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チームスピリット・荻島浩司社長に聞く いち早く Salesforce1 に対応したフロントウェア「TeamSpirit1」の狙いとは?

チームスピリット・荻島浩司社長に聞く いち早く Salesforce1 に対応したフロントウェア「TeamSpirit1」の狙いとは?

新たなカスタマープラットフォーム Salesforce1 の魅力は何か。いち早く対応した ISV 各社の狙いは? 第一回は従業員のためのフロントウエア「TeamSpirit」。

Salesforce1

2013年11月に、米サンフランシスコで開催された「Dreamforce 2013」で発表された「Salesforce1」は、 モバイルファースト、フィードファースト、APIファーストを実現する新たなプラットフォームとして、全世界から注目を集めている。これによって、 Salesforceが新たなステージへと大きく歩みを進めたのは、多くの人が認めるところだろう。そして、日本においても、発表からわずか3週間後に は、Salesforce1に対応したISVアプリが10社から発表された。Salesforce1によって、ISVアプリはどう進化するのか。 Salesforce1への対応をいち早く図ったISV各社を訪れ、その取り組みを追ってみる。

株式会社チームスピリット 代表取締役 CEO 荻島 浩司氏
株式会社チームスピリット 代表取締役 CEO 荻島 浩司氏

従業員の視点に立ったフロントウェア

チームスピリットは、1996年にパッケージソフトウェアの開発会社として設立。2011年には、米セールスフォース・ドットコムとの資本業務提携を機に、クラウドサービス専業の事業者へと生まれ変わった。

現在の主力製品は、2012年3月に投入した「TeamSpirit」。同製品の最大の特徴は、「従業員の視点で創られたERPの『フロントウェア』」という点にある。

フロントウェアとは、勤怠管理、就業管理、経費精算、プロジェクト工数管理、日報・活動報告、電子稟議といった、従業員が毎日操作する必要があるソ フトウェアの総称であり、これを一体化したソリューションとして、クラウドを通じて提供するものであると、同社では位置づける。

「勤怠管理は人事・総務部門、経費精算は経理部門、プロジェクト工数管理は現場といったように、フロントウェアを構成する業務の担当部門はそれぞれ 異なっている。そのため、個別にシステムが導入される傾向が強く、結果として管理が繁雑になるという課題があった。だが、従業員の立場からみれば、業務に 関わる情報を入力する作業としては同一のものであり、分断されている必要はない。従業員の視点で創られたERPのフロントウェアというコンセプトは、そこ から来ている」と、同社・荻島浩司社長は語る。

フロントウェアの領域を、Force.comで一本化。SuicaやPASMOのデータのほか、駅探と連動することで、交通費の経費精算を手軽にで きるほか、勤怠管理の残業データを給与計算ソフトに柔軟に取り込んだりといったことも可能だ。勤怠管理と交通費精算を一度のタッチで同時に行える管理性の 高さも特徴のひとつである。

「経費精算の作業は4分の1に短縮でき、全体の管理工数は、最大で8割もの削減が可能になる」(荻島社長)という。

SNSとワークフローを組み合わせた新しい“承認申請サービス”

さらにTeamSpiritでは、Chatterとワークフローを組み合わせた承認申請サービスを提供。リアルタイムな情報分析をもとに、マネー ジャーのタイムリーな意思決定を支援。チームのメンバーがなにをしているのかが見えることから、無駄な作業の排除、リスク予兆への対応、業務の最適化と いった取り組みにも活用できる。「仮に50時間の残業をした社員がいた場合、Chatterやワークフローとの組み合わせによって、意味のある残業なの か、課題を持った残業なのかという判断が、リアルタイムで行えるようになる」という活用方法もある。経営層や管理者にとっては、効果的な管理を、リアルタ イム性を持って実行できるようになる。

そして、これらの機能を月額600円で利用できるのも、TeamSpiritの魅力だ。わずか1年半で、170社、1万7000ライセンスの実績に達したのもうなずけよう。最近では大手・中堅企業からの引き合いも多いという。

