東急建設
“IoTで建設現場は様変わりします。技術を持っていない会社は2020年以降淘汰されていく可能性があります。そんなときにセールスフォース・ドットコムと出会い、技術の礎となるシステムを1か月で作り上げました。”
2020年を見据え、建設機械のIoT化を決断
わずか1ヶ月のスピード構築で、環境・人に優しく、スマートな「未来の建設」への挑戦をスタート
東急建設
圧倒的なスピードで「建機IoT」を推進し、わずか1か月でローンチ
来る2020年に向け、民間投資の拡大に期待されている建設業界。しかし、同時に「高齢化や若手作業員の減少」による人手不足の懸念も浮上してきている。そうした建設業界の将来的な課題の解決に、IoTを用いていち早く取り組み始めた企業がある。鉄道、オフィスビル、ホテル、空港、トンネル、橋など、大規模施設・構造物の設計、建設を行っている東急建設株式会社だ。
「Town Value-up Management」を合言葉に、生活者視点で「まち」全体を作ることをコンセプトにしている東急建設。同社は東京オリンピックを控えた2020年までの「需要増」だけでなく、その先の「需要減」をも見据え、「技術力」を磨くことを決断した。「技術を持っていない会社は2020年の後に、淘汰されていく」と、同社土木本部の髙倉氏は、厳しい表情で決断の理由を明かす。
危機意識の高さは、同社が「建機IoT」と呼ぶ新プロジェクトのスピード感が証明している。2015年初頭に新技術の研究開発をスタートさせ、6月にセールスフォース・ドットコムと契約した後、7月には早くも建機IoTの実証実験を始めていたのだ。
そのスピードに貢献した大きな要素として、髙倉氏はプロジェクトの役割分担とchatter(セールスフォース・ドットコムが提供する社内SNS)による円滑かつ密なコミュニケーションを挙げる。ビジネスシナリオを担当する東急建設とハード担当のコネクシオ、アプリ開発担当のフレクト、そしてクラウド基盤を担当するセールスフォース・ドットコムの4社の間で、「短期間でしたが、chatter を使ってよく打ち合わせをやりましたし、今でもやっていますね」(髙倉氏)。
建機の位置、CO2排出量をリアルタイムに共有。稼働状況の把握でコスト削減にも期待
建機IoTの一番の目的は、建設機械の稼働状況をリアルタイムに把握し、その先にある現場にとっての価値を生むこと。GPSから得られた位置情報を元に、1台1台の建設機械が稼働している場所、稼働時間をパソコンやiPadなどのモバイル機器上でリアルタイムに確認できる。広大な造成や延長が長い高速道路の工事のように、現場の状況が見通しにくくても容易に全体を確認し、非効率な作業がないかなどを判断可能となる。「作業のやり方次第で、次の現場でどれくらいの建機が必要になりそうかの目安が分かり、計画を立てやすくなる」とともに、「今は少なくなったが、建設機械が盗難されたときにも追跡できる」と髙倉氏。
また、実証試験を進めていくなかで、高倉氏はSalesforceのプラットフォームの「拡張性の高さ」にも気付くことができたという。例えば、期間ごと、重機ごと、協力業者ごとなど体裁や集計方法が異なる場合でも必要に応じてカスタマイズできたり、既存の日常管理で使用している書類の内容と同等の項目で自動的に生成できたり、と、「現場が欲しいレポートを簡単に作れる」という。
さらに、業務の効率化とコストの縮減にも期待できる。今回の建機IoTによりCO2排出量が自動的に記録できるようになった。今までは、現場担当者が建設機械の稼働時間を集計して、社内に月1回報告していた。その集計作業にかかる時間は、現場ごとに違うものの大して掛かるものではないが、その時間が当社の全ての現場で無くなれば、業務の効率化とコストの縮減が期待できると考える。
周囲の環境に与える影響も測定し、信頼される企業へ
現在は現場作業員や管理する側の状況把握に用いられている建機IoT。2020年まで続くであろう高い建設需要に対しては、建設機械の効率的なレイアウトの検討に用いることも可能だ。将来的には、近隣住民らがインターネットを介して工事の状況を詳細にチェックし、情報を共有できるようになることも想定している。
建物や人口が密集する都市圏では、とかく工事に関してネガティブな印象が強くなりがちだ。しかし、建設機械の稼働効率を向上させることで、工期の短縮とコスト削減、省エネ化といったメリットが生まれ、ひいては周辺住民に対する心理的な負担の解消を目指すこともできるだろう。「建物が密集している地域の難しい工事でも、“東急建設なら安心して任せて頂ける”会社を目指します。」(髙倉氏)
「深化×進化=真価」をキャッチフレーズに、常に新しいものに向かって挑戦し続ける東急建設。IoTを用いた取り組みへ向かって本格的な深化/進化を続けている最中だが、今回の実証試験で得られたデータやノウハウにしっかりとした手応えを感じている。