働き方改革を進めるうえで、業務効率化は欠かせません。しかし、何から手をつけたらいいのか、ITだけが自社に最適な答えなのか、どのように進めたらいいのかわからない方もいるのではないしょうか。
業務効率化という言葉は、とても抽象的な言葉です。ただ単に仕事を円滑に進めると考えるのではなく、限られた時間・人材のなかで何の生産性を高めることを目的とするのか取り組む対象を絞り込むことが大切です。
本記事では、業務効率化の具体的な方法や便利なツール、企業の成功事例を解説します。自社に合った最適な方法を見つけ、ぜひ実践してみてください。
目次
業務効率化とは?
業務効率化とは、仕事の「無理・無駄・ムラ」を排除して、効率的に業務を進めるための取り組みです。単に「早く」や「少ない手間」で作業を終わらせるだけが業務効率化の目的ではなく、同時に「質の高い成果」を「継続的に」生み出すことも目的としています。
具体的には、手作業で行っていた業務の自動化や分散していた情報の一元化で、作業のスピードと正確性を高めるのと同時に、従業員の探す手間や報告する手間などの負担を軽減します。
生産年齢人口の減少に伴う人手不足や育児・介護との両立など、働き手の状況が多様化しているなか、業務効率化を含めた働き方改革は喫緊の課題です。厚生労働省も働き方改革の実現に向けた呼びかけを行っており、生産性向上を目指した業務効率化の情報を広く提供しています。
業務効率化によるメリット
業務効率化の主なメリットは、以下の2点です。
- 生産性の向上
- 従業員のモチベーション向上
業務効率化によって企業の成長を加速させるのと同時に、従業員の働きやすさを実現する効果もあります。順番に見ていきましょう。
生産性の向上
業務効率化によって、少ないリソースでも今までと同じような成果を上げられ、組織全体の生産性が向上します。たとえば、伝票処理やデータ入力などの定型業務を自動化することで、従業員はより重要度の高いコア業務に集中できるようリソースを割り当てられます。
生産性が高まれば「少ないインプットで多くのアウトプット」が得られ、組織全体のパフォーマンス向上によって、他社との競争力強化にもつながるのです。
企業が限られたリソースのなかで最大の成果を上げるためには、無駄な業務を徹底的に排除し、業務プロセスを最適化する必要があります。
従業員のモチベーション向上
業務効率化は企業側のメリットだけではなく、従業員にとっても業務の負担を減らし、モチベーションを高められる効果が期待できます。
たとえば、業務フローの見直しや情報共有ツールの導入によって、承認プロセスや従業員同士の連携がスムーズとなれば、機械的で非人間的な作業を減らすことができます。そして、より付加価値の高い創造的な業務に集中できるようになり、チーム全体の士気が高まるでしょう。
従業員が日々の業務で感じる負担やストレスは、無駄な作業や非効率なプロセスから生じることも少なくありません。そのため、効率的に業務を進められる環境で「働きやすさ」「働きがい」を見いだせれば、満足度の向上によってモチベーションも高まるのです。
業務効率化の5つの方法・アイデア
業務効率化の効果的な方法は、主に以下の5つです。
- 不要な業務を削減する
- 業務フローやマニュアルを作成する
- 反復作業を自動化する
- 社内情報を一元化する
- アウトソーシングを活用する
まずは、業務内容や業務プロセスの「無理・無駄・ムラ」がないかを確認し、自社に適した取り組みを実践していきましょう。
不要な業務を削減する
業務効率化の第一歩は「仕事を減らす」ことです。そもそもやらなくていい仕事はありませんか?部署ごとの業務プロセスにおいて「不要なタスクがないか」「重複した作業はないか」を特定し、無駄を取り除きましょう。まずは、以下のような業務がないか洗い出します。
- 必要以上に細かい報告書
- 目的が不明確な会議
- 情報の二重登録
- チーム間の重複作業
不要な業務の削減はもっともコストがかからず効果的なステップです。過去の慣習を見直し、大胆な決断によって、貴重な資源を本来注力すべき業務に再配分でき、従業員はよりクリエイティブな業務や戦略的なタスクに集中できます。
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業務フローやマニュアルを作成する
業務の流れ・判断基準を可視化する業務フローの作成によって、従業員は迷うことなくスムーズに業務を遂行できます。作業の質が向上するだけでなく、新人教育やIT化の際の貴重な情報となります。業務フローを作成する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 初めての人にもわかるようにまとめる
- タスクを細分化しすぎず、レベルや仕事の粒度を統一する
- 関係者でレビューし、意見を反映する
