今年第1四半期の小売データを分析する際、休暇明けの消費者の行動を見ると、興味深いことがいつも浮き彫りになります。新たな小売トレンドは何か。今年後半を予測する上で、前半の実績(英語)は何を教えてくれるのでしょうか。
今年第1四半期、ショッピングデータは予想外の展開を見せました。Salesforceは利下げを予想していましたが、インフレが続いている現在、その可能性はほとんどありません。
輸送コストやスケジュールに影響を与える世界的な物流問題に伴い、2022年と2023年のインフレ圧力は2024年も続く(英語)と思われます(2024年4月時点)。
今年第1四半期の購買指標のデータによると、買い物客は依然として慎重で(英語)、支出を控えており、2023年からの傾向に従うと、将来の大きな買い物に備えて貯蓄していると思われます。
小売業界のための年末商戦 傾向と対策
リアルタイムデータと AI で
長期的な顧客ロイヤルティを
築くための4つのアプローチ
数字で見る第1四半期のショッピング
世界のオンラインセールスは前年比2%増と緩やかな伸びを示し、オンライントラフィックと注文1件あたりの平均消費額はそれぞれ1%増となりました。しかし、トラフィックと消費額が増加したにもかかわらず世界の注文量は減少し、前年比2%減となりました。
米国では、オンライン売上高とトラフィックの伸びは四半期を通じて横ばいでしたが、注文量は急速に減少、消費者の注文数は前年比で3%減少しました。これは予想を上回るインフレ(英語)が原因と思われます。
消費者は、1年前と比べ購入量は減っているものの、商品に高額を支払っていることで支出は増えていることがわかります。
一方、ここ数四半期、世界のマーケットを支えてきた欧州は、今期売上高の伸びが鈍化し(前年比3%増)、主要3市場(イギリス・ドイツ・フランス)のうち、成長を経験したのはイギリスだけでした。この成長は、2023年に欧州全体が景気後退から脱却したため、英国市場が他の欧州諸国に遅れをとったことに起因すると思われます。
では、消費者は何を購入したのでしょうか?
小売データによると、オンライン売上が最も伸びたのは、健康・美容(12%増)とハンドバッグ全般(7%増)でした。一方、急減したのは、電子機器とアクセサリー(13%減)、玩具と学習用品(12%減)でした。これは、消費者が必需品以外への出費を減らし、購入する際には値下げ交渉をする傾向にあるという、ここ数年で広がりを見せている動向です。
これは、あなたのビジネスにとって何を意味するのでしょうか。Salesforceが明らかにした主なトレンドを見ていきましょう。
お得な瞬間に向けて貯蓄している
小売データによると、2023年と同様、消費者は財布の紐を締めています。世界のオンライン売上は緩やかに増加したものの、昨年の最終四半期と比較すると鈍化しました(前年比2%)。受注量の減少と価格の上昇がこうした結果につながりました。
また、米国の売上高は昨年第4四半期以降、赤字から脱却し前年比0%に回復したものの、2023年第1四半期の4%の伸びを大きく下回っています。米国での注文量は、買い物客が必需品以外への支出を控えたため、前年比で3%減少しました。
今、業界が経験している成長は、消費者の支払額が高いことによるものであり、購買量の増加によるものではありません。
消費者が必需品以外への支出を減らしている兆候のひとつが、高級品購入の減少です。第1四半期に売上が大幅に減少したものは、高級衣料品(2%減)とハンドバッグ(10%減)、玩具(12%減)や電子機器(12%減)でした。
その代わりに、消費者は健康・美容製品(12%増)のような必需品を求めています。また、一般的なハンドバッグの売上が7%増となったように、低価格の代替品を選択しています。
第1四半期の消費者行動は、2023年のホリデー商戦(英語)を想起させます。 消費者は、夏のプライムデーや新学期シーズン、年末の大セールやシーズンイベントのような魅力的な割引を辛抱強く待ちました。これが新常識になるのでしょうか。
ヒント:小売企業やブランドは、売上を促進するために、大きな買い物の瞬間に魅力的なお買い得商品を提供するプロモーションを計画する必要があります。さらに、ロイヤルティプログラムやパーソナライズされたレコメンデーションなど、年間を通じて消費者を惹きつける戦略に注力し、主要なショッピングイベント以外でもブランドの関連性を維持することが不可欠です。
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消費者はお気に入りのブランドに固執している
