ターゲティングした潜在顧客に、
的確に必要な情報を届ける仕組み

ライバルへ先手を打てる製造業のマーケティング活動

サトーグループ(以下、サトー)は、自動認識ソリューションのグローバル企業だ。産業用プリンタメーカーの最大手として知られ、音声物流ソリューションやRFIDプリンタなど最先端の技術にいち早く取り組んできた。その同社はいま、モノ売りからコト売りへの事業転換を進めている。
その意思が具現した1つが、マーケティングの変革にある。同社マーケティング部 部長 原田 隆洋氏は、かつては現場の営業担当者として顧客のさまざまな課題に相対してきた。そして、仕事に取り組む中で、営業とお客様の接点をつなぐマーケティングに興味を持つようになった。「製品力は、今後コモディティ化が進み、差別化が難しくなる可能性があります。どの企業も営業には大きなリソースを割いて取り組んでいます。一方、業界的にマーケティングは少し遅れており、“ふつうのことを、ふつうにやれば、ライバルに先手を打てる”と考え、マーケティング部門への異動を願い出ました」(同氏)。
マーケティング部門へ着任し、そこで出会ったのがAccount Engagement (旧Pardot)だった。ただ、当時は十分に活用されておらず、出展した展示会で得た名刺情報が約1万5,000人分登録されていたが、年に数度の案内メールを送る程度だったという。そのころ並行して、営業部門でSales Cloudを導入するプロジェクトが始動。原田氏は、これを機にAccount Engagement (旧Pardot)を本来の意味でのマーケティングツールとして全面的に活用しようとプロジェクトに働きかけた。
同時に、課題を整理した。名刺データに業種や市場を含めることで、初めてターゲティングができるようになることを説明し、名刺データに必要な情報を加えることのできる外部データベースを採用。さらに、そのデータベースのフロントとして機能する名刺管理ツールを全社展開し、営業担当者に顧客の名刺データを登録してもらうことにした。
 

案内メール配信後1日以内にセミナーが満席

2017年、Sales Cloudの導入と定着が落ち着きを見せたころ、Account Engagement (旧Pardot)の本格活用をスタートした。しかし、現場の営業担当者の多くは、名刺管理ツールを使っておらず、アプローチ可能な見込み客の件数が増えていなかった。風向きは、1つのきっかけで大きく変わることになる。パートナーとの共催セミナーで、集客に苦戦しているという話が舞い込んできた。マーケティング部門として、ぜひ手伝いたいと手を挙げた。ただし、集客のためには、名刺データが必要になるとも伝えた。名刺登録は、スマートフォンのカメラで撮影しても、スキャンしても良い。現場の少しの手間がのちに大きな価値を生むと営業へ訴求した。
営業部門の協力を得て集めた名刺データをさらにスクリーニングし、セミナーのターゲットになる8,000人に対してメールを送信した。メールの文面は、練りに練った。初めての本格活用の結果は上々だった。70席の会場が、23時間後に満席になった。
「社内からも、パートナー様からも、成果を認めていただきました。セミナーは地方都市での追加開催が決定し、それぞれの地域の営業部門で名刺データの登録を依頼しました。追加開催分も、すぐに席が埋まり、“マーケティング部門に頼めば、セミナーの集客をやってくれるらしい”という口コミが生まれました」
実際に使ってみると、名刺管理ツールは便利だ。登録した情報は、Sales Cloudにも連携される。評判が評判を呼び、それに伴い名刺データが集まってくる。2017年度末には、Account Engagement (旧Pardot)の登録は約90,000人にまで膨らんでいた。

顧客の目線を意識してコンテンツマーケティングに取り組む

翌年には、コンテンツマーケティングを開始。“尖った内容のコンテンツ”を作り、限られた対象者にメール配信する。さらに、フォームで情報入力を求め、コンテンツをダウンロードしてくれた人にインサイドセールス部門から電話をかけるプロセスにした。
原田氏は、「コンテンツを入手したお客様は、私たちから何らかのアプローチがあると理解されている方々です。インサイドセールスは全員が現場で長い営業経験を持つベテランメンバーであるため、ヒアリングも提案もできますから、確度の高い案件情報だけを営業部門に引き渡すことができます」と話す。
最近では、「配送中に解凍されて店舗に並ぶ食品パッケージに、賞味期限表示ラベルを貼る機器」を紹介するコンテンツを作った。「冷蔵・冷凍倉庫は極寒で、人が作業する環境としては厳しく、自動化ニーズが大きい分野。このレベルのニッチさで対象を絞り込み、メッセージを具体的に伝えることを意識しています。このケースでも、数十の新規案件を生み出すことができました」(原田氏)。
コンテンツマーケティングにおいては、メッセージの打ち出し方に気を配る。製品の機能ではなく、顧客の目線を強く意識する。顧客にとってどのようなメリットがあるのか。そこに絞って文面を組み立てていく。メールの文面も同様だ。自社が提供する製品やサービスに軸を置いた文面では、お客様からポジティブな反応が得られないことを、過去のデータから学んでいるからだ。
「マーケティング部門が社内の営業を向いた仕事だけをしていては本来の価値を発揮できません。我々が統合CRMに込めた思いは、お客様への価値提供サイクルを作り直すことです。設計・開発部門も、私たち本社勤務のスタッフも、全社員がお客様の方を向くことがゴールです」(原田氏)
サトーは、Account Engagement (旧Pardot)とSales Cloudに顧客データを蓄積し、アップデートし、さらに情報を補足し、確実にやれることだけを実直にやって成果を挙げてきた。次に計画するのは、海外展開だという。国内のプロセスを海外にも適用できるかどうかを見定め、マーケティングの力で海外市場での成長をドライブすることを目指していく。
※ 本事例は2020年2月時点の情報です
 
 

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