Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)になったインディアナ州の陸運局

インディアナ州の陸運局が、
新たなオムニチャネル戦略により
利用者満足度96%を達成

 

米国では、各州に「車両管理局」という組織があり、これは日本の陸運局と運転免許センターを合わせたような組織で、運輸・交通関連の行政業務をはじめ、車両登録・検査業務、運転免許関連業務、選挙人名簿の管理などを行っています。具体的な名称は州によって異なり、インディアナ州のものは「Bureau of Motor Vehicles(以下、IN BMV)」です。IN BMVもまた、新型コロナのパンデミックに直面した1年半の期間、大きな変化の渦に巻き込まれることになりました。

IN BMVでコミュニケーションおよびエンゲージメントの最高責任者を務めるSusan Guyer氏は、次のように話します。「もし、優れたチームと強固なシステムがなかったら、私たちは、何一つ有意義な仕事を成し遂げられなかったことでしょう。チームが熱意を持って日々の業務に励み、また、その熱意を支えるテクノロジーがあったからこそ、私たちは、質の高いサービスを提供し続けることができたのです」。以下に、IN BMVがいかにこの困難を乗り越えたのかについて、記します。

インディアナ州民全員を強力にサポート

IN BMVは、安全性と透明性を確保しながら、インディアナ州民に対する最高水準の運転免許関連及び車両登録に係る業務サービスの提供を使命としています。Guyer氏とそのチームは、電子メールによる更新通知や24時間営業のキオスク端末によるサービスの提供など、オムニチャネルなサービスを提供し、この使命を実現しています。

「私たちのミッションは、スピードやコストなどではなく、お客様が事務局を訪れるたびに良い体験を提供することです。私たちは州民が事務局を訪れるたびに良い体験を提供することに100%フォーカスし、BMVでの体験がすべての州民にとって良いものになるよう日々努力しています。
州民に対して行政側の都合で、1つの方法を強いるのではなく、それぞれのニーズに合わせられるよう、選択肢を提供しています。利用者が、オンラインを望む場合は、紙の文書を郵送することはしませんし、逆に、利用者が対面での対応を望む場合は、チャットの利用を強制しようとは思いません」(Guyer氏)。

IN BMVは、クラウド上で多様なデジタルコミュニケーション戦略を展開

IN BMVは、Salesforce Marketing Cloud上に構築した利用者エンゲージメントプラットフォームを使用して、利用者のオムニチャネル体験を管理しています。Salesforce Marketing Cloudは、あらゆるコミュニケーションチャネルにおいて、高品質な利用者体験を提供します。たとえば、利用者がチャネルをまたいでコミュニケーションしても、情報は一元管理できているため、やり取りの履歴や現在のステータスは一目瞭然になります。そしてその仕組みは次のとおりです。

電子メールによる通知(Emailジャーニー)

IN BMVは、1年あたり約600万件の運転免許証登録・更新業務を行っています。Salesforce導入前、IN BMVは、すべての利用者に、大きな封筒で更新通知の書類を郵送していました。そして、利用者は、同封の返信用封筒に小切手を入れて郵送する必要がありました。

Guyer氏のチームは、SalesforceのMarketing CloudのJourney Builderを利用して、電子メールによる免許更新の通知(ジャーニー)を開始しました。「利用者の更新期限が近づくと、期限の60日前に、電子メールの通知が届きます。そこで、更新を行うと、その利用者のジャーニーは終了します。利用者が通知を受け取っても更新を行わないでいると、期限の30日前に、さらに、電子メールの通知が届きます。その後は、利用者が更新を行うまで同じことが繰り返されます。私がいちばん嬉しかったのは、私の上司が電子メールで更新通知を受け取った日のことです。その日の朝、上司は興奮した様子でオフィスに入って来るなり、『私にも、更新のお知らせメールが届きました!システムが上手くいってる証拠ですね』と言ったのです」(Guyer氏)

 

電子メールによる通知(Emailジャーニー)の登録者数

  • Eメールによる通知をオプトインした利用者リストは、40万人以上増加
  • Eメールで送付された更新通知は、2020年Q1の230,187件に対し、2021年Q1は1,743,699件 - 前年同期比で、1,513,512件の増加
  • オンライン登録の件数は、60万件未満から100万件に増加
  • 登録解除率=0.127%
  • IN BMVのC-SAT(顧客満足度)=96%

