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サステナブルなITを実現する3つのステップ

IT部門や業務部門の責任者は、気候変動に真っ向から取り組む必要があります。気候変動対策は、地球環境のみならず、ビジネスにもメリットをもたらします。

今日において、ITリーダーとビジネス部門には、大胆な気候変動対策が求められています。こうした取り組みは、地球のためだけでなく、ビジネスの面でも大いにメリットがあります。73%のITリーダーが気候変動に懸念を持っている中で、ITがどのようにサステナビリティを実現していくのか、その道筋をご紹介します。

最新の『IT最新事情』レポートによると、IT部門の責任者の73%が、気候変動の影響について懸念しています。それもそのはずで、全世界の温室効果ガスの約1%(英語)は、法人が利用するITに由来しているのです。たった1%と思うかもしれません。しかしこれは、英国全土の二酸化炭素総排出量に相当します。では、どうすればサステナブルなITを実現し、デジタル由来の二酸化炭素総排出量を削減できるのでしょうか?

まずは、ITが気候変動にどう影響しているのかを理解しましょう。

ITリーダーは何に懸念を抱いているのか?

最新の『IT最新事情』レポートで、現状を把握しましょう。
Salesforceは、世界各国の4,000人を超えるITリーダーを対象として、現在のトレンドと今後の展望について調査しました。

IT最新事情 第3版

AI・自動化・セキュリティなど世界各国のIT部門リーダー4,000人以上を対象に行った調査から得られた最新のインサイトをお届けします。ぜひ、自社のIT戦略にお役立てください。

温室効果ガスの排出でITが果たす役割とは

先日、気候科学者たちは、2023年7月が人類史上で記録されたもっとも暑い月だったことを発表しました。「エネルギー産業」と「農業」が全世界の温室効果ガス排出の大部分ですが(英語)、3位の「工業」も僅差で続いています。私たちは、情報・通信テクノロジーによるエネルギー消費量が、2040年までに全世界の温室効果ガス排出量の14%を占めるようになる(英語)と予想しています。

ここで、IT技術が地球環境に及ぼす影響を確認してみます。これを見れば、CIOがサステナブルなITを実現しなければならない理由は明白です。

  • データセンター:データセンターは、サーバーの稼働に電力を、冷却には電力と水を消費します。世界中でデータのクラウド移行が進むなか、データセンターによる天然資源の消費が増加しています。AIの影響も無視できません。AIは、不正行為の検知、自動運転、ガンの発見など、さまざまな用途で役に立ちますが、同時に計算処理も増えます。つまり、サーバーの稼働や冷却、電力がさらに必要になるのです。
  • エンドユーザーのデバイス:コンピューター、スマートフォン、プリンターなどから排出される温室効果ガスは、法人が利用するITに由来する総排出量において、かなり大きな割合を占めます。コロナ禍以降、自宅オフィスを構える人が増え、個人用デバイスの需要が急増(英語)しました。しかも、サーバーに比べると、こうした機器は短期間で買い換えられます。使用時のエネルギー消費以外にも、デバイスの原材料の入手、製造、梱包、輸送など、機器のサプライチェーン全体(英語)で、温室効果ガスが大量に排出されます。
  • 電子廃棄物 (E-Waste):膨大な数の電子機器が毎年製造されていますが、リサイクルされなければ、捨てられて終わりです。コンピューターやモニターのほか、スマートフォン、ラジオ、液晶テレビ、プラズマテレビも電子廃棄物に含まれます。このうち、リサイクルされるのはわずか17%(英語)。残りは鉛などの有害物質を含んだまま、埋立地に廃棄されます。電子廃棄物の量は、米国だけで年間数百万トンにも上ります。
  • レアアース:コンピューターやサーバーのハードディスクには、レアアースが使用されています。レアアースの採掘、精製、廃棄に伴う環境的なリスク(英語)はもちろん、資源が枯渇するリスクにも配慮しなければなりません。米国では、政府と環境保護庁がレアアースのリサイクル率の引き上げを求めています(英語)

では、どうすればサステナブルなITを実現できるでしょうか?ここからは、デジタルに由来する二酸化炭素排出量を削減するために、CIOとIT部門の幹部(英語)が実施できる3つのステップを紹介します。

サステナブルなITを実現し、二酸化炭素排出量を削減するための3つのステップ

IT部門や業務部門の責任者には、大胆な気候変動対策が求められています。気候変動対策は、地球環境のみならず、ビジネスの面でも大いにメリットがあり、(英語)消費者は、環境活動や社会貢献に取り組んでいる企業から商品を購入したいと考える傾向(英語)があるのです。

以下の3つのステップを参考に、サステナビリティ達成に向けて取り組んでください。

1.バリューチェーン全体で温室効果ガスの排出量を追跡する

現在、多くの企業がサステナビリティの目標を掲げ、温室効果ガス排出量の縮小計画(英語)を打ち出しています。しかし、追跡できないものを削減することはできません。サステナビリティの明確な目標をまだ設定していない場合は、排出量の追跡から始めることが重要です。 

