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ロイヤリティプログラムで創る顧客とのエンゲージメント術

ロイヤリティプログラムで創る顧客とのエンゲージメント術

顧客との長期的な信頼関係構築に有効なロイヤリティプログラム。AIの浸透によってますます高度化が必要ですが、その理想像と実現に向けたステップを紹介します。

セールスフォースの
顧客ロイヤルティ管理

[ Loyalty Management ]
CRMに組み込まれたAI予測機能とロイヤルティ管理ツールを活用して、お客様との関係を深め、顧客ロイヤルティへとつなげましょう。

セールスフォースの 顧客ロイヤルティ管理

顧客が求めているのは、ポイントではなく体験

ロイヤルティプログラムの歴史は古く(英語)、すでに古代エジプトの時代には、神殿を訪れるとビールの引換札がもらえる制度がありました。1850年代には、顧客が集めたスタンプを景品に交換する重曹メーカーの記録があります。パンチカード式のクーポンも、1890年頃にはすでに普及しています。

しかし、時代は変わりました。今の消費者は、無料のビール券くらいで心を動かされることはなく、景品のために何かを頑張って貯めようとも思いません。

このような時代に、小売企業が顧客のロイヤルティを獲得するにはどうしたらいいのでしょうか?成功するロイヤルティプログラムは、企業とお客様との間に感情的なつながりを生み出します。つまり、顧客は企業から存在を認識されている、意見を聞いてもらえる、感謝されていると感じられるのです。

企業やブランドに愛着を感じている人は、他社が同じような特典や低価格の商品を提供しても、簡単には乗り換えません。こうした結び付きのことを心理的ロイヤルティ(英語)と言います。ブランドを自分に近しいものと感じ、信頼し、離れがたくなることを指します。

ただ最近では、それだけでは足りなくなってきています。Salesforceの調査によると、ブランドに感情的なつながりを感じる消費者の割合は、54%まで落ちています(2022年は62%)。経済的な理由から、価格だけを見て購入を決めることが増えた結果と思われます。

製品を購入するブランドに対して感情的なつながりを感じる顧客は54%で、2022年の62%から減少が続く(『コネクテッドカスタマーの最新事情』、第6版)

顧客の気持ちを取り戻す秘策はないものでしょうか。今の消費者が好むのは、いつでもどこでも、自分だけのための顧客体験を提供してくれるブランドです。

Amazon、Netflix、Target、Starbucks、Spotifyといったブランドは、パーソナライズされた商品やサービスと、「先回りのコミュニケーション」を当たり前にしました。こうした体験を支えているのはリアルタイムの顧客データとAIですが、パーソナライズされた体験は、消費者の利便性を高めるだけでなく、企業側から見ても顧客の獲得や維持、生涯価値の向上にも役立ちます。

では、なぜ今でも多くのロイヤルティプログラムが昔ながらのポイント制度を主軸とし、パーソナライズに目を向けていないのでしょうか。それには、かつてロイヤルティプログラムの立ち上げに膨大な時間と労力をかけていたことが関係しています。

多額の費用を投じてポイント方式のロイヤルティプログラムを構築し、会員を獲得した後に、要件や報奨を廃止、あるいは変更して枠組みそのものを作り直すのは、たいへんな大仕事です。

小売業界のロイヤルティプログラムの54%が、今もなおポイントベースの特典を採用しています。購入時ポイントだけでない工夫をしているプログラムでも、ロイヤルティを高めるうえで重要な真のパーソナライゼーションと親密な関係作りについては、まだ十分な対応ができていません。

そのため、多くの企業がロイヤルティプログラムの刷新に取り組んでいます。目指しているのは、柔軟な拡張や個別対応ができ、プログラムへの参加方法や報奨の獲得・ポイント交換の自由度が高く、長期的な信頼関係の構築につながるものです。こうしたプログラムが生み出す帰属意識や特別感によって、ショッピング体験に付加価値が生まれ、競合他社との差別化ができます。