SMS:

IN BMVは、最近Mobile Studioを利用してSMSによるコミュニケーションも始めました。「SMSで更新通知を受け取るようなことを強いることは、コンプライアンスの観点から難しいです。誕生日や運転免許証番号といった個人情報が必要になりますから。しかし、利用者がオンラインポータルからログインし、私たちにテキストメッセージの通知を受け取りたいと伝えてくれれば、コミュニケーション手段としてSMSを使うことは可能になります」(Guyer氏)。

電話や支所での対面による対応といった昔ながらのコミュニケーションチャネル

前述の改善活動により、IN BMVは郵送、対面、および電話対応による職員の負担を減らすことができました。Guyer氏は、「昔ながらのコミュニケーションチャネルは、日々の業務の中で大きな負担になります。私たちは、サービス担当者が、時間に追われながら、質問への回答や来訪者の対応に忙殺される状況をなくし、どんなときでも、一人ひとりの利用者に適正な時間をかけて、きちんと対応できるようにしました」と話します。
チャネルの多様化に伴い成功した作業負荷の削減により、2020年から2021年にかけてのコロナ禍においても、IN BMVは利用者の期待を裏切らないサービスを提供し続けることができたのです。

思わぬ効果を生み出したIN BMVのデジタル多様化戦略

 

他の地域と同様、Guyer氏とそのチームは、突然のCOVID-19の流行により、「いつでも、どこでも」という顧客サービスの考え方を転換することを余儀なくされたました。IN BMVは14日間閉鎖されました。2週間後に開局できたときにも、当時は、ソーシャルディスタンスのガイドラインと安全対策に基づき、対応可能な利用者の数が制限されているにもかかわらず、対面でのサービスを希望する州民が多くいたため、サービス提供が遅延する状況に陥りました。以前は平均30分だった待ち時間は2時間を超え、駐車場の周りには、入庫待ちの車の行列が出来ました。Guyer氏は、「他の州では、私たち以上に酷い状況も生じていました。IN BMVでは、この困難な状況でも、毎日、1100人の担当者がアクリル板を挟んで、利用者のために力を尽くしていました。そんな状況が、1年半も続いたのです。担当者に安心感を与えられるようサポートすることは、きわめて重要な課題でした」と話します。

そこで、チームは以前にも増して、デジタル多様化戦略に注力するようになります。利用者には、可能であれば対面以外の対応を選択するよう促し、できるだけ多くのコミュニケーションを電子メールとSMSに移行することで、4月には待ち時間を20分に戻し、5月にはさらに18分に短縮することができました。Guyer氏は、「私たちがコミュニケーションの転換に取り組むことができたのは、毎日職場に出勤し、新型コロナ以前と変わらぬ対応力を発揮してくれた担当者のおかげです。私たちのチームは、オンラインや無人端末の利用を強く推奨していましたが、多くの利用者は、対面での対応を望んだのです。IN BMVの各支所は、利用者サービス満足度などの評価基準で競い合い、その順位表のトップに立とうと努力していました。新型コロナのパンデミックの中でさえも、仕事を楽しむ方法を発見し、お互いに助け合い、励まし合いながら、業務を続けていたのです」と話します。

COVID-19対応以外でも、インディアナ州議会は、既存のデジタルファースト政策を推進するとともに、新たな政策についても決議しました。IN BMVは、顧客へのサービスとして、モバイル運転免許証の検討を開始した。さらに、州議会は、IN BMVに対して、できるだけ早く、車両の担保権や所有権の電子化と、交通違反などの減免プログラムのシステム化実施するよう指示しました。IN BMVは、こうした州の大きな目標に合わせて多くのプログラムとサービスを改良。州議会と協力し、新たに実施されるサービスやプログラムを州の住民に周知するプランを作成しました。

Guyer氏は、「新型コロナのパンデミックで、私たちは当たり前のことを、より強く認識することになりました。それは、優れたチームとそのチームを支える強固なシステムがあれば、ほとんどの嵐は乗り越えられるということです」と話しています。

 

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