ここ数年で、消費者は価格などの理由でブランドを乗り換えてきましたが、最近ではリピート購入者は増え続けています。第1四半期の世界のリピーターのシェアは43%で、2022年から8%増加しました。これは、消費者のブランドロイヤルティが注目されるようになった2023年から続く傾向です。
その一因は、ここ数年のブランドのロイヤルティプログラムへの取り組みにあると言えます。米国人は、2022年の時点で16.6個のロイヤルティプログラムに平均で加入しています(英語)。Salesforceの小売データによると、最も人気のあるロイヤリティプログラムはポイントベースです。
そのため、第1四半期には、米国や英国、オーストラリア、ニュージーランドでのイースターの買い物客は、価格と商品在庫に次いで、ロイヤルティポイントの利用可否が購入を決める際の検討事項の1つであると回答しています。
ヒント:顧客獲得コストが依然として高く、マーケティング予算が絞られている中、引き続きロイヤルティ顧客の定着率を高め、顧客シェアを拡大することに注力し続けましょう。ロイヤリティプログラムは、顧客をリピーターにするための優れた方法ですが、サインアップ登録や特典の利用を迅速かつ簡単に行えるようにしましょう。
モバイルが再び主流に
今期、急成長を見せた分野のひとつが、モバイルデバイスによるショッピングです。Eコマースサイトで引き起こすモバイルデバイス(英語)によるトラフィックと注文数は、増加の一途をたどっています。
第1四半期の小売業界のデータによると、世界のモバイルのトラフィックと注文数はともに昨年より4%増加し、それぞれ78%と66%のシェアに達しました。米国では、モバイルトラフィックのシェアは75%、モバイルオーダーのシェアは64%に達し、それぞれ4%、5%増加しています。
しかし、モバイルファーストの消費者が最も多いのは新興市場です。アジア太平洋地域(APAC:オーストラリア・ニュージーランド・日本を除く)と中東・アフリカ地域(MEA)の消費者が、世界のモバイルショッピングをリードしています。
APACでは、モバイルトラフィックのシェアは85%に達し、モバイルオーダーのシェアは75%に達しました。MEAでは、モバイルトラフィックが85%、モバイルオーダーが73%でした。新興市場のモバイルファーストの消費者が今後もモバイル市場を牽引していくことが予想されます。
こうした成長の大部分は、モバイルウォレットの使用によって決済がよりスムーズになったことに起因しており、前年比46%増加しました。モバイル決済がより簡単になり、消費者がモバイルフレンドリーな支払い方法を安心して利用するにつれ、モバイルへの移行は前例のないスピードで進むと予想されます。
ヒント:消費者向けアプリは、モバイルファーストであるべきです。消費者が買い物のニーズに合わせて、以前にも増してTikTok、Shein、Temuを利用していることに注目してください。第1四半期のオーダーの約18%がAIの影響を受けており、売上増加を促進し続ける確固たる地位を築いています。つまり、ブランドや小売業者は、AIがモバイル画面上でどのように機能するか(英語)に重点を置き、モバイルユーザーエクスペリエンスを最適化する必要があるということです。
第1四半期の小売データから何が読み取れるか
インフレ率は月ごとに高騰し続け、金利低下の期待も和らぐ中、消費者が夏に向けて楽観的になることは予想できません(英語)。しかし、消費者のニーズと期待を理解し、忠実な顧客を継続的に取り込み、消費者が買い物をする場所を選ぶことで、消費者をリピーターにすることが可能になります。
参考
Salesforceのプラットフォームデータを活用した購買指標は、ショッピングストーリーの真実を明らかにします。過去9四半期を分析し、消費者行動がどのように進化しているか、市場の動きを深く理解します。購買指標は、67カ国以上、15億人以上の世界中の買い物客の行動とオンラインショッピング統計を分析します。
この一連のベンチマークは、デジタルコマースの最近の歴史と現状を網羅しています。より広範な小売業界のマクロ経済数値を推定するためにいくつかの要因が適用されており、これらの結果はSalesforceのパフォーマンスを示すものではありません。
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※本記事は米国で公開された “Retailers See Shoppers Saving for Big Moments Later This Year” の抄訳版です。本ポストの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。