とくに複雑な業務や部門をまたぐ作業においては、業務フローを明確にすることで担当者間の連携が円滑になり、情報共有のミスや遅延の防止につながります。野球やサッカーなどの団体スポーツでは、声かけやパスの際のルールが決まっています。企業も同様に業務フローやマニュアルを作り徹底することで、チーム力を高め、ミスや遅延を無くすことができます。
各業務においては、用語の解説やシステムの操作手順など、図や表を用いてわかりやすい業務マニュアルを作成しておきましょう。業務フローやマニュアルが完備されていれば、新しい従業員が加入しても効率的なトレーニングが可能となり、業務の品質も一定に保ちやすくなります。
反復作業を自動化する
日頃のルーティン業務や反復作業を自動化するのも業務効率化のひとつです。以下は自動化しやすい業務の一例です。
- データ入力や日報作成などの定型業務
- 休暇や残業時間などの勤怠管理
- 発注書や請求書の発行業務
- 顧客情報の管理やデータ分析
これらのように日常的に行う反復作業は、組織運営には欠かせない業務であるものの、従業員の労働時間や負担が増えてしまうのも事実です。Salesforce Trends in AI Report(英語)によると、従業員の労働時間の41%は反復的で影響の少ない仕事に費やされていると推定されています。業務の一部を自動化することで、従業員個々の負担を減らしつつ、より創造的な業務や戦略的なタスクに取り組めるようになります。
Salesforceのサポートチームでは、顧客の問合せ対応を自動化する取り組みを実践しています。以下の資料で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、AIエージェントによる業務効率化のさまざまな事例もありますので、あわせてご覧ください。
社内情報を一元化する
各部署で保有している知識や顧客情報などをデータベース化し、一元管理することで業務の効率化が図れます。たとえば、顧客との取引履歴や過去のプロジェクトデータ、業務マニュアルなどさまざまな情報が集約されれば、リアルタイムで最新情報へのアクセスが可能です。
日々膨大な情報が蓄積されていくなかで、ばらばらに情報が管理されていると、必要なデータを探すのに時間がかかったり情報が重複したりして業務効率が低下します。データベース化によって情報へのアクセスを容易にし、迅速な意思決定にも役立ちます。
また、業務に関する知見やノウハウをまとめたナレッジベースの活用も、業務の引き継ぎをスムーズに行いながら、従業員のスキルや知識を向上させられる有効な方法です。
アウトソーシングを活用する
専門外の業務や負荷の多い業務を委託するアウトソーシングの活用も、業務効率化の方法のひとつです。組織内の限られたリソースのなかで、すべての業務を自社で行う必要はなく、コア業務に注力するためにはアウトソーシングも有効な方法といえます。
具体的なアウトソーシングには、人事や経理などのバックオフィス業務や、社内システムにおけるITインフラの運用・保守などが挙げられます。
ただし、費用対効果を考慮して検討する必要があり、情報漏洩のリスクがある点も考慮しなければなりません。
業務効率化に便利なツール6選
業務効率化を推進するためには、その業務に適したツールの導入が不可欠です。ここでは、代表的な6つのツールを紹介します。
ツール | 概要 |
---|---|
ビジネスチャットツール | オンライン上でリアルタイムに連絡・情報共有ができるコミュニケーションツール |
タスク管理ツール | タスクの計画・進捗状況・完了の管理を効率的に行うためのツール |
会議ツール | 映像や音声を双方向かつリアルタイムで通信し、複数人でのミーティングができるツール |
オンラインストレージ | クラウド上でファイルの管理や共有ができるツール |
CRM・SFA・MA・CS&S | 顧客情報の一元化など、営業やマーケティング、カスタマーサービス & サポートを効率化するツール |
RPA | パソコンで行う事務作業を自動化するソフトウェアロボット |
各ツールの特徴と活用方法への理解を深め、自社の業務に最適なツールを検討してみてください。
1.ビジネスチャットツール
ビジネスチャットツールは、場所や時間を選ばずリアルタイムでのコミュニケーションが可能で、社内の情報共有や意思決定の効率化に役立ちます。代表的なツールは以下のとおりです。
- Slack
- Microsoft Teams
- Chatwork
- LINE WORKS
ビジネスチャットツールは、メールに比べてメッセージの受信や返信が素早く行えるため、情報の伝達スピードが向上しプロジェクトの進行がスムーズになります。
チーム別にチャンネルを分けたりスレッド機能(※)を活用したりすることで、プロジェクトごとに会話の整理ができ、重要な情報を見逃すリスクも軽減します。
(※)特定のメッセージに対して個別に返信できる機能
Slackには、社内のデータベースにすぐアクセスできる連携機能があり、Salesforceだけでなく多くのSaaSとも簡単に連携でき、部門のニーズに応じたさまざまな活用が可能です。詳しくは以下の記事を確認してください。