カスタマーエンゲージメントの未来のトレンドが明らかに

[ コネクテッドカスタマーの最新事情 ]
世界各国の一般消費者と法人顧客14,300人を対象に調査を実施しました。

消費者がロイヤルティプログラムに求めるもの

今の消費者は誠実なつながりと自分だけの体験を求めており、それが得られるなら新しいやり方も受け入れます。彼らが期待しているのは、ポイントや購入額に応じた報奨ではなく、人を中心とする体験型のやり取りです。

たとえば、限定イベントへの招待、ブランドの限定コンテンツの購読、誕生日のスペシャルギフト、メイクアップやスタイリングの会員向け無料サービスなどが考えられます。消費者にとっては、少しばかりの割引よりも思い出が手に入ることのほうが嬉しいわけです。

ロイヤルティプログラムで大切なのは、さまざまな顧客接点で思いもよらない特典を提供し、関係を深めることです。例をいくつか挙げてみましょう。

  • コーヒーチェーン: 常連客にドリンクの「シークレットメニュー」や、誕生日の無料ドリンクサービス、特定の日のサプライズオファーを提供する。
  • ホテルチェーン: 会員ポイントと引き換えにアーリーチェックイン、周辺観光ガイド、グルメ体験、客室内でのスパトリートメントなどの限定特典を提供する。
  • デパート: 無料のお直しやギフトラッピング、貸切営業などのサービスを提供する。オンラインショップならば、無料配送オプションや、新作やセール品の先行販売などが考えられる。

体験型の報奨を用意する際には、顧客データから把握した会員の好みを反映させ、会員が一番うれしいものを自分で選べるようにします。顧客が何を望んでいるかを常に念頭に置きながら、特典のアイデアを練る必要があります。

顧客のニーズを先取りする

64%の消費者は、企業に一人ひとりのニーズを理解してほしいと考えていますが、現実にはそうなっておらず、大多数の人が「企業は顧客をただの数字扱いしている」と感じています。この状況を変える手段として期待されるのが、顧客ごとに細やかな対応をするロイヤルティプログラムです。

報奨が嫌いな人はいませんが、ただプログラムを提供するだけでは意味がありません。登録者を増やすだけでは不十分です。プログラムを通じて、お客様と企業と接触機会を増やすことが目的なのです。

ロイヤルティプログラム会員の3分の2は、四半期に一度かそれ以下の頻度でしか報奨を償還していない(Salesforce Research、2021年)

Salesforceの調査では、ロイヤルティプログラム会員の3分の2近くが、四半期に一度かそれ以下の頻度でしか報奨を利用していないことがわかっています。主な原因は、特典プログラムのわかりにくさや使いにくさにあります。どのようなプログラムならもっと利用するかと消費者に質問したところ、「報奨が自動で適用される」(61%)、「報奨の状況が簡単にわかる」(51%)、「利用規約がシンプル」(41%)などの回答が寄せられました。

さらに、パーソナライズされた、わかりやすく価値のある報奨を提供することが重要です。顧客の購入履歴や、購入した場所と時間、誕生日、ライフスタイルなど、把握しているすべての情報を活用して、相手の興味・関心にあったオファーやメッセージを、最も必要とされているときに提供しなければなりません。

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購入以外の行動も報奨の対象にする

ロイヤルティの高い消費者は、購入以外の行動にも報奨を出してほしいと考えています。企業にとって重要なのは「その顧客がどれだけの金額を使ってくれたか」ですが、その周辺の行動も評価に含め、報奨の対象にするというやり方もあります。

調査によると、消費者は報奨をもらうためならアプリのダウンロード(64%)、来店(47%)、オンラインレビューの書き込み(46%)といった行動を進んですることがわかっています。また、24%の消費者は、報酬をもらえるならそのブランドについてのSNS投稿をする(英語)と回答しています。個人のSNSアカウントでブランドに好意的な投稿をしてくれる消費者は、商品やサービスの良さを広く伝える代弁者であり、ブランドの口コミを大きく後押しします。

消費者の70%は、特別な見返りがあるなら自分の誕生日の情報を喜んで提供する(『コネクテッドショッパー最新動向』、第5版)

