株式会社sumarch

Salesforce活用で売上を毎年20%増大させ、5期連続で平均昇給率10%増を実施

会社データ可視化で社員のモチベーションを高め、
「売上」と「人材」の2軸で継続的に成長

愛知県全域で不動産売買仲介や宅地分譲、注文住宅、リノベーションなどの事業を展開し、毎年売上が20~30%、粗利も20%増大し続けている株式会社sumarch。人材の定着化、採用強化のため、社員の給与も高水準となっており、離職率も屈指の低さとなっています。この成長を10年以上にわたって支え続けてきたのがSalesforceです。

2012年に導入し、約2年かけてデータ入力を定着化。会社のデータを蓄積・見える化することで、社員の生産性を高めてきました。また集客の方法も、アナログなポスティングからインターネット経由でのデジタルな手法に切り替え、インサイドセールスによる仕組み化も推進しています。粗利の増大を社員給与に反映させるだけではなく、広告手段多様化の原資としても活用することで、会社の認知度も急上昇。宅地分譲においては、取引データをもとに、販売価格の適正値を判断し、商品を仕入れ、販売管理をすることで、長期在庫がほぼ無い状態を作っており、融資を受ける銀行からも、一目置かれる存在になっています。

 
 

1. 最初は悪戦苦闘の連続、そのなかでSalesforceに可能性を見出す

愛知県全域で不動産仲介や注文住宅、リノベーションなどの事業を展開する株式会社sumarch(以下、sumarch)。毎年20~30%の売上成長を遂げており、2023年の売上高は73億円を突破しました。その成長を支える重要な基盤となっているのがSalesforce。2012年に導入され、すでに10年以上活用されています。またその活用ノウハウを他の会社にも提供するため、不動産・建設業界に特化したSalesforce導入支援サービス企業である「株式会社atsumel」も、2018年にスタートしています。

しかし会社設立当初は売上がなかなか上がらず「どん底の体験」をしたと、 sumarch 代表取締役の鳥居 儀彰 氏は振り返ります。

「私は2009年に父が経営する不動産会社に人材業界から転職してきたのですが、当時平均年齢は40歳、社員数は15名程度。少数精鋭でベテラン社員が売上を上げるという体質であり、社内のITツールはメールとエクセルのみで、営業活動の内容が常に共有されていませんでした。このままでは再現性がなく、最終的には会社の拡大が進まないため、2011年には新卒採用で13名を採用。しかし、知名度も集客力も無い状態で、なかなか成果を挙げることができず、わずか半年で3名の営業が離職してしまいました。また売上を作るために毎月かなりのコストをかけて集客のための折り込みチラシやポスティングを行っていましたが、結果的には粗利を確保することができず、通期で営業赤字という結果でした」。

このような悪戦苦闘の中、会計事務所から紹介を受けたのが、Salesforceだったと鳥居氏。そのデモを見せてもらった結果、データの作成・更新状況が明確にわかることや、レポートやダッシュボードでデータを可視化しやすいこと、カスタマイズが容易で使い方をどんどん変えていけることなどを実感。これなら、先代が培ったものを大切にしつつも、「会社と社員が共に成長し、その成果を見える化する」という、自分自身がやりたいこと、やるべきことがすべてできるという可能性を感じ、即座に導入を決意したと言います。

導入してまず着手したのは、データ入力の文化を社内に定着させると共に、活動状況などのデータを活用して「どうやったら成約に持っていけるのか」というシナリオを作成することでした。そこから1年後には営業赤字を脱することに成功。以前は800万円どまりだった新人の年間の手数料実績も、2倍以上の2,000万円に達したと言います。

「会社の売上や粗利といった数字と、自分たちの行動がこれらにどう影響するのかが分かれば、社員が上を見るようになります。また粗利が一定以上出るようになれば、社員にインセンティブを提供することも可能です。sumarchでは粗利伸び率の50%を給与に反映する、というルールを決めて、利益を社員に配分しています」。

 
 
 
 

2. 集客手法にデジタルを加え、見込客獲得の流れを仕組み化、安定した成約率も実現

しかしここまでは、sumarch快進撃の初期段階に過ぎません。次のステップでは、粗利をより多くし、集客コストを下げ、営業利益につなげるための取り組みに着手。その一環として始められたのが集客手法の変革です。