2.タスク管理ツール
タスク管理ツールは、タスクの計画から進捗状況、完了までの管理を効率的に行うために設計されています。プロジェクトを視覚的にわかりやすく管理でき、主に以下のような機能があります。
- プロジェクト管理
- ToDoリスト
- 画像・ファイル添付
- コメント機能
タスクごとの期限や担当者を設定し可視化することで、誰がどの程度の進捗状況なのかを一目で把握でき、業務の遅延・重複の防止につながります。
また、コメントやファイル添付の機能によって、メンバー間でコミュニケーションを図りながらスムーズに情報共有を行え、チーム全体の生産性向上も実現可能です。
3.会議ツール
勤務地から離れた場所や自宅で働く機会も増え、ZoomやGoogle Meetなどの会議ツールが欠かせなくなっています。会議ツールを活用すれば、ひとつの会議室に集まる必要がなく、自席や出先のカフェなど場所を選ばず会議に出席でき、移動する手間や時間がかかりません。
会議ツールには、ビデオ会議のほかに以下のような機能が備わっています。
- チャット
- 画面共有
- ビデオ録画
- ホワイトボード
- 会議内でのグループ分け
なかでも録画機能は、出席できなかったメンバーへ会議の録画を共有したり、後から内容を見直したりする際に便利です。
4.オンラインストレージ
オンラインストレージは、クラウド上でファイルの管理や共有を可能とするツールで、インターネット環境さえあればどこからでもアクセスできます。代表的なツールは以下のとおりです。
- Googleドライブ
- Microsoft OneDrive
- Dropbox
オンラインストレージ内のファイルにアクセス権限を設定することで、特定のメンバーだけがアクセスでき、情報漏洩のリスクも抑えられます。また、バージョン管理機能を使用すれば、過去ファイルの復元も可能で、誤ってデータを上書きしてしまった場合でも安心です。
5.CRM・SFA・MA・CS&S
CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)、CS&S(カスタマーサービス & サポート)も、営業やマーケティングの業務効率化に効果的なツールです。各ツールの概要は以下のとおりです。
CRMを活用すれば、顧客の購買履歴を確認しながら顧客対応でき、スムーズにサービスを提供できます。また、SFAを活用すれば営業活動の可視化やノウハウの標準化ができますし、MAでは顧客の興味関心や属性に合わせたマーケティング施策が実現可能です。
各ツールの違いや活用方法については、関連コンテンツで詳しく解説していますので確認してみてください。
CRMの基本から導入までがわかる
「CRM」とは顧客や見込み顧客との関係ややりとり、すべてを1か所で管理するテクノロジーです。CRMが必要な企業の特徴や理由、CRM戦略の立て方から適切なCRMの見極め方までご紹介します。
6.RPA
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入により、データ入力といった定型業務を自動化できます。RPAには、主に2つの種類があります。
デスクトップ型 | ツールをインストールしたパソコン内で使用できるRPA |
サーバー型 | サーバー内で使用できるRPA |
自動化できるのは、情報・データの取得や入力作業、チェック作業などの定型業務で、RPAは自動化レベルの第一段階に相当します。AIを組み合わせたRPAによって、第二段階にあたる定型業務の範囲を超えた画像・音声解析などの自動化もできます。
参考:RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)|総務省
さまざまなRPAツールのなかでも、業務効率化に最適なのがSalesforceの「MuleSoft」です。クリックといった簡単なマウス操作でワークフローを記憶して自動化し、必要に応じてプロセスの見直しもできますので、ぜひ活用してみてください。
業務効率化を進める際のポイント
業務効率化を進める際は、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 効率化する業務の優先順位を決める
- 業務効率化の効果検証を行う
- 従業員への配慮を欠かさない
企業側の方針だけで業務効率化を進めるのではなく、現場で働いている従業員の声を取り入れることで、施策がより効果的なものとなります。
効率化する業務の優先順位を決める
すべての業務を一度に効率化するのは困難なため、優先順位をつける必要があります。その時に重要なのは「ビジネスへのインパクト」です。日常的に面倒と感じているものや、自身の経験や知識の範囲内で判断せず、全体最適の観点から、売上・利益にインパクトのあるものを優先しなければいけません。社内でディスカッションする際、業務効率化に関するアイデアは数多く出ると思いますが、その中には影響範囲が小さなものも多々あるでしょう。「売上 – コスト = 利益」のどこにどの程度効き目があるのかを見積もり、優先順位を決めることで効果検証もしやすくなります。
