Skip to Content

ガイド

AI戦略ガイド

CRM + AI + データを信頼の方程式に

※本記事は2023年9年7日に米国で公開された“AI Strategy GuideMake CRM + AI + Data Your Trusted Formula”の抄訳版です。本ポストの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。

生成AIは、顧客関係の構築を強力に支援し、ビジネスのあり方も変えつつあります。

このガイドは、AIの導入に着手したばかりの企業でも、イノベーションにすでに取り組んでいる企業でも、戦略を効果的に練り、AIのメリットを享受するための重要な質問に回答するためのガイドとして参考にしていただければ幸いです。

このハンドブックの情報は、SalesforceのAI、データ、CRMのエキスパートによって作成しています。Salesforceは従業員、顧客、パートナーに対して、テクノロジーを安全、倫理的、的確に開発して利用するために必要なツールを提供しています。

第1章

アプローチを計画する。

AIの導入戦略を策定する際は、全社で信頼性の重要性を認知させる必要があります。

第2章

テクノロジーの導入に備えて準備する

顧客管理(CRM)のデータと生成AIの組み合わせで、顧客体験の向上と迅速で正確な意思決定を支援し、業務のスマート化と効率化を図ります。

第3章

人材のスキルを高める。

チームメンバーのスキルセットの向上を支援することで、AI投資を最大化します。

第1章

アプローチを計画する。

生成AIの時代がやってきました。

AIは、これまでのあらゆるテクノロジーよりも速いスピードで浸透しています。
ユーザー数が1億人に達するまでの時間を見てみましょう。モバイルは16年。ワールドワイドウェブ(WWW)は7年。ソーシャルメディアは2.5年。そして、生成AIは2か月です。

今すぐ導入したくなる気持ちもわかりますが、ちょっと待ってください。

あらゆるビジネスリーダーは、AIの機能をフル活用し、効率化とビジネスの成長を達成したいと願っているでしょう。しかし、私たちリーダーには、AIの安全性、包括性、信頼性を確保するという重要な責任もあります。

まずは信頼性を確保しましょう。

生成AIはテキスト、音楽、画像はもちろん、コンピューターコードまで生成し、優れた顧客体験とビジネスメリットを生み出すことができます。しかし、現在のAIには信頼性に課題を抱えています。

CEOにとって、AIは最優先事項ですが、従業員の73%は生成AIが新たなリスクをもたらすと考えています。プライバシー、ハルシネーション(幻覚)、データ管理、バイアス、有害性などさまざまな懸念が挙げられています。

ブランドと顧客の間に良好な関係を築くための決め手と同じように、AIの成功を左右するのは信頼性です。生成AIを利用して、より充実した顧客体験の扉を開くには、信頼を高めて、倫理やセキュリティのリスクを払拭しなければなりません。

倫理的な利用のためのガイドラインを作成する。

生成AIがもたらす成果と判断は、効果的で正確さが保たれ、バイアスや有害性がないと示すことで、 初めてユーザーの信頼を勝ち取ることができます。倫理的なガードレールとガイダンスを設けて、想定される問題に事前に対処し、ビジネスにとって安全で信頼できる実践方法を確立することが重要です。

生成AIに対して適切なガードレールを設けることが不可欠です。この点は最近の調査からも明らかです。

*KPMG生成AI調査 2023年(英語)
**Salesforceの生成AIスナップショット調査シリーズ 2023年(英語)

ここで、御社のチームで信頼できる生成AIを開発する際の指針となる5つのガイドラインを見ていきましょう。

精度

  • 信頼できるデータでAIモデルをトレーニングし、検証可能な結果をもたらします。不確かな場合や明確な答えがない場合は、隠蔽せずオープンに伝えることが重要です。

安全性

  • バイアスと説明性を定期的に評価し、潜在的なリスクを解消します。AIのトレーニングに使用する際は、個人を特定できる情報(PII)データを保護します。

透明性

  • オープンソースのデータやユーザー提供のデータセット、さらに倫理的なソースを利用することで、データ使用に関する同意を確実に取り付けます。AIを利用した結果を提示する際は、AIが生成した結果であることを必ず明記します。

