ガイド
AI戦略ガイド
CRM + AI + データを信頼の方程式に
※本記事は2023年9年7日に米国で公開された“AI Strategy GuideMake CRM + AI + Data Your Trusted Formula”の抄訳版です。本ポストの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。
生成AIは、顧客関係の構築を強力に支援し、ビジネスのあり方も変えつつあります。
このガイドは、AIの導入に着手したばかりの企業でも、イノベーションにすでに取り組んでいる企業でも、戦略を効果的に練り、AIのメリットを享受するための重要な質問に回答するためのガイドとして参考にしていただければ幸いです。
このハンドブックの情報は、SalesforceのAI、データ、CRMのエキスパートによって作成しています。Salesforceは従業員、顧客、パートナーに対して、テクノロジーを安全、倫理的、的確に開発して利用するために必要なツールを提供しています。
第1章
アプローチを計画する。
生成AIの時代がやってきました。
AIは、これまでのあらゆるテクノロジーよりも速いスピードで浸透しています。
今すぐ導入したくなる気持ちもわかりますが、ちょっと待ってください。
あらゆるビジネスリーダーは、AIの機能をフル活用し、効率化とビジネスの成長を達成したいと願っているでしょう。しかし、私たちリーダーには、AIの安全性、包括性、信頼性を確保するという重要な責任もあります。
まずは信頼性を確保しましょう。
生成AIはテキスト、音楽、画像はもちろん、コンピューターコードまで生成し、優れた顧客体験とビジネスメリットを生み出すことができます。しかし、現在のAIには信頼性に課題を抱えています。
CEOにとって、AIは最優先事項ですが、従業員の73%は生成AIが新たなリスクをもたらすと考えています。プライバシー、ハルシネーション(幻覚)、データ管理、バイアス、有害性などさまざまな懸念が挙げられています。
ブランドと顧客の間に良好な関係を築くための決め手と同じように、AIの成功を左右するのは信頼性です。生成AIを利用して、より充実した顧客体験の扉を開くには、信頼を高めて、倫理やセキュリティのリスクを払拭しなければなりません。
倫理的な利用のためのガイドラインを作成する。
生成AIがもたらす成果と判断は、効果的で正確さが保たれ、バイアスや有害性がないと示すことで、 初めてユーザーの信頼を勝ち取ることができます。倫理的なガードレールとガイダンスを設けて、想定される問題に事前に対処し、ビジネスにとって安全で信頼できる実践方法を確立することが重要です。
生成AIに対して適切なガードレールを設けることが不可欠です。この点は最近の調査からも明らかです。
*KPMG生成AI調査 2023年(英語)
**Salesforceの生成AIスナップショット調査シリーズ 2023年(英語)
ここで、御社のチームで信頼できる生成AIを開発する際の指針となる5つのガイドラインを見ていきましょう。
データを安全に保つための信頼できる基準を確立
サードパーティの生成AIモデルによる生産性の向上は魅力的ですが、こうしたモデルはこれまでと異なる方法でデータを処理する点に注意する必要があります。
通常、データはデータベース、ドキュメント、ファイルに保存され、その保存場所によってアクセス権を指定できます。
しかし、生成AIが利用する大規模言語モデルはデータを保存せず、学習します。学習が主体となる環境では、従来と同じタイプのアクセス制御を利用できません。ユーザーがプロンプトに入力したデータは、モデルが学習し、出力の一部になるからです。
以下の6つの信頼性の基準により、致命的なビジネス問題を防ぎ、あらゆるチーム、ベンダー、パートナーに適用できる明確なガードレールを確立しましょう。
信頼できる生成AIの動画をご覧ください。
生成AIにおける信頼構築のためのチェックリスト
- 倫理的な原則とガイドラインを定義して遵守する。
- セキュリティと購入ガイドラインを更新してデータマスキングやデータリテンションなどの信頼性の基準を組み込み、データの安全性を保つ。
- 幅広いエキスパートチームを編成してリスクレビューを統括し、ツールを利用してバイアスを検知する。
- 会社全体で教育を実施してバイアスを特定し、リスクを軽減する。
- 顧客の課題となる部分や成長の可能性に対する理解を示し、効果的なデータガバナンスを導入し、モデルの入力、出力、潜在的なバイアスについて透明性をもたらすことで、信頼を築く。
第2章
テクノロジーの導入に備えて準備する
顧客を中心に据えてAIのユースケースを定義する
AIには、営業からサービス、マーケティング、コマースまで、ユーザー企業のあらゆる部署の業務を刷新できる可能性があります。顧客の行動を予測し、顧客満足度を理解し、よりパーソナライズされた体験を構築できます。
予測AIと生成AIをワークフローに適切に組み込むことで、ビジネスインサイトなどの豊富な情報にもとづく意思決定が可能になり、自然な言語でコンテンツを作成できます。
あらゆる部署で現在の運営状況を監査することで、予測AIおよび生成AIによる最適化でメリットを得られるタスクやプロセスが明らかになります。
AIによって実践的なインサイトが得られ、意思決定が改善され、顧客体験が強化され、コストを削減できる箇所を特定することで、テクノロジーを戦略的なビジネス目標と一致させ、顧客の価値を高めることができます。モデルを継続的に改良し、パフォーマンスを改善して、さらに豊富な情報から判断を下すことができます。
Einstein はなぜ「ビジネスに最良のAI」と呼ばれているのか?