業務効率化の効果検証を行う
業務効率化の取り組み後は、以下のように「定量的な効果」と「定性的な効果」の両面で効果検証を行いましょう。どちらかのデータだけで意思決定を行うと、効率化を過度に追求してしまい、逆にコスト増加といったデメリットが生じてしまうためです。
定量的な効果 | ・労働時間の削減率 ・生産量の増加率 ・業務フロー完了までの期間の短縮率 |
定性的な効果 | ・従業員満足度調査の結果 ・アンケート調査による従業員の意見 |
定量的な効果を検証する際は、事前にKPI(重要業績評価指標)を設定し、数値データで目標達成度を評価することが重要です。定性的な効果は、従業員のモチベーションや仕事に対する活力・熱意(エンゲージメント)などを評価し、さらに改善が必要かを検討していきましょう。
従業員への配慮を欠かさない
業務効率化の過程では、実際に働いている従業員の声に耳を傾け、施策による悪影響がないか常に配慮する姿勢が必要です。従業員への配慮によって業務効率化の理解が得られ、新しいプロセスやツールの導入もスムーズに進みます。
- 業務効率化によって逆に負担になっていないか
- 業務フローがより複雑になっていないか
- ツールやシステムの導入でストレスになっていないか
これらの項目をアンケート調査や意見交換を通して確認し、負担やストレスが増加している場合は、原点に返って見直す必要があります。新しいツールを導入する際には、目的をしっかりと説明し、使い方のマニュアルを整備するなど丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
業務効率化の成功事例
業務効率化の成功事例として、2社の取り組みを紹介します。
- システム統合で営業訪問件数が120%向上
- AI活用で5万時間の業務効率化を実現
企業が実践している施策を参考にして、自社での業務効率化の方向性やアプローチの方法を検討してみてください。
システム統合で営業訪問件数が120%向上|キユーピー
キユーピー株式会社では、日本のマーケット縮小に伴って企業体質の変革に取り組んでいます。そのひとつが、部分最適で構築された50種類以上もある営業関連システムの統合です。
顧客への営業活動の情報が各システムに散在していたため、情報をまとめるといった内勤作業が多く発生し、営業・提案という本来の業務に集中できない課題がありました。そこで、すべての営業関連システムをSalesforceに統合し、以下の取り組みを並行して実施。
- Salesforceを活用して成功事例を出す「積極活用課」の設置
- 3年間で200回におよぶ勉強会の実施
結果、システム統合によって内勤時間が大きく削減され、残業時間においては年間約1.1万時間の削減に成功しています。また、営業部門が本来の業務に時間を割けるようになったことで、訪問件数も約120%向上しました。
AI活用で5万時間の業務効率化を実現|Salesforce
Salesforceでは、従業員の生産性向上を促進するために、50個以上のAI搭載ツールを導入しており、4つの領域の支援に取り組んでいます。
- 目標設定の強化
- 日常業務の自動化
- 迅速な情報の収集
- サポートの合理化
従業員の日常業務を支援する施策として、AIを搭載したSlackアプリ「Einstein」を導入しました。会議のスケジュール設定や概要作成、一般的な質問への回答などにAIを活用し、アプリを使用した従業員は、3ヶ月間で合計5万時間の節約に成功しています。
また、新入社員への迅速なサポートを実現するため、Experience Cloud上にサイトを構築しており、個々に最適化された情報やタスクにアクセスできます。
業務効率化を図るためにツールを有効活用しよう
組織全体の生産性向上と従業員の働きやすさを実現するには、仕事の「無理・無駄・ムラ」をなくす業務効率化が欠かせません。まずは業務プロセス全体を見直し、定型業務の自動化や社内情報のデータベース化など、従業員の声を聞きながら取り組みを検討していきましょう。
業務効率化を図るためには、SlackやZoom、CRMなどのツールの導入が不可欠です。
Salesforceでは、営業やマーケティングの最適化・効率化を実現するプラットフォームを数多く提供しています。ワークフローの自動化も可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
SalesforceのAIで業務効率化
信頼できるAIをワークフローに組み込むことで、チームの作業をスピードアップできます。
成約へのパイプラインを確立する営業担当者にも、ケースを記録的な短時間で解決するサービス担当者にも、パフォーマンスが高いキャンペーンを企画するマーケターにも効果をもたらします。