能力開発

  • AIは、アシスタントとしての用途が最も適しています。潜在的なリスクや誤った結果を減らすために、人間によるチェックをプロセスに組み込むことが重要です。結果にアクセスできる状態を確保し、コンテンツクリエイターを尊重しましょう。

サステナビリティ

  • 質の高い模範的なトレーニングデータを優先することで、モデルを適切なサイズにとどめます。その結果、演算に必要なエネルギーを節約して、カーボンフットプリントを低減できます。

データを安全に保つための信頼できる基準を確立

サードパーティの生成AIモデルによる生産性の向上は魅力的ですが、こうしたモデルはこれまでと異なる方法でデータを処理する点に注意する必要があります。

通常、データはデータベース、ドキュメント、ファイルに保存され、その保存場所によってアクセス権を指定できます。

しかし、生成AIが利用する大規模言語モデルはデータを保存せず、学習します。学習が主体となる環境では、従来と同じタイプのアクセス制御を利用できません。ユーザーがプロンプトに入力したデータは、モデルが学習し、出力の一部になるからです。

以下の6つの信頼性の基準により、致命的なビジネス問題を防ぎ、あらゆるチーム、ベンダー、パートナーに適用できる明確なガードレールを確立しましょう。

安全なデータ取得と動的なグラウンディング

  • 生成プロンプトで取得したデータの許可レベルを保持し、アクセス権限のある情報と出力のみをユーザーに提示するようにします。
  • 特定のユースケースについてモデルの「基礎学習(グラウンディング)」を進めて、生成される出力の品質と精度を確保します。つまり、事実にもとづく情報や、社内データベース内のナレッジ記事など、検証済みのソースから取得した情報を組み込んだプロンプトを作成する必要があります。

データマスキング 

  • プロンプトで共有される個人を特定できる情報(PII)をマスクすることで、実際のデータを外部ソースやモデルにさらすことなく、データセットを利用して質の高い出力を生成できます。

プロンプト防御

  • プロンプト防御ガードレールにより、ハッカーや有害な出力を防ぎます。たとえば、「データや根拠のないコンテンツまたは回答を生成しない」や「エラーが発生したり、応答の妥当性が不確かな場合は、わからないと答える」といったプロンプト指示が含まれます。

有害性の検知

  • 有害なコンテンツ(不正、有害、暴力的な性質のコンテンツなど)を検知するために最適化された別の大規模言語モデルを介して、サードパーティモデルから出力を行うことで、実際に使用される前にフラグで警告できます。

ゼロデータリテンション

  • 外部AIモデルでセキュリティ制御とゼロデータリテンションポリシー契約を確立し、プロンプトと出力を確実に消去して、保存されるのを防ぎます。

監査

  • 監査証跡を確保することで、チームはコードやソーシングを検証してモデルを継続的に改良し、現在と今後の法的および倫理的な基準を確実に遵守できます。

信頼できる生成AIの動画をご覧ください。

生成AIにおける信頼構築のためのチェックリスト

第2章

テクノロジーの導入に備えて準備する

顧客を中心に据えてAIのユースケースを定義する 

AIには、営業からサービス、マーケティング、コマースまで、ユーザー企業のあらゆる部署の業務を刷新できる可能性があります。顧客の行動を予測し、顧客満足度を理解し、よりパーソナライズされた体験を構築できます。    

予測AIと生成AIをワークフローに適切に組み込むことで、ビジネスインサイトなどの豊富な情報にもとづく意思決定が可能になり、自然な言語でコンテンツを作成できます。

あらゆる部署で現在の運営状況を監査することで、予測AIおよび生成AIによる最適化でメリットを得られるタスクやプロセスが明らかになります。

AIによって実践的なインサイトが得られ、意思決定が改善され、顧客体験が強化され、コストを削減できる箇所を特定することで、テクノロジーを戦略的なビジネス目標と一致させ、顧客の価値を高めることができます。モデルを継続的に改良し、パフォーマンスを改善して、さらに豊富な情報から判断を下すことができます。

Einstein はなぜ「ビジネスに最良のAI」と呼ばれているのか?