情報提供に見合う報奨を提示する

人は誰しも特別な扱いを求めています。消費者の大半は、特別な見返りがあるなら自分の誕生日(70%)、電話番号(52%)、服のサイズ(52%)といった個人情報を喜んで提供します。これは重要なポイントです。ここをうまく利用すれば、消費者からゼロパーティデータを直接集められるのです。

まず、それと引き換えなら、自分のデータを提供してもよいと思えるような報奨を用意します。次に、プログラムの特典をわかりやすく整理し、入会手続きをする店員がプログラムの内容を簡単に説明できるようにします。最初から詳しい情報を聞き出そうとするのは、禁物です。新規登録時には名前とメールアドレスなど、最低限の情報だけを提供してもらい、その後のやり取りを通じて少しずつデータを集めるようにします。

顧客に負担をかけない

細かい字の説明を読んだり、情報を探し回ったりするのが好きな人はいません。会員登録に時間がかかりすぎたり、報奨を自分で計算する必要があったりすると、利用者は離れていきます。特別感を保ちながら使いやすさを実現するには、AIを活用して、さまざまな顧客接点での活動を把握することが重要です。

相手の活動をリアルタイムで把握していれば、オンライン決済ですぐに報奨を利用可能にしたり、店舗レジにアラートを表示したりできます。また、最近利用の少ない会員に対して、あらためて関心を呼び起こすための限定オファーを提供することも可能です。

ロイヤルティプログラムとは?種類やメリット・成功事例を解説
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使えるロイヤルティプログラムを実現する3つのステップ

ロイヤルティを育てる仕掛けをカスタマージャーニーに組み込めば、さまざまな接点を通じて顧客との関係を深めることができます。しかし、ロイヤルティプログラムの設計、実行、管理を困難にするのは、変動要素の多さです。顧客は商品の閲覧、問い合わせ、購入といった活動をする際には、電話、対面、モバイルアプリ、オンラインチャットなど平均8つのチャネルを利用します。

そこで役に立つのがAIです。ロイヤルティプログラムを構築する際には、予測AI(英語)を利用して顧客データを分析し、相手の好み、ニーズ、価値観にもとづいてセグメントを作成できます。

その後に生成AIを利用して、ブランド全体のデータからパターンやつながりを見つけ出し、プログラムに最適なフレームワークやオファー、報奨、コミュニケーションを特定します。AIを利用する一番の利点は、AIが特典と収益性のバランスを考慮し、企業とプログラム会員の双方が満足するオプションを提案してくれることです。

このようにしてデータ収集、レポート作成、コミュニケーションなどのプロセスを自動化すれば、プログラムの長期的な維持が簡単になり、社員にとってもプログラム会員にとっても負担が軽くなります。さらに、社内の顧客データとAI(英語)を使っているため、プログラムが古びることもありません。

生成AIは、過去に成果のあったプロモーションや報奨を踏まえて、新しいゲーム的要素や季節ごとのオファー、1回限りのオファー、限定のホリデープロモーションなどのアイデアを提案してくれます。

AIを活用したロイヤルティプログラムでどんな特典を実現しようかと考えるのはワクワクしますが、最初に決めておかなければならない点がいくつかあります。

①データ戦略を策定

一貫性のあるパーソナライズされたカスタマージャーニーは、顧客を満足させ、ロイヤルティの向上に寄与します。今の顧客が求めているのは、自分の興味関心に即した体験(英語)と、カスタマイズされたオファー、そして充実したサービス機能です。

このような体験を生み出すには、データの状態が良好であることが必須です。そのため、AIを活用したロイヤルティプログラムを構築する第一歩として、実効性のあるデータ戦略を策定する必要があります。

まず必要なのは、社内のすべての顧客データを連携させる(英語)ことです。データを一元化して顧客一人ひとりの統合プロファイルを作成し、その顧客がブランドをどのように利用しているかを全社員が把握できるようにします。

この顧客プロファイルを、ロイヤルティプログラムの継続的なやり取りを通じて収集されるゼロパーティデータとファーストパーティデータでさらに補強します。そうして得られたインサイトは、顧客への働きかけのパーソナライズ、オファーのカスタマイズ、カスタマージャーニーの質の向上に役立ちます。