生成AI時代が本格化する中、幾多のAIが登場しています。その中でSalesforce の AI である 「Einstein 」は「ビジネスに最良のAI」を謳っています。その理由を詳説します。
部署ごとに一般的なユースケースを確認する
データやCRMで生成AIをトレーニングすることで、顧客体験の向上や迅速で的確な意思決定を支援し、生産性と効率を高めることができます。その具体的な効果について職種ごとに主な例をご説明します。
営業で速やかに成約に導く
- 機会の優先順位付け
- 次の最善のアクションの特定
- パーソナライズされたコミュニケーションの生成
カスタマーサービスの合理化を図る
- 関連性の深い回答の生成
- チャットボットやバーチャルアシスタントによる問い合わせへの対応
- 効率とコスト効果の向上
マーケティングオファーをパーソナライズする
- 対象となる視聴者の特定
- キャンペーンオファーの最適化
- より魅力的なコンテンツの作成
コマースのコンバージョン率を高める
- パーソナライズされた推奨
- 購入後の業務の強化
- 不正行為の検知の改善
ITチームがスピーディに展開できるように支援する
- パフォーマンスと運営に関するインサイトの提供
- データにもとづく意思決定
- AI生成コードの活用
AIを導入し、すべてのチームで業務のスマート化を図りましょう
企業が持つ顧客データ、アナリティクス、自動化とリアルタイムにつながることで、ビジネスに使えるAIが生まれます。
価値の高いタスクに焦点を絞る
AIによる変革の次のステップを検討する際は、チームを関与させることが重要です。チームメンバーの多くは、自分の今後の仕事について大きな不安を抱えています。
しかし、AIは、日常の単調な作業から従業員を開放する効果があります。従業員は空いた時間でよりクリエイティブな作業に取り組み、影響の大きいビジネス領域に注力できます。 生成AIで複雑なタスクを補強し、時間のかかる手作業を自動化することで、業務をスマート化できる機会が広がります。
このエクササイズを利用して、チームとともに最適な自動化と補強の機会を明らかにしましょう。
データ環境の準備を進める
あらゆるAIプロジェクトは、まずデータプロジェクトとして開始すべきです。データが分散された環境では、データを活用できません。生成AIが持つメリットを享受できないこともあります。
第一歩として重要なのは、データを接続し、整理して、調和させることです。データ環境を整えることで、生成AIを活用して顧客のニーズを理解し、そのニーズを満たすことができます。
顧客のデータを接続
以下の質問をして、異なるソースからデータを一元化する方法を判断しましょう。
ホスティング:現時点でデータはどちらでホストされていますか?複数のクラウドですか? 複数の組織ですか?
データレジデンシー:どのようなデータレジデンシーをサポートする必要がありますか? つまり、遵守すべき国の要件と規制要件は?
データ構造:データは、製品インベントリや営業商談などのように構造化されていますか? あるいは、PDFファイルやチャットテキストのように非構造化データですか?
リアルタイム処理と一括処理:リアルタイムで更新してストリーミングする必要があるデータソースは?
- 取引データ: 顧客およびビジネス取引を取得するデータ(日付、時刻、名前など)。このデータは定期的に更新する必要があり、商談記録、注文状況、カスタマーサービスケースなどのサンプルが含まれます。
- エンゲージメントデータ:Webページの閲覧、デバイスでのやり取り、経済的および環境的データなど、イベントの発生時点を記録したデータ。最新のインタラクションとパーソナライズを構築するために、このデータはリアルタイムで取得することが重要です。
データプラットフォームでは、任意のソースから取得した膨大な量のデータを統合し、フォーマットを標準化して、一貫性と整合性を確保できます。
すべてのデータを1か所で運用することはできないため、共有構造(データレイクやウェアハウスなど)を確立し、異なる部署がデータにアクセスして利用できる体制を整える必要があります。
機密情報を保護するために、アクセス制御、データプライバシー、セキュリティ対策などの適切なガバナンスを組み込む必要があります。
顧客データモデルにマッピングし、顧客ID解決を実行します。
データを接続できたら、次のステップとして、データを顧客データモデルと関連付けながら整理・調和させます。顧客管理(CRM)システムを利用して、顧客データの全体像を得ることが重要です。
CRMでチームを統一していない場合は、全体像を把握できず、モデルから有効な結果を得られません。
AIを利用して顧客ID識別用の照合ルールセットを作成することで、データをCRMで調和できます。
会社全体のデータを統合し、生成AIを組み込むことで、CRMは統一された顧客プロファイルを作成するための中心的なハブになり、すべてのチームがアクセスできる環境になります。
第3章
人材のスキルを高める。
AIに対応できるワークフォースを確保
テクノロジーは急速に変化しています。そのスピードに遅れないように、従業員に対するトレーニングも絶えず進化しなければなりません。
約3分の2の従業員は、生成AIを仕事で利用しているか、利用する予定があります(英語)が、テクノロジーの導入を予定している従業員の約61%は、信頼できるデータソースの利用方法や機密データのセキュリティを保つ方法を把握していません。
従業員が習得すべき7つのスキルセットをご紹介します。
Salesforceの無料オンライン学習プラットフォーム、Trailheadでは、学習しやすいモジュールまたは「トレイル」を提供し、チームが生成AIの導入に必要なスキルを獲得できるように支援します。データ分析や機械学習向けのトレイルとともに、新たなトピックも常に追加しています。
また、「Ask More of AI」ニュースレター(英語)とともに、AI開発の最新ニュースもお届けします。
人材の準備状況に関するチェックリスト:
- ワークフォースに必要なスキルを明らかにし、優先順位を見極める。
- 従業員がトレーニングを受ける時間と場所を設定する。
- ワークフォースに継続的なトレーニングを実施し、生成AIの進化に合わせて新たなスキルを習得できるようにする。
- Salesforceの無料オンライン学習プラットフォーム、Trailheadで詳細を確認する。
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