株式会社淵本鋼機

『働き方改革』が叫ばれる中、限られた時間と人員で、なんとか生産性を高めて収益を上げなければ、会社の未来はない。1年前は本当にそういう“崖っぷち”の状態でした。もしSalesforceを導入していなければ、大変なことになっていたかもしれません”

株式会社淵本鋼機 代表取締役社長 淵本 友隆 氏
 

「このままでは社の未来はない」
老舗商社がSalesforceで業務大改革に挑む

「『働き方改革』が叫ばれる中、限られた時間と人員で、なんとか生産性を高めて収益を上げなければ、会社の未来はない。1年前は本当にそういう"崖っぷち"の状態でした。もしSalesforceを導入していなければ、大変なことになっていたかもしれません」
株式会社淵本鋼機の代表取締役社長、淵本友隆氏は、2018 年にSalesforceを本格導入したときのことをそう振り返る。
新潟県長岡市に本社を置く同社は、1949 年に設立された、製造業向けの機械工具を専門に扱う商社だ。新潟県・長野県に本社を含め4 拠点を構え、2014 年にはバンコクに駐在事務所を開設するなど、着実に事業を展開。2019年には創立70 周年を迎えている。
しかし、冒頭の言葉通り、淵本氏が社長に就任した2009 年以降の同社の道のりは、決して平坦ではなかったようだ。ネットビジネスの台頭などで激化する価格競争を勝ち抜くには、時間と人員の制約の中で業務を効率化し、収益性を高める以外に方法はない。ところが、顧客情報はすべて担当者の頭の中にあり、データとして蓄積・共有されていないため、会社として打てる手は限られている。いつの間にか取引の途絶えた休眠顧客は、全顧客約1,000社のうちの300社に達していた。
また、新規顧客の開拓についても課題を抱えていた。社内の機運が高まると、一時的に飛び込み営業を活発に行うが、基本的に担当者任せで、継続性と再現性がない。さらに、特に受注までの期間の長い設備商材などの案件については、会社として商談の進捗を把握することが重要だが、これも個々の担当者によって管理され、可視化されていない。
そうした課題の解決法を模索する中、自らSalesforceについて調べた淵本氏はこう思ったという。「もうこれしかない」と。
 

社員がメリットを実感し利用が定着
月1回の営業会議と資料作成が不要に

同社は2017 年、淵本氏自らが管理者を兼任し、SalesCloudの利用を開始。各営業担当者によってすべての顧客・商談情報と日報がSales Cloudに入力され、共有化された。また、それまで基幹システムで行っていた稟議などの報告関連業務を、社内SNS Chatterで行うよう完全に切り替えた。使い慣れたシステムからの移行には困難を伴うのが普通だが、同社では非常にスムーズだったという。
「最初からいろいろしようとせず、社員がメリットを実感できるところから少しずつ進めたのがよかったのでしょう。たとえば営業担当者は、導入と同時に配られたiPadを使って、いつでも日報を打ち込めるようになりました。外回りのあと会社へ戻り、17 時ぐらいから書かなければならなかった従来と比べ、仕事は明らかに楽になり、全員18 時30 分に退社できるようになった。そういう体験がSalesforceを使うことに対する納得感につながり、利用が定着したのだと思います」(淵本氏)
同社にとっては、拠点間での情報共有のメリットも大きかった。従来は毎月1 回、全拠点の責任者を本社に集めて営業会議を開くため、責任者達は資料作成と移動に最大丸2日間を要していた。しかしSales Cloudなら、営業に関する数値をダッシュボードで把握できるため、資料作成や移動は必要ない。また、各拠点における稟議やミーティングの内容がChatterに投稿され、それぞれの動きが完全に可視化されたことで、そもそも月1 回の営業会議を開く必要すらなくなった。

Account Engagement (旧Pardot)による適切なメール配信で
展示会来場者数が過去最多を記録

Sales Cloudで既存顧客に対する営業体制を立て直した同社は、次のステップとして、2018 年4 月にAccount Engagement (旧Pardot)を導入。「攻め」の活用に乗り出した。同社にとって、毎年4 月に自社で主催する展示会「プロダクティブフェア」は、新規深耕開拓の大きなチャンスだ。しかし、来場者数は毎回300 名強で横ばい、「集客力」には課題があった。
そこで同社はAccount Engagement (旧Pardot)を活用し、Salesforceに登録されているプロスペクトに対して、Web上での動向分析などにもとづき最適なコンテンツのメールを配信。既存顧客への集客に力を入れるとともに、その他の展示会で獲得したリード情報もSales Cloudに取り込み、適切なタイミングで営業をかけていく。その効果は絶大だった。
「2018 年に330 名だった来場者数は、2019 年に過去最多の507 名になりました。Sales Cloudによる顧客情報の管理というのは、どちらかというと『守り』の部分。それに対して、Account Engagement (旧Pardot)で顧客情報と展示会をうまくかけ合わせ、収益化するというのは『攻め』の営業。それが可能になったことは、弊社にとって非常に大きな前進です」(淵本氏)

スモールスタートで課題をクリア
売上は導入後2期連続で過去最高を更新

同社の前進は止まらない。2018 年夏頃からEinstein Analyticsを導入し、主に既存顧客について、AIによるスコアリングをもとに商談の確度を分析、担当者の感覚に頼らない効果的な営業活動の具体化に取り組んでいる。
さらに、2019 年7 月にはPartner Communityの稼働を開始し、既存顧客が24 時間365日、過去の取引情報を見ていつでも手軽に商品を発注できる仕組みを整えた。もちろんこれは、顧客側の利便性を向上させると同時に、同社にとっても生産性を高め、既存顧客の囲い込みを強化する狙いがある。
そのように、Salesforceの各種製品を段階的に導入・活用し、課題をひとつ、またひとつとクリアしていった同社。2017 年5 月期の決算で約30 億円だった売上高は、導入初年度の2018 年5 月期に約37 億円、2019 年5 月期に約41億円と、2年連続で過去最高を更新している。
まさにスモールスタートのお手本のような成果を上げている同社だが、長い歴史と伝統を持つ企業が、従来の仕事のやり方を変え、新たな仕組みを取り入れるのは簡単ではないはずだ。同社はなぜ、そこをクリアできたのだろうか?
「やはりSalesforceの思想や仕組みが、私の考え方とマッチしたからだと思います。だから、Salesforceのベストプラクティスにならい、できるところから少しずつ成果を積み上げていくだけでよかった。そこが成功のポイントではないでしょうか」(淵本氏)
※ 本事例は2019年11月時点の情報です
 
 

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