顧客プロファイルのデータを全社にリアルタイムで共有すれば、すべての従業員が顧客の「今」の行動に対して適切なアクションを取れるようになります。これにより、もっと豊かで顧客のニーズに寄り添うショッピング体験を実現できるのです。

こうした機能は、顧客の目につかない業務の効率化にも役立ちます。たとえば、メール送信エンジン、デマンドサイドプラットフォーム、コンテンツ管理システムなどでリアルタイムのデータとAIを活用し、顧客のセグメンテーションやターゲティングの精度向上、不要な連絡の停止などを実現できます。この取り組みは、ロイヤルティプログラムの効率と費用対効果を高めることにつながります。

②信頼と透明性でロイヤルティを向上

ロイヤルティの土台は信頼です(英語)。企業はデータの安全確保(英語)に細心の注意を払い、データの用途を開示しなければなりません。ロイヤルティプログラムのパーソナライズにAIを利用する(英語)場合は、顧客データを社外に出さないことが重要です。顧客データは常に自社のシステム内で管理・保護し、一般利用に開かれたAIシステムには流出させないようにします。これはAI活用への懸念を払拭し、信頼性を確保するために絶対に必要なことです。

AIを導入するにあたって考慮すべきことは多々ありますが、安全と成功のために欠かせないポイントをいくつか挙げておきます。

  • 最適な出力結果を得るために、AIに質問の背景情報を理解させる。つまり、AIに投入する質問文(プロンプト)に分析させたいデータの種類、質、範囲を含める。
  • 顧客データを保護するために、プロンプトに含まれている個人情報と支払いデータを自動的に検出して削除する。
  • 処理が済んだら、AIの大規模言語モデルからプロンプトと出力結果の両方を必ず削除する。
  • AIを継続的にモニタリングし、有害な回答や提案を生み出す原因になり得る言葉(攻撃的、無礼、侮辱的、不愉快な表現)を特定して削除する。

消費者は、信頼を寄せる企業に自分のデータを進んで提供するだけでなく、継続的に利用し、より多くの商品を購入し、その企業を友人や家族に勧める傾向にあります。強力で透明性の高いデータ戦略としっかりしたAI戦略があれば、ロイヤルティをすべての中心に据えたビジネス展開が可能になります。

③テストと微調整でROIをすばやく達成

かつては、ブランド独自のロイヤルティプログラムを作るには膨大な費用と時間がかかり、いざ完成して公開しても機能が古くなっていることが少なくありませんでした。今の時代には、瞬時に行動し、すばやく方向転換し、常に進化し続けることが求められます。顧客の好みや経済状況の影響で消費行動や顧客の期待が変化したときに、それに合わせてプログラムを調整するには、直近のROIを確認(英語)できる仕組みが必要です。

AIを使えば、A/Bテストや多変量テストで新しい施策の効率や効果を測定し、必要に応じて見直しや微調整ができます。何が効果的で何が効果的でないかを早い段階で把握できるため、次のことが可能になります。

  • プログラムの最も人気のある機能を特定し、それが使える範囲を拡大する。
  • 利用されていない特典を廃止する。
  • 新規会員にとって重要な特典を見極め、既存顧客と新規顧客の両方に配慮した施策を展開する。
  • 顧客満足を高めながら収益性も追求する特典の組み合わせを特定する。

得意客との関係を長く続けるために

新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客の維持にかかるコストの5倍とされています。したがって、顧客をつなぎとめる有意義な体験を構築することは、非常に重要です。小売企業が成功を収めるには、信頼性の高い社内データとAIを有効に活用し、消費者の期待に応えるパーソナライズされたオファー、サービス、コミュニケーションを購入者ジャーニーのあらゆる接点で提供しなければなりません。

効果的なロイヤルティ施策を打てば、顧客との結び付きが強まり、売上も増えます。これは今の経済情勢において大きな強みになります。理想的なのは、顧客満足度の向上につながる、費用対効果の高い体験型の報奨を提供するロイヤルティプログラムです。顧客と企業にとって大切なものは何かをよく考えて、ロイヤルティプログラムの見直しを進めましょう。

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※本記事は米国で公開された “From Predictable to Personalized: Rethinking the Loyalty Experience” の抄訳版です。本ポストの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。

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