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セス・ゴーディンが語る、 マーケティングがいまこそ「重要」なワケ

セス・ゴーディンが語る、 マーケティングがいまこそ「重要」なワケ

マーケティングにおける第一人者として知られ、マーケティング関連の著述家としても有名なセス・ゴーディン氏が語る、今の時代に求められるマーケターとは?

セス・ゴーディン氏は、マーケティングにおける第一人者として知られ、マーケティング関連の著述家としても有名です。主な著作に「パーミションマーケティング―ブランドからパーミションへ」「バイラルマーケティング」(翔泳社)、「紫の牛を売れ!」(ダイヤモンド社)などがあります。

本内容は、Salesforce.comのSERIESPASSでのインタビュー内容を日本語で抄訳したものです。

マーケティングの歴史とインターネットの隆興

1960年代は、マーケティングとアドバタイジング(=広告を打つこと)は同じ意味であり、テレビでの広告を打てば打つほど商品が売れる時代でした。現在世の中には多くの有名ブランドがありますが、それらのブランドが有名になれたのは、優れていたからではなく、たくさんの人がテレビを買うことでテレビ広告の力が強くなったことが一番の原因でしょう。

しかし1990年代に入り、ケーブルテレビやインターネットが世の中に出だしてから、状況が一変します。顧客へのアプローチ方法は細分化され、これまでのテレビ広告のように、マスをお金で買うことはできなくなりました。今や顧客の前にある選択肢は無限大と言っても過言ではありません。ネットフリックスやiTunesで提供されている映画は、昔タワーレコードが店頭で扱っていた映画よりもはるかに多くの種類を扱っています。

特にメールをはじめとする技術は、マーケターからは歓喜の声で迎えられました。なぜならばメールを使えるようになるということは、自分自身でメディアを持つことと同義であるからです。インターネットの登場により、マーケターたちは個々人でより大きなパワーを持つようになったと言えるでしょう。そのため、今日のマーケターたちには、以前よりもはるかに思慮深く、また責任を持つべきだと考えています。

マーケターに求められる思慮深さと責任感

現在では、メールやソーシャルメディアなど様々な方法により、顧客に大量のメッセージを、信じられないほどの低コストで送付することが可能になりました。しかし、技術的に可能ということと、実施して効果が上がるかどうかは別問題であり、最も注目を集めた人が最も成果を上げるとは限りません。大切なのは、「注目」は「信頼」があって初めて効果が得られる、ということです。信頼と共にある注目は、顧客とのつながりを作り、最終的には取引が生まれます。

しかし信頼のない注目は、例えるなら川に毒物を垂れ流す工場と同じです。川に毒物を垂れ流すことで、すぐには自分に影響が降りかからないかも知れません。しかし、川の毒物は巡り巡って自分の体内に入り込み、影響を及ぼし始めます。それと同様に、顧客に無尽蔵にメッセージを送り続けることは、短期的に悪影響を及ぼすことはありませんが、長期的には送られてくるメッセージへの嫌悪感、信頼の低下、そしてブランドイメージの失墜につながる可能性も秘めています。

今やすべての人がメディアを持っています。多くの人々が、莫大なフォロワーやつながりをSNS上で作っており、もしかしたら彼らの発言はあるテレビ番組の影響力よりも大きいかもしれません。そんな時代だからこそ、自分の発信するメッセージにより一層の責任を持つことが求められています。

セールスとマーケティングの関係性

では情報が無料で際限なく拡散する時代において、セールスの仕事とはどのようなものなのでしょうか。私は、顧客が持つ不安を乗り越えさせることが、セールスの仕事だと思っています。

その意味を理解するためには、まずマーケターの仕事について知る必要があります。マーケターの仕事とは、「このような属性の人々は、このように行動する」という行動のモデルを作り、実際に行動させることにあります。Salesforceのようなシステムを用い、顧客のことをしっかり理解することができれば、後は行動モデルに沿って行動してもらうだけです。しかし人は、購入において様々なポイントにおいて不安に襲われます。例えば、私は適切なものを買っているのかどうか、という不安。商品の価値に対してお金を払いすぎているのではないかという不安。これらの不安が、最終的に顧客にYesと言わせるのを躊躇わせます。そしてセールスの仕事は、顧客を不安に立ち向かう支援をし、Yesと言わせることにあります。