「当時は紙による集客が当たり前であり、当時の営業ができる集客はチラシしかなかったと思っていました。私も入社時には毎週ポスティングをやっていました。」と言うのは、この頃にsumarchに入社し、現在はatsumelの部長を務める奥田 秀樹 氏。毎週チラシを作成し、それを毎日2,000枚ポスティングしていましたが、これによって得られる反響は1,000枚あたり1件あるかないか。営業1人あたりの新規顧客も月に2~3件程度だったと振り返ります。

もっと低コストかつ効率的に集客するにはどうすべきなのか。ここで出した答えが、紙からデジタルへの移行でした。そのために2014年にインサイドセールスを立ち上げ、Account Engagement(旧Pardot)を導入。インターネット広告から自社サイトに集客し、そこから営業や店舗に送客する流れを作り出していったのです。

「ポスティングをやめてインターネットによるリード獲得にシフトした結果、集客のコスト効果は5倍に上昇、営業1人あたりの商談件数も10件を超えるようになりました。また獲得したリードが成約に至る割合も、以前は15~40%と営業担当者によって大きくばらついていましたが、現在は約30%と安定しています。この経験から、集客のコスト構造は自分たちでコントロールできることがわかり、獲得単価によって集客手段を戦略的に選定できるようになりました」。

2016年には、Salesforceをさらに有効活用したいという思いから、成約顧客とデジタルで会話するためのチャットグループを案件ごとに作成。ここに施主様を招待し、工事現場の見える化や、関係者とのコミュニケーションの円滑化を進めていきます。これらのチャットグループにはすべて社長と部長も参加しており、担当者による連絡忘れや遅延がなくなった結果、お客様とのトラブルも無くなったと言います。

これと並行して、Salesforce導入を支援するatsumelも設立。そしてsumarchはこの後、本格的な成長軌道に乗ることになるのです。

 
 
 
 

3. 社員の給与は業界トップ水準へ、広告手段の多様化で認知度も向上

2018年より、売上と粗利は毎年20%ずつ増大。前述の給与上昇ルールに従い、社員の給与も毎年10%ずつ上昇してきました。現在の営業職の給与額は、平均29歳で830万円。営業管理職は平均32歳で1,200万円程。不動産の平均年収は30歳で550万円前後と言われているので、sumarchの給与水準は極めて高いことがわかります。企業口コミサイトでも「★4.3」と、極めて高い評価を受けています。

これに伴い社員の離職率も下がりました。2015年の離職率は約3割、2020年以降の離職率は1割程度、管理職に限ればほぼゼロになっていると奥田氏は指摘します。不動産業界は独立しやすく、管理職が部下を引き連れて新会社を作るといったことも少なくありませんが、sumarchの管理職が離職しない理由は給与以外にもあると鳥居氏は説明します。

「それはSalesforceを活用したインサイドセールスによって、案件づくりを会社が仕組み化していることです。これは営業にとって『成約に集中できる』というメリットがある一方で、会社にとっても営業の再現性が高くなることで、当社だからできる環境が生まれ、結果、離職者が減る、というメリットをもたらしています」。

粗利の増大は給与の上昇だけではなく、集客や認知拡大の選択肢を広げることも可能にしました。駅やロードサイドの看板広告、テレビCMなどへの出稿を行うための、原資が確保できるようになったからです。

「インターネット以外の広告手段を活用できるようになったことで、愛知県内での認知度は一気に上昇しました。今では新卒採用のための会社説明会に参加すると、学生の7~8割は当社のことを知っています。2021年には広告制作を内製化しており、クリエイティブの改善を短期間で行えるようにすると共に、社内の職種を増やすことで社員の可能性も広げています。さらに2022年からは動画配信サイトでの発信もスタートしています」(鳥居氏)。

このような快進撃は、融資を行う銀行からも一目置かれています。sumarchでは2018年から、Salesforceに蓄積されている各種経営データや不動産在庫データを銀行に開示していますが、これを4年間継続した結果、2021年からは担保なしでの借り入れが可能になっているのです。

「Salesforceに蓄積された情報は信憑性が高いと評価されており、現在では無担保で約30億円の融資を受けられるようになっています。これは不動産業界ではなかなかないことだと思います。また在庫管理もSalesforceで行っていますが、銀行からは『ここまできちんと情報を管理しているところは他にない』と言われています」。

Salesforceを活用した仕組みづくりによって「打率3割」のヒットを確実に飛ばせるようになったsumarch。毎年2割の粗利増大、給与上昇などによる人材定着、より