ミズノ
“ビジネスにおける『デジタルトランスフォーメーション』の実現は、当社にとっても重要なテーマ。既存のビジネスモデルや過去の成功体験にのみ捕らわれることなく、ビジネスの変革に向けた一歩を果断に踏み出していくことが不可欠です”
多様化する顧客とのタッチポイントや
購買ニーズに迅速に対応、
グローバルビジネスの強化に向けて、
統一されたミズノブランドの発信を目指す
顧客タッチポイントの拡大にも
ミズノらしい、仕組みづくりが課題
ミズノ株式会社(以下、ミズノ)は、総合スポーツメーカーとして1906年に創業。現在は「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」を経営理念にアマチュアからプロフェッショナル選手まで幅広いユーザーニーズに対応すると同時に、多種多様な競技や種目のスポーツ用品や運動プログラムを提供している。そのカバー範囲は、国内スポーツメーカーはおろか、海外メーカーでも肩を並べる企業は少ない。その理由を同社の村田一雄氏は次のように語る。
「創業者である水野利八の『ええもんつくんなはれや』の言葉に込められたように、スポーツを通じて人々を幸せにしていきたいというのが、当社のビジネスのベースにあります。単に競技人口が少ないという理由だけで商品提供を止めるわけにはいかない。真に価値あるスポーツ用品を提供するブランドたるべく取り組みを続けてきました」と語る。
同社ではこれまで、主に小売店を介したビジネスを展開してきた。つまり、中学校や高校等の部活動と密接な関係を持つ各地域にある“街のスポーツ用品店”にミズノが自社の商品を卸して販売していくというアプローチである。
「もちろん、スポーツ振興を通じた社会貢献という側面からも、そうした密なface to faceの接点を維持していくことには変わりません。しかし昨今では、特にスマートフォンやSNSの普及によって消費やビジネスにデジタル化の波が押し寄せ、顧客とのタッチポイントは増加しています。こうしたタッチポイントでもミズノらしいきめ細やかな対応を実現したいと考えていました」と村田氏は言う。それに向けた対応策の一環として、まず同社が取り組もうとしたのがグローバルで一貫したブランディングとeコマースサイトの拡充、強化である。
世界で統一されたブランドイメージ
に寄与するeコマースサイト構築を目指す
ミズノは、スポーツ用品メーカーとして、欧米やアジア太平洋をはじめとする地域を中心に、古くから海外進出を果たしてきたことでも知られ、現在では18の海外拠点でビジネスを展開している。
「消費やビジネスのデジタル化は、まさに全世界に共通する潮流であり、そうした意味では、eコマースサイトによる新たな顧客タッチポイントの確立は、当社のグローバルビジネス強化の観点からも不可欠なテーマでした」と同社の三上明子氏は強調する。
eコマースサイトに関し、もともと同社では、日本をはじめいくつかの国々ですでに展開してきたという経緯がある。しかし、各国独自でサイトが運用されていたため、グローバル共通で一貫したブランディングとEC領域の取り組みを推進しにくい状況が形成されてしまった。
「今回新たに実施する取り組みでは、日本の本社が然るべき統制力をもって、グローバルで統一化された『総合スポーツメーカー』としてのミズノブランドの確立に寄与するeコマースの仕組みを目指したいと考えました」と村田氏は説明する。そうした観点から同社では、日本や欧米など、すでに個別のeコマースの仕組みを運営してきた国々についても、一貫されたブランディングへの取り組みと、単一の標準化されたeコマースプラットフォームへ一新することを決断した。
世界中の国々で高品質なサポートを
パートナーエコシステムを評価
そこで、同社ではいくつかのeコマースプラットフォームベンダーの商品・サービスの比較検討を実施。その結果、同社が最終的に採用を決めたのがセールスフォース・ドットコムのCommerce Cloudだった。
選定に当たって重要な要件の1つとなったのが、常に革新的なデジタルビジネスの世界において、変化に対応できるソリューションであるかどうかである。
通常は、次々に登場するトレンドや新技術に対応するために、都度開発やカスタマイズが必要となり多大な工数とコストが発生する。今回は手間やコストをかけることなく、速やかに最新でかつ安全なプラットフォームを各国に水平展開できるクラウドサービスを利用することが選定の前提条件となった。
「われわれがビジネスを展開する世界の国々において、Salesforceを中心に強固なパートナーエコシステムが確立されており、システムの構築、運用にかかわるサポートの面でも大きな安心感がありました。あわせて、国や地域ごとに異なるeコマースサイトの要件の差異に応え得る、高度なカスタマイズ性を備えていることなども重要な評価ポイントとなりました」とミズノの左海篤郎氏は、その採用理由を紹介する。
タイを皮切りに導入をスタート
順次世界展開へ
現在ミズノでは、グローバルeコマースプラットフォーム展開にかかわる取り組みが急ピッチで進められている。まずはこれまでECサイトを構築していなかった東南アジア諸国からスタートし、順次各国へ展開していくという。
その中でミズノでは、新たなeコマースサイトの立ち上げによるビジネス上のメリットを順次享受していくことになる。
「標準化されたECサイトを通じて、各国のお客様に対し、グローバルで統一されたブランドイメージを直接お伝えすることができるようになります。われわれは、それぞれの国や地域のスポーツ文化に合わせた商品ラインアップを取り揃え、お客様がeコマースサイト上で手軽にそれらをご購入いただけるようにしていきます」と左海氏は言う。
さらにデジタルマーケティングと
AI連携も視野に
あわせてミズノでは、多品目に及ぶ商品ラインアップを効果的にクロスセルやアップセルの強化を行うべく、eコマースプラットフォーム展開後のビジョンも描いている。具体的には、同社がCommerce Cloud採用以前から導入していたMarketing CloudやService Cloudとの連携によるマーケティング領域の強化である。
「eコマースサイト上でのパーソナライズされた各種サービスの提供に加え、メールやSNS、メッセージングアプリなど多様な顧客タッチポイントはとても重要です。お客様に最適なタイミングで、個々の顧客ニーズに応じた情報を発信し、ライフタイムバリューを最大化させる仕組みを実現していきたいと考えています」と三上氏は語る。
つまり、顧客一人ひとりのライフスタイルやライフステージに合わせたデータドリブンなカスタマージャーニーの実現を描いているというわけだ。
また同社では、AI技術であるSalesforce Einsteinに期待をしている。「eコマースサイトでは、たとえばスポーツウエアやシューズのカスタムオーダーなど、よりパーソナルなニーズへの柔軟な対応も実現していきたいと考えています。さらに一歩進めて、ビッグデータやAIを活用し、それぞれのお客様の潜在的なニーズを掘り起こし、最適な商品をプロアクティブに提案していけるようなアプローチといったものも想定しています」と同社の高野剛志氏は説明する。
このようにSalesforceは、ミズノの国内外における今後のビジネスを、eコマースやマーケティングをはじめとする領域でしっかりと支えていくプラットフォームとして、すでに不可欠な存在と目されている。
「デジタルビジネスの時代にあっても変わることのない、スポーツを通じて人々を幸せにしていきたいという理念にもとづく当社の実践を、Salesforceにはこれからもしっかりと支えていってもらえればと考えています」と最後に村田氏は語った。