しかし最近は、セールスとマーケティングとの境が曖昧になっている部分もあります。なぜならば、先ほどの話にも出たように、今やそれぞれの個々人がメディアを所有しているからです。セールスパーソンが、自身の持つメディアの影響力を使って、マーケター的な役割を演じることも不可能ではなくなりました。その際にも、注目のみを集めるのではなく、信頼が伴った注目を目指すべきという点に変わりはありません。顧客は、あなたの話だけを聞きたい訳ではなく、双方向のコミュニケーションから生まれる「私たち」の話がしたいのです。

セールスとマーケターが起こすべき「チェンジ」

今の時代に求められるセールスとマーケターとは、「チェンジ=変革」を起こすことができる人です。例えば、ハーレーダビッドソンは、収益の半分をロゴなどのライセンス使用料で稼ぎ出しています。元々はある特定の人々が乗るバイクを販売しているだけだったのが、今ではハーレーのロゴをタトゥーとして入れる人もいるくらい熱狂的なファンと、そこからの収益を生み出しています。これは優れたセールスとマーケターにより、バイクという「モノ」ではなく、ハーレーダビッドソンが演出する「経験」に価値を見出してもらうというチェンジを起こしたからこそなせる業でしょう。

しかしこのようなチェンジは、企業のサイズが大きくなるにつれ、難易度が高くなっていくことも事実です。企業のサイズが大きくなればなるほど、より安定的で、予測可能性が高い仕事の仕方が奨励されるようになります。つまり、チェンジを起こすことではなく、これまでうまくいってきたやり方で仕事をすることが求められるようになるのです。

そこでマーケターたちが思い出すべきことは、このような事態は顧客が求めていることではなく、自分の企業の中にいる人々が求めていることである、という点です。顧客は、自身が抱える欲求をより新しく、より良い方法で満たす製品を求めています。安定を求めているのは、他ならぬ自分の企業、自分の周り、自分自身です。

それぞれのマーケターたちに送るメッセージ

大学を卒業して、マーケターとしての一歩を踏み出したい人へ

一番大切なポイントは、会社を選ぶ際にどれだけ会社が成長をしているか、どんな製品を扱っているかではなく、良い上司に巡り合える会社を選ぶことです。マーケティングは、実践から学ぶのが一番です。実践し、失敗し、失敗から学び、良い方法を学んでいくのが一番の近道になります。それを温かくサポートしてくれる上司と出会える会社を選んでください。

もし会社の中でマーケティングの仕事につけなかったとしても、落胆する必要はありません。今は自分自身でメディアを作れる良い時代です。自分自身でメディアを立ち上げ、実践していくのに、ライセンスもお金も必要ありません。

マーケターとしてミドルのポジションで働く人へ

私のセミナーの中で最もよく聞かれる意見が、「セミナーで紹介された考えはどれも素晴らしいものだ。しかし自分の上司が実行させてくれないだろう」というものです。セミナーで得た新しいアイデアは、その企業にとっては新しいチャレンジであり、失敗するリスクをはらむものでもあります。そのため、新しいアイデアに上司が拒否反応を示すことは、ある意味で自然なことでしょう。

ミドルのあなたが、これからより大きく成長するためには、新たなチャレンジに対する責任を自分で背負ってください。通常、企業はあなたに責任を背負わせたいと考えています。あなたがその責任を背負う覚悟があれば、新しいことへのチャレンジがより実施しやすくなります。ぜひ責任を背負い込み、チャレンジしていってください。

CMO (Chief Marketing Officer)としてキャリアの終盤にいる人へ

CMOとしてキャリアの終盤に差し掛かっている人たちは、後進のために意味のあるものを残していくことで、最後のキャリアをとても有意義なものにできると思います。CMOのポジションにいる人たちは、その意思決定の権限の大きさにより、人々をリードできる立場にいます。適切に人々をリードすることで、昨日までの成功体験を打ち破り、不可能を可能にすることだってできるはずです。

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