追跡を行うことで、IT部門は、企業の温室効果ガス排出量全体の詳細を理解し、ハードウェア製造、サプライチェーン、ソフトウェア、データセンターの電力消費量、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティングによる排出量が全体の何%に相当するのか把握できます。一般的に、ITリーダーは、環境、社会、コーポレートガバナンスの各チームと連携してESGレポート戦略(英語)を策定します。

環境保護庁(EPA)が中堅・中小企業向けに提供している計算機能など、さまざまなソリューションを活用することで、追跡が容易になります。ただし、大手企業の場合は、より強固なサステナビリティ管理ツールが必要になるかもしれません。

では、追跡と開示のためのグローバル基準については、どのような状況でしょうか?今年初めに、国際サステナビリティ基準審議会(英語)は、公開会社向けの初のグローバル基準(英語)を立ち上げました。世界中で規制と開示の要件が増加する中、これはバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量を把握する(英語)ための重要な節目となります。

追跡によって、企業のサステナビリティ成果の開示が促進され、温室効果ガス排出量縮小に向けた決定に必要な情報を得ることができます。追跡対象には、以下も忘れずに加えてください。

  • 社内サーバーと関連インフラ
  • サーバー設備の稼働に必要な電力、暖房、冷房
  • サーバー設備で使用する企業所有の車両やその他の機器から直接排出される温室効果ガス
  • 世界中のオフィスやリモートワーク拠点にあるエンドユーザーデバイス(ノートパソコン、スマートフォン、プリンターなど)
  • IT部門のすべての出張(英語)に関連する排出量

2.具体的な削減目標を設定し、確実に実行する

『IT最新事情』によると、IT部門責任者の79%は、温室効果ガスの削減目標を設定していると回答する一方で、消費者は、サステナビリティへの企業投資が十分でないと感じているようです。2021年の調査によると、企業が気候変動に対抗するために十分なリソースを投じていると考えている消費者は42%にとどまります。

対策しないのは、チャンスを逃しているも同然です。サステナビリティの実現は、環境に優しいだけではなく、コスト削減(英語)にもつながるからです。

排出削減計画(英語)とは、どのようなものでしょうか?サステナブルなITの実現に向けた具体的な取り組みをいくつかご紹介します。

  • 明確かつ透明性の高いサステナビリティ目標を掲げているサプライヤーと提携する
  • 自動化、大量のデータ高度な分析を活用し、よりスマートなIT運用を図る
  • リサイクル素材で製造されたIT機器を調達する
  • 稼働率の低いシステムを廃止する
  • ストレージをよりエネルギー効率の高いものに置き換える
  • 環境製品宣言(英語)を表明しているサプライヤーからITハードウェアを調達する
  • ITデバイスの耐用年数を長くすることで、廃棄物の量を削減する
  • 以下のようなサステナブルなソフトウェア開発(英語)手法を導入する
  • コンピューターなどのITデバイスの耐用期限を延長する
  • 耐用期限が過ぎた後の包括的な再利用またはリサイクルできない商品の購入を避ける
  • 環境に配慮したクラウドアーキテクチャとサステナビリティ目標を導入しているクラウドベンダーと提携する

3.サステナブルな企業文化を醸成し、推進する

IT部門がサステナビリティを実現し、デジタル由来の二酸化炭素排出量削減に貢献するには、チームのミッションをさらに大きなサステナビリティ目標(英語)に結びつける必要があります。CIOや最高デジタル責任者(CDO)をはじめとするIT責任者こそ、他の経営幹部や取締役に働きかけ、IT部門の排出量削減を促進するのにふさわしい役割です。

サステナブルな企業文化を醸成する方法を紹介します。

  • IT部門と経営幹部の業績評価に、サステナビリティ目標と指標を組み込む 
  • チームが使うデバイスを減らし、電子廃棄物を削減する
  • 従業員が使うデバイスの使用期限を延ばす
  • GreenOps(英語)(環境に配慮した業務)戦略を計画に盛り込む
  • サステナブルなソフトウェア開発(英語)と、サステナブルなITを実現するためのステップについてチームに説明する

IT部門のサステナビリティ目標は、一足飛びには達成できません。まず体系的なアプローチを採用し、排出量を把握するための計画を立てる必要があります。それができたら、社内のESGチームと協力して、明確な目標を定めた削減計画を作成し、達成できるよう取り組みます。さらに、行動計画を他の経営幹部や部門と共有して、サステナブルな文化を推進しましょう。

達成できれば、環境にはもちろん、ビジネスにもいい影響がもたらされます。

最新のITトレンドをご紹介

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Asa Murphy
コンテンツ、プラットフォーム

Asa Murphyは、サンフランシスコのベイエリアを拠点とするライター、エディター、コンテンツストラテジストです。

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