生成AI時代が本格化する中、幾多のAIが登場しています。その中でSalesforce の AI である 「Einstein 」は「ビジネスに最良のAI」を謳っています。その理由を詳説します。

Salesforce の AI 「Einstein (アインシュタイン) 」ってなんだ?

部署ごとに一般的なユースケースを確認する

データやCRMで生成AIをトレーニングすることで、顧客体験の向上や迅速で的確な意思決定を支援し、生産性と効率を高めることができます。その具体的な効果について職種ごとに主な例をご説明します。

営業で速やかに成約に導く
  • 機会の優先順位付け
  • 次の最善のアクションの特定
  • パーソナライズされたコミュニケーションの生成
カスタマーサービスの合理化を図る
  • 関連性の深い回答の生成
  • チャットボットやバーチャルアシスタントによる問い合わせへの対応
  • 効率とコスト効果の向上
マーケティングオファーをパーソナライズする
  • 対象となる視聴者の特定
  • キャンペーンオファーの最適化
  • より魅力的なコンテンツの作成
コマースのコンバージョン率を高める
  • パーソナライズされた推奨
  • 購入後の業務の強化
  • 不正行為の検知の改善
ITチームがスピーディに展開できるように支援する
  • パフォーマンスと運営に関するインサイトの提供
  • データにもとづく意思決定
  • AI生成コードの活用

AIを導入し、すべてのチームで業務のスマート化を図りましょう

企業が持つ顧客データ、アナリティクス、自動化とリアルタイムにつながることで、ビジネスに使えるAIが生まれます。

価値の高いタスクに焦点を絞る

AIによる変革の次のステップを検討する際は、チームを関与させることが重要です。チームメンバーの多くは、自分の今後の仕事について大きな不安を抱えています。

しかし、AIは、日常の単調な作業から従業員を開放する効果があります。従業員は空いた時間でよりクリエイティブな作業に取り組み、影響の大きいビジネス領域に注力できます。 生成AIで複雑なタスクを補強し、時間のかかる手作業を自動化することで、業務をスマート化できる機会が広がります。 

このエクササイズを利用して、チームとともに最適な自動化と補強の機会を明らかにしましょう。

データ環境の準備を進める

あらゆるAIプロジェクトは、まずデータプロジェクトとして開始すべきです。データが分散された環境では、データを活用できません。生成AIが持つメリットを享受できないこともあります。

第一歩として重要なのは、データを接続し、整理して、調和させることです。データ環境を整えることで、生成AIを活用して顧客のニーズを理解し、そのニーズを満たすことができます。

顧客のデータを接続

以下の質問をして、異なるソースからデータを一元化する方法を判断しましょう。

ホスティング:現時点でデータはどちらでホストされていますか?複数のクラウドですか? 複数の組織ですか? 

データレジデンシー:どのようなデータレジデンシーをサポートする必要がありますか? つまり、遵守すべき国の要件と規制要件は?  

データ構造:データは、製品インベントリや営業商談などのように構造化されていますか? あるいは、PDFファイルやチャットテキストのように非構造化データですか?

リアルタイム処理と一括処理:リアルタイムで更新してストリーミングする必要があるデータソースは?

  • 取引データ: 顧客およびビジネス取引を取得するデータ(日付、時刻、名前など)。このデータは定期的に更新する必要があり、商談記録、注文状況、カスタマーサービスケースなどのサンプルが含まれます。
  • エンゲージメントデータ:Webページの閲覧、デバイスでのやり取り、経済的および環境的データなど、イベントの発生時点を記録したデータ。最新のインタラクションとパーソナライズを構築するために、このデータはリアルタイムで取得することが重要です。

データプラットフォームでは、任意のソースから取得した膨大な量のデータを統合し、フォーマットを標準化して、一貫性と整合性を確保できます。

すべてのデータを1か所で運用することはできないため、共有構造(データレイクやウェアハウスなど)を確立し、異なる部署がデータにアクセスして利用できる体制を整える必要があります。

機密情報を保護するために、アクセス制御、データプライバシー、セキュリティ対策などの適切なガバナンスを組み込む必要があります。

顧客データモデルにマッピングし、顧客ID解決を実行します。

データを接続できたら、次のステップとして、データを顧客データモデルと関連付けながら整理・調和させます。顧客管理(CRM)システムを利用して、顧客データの全体像を得ることが重要です。 

