企業のデジタルトランスフォーメーションを支え、革新に挑戦し続けている「Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)」。彼らの取り組みは、他の企業でも参考になる示唆に溢れているはずです。そこでこのシリーズでは、先駆者たちがどのような成果を上げているのか、そしてその成果に至るまでにいかなるチャレンジを進めてきたのかを紹介します。
過去の連載はこちら Trailblazerから学ぶシリーズ
- Vol1.コニカミノルタジャパン
- Vol2.manebi
- Vol3.パーソルキャリア ミイダス
- Vol.4ビズリーチ
- Vol.5 SALES ROBOTICS
- Vol.6 三生医薬
- Vol.7 IMJ
- Vol.8 マックスヒルズ
膨大な時間がかかっていた予実管理データの集計・分析
データをもとにした緻密な予実管理や将来予測によって、経営基盤をさらに盤石なものにしたい。このように考えている経営者は多いのではないでしょうか。ビジネス拡大のために営業スタッフを増強したとしても、そのパワーを適切な方向へと発揮していかなければ、徒労に終わる危険性があるからです。この課題を解決するためSalesforceを活用しているのが三生医薬です。同社は1993年に創業し、静岡県富士市の環境に恵まれた工場において、健康食品(サプリメント)や医薬品などの受託製造事業を営む企業。国内の健康食品受託製造市場は堅調に推移しており、これと共に同社も成長を続けています。また健康食品や医薬品等に関するユーザーニーズの多様化や高度化、グローバル展開などにも積極的に対応。「製剤技術力と最高品質を武器にグローバル展開し、人類の健康に寄与するサービスプロバイダ」への飛躍を目指し、事業基盤の強化やビジネス拡大の取り組みを加速しています。
「当社は現在サプリメント受託製造でNo.2のポジションにありますが、2020年にはNo.1になることを目指しています」と語るのは、三生医薬 執行役員 国内健食事業部長の伊藤 勇作氏です。そのために営業部門の人員を増強していますが、経験の浅い営業担当者が増えた結果、営業活動の内容にバラツキが生じているのが悩みの種だといいます。またサプリメントの受託製造は「一粒いくら」という細かい取引を積み上げていくビジネスであり、細かい数字をきちんと把握することが損益に直結するとも説明。「営業の予実管理をしっかりと行い、そのデータを生産管理に活かしていくことが不可欠なのです」。
現在はこのようなデータ集計・分析作業を人手で行っているため、膨大な時間がかかっていると語るのは、三生医薬 マーケティング本部 マーケティング部 部長の鎌田 友寛氏です。「現在当社のお客様は1,000社を超えており、取扱商品数も2,000種類以上あります。それらの受注に関するデータは極めて膨大で、その集計は専属スタッフが月間100時間以上かけて行っています。しかし月単位での集計では予実管理の誤差が大きくなりやすく、現在もプラスマイナス10%程度の誤差が生じています」。
業界No.1を目指してジャンプアップしていくには、このような問題を解決していかなければなりません。そこで2017年1月に営業支援システム導入の検討を開始。ここで選ばれたのがSalesforceだったのです。
まずはSales Cloudの活用を浸透させ必要なデータを蓄積
Salesforceの採用理由は大きく2点ありました。
第1は、大規模なカスタマイズを行うことなく、三生医薬が手掛ける受託製造ビジネスに対応できることです。受託製造では、顧客に提案を行ってから正式な見積を出すまでに少量試作や量産試作を行う必要があり、その後も安定性試験を実施することが求められます。Salesforceならこのようなプロセスを、案件管理に追加するのが容易なのです。
第2はEinstein Analyticsによって、膨大なデータの集計・分析を自動化できることです。営業担当者の活動履歴や案件管理のデータを蓄積し、それらをタイムリーに活用できるようになれば、顧客ニーズを先取りした案件創出も可能になると期待されました。Salesforceの導入に向けた開発作業に着手したのは2017年11月。2018年5月にはSales CloudとEinstein Analyticsを同時に導入し、その活用を開始します。ここでまず行われたのが、営業担当者の活動履歴管理でした。
「活動履歴の入力を徹底してもらうため、Salesforceの導入効果や使い方を説明する社内研修を行うと共に、Salesforceの利用に積極的な営業担当者に対しては、その活用を積極的に支援しました」と語るのは、三生医薬 マーケティング本部 マーケティング部 セールスオペレーション課 課長の中川 幸代氏。またこのような先行ユーザーの事例を、各営業部門のマネージャーに画面を見せながら紹介する、という取り組みも行ったといいます。これによってSalesforceの浸透率は短期間で上昇。「まだ導入から半年も経っていませんが、すでに活動履歴に関するデータ入力率は8割を超えています」。
Chatterも積極的に活用されています。Sales Cloudに入力された活動履歴の情報はそのままChatterに自動反映され、マネージャーへと伝達。これによって迅速な情報共有が可能になり、活動内容に問題がある場合には素早くコーチングできるようになりました。また営業現場で収集された顧客ニーズ等の情報もChatterで共有されており、営業活用の内容も標準化されつつあります。案件管理の定着に向けた取り組みもスタートし、活動履歴と同様の定着率を実現することが目指されています。
また、Einstein Analytics活用に向けた準備も着々と進められています。現在行われている活動履歴や案件管理の定着活動は、分析対象となるデータを蓄積するために不可欠なフェーズであると位置づけられ、以下図版の通り蓄積したデータから得られるインサイトを活かした営業活動へと変革していくという。
Einstein Analyticsでの分析体制を確立し提案型営業を加速
「蓄積されたデータをEinstein Analyticsで分析できるようになれば、予実管理の精度をさらに高めることができるでしょう」と期待を語るのは、三生医薬 マーケティング本部 マーケティング部 マーケットインテリジェンス課 課長の村松 千穂氏。また過去のWin-Loss分析や将来予測も可能になるはずだといいます。「2019年の中頃までには、Sales Cloudに蓄積されたデータをEinstein Analyticsで分析できる体制を確立したいと考えています。また基幹システムとのデータ連携や、過去10年間のデータを取り込む、といったことも進めていく計画です」。
新たな顧客を獲得するために、マーケティングオートメーションに取り組むことも検討されています。「現在は既存のお客様からのリピート発注が9割程度を占めていますが、今後はこちらからお客様にアプローチする提案型営業も拡大し、その割合を3割程度にまで増やしていきたいと考えています」と伊藤氏は語ります。
Salesforceによる情報共有やデータ分析は、このような提案型営業の拡大にも大きな貢献を果たすことになるでしょう。顧客や市場にどのようなニーズが存在するのかを把握しやすくなる上、提案営業の結果を分析することで、より効果的なアプローチを見出だせるようになるからです。業界No.1へのジャンプアップの基盤として、Salesforceは重要な役割を果たすと期待されているのです。
三生医薬の取り組みについてはこちらから更に詳しく確認いただけます。
三生医薬のように、勘頼りではなくデータ分析にもとづいて営業活動を行うことでより高いパフォーマンスをあげられることはアンケートから明らかになっています。全世界2900人を超える営業へのアンケートから見えてきた“セールス最新事情”に関するインサイト、トップクラスの営業チームが業績アップのために活用しているトレンドについては、 以下よりダウンロードしてご活用ください。