Salesforce Customer 360とは何か
Customer 360は現在、パイロット版が限定的に提供されており、一般提供開始日は2019年を予定しています。Customer 360についてご説明する初めてのブログとなる今回は、まず当社の既存製品に対する考え方と、どのように改善に取り組むのかということをご説明したいと思っています。
どんな企業であっても、多岐に渡るチャネルや部門を越えて、シームレスな顧客体験を提供したいと望んでいます。こうした体験は、サイロ化した(縦割りになった)組織や、プロセス、インフラを越えて、マーケティング、コマース、セールス、サービスを横断して提供されるものでなければなりません。
セールスフォース・ドットコムのB2B製品を利用されるお客様は、マーケティング、セールス、B2Bコマース、サービスのあらゆる情報が1箇所に集約されています。情報が集約がされていることによりマーケターは、キャンペーンがいかにリードや商談、パイプライン、そして売上に結び付いているかを容易に把握できるのです。営業担当者は、会議に出席する前にサポートケースを把握でき、サポート担当者は未成約の商談を把握できます。顧客の組織内における階層構造がどうなっているのか、コンタクトしている先とどのようなリレーションがあるのかを、情報を確認して理解を深めることができるのです。
Sales Cloud、Service Cloud、Pardot、B2B Commerce、CPQ、Community Cloud、Health Cloud、Financial Services、およびLightning Platformはすべて、同じデータモデル(標準オブジェクトとカスタムオブジェクト)を使用しており、連携して動作するのみならず、Einstein AnalyticsやSalesforce Mobileアプリでもこのデータを利用できます。
B2C(個人向け)の場合
B2Cの世界で話をするとAmazonが、シームレスにつながるクロスチャネルの体験を提供しています。Webサイトやモバイルアプリにお勧め商品が表示され、商品の注文後はメールやSMSメッセージが送付され、注文の確認、出荷日の通知、関連する商品がオススメとして表示されクロスセリングが行われる、といった具合です。サポートの問題がある場合はケースを作成でき、これによりエージェントは、迅速な問題解決に必要な状況をすべて把握することが出来ます。ここでは、コマース、マーケティング、サービスという従来の境界線があいまいになって提供しています。Amazonは多数のエンジニアを動員することで、こうした体験を構築しました。しかし従来型の小売、消費財、銀行、政府機関、または製薬会社では、こうした取り組みに苦労していることでしょう。
セールスフォース・ドットコムのB2C向けアプリ
セールスフォース・ドットコムは、マーケティング、コマース、サービスにわたるB2Cエンゲージメントに向けて、優れたアプリを提供しています。
- 市場シェア同率トップのMarketing Cloud(IDC)
- No.1 コマースアプリのCommerce Cloud(Forrester)
- No.1 サービスアプリのService Cloud(Gartner)
これらはそれぞれ素晴らしい製品ですが、クロスチャネルのユースケースでの展開は、まだ容易ではありません。
SalesおよびService Cloudでは、B2Cの顧客レコードは個人取引先オブジェクトとして表示されます。Marketing Cloud EmailおよびMobile Studio(旧ExactTarget)では、購読者テーブルはデータエクステンションと呼ばれ、Commerce Cloud(旧Demandware)では、顧客テーブルは顧客レコードと呼ばれます。これらをつなぎ合わせ、複数のシステムにわたる同一顧客の複数のレコードを照合し、文字通り「つながる」体験を提供できるかどうかは、システムアーキテクト次第となっています。
Salesforce Customer 360
Salesforce Customer 360は、当社のB2Cマーケティング、コマース、サービス製品を連携して動作させるという、新しいクロスクラウドのテクノロジーイニシアティブです。
管理者はCustomer 360によって、Marketing Cloud、Commerce Cloud、Service Cloudの様々なインスタンスを登録できます。
管理者はService Cloudの個人取引先*、Marketing Cloudの購読者(データ拡張)、およびCommerce Cloudの顧客プロファイルの顧客レコードを、単一の標準的な顧客ビューにまとめることができます。
Customer 360は顧客の照合を行い、一意のIDを各人に割り当てて、さまざまなシステムにわたる当人の複数のレコードをまとめます。たとえば、John Doeという顧客レコードが、Marketing Cloud、Commerce Cloud、Service Cloudにそれぞれ存在する場合、システムはJohn Doeが3名いるわけではなく、同一人物であることを認識できるため、適切な対応が可能になります。
Customer 360は関連データ(ケースや注文履歴など)をすべて1か所に複製するのではなく、顧客プロファイルを作成して保管し、ニーズに応じてデータやイベントをシステム間でやり取りするハブとして機能します。
Customer 360によるシームレスに「つながる」顧客体験
Salesforceアプリ、プラットフォーム、および業界別ソリューションチームは、Customer 360によって実現する、煩雑な設定が必要ない、クロスクラウドでの機能・体験を構築しようとしています。以下に具体例をあげてみましょう。
Service Cloudエージェントコンソールには、問い合わせ対応済みとなった顧客プロファイル、Commerce Cloudの注文情報、ショッピングカートにあるデータ、および顧客の代理で注文を行う機能が含まれており、これらはすべてCustomer 360によって実現しています。
Marketing Cloudは、ショッピングカートに入れっぱなしになっている商品を掘り起こすジャーニーを描き、Commerce Cloudにより行動を促すことも、Customer 360によって実現しています。さらに、余計な設定が不要で、すぐに使えるアセットも(ジャーニーテンプレートなど)も提供されます。
次のステップ
当社では現在、自社ソリューションにおいて、B2Cエリアでの体験を向上させることに、まずはフォーカスしています。ただし、それはSalesforce Customer 360の全体目標ではありません。B2B領域におけるSalesforceソリューションの利用、特に複数の組織にわたって導入している場合は、Customer 360によって業務を大きく改善できる可能性があります。今後のブログ投稿では、その点についても取り上げる予定です。また、こうした環境すべてにわたってデータをクリーンに維持する方法、およびパートナーやシステムインテグレーターに及ぼす影響なども考察していきます。
※Customer360に関する日本での対応時期は現時点では未定です。