TeamSpirit1はわずか2週間で誕生

そのTeamSpiritは、Salesforce1の登場によって、TeamSpirit1へと名称を変え、機能を大きく進化させた。

TeamSpiritは、2012年春からモバイル版を発売しており、昨年秋から、モバイル環境での利用強化を軸とした、Ver.2への進化を検討していたところだった。

「Ver.2では、外出先などのモバイル環境においても、モバイル端末から承認作業が行えるようにするといった機能強化を計画していたが、 Dreamforce 2013において、Salesforce1の発表を聞き、このバージョンアップ計画がすべて白紙となった。それほどの衝撃を受けた発表だった」と、荻島社 長はいまから約3カ月前を振り返る。

「とにかく、新しいことは率先してやってみるのがチームスピリットの社風」と荻島社長は笑うが、それでもSalesforce1への対応を決定するまでの判断は素早かった。

Dreamforce 2013に参加していた荻島社長は、発表当日に、日本の開発チームと連絡を取り、すぐにSalesforce1に対応することを決定したのだ。翌日の時点では、セールスフォース・ドットコムの関係者に対してその意向を伝えていたという。

Salesforce1では、Chatterを通じた承認作業を可能としていることから、TeamSpiritにおけるモバイル環境での承認機能は、Salesforce1に対応するだけで、そのまま新機能として実装されることになった。

モバイル ユーザーインターフェース

また、モバイル版をすでに開発していたことから、ユーザーインターフェースをそのまま利用できたことも、Salesforce1上でのモバイル対応の迅速化につながった。

「実験ベースのものであれば、翌日にはSalesforce1対応が図れていた。また、実用性に耐える品質に仕上げたアプリは、1人のエンジニア が、わずか2、3週間で完成させることができた」という。Salesforce1が持つ移植性の高さも、迅速なリリースに大きな効果をもたらした。

モバイルファーストを意識したプラットフォーム

さらに、「TeamSpiritのアイコンが、モバイルデバイス上では、Salesforce1の標準機能のように表示されるため、アイコンの視認 性が高く、利用者はすぐに入力作業を開始できる。モバイル環境において、より手軽にTeamSpiritを利用してもらえるようになった」というように、 モバイル環境での操作性を高めた点も、Salesforce1がもたらす効果のひとつだ。

アイコン 視認性

荻島社長は、「これだけ移植性が高いと、この領域に対して、誰でもが参入できるような環境が生まれるともいえる。これまでのように、技術力での差別 化、操作性での差別化だけでなく、管理や業務に関して蓄積したノウハウを生かしたソリューションの提案が、今後の差別化のポイントになる」とする。法令に 遵守した形で利用できる環境を提供するという点で、同社には一日の長があるといえよう。

荻島社長によると、TeamSpiritを、TeamSpirit1へとアップデートした当日だけで、約3割のユーザーがアップデートを行ったという。

「基幹システムに連動するアプリであるだけに、もともとアップデートには、慎重なユーザーが多い。通常であれば当日にアップデートするユーザーは1 割以下。約3割のユーザーが即日にアップデートしたのは異例中の異例」と荻島社長は語る。「新たなものを使ってみたいということもあるだろうが、 Salesforce1への期待が高いことの証ではないか」とする。

一方で、今後の課題としては、異なるモバイルデバイスに最適化した形で表示するレスポンシングデザインへの早急な取り組みをあげる。今年春には多くのモバイルデバイスで最適表示が可能になる予定だ。

さらに、これまで以上にモバイル環境で操作しやすいように、インターフェースの改善にも取り組んでいく姿勢を示す。

荻島社長は、「Salesforce1によって、ERPのフロントウェアとなるTeamSpiritは、何歩もステップアップできたと考えている。 スマートフォンやタブレット端末など、モバイル端末の複数所持などが増えるなかで、フロントウェアがさらに浸透するきっかけになるのではないか」と期待を 寄せる。

TeamSpiritが創出したフロントウェアの世界は、これからも進化が図られ、同時に世の中に広く浸透していくことになるだろう。それをしっかりと下支えする役割を果たすのが、Salesforce1ということになりそうだ。

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