Vol.1に続き、「いまから始める マーケティングオートメーション定番シナリオ20選」の中から、ピックアップしたシナリオを細かく解説していきます。
マーケティングオートメーション(MA)の導入・活用の目的は、見込み客に最適なタイミングで適切な情報を届け、自社のサービスや価値の関心を高めていただき、最終的にはサービス・製品の購入というアクションをいただくことです。 そして、シナリオの肝になるのは、誰に、いつ、何を届け、どのような反応、アクションを期待するかです。
Vol.1では、<1.見込み客の見極め><2.見込み客の育成><3.営業活動>の3つのシナリオを紹介させていただきました。Vol.2では、引き続き、Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)のEngagement Studioを使って企業が顧客と最適なコミュニケーションをするシナリオとして、<4.既存顧客からのリピート><5.休眠顧客/失注顧客の掘り起こし><6.ABM>の3つを紹介いたします。
参考:マーケティングオートメーション(MA)とは?機能・事例を紹介
4.既存顧客からのリピート
MAは、見込み客を営業に引き渡すまでのプロセスだけで活用する訳ではありません。
Vol.1の<3.営業活動>の中でも紹介したように、営業活動中においての顧客のWeb行動の把握やメール配信からのシナリオなども非常に有効です。
その中でも、顧客との接点がつくりやすい既存顧客とのコミュニケーションや提案活動において、MAでの接点維持は非常に有効な手段になります。
既存顧客ですから、取引状況・契約形態・関係性・優先付けランク・営業活動状況など様々な情報を深く把握できている状態であり、それらがCRMの中に情報として存在しています。その顧客属性情報を元にセグメンテーションをして、セグメント分けをした顧客に最適な情報をメール配信することは定番ですし、もちろん良い施策でしょう。
ただ今回紹介するのは、既存顧客専用のWebサイトを用意し、より顧客主導で、顧客ニーズやタイミングを把握し、それに応じたアクションをしていくシナリオです。
取引のある既存顧客へのサービスの活用促進やサポートを目的とした、既存顧客専用のコンテンツサイトの構築はとてもお薦めです。 MAがあることによって、顧客に常に情報提供できるだけではなく、顧客の来訪のタイミングや閲覧ページなどを把握し、既に多くの情報を持っている顧客属性や取引状況などと合わせて、より顧客に寄り沿ったフォローや提案活動ができます。
また既存顧客専用サイトは、ログイン形式で提供することもできるため、個人とCookieの紐づけもしやすくなります。
既存顧客専用サイトのコンテンツとしては、[使い方マニュアル][FAQ][既存顧客限定ハンズオンセミナー情報][ユーザー会情報][活用Tips集]など活用促進のための様々なコンテンツが考えられます。こうしたコンテンツごとに、閲覧されている顧客をリスト化する設定も可能です。(Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)の「ページアクション」機能を利用)その特定コンテンツを閲覧されているリストに対して、閲覧コンテンツに沿った内容のメールを配信することも良いですし、カスタマーサクセスの担当チームに情報として引き渡しフォローアップに活かしていただいても良いかもしれません。
クロスセル/アップセルの追加提案のためだけではなく、閲覧回数の多いFAQや使い方マニュアルなどから、顧客の困りごとの把握やサービス/製品の向上に活かしていくこともできるでしょう。
5.休眠顧客/失注商談の掘り起こし
単純に「過去にコンバージョンしたが契約に至っていない見込み客」に継続的なメルマガ配信を行い、セミナー参加や新しいe-bookのダウンロードを促進する、というような施策も、実施しないよりはした方が良いと思います。より顧客に寄り添った情報提供やコミュニケーションをするためには、過去どんな施策で接点を持てた見込み客なのか、どのようなステイタスで失注をしてしまったのかなどの情報を踏まえてシナリオをつくると良いでしょう。
このシナリオは、過去にWebサイトから「見積依頼」をしていただいたけれども、購入には至らなかった見込み客に向けたシナリオです。
