス履歴が記録されたり、権限を管理できたりすると、不正なログインや改ざんなどを防ぎやすくなります。ロボットの監視機能を備えたツールもあり、野良ロボットの発生を未然に防止できます。
RPAを導入する4つのステップ
RPAの導入は、以下のステップで進めるのが一般的です。
- 導入の目的・目標を設定する
- RPAを適用する業務を選定する
- RPAツールを導入する
- 体制を構築し、運用を開始する
いきなりツール選定や導入を進めるのではなく、「なぜRPAを導入するのか」「何を自動化したいのか」など前提の整理からはじめましょう。
1.導入の目的・目標を設定する
RPAを導入する目的・目標を設定し、何を解決したいかを明確にしましょう。
たとえば、限られた人材での運営で定型業務の負担が重くなっている場合には、業務の効率化や人手不足への対応が目的になるはずです。
ゴールが曖昧なまま導入すると、効果的に運用できないため、必ずRPAで解決したい課題に対応した目標を定めましょう。
2.RPAを適用する業務を選定する
次に、RPAを適用する業務を選定しましょう。
RPAが得意とする定型業務をリストアップし、課題を感じている業務を絞り込むのがポイントです。
たとえば、データの入力作業に時間がかかっている場合は、データ入力の自動化を検討しましょう。
RPAを導入するプロセスの見極めに苦戦している方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
> RPAの採用:ロボティック・プロセス・オートメーションの対象にすべきプロセスの見極め
3.RPAツールを導入する
RPAツールによって機能や操作感などが異なるため、自社にあったツールを選定しましょう。
RPAに求めることを洗い出し、条件にあうツールをリストアップして比較すると、相性のよいツールを見つけやすくなります。
「誰でも簡単に扱えるツールがよい」「はじめは安価なツールでスタートしたい」など、運用スタイルにあったツールを選定するのがポイントです。
4.体制を構築し、運用を開始する
導入してすぐRPAを稼働させるのではなく、運用体制の構築を必ず行いましょう。
運用ルールの策定やガイドラインの整備などを行い、社内でRPAの運用方法を共有するのがポイントです。
RPAセンターといった専門部署を設置し、プロセスの検証や改善、社内の問い合わせ対応などを担えると、よりスムーズに運用できるでしょう。
RPAツールを選ぶなら「MuleSoft RPA」がおすすめ
さまざまなRPAツールの中でも、生産性や効率性の向上に効果的であるのが、セールスフォースの「MuleSoft RPA」です。
「MuleSoft RPA」は、ポイント&クリックの簡単な操作でワークフローを記憶し、円滑に自動化を実現できます。ワークフローはドラッグ&ドロップで簡単に編集でき、必要に応じて柔軟にプロセスを改善できるのも魅力です。
また、自動化したプロセスに対して、「自動化のメリット」「プロセスコスト」「所要時間」「頻度」を自動で評価します。RPAの導入効果やパフォーマンスが可視化されるため、プロセスの改善や選定などを実施しやすいのも特徴です。
さらに、MuleSoft RPAのサーバーで各クライアントのRPAボットの管理もできます。可視化にも対応し、企業としてのガバナンスを適用できるのも魅力です。
「MuleSoft RPA」を詳しく知りたい方に向けて、デモを含む説明動画を公開しています。興味のある方は、下記のページからご確認ください。
▶ 「MuleSoft RPA」の詳細はこちら
▶ 「MuleSoft RPA」の説明動画はこちら
RPA導入で業務の自動化を実現しよう
RPAの導入で事務作業をロボットに記憶させれば、日々繰り返す定型的な業務を自動化でき、大幅な効率アップを期待できます。
事務作業の代行で人材不足を解消したり、リソースの節約で長時間労働の対策を講じたりするなど、さまざまなメリットを享受できるでしょう。
RPAの効果を最大限に得るためには、運用体制の構築やツールの選定が重要です。導入ステップやツール選定のポイントも参考にし、ぜひ自社の課題解決につながるRPAを導入してください。
自動化/RPAを成功させるために
RPAと自動化ツールを無計画に導入すると、近い将来、運用が非効率になってしまいます。自動化のメリットを最大化させるためのアプローチとは?