CRMでチームを統一していない場合は、全体像を把握できず、モデルから有効な結果を得られません。 

AIを利用して顧客ID識別用の照合ルールセットを作成することで、データをCRMで調和できます。

会社全体のデータを統合し、生成AIを組み込むことで、CRMは統一された顧客プロファイルを作成するための中心的なハブになり、すべてのチームがアクセスできる環境になります。

テクノロジーの準備体制に関するチェックリスト: 

  • データ指標、顧客価値を提供するための原則、AIを組み込むためのユースケースを定義し、全社で足並みを揃える。 
  • データ環境を接続し、顧客プロファイルと単一の信頼できる情報源でリアルタイムの意思決定と顧客体験を改善する。
  • パーソナライズを通じて顧客価値を高める方法を明らかにする。 
  • 自動化と補強により、生産性を高める方法を明らかにする。
  • 明確なガイドラインに沿ってAIをプロセスと製品に統合し、チームの能力を高める

第3章

人材のスキルを高める。

AIに対応できるワークフォースを確保

テクノロジーは急速に変化しています。そのスピードに遅れないように、従業員に対するトレーニングも絶えず進化しなければなりません。

約3分の2の従業員は、生成AIを仕事で利用しているか、利用する予定があります(英語)が、テクノロジーの導入を予定している従業員の約61%は、信頼できるデータソースの利用方法や機密データのセキュリティを保つ方法を把握していません。

AIに関する不安を取り除き、AIで何ができて何ができないのか全員に理解してもらうことで、より価値の高いユースケースとなり、ビジネス分野とテクノロジー分野の関係者がともに連携してイノベーションを進めることができます。

Andy Moore博士
最高データ責任者、Bentley Motors

従業員が習得すべき7つのスキルセットをご紹介します。

適応性と継続的な学習

  • 変化に対するオープン性、適応性、キャリア全体で継続する学習意欲は、従業員がAIの進化に遅れず対応するための基盤になります。

データリテラシー

  • データ収集、準備、調査、可視化、データ倫理とプライバシーの理解に関するスキルを高めることで、拡大するデータリテラシーに投資します。その後、意思決定とビジネスプロセスにおけるデータの優先順位を見極めて、ビジネス成果と一致させます。

ドメインの知識

  • ヘルスケア、金融、マーケティング、製造業など、AIを適用する業界やドメインの課題や懸案事項を把握します。

コミュニケーションとコラボレーション

  • リーダーには、共通の組織目標とともに、AIテクノロジーがチーム全体でどのように機能するのか明確に伝えるパワフルなコミュニケーションスキルが求められます。

プロンプトの記述

  • 質の高いAI出力を得るためのプロンプトの記述方法を学びます。

問題解決と分析的思考

  • 生成AIは、批判的な思考、試行錯誤の姿勢、反復、効果的な問題解決スキルを巧みに組み合わせています。

技術的なスキル

  • プログラミングスキル(Python、Rなど)、データ分析、統計、機械学習、深層学習、自然言語処理(NLP)の能力を高めます。

Salesforceの無料オンライン学習プラットフォーム、Trailheadでは、学習しやすいモジュールまたは「トレイル」を提供し、チームが生成AIの導入に必要なスキルを獲得できるように支援します。データ分析や機械学習向けのトレイルとともに、新たなトピックも常に追加しています。

また、「Ask More of AI」ニュースレター(英語)とともに、AI開発の最新ニュースもお届けします。

人材の準備状況に関するチェックリスト:

  • ワークフォースに必要なスキルを明らかにし、優先順位を見極める。
  • 従業員がトレーニングを受ける時間と場所を設定する。 
  • ワークフォースに継続的なトレーニングを実施し、生成AIの進化に合わせて新たなスキルを習得できるようにする。
  • Salesforceの無料オンライン学習プラットフォーム、Trailheadで詳細を確認する。

No.1 CRMの動画をご覧ください

Salesforceで実現できる様々なデジタル変革の姿を、ぜひご覧ください。