そのような対象ですから、そもそも検討のステージとしては比較的購買意欲が高めだったターゲットです。ただ一般的に購買に至らなかった理由としては、“サービス/製品の導入そのものが見送られた”や“他社製品に決められた”などが想定され、失注理由によって再アプローチのチャンスが眠っています。一例にはなりますが、以下図2のシナリオを実際に使っている印刷業のMarketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)ユーザーでは、紹介するサービス/製品が、企業の暑中見舞いや年賀状の挨拶状印刷や移転案内や代表取締役の就任案内などの印刷を行うサービスのため、継続的なコミュニケーションによって、一度失注したとしても掘り起こしが可能ということもあります。
CRM上の顧客情報の購入者フラグの有/無や、とあるキャンペーンに紐づく商談情報のステイタス(受注に至ったか至らなかったか)などを分岐の条件として設定し、更に検討していただいた製品やその他の属性などでリストを振り分け、それぞれに沿った内容でメール配信をするシナリオを組みました。
元々、「見積依頼」をされた購買意欲が高めだった見込み客であることから、その配信されたメールのコンテンツをクリックし関心事を把握できたならば、インサイドセールス(この企業では、インバウンドも対応するコールセンターの方々)にパスをして、電話でニーズを掘り下げて営業に繋げる活動をしています。
また、そもそも購買意欲の高かった方で、メールクリックや閲覧ページの把握までできている状態の見込み客ですから、その見込み客に対するインサイドセールスのフォロー状況やその後の商談の掘り起こし状況をレポート化して、常に朝会やチームミーティングで成果や状況を確認し合うオペレーションにしていることも、実は成果を出している秘訣です。
6.ABM
ABMですから、自社のCRMやデータベースにあるターゲットへのアプローチや、決めたターゲットに対するマーケティング施策を実行できることが理想ですが、現実的にターゲット企業のコンタクト情報を保持していない等により施策を実施することが難しい、もしくは情報のボリュームが足りないということがあるかと思います。
ただし、ターゲットとしたい企業(アカウント)を決め、ABMのターゲットアカウントとして明確にすることは非常に重要です。もちろん、明確に「●●株式会社」などと企業名を挙げられるのであれば、その企業群を特定して施策を考えていけば良いかもしれませんが、それも難しい中で、MAだからこそできるABM施策をご紹介します。
ぜひ取り組んでいただきたいシナリオは、通常のe-bookダウンロードやリスティング広告などのWebコンバージョンを取得する施策をしつつ、フォーム通過の際にABMターゲットかを判別するトリガーを仕掛けたものです。
例えば、業界別や規模別や役割(役職)別などでWebサイト上のコンテンツを振り分ける導線を組み、その顧客が歩む導線によってABMのターゲット層に近い見込み客だと仮定します。そしてたどり着くフォームは、それぞれ必ず切り分けたフォームを設置し、通過するフォームによってABMターゲットと一旦特定します。もしくは、フォームの記載項目の中にターゲットであることを特定するようなものを入れる、という方法もありますが、項目数が多くなることでコンバージョン率を落とす可能性もありますので考慮は必要です。また、フォームを通過するまではアノニマスの状態ですが、フォームを通過した後はフォーム通過前も含めた過程で閲覧していたコンテンツを把握することができるので、業界別や規模別や予算別などの、自ら選んで閲覧されていたコンテンツによってABMのターゲットであると仮定することもできます。
これは、MAが無いとできないことであり、MAを有効に活用し成果を出すための施策の一つでしょう。
Vol1/Vol2と2回に渡り、MAのシナリオ活用のヒントになる情報をお届けしました。Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)のEngagement Studioを使って、見込み客にアクションをおこしてもらうためのシナリオを作り、マーケティングと営業の連携で成果につなげていただきたいと思います。
これからMarketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)を使い始める方も、すでにEngagement Studioを使ってシナリオを組んでいる方も、営業・マーケティング活動を一歩先に進めるために、以下よりeBook「いまから始める マーケティングオートメーション定番シナリオ20選」をダウンロードし、皆様の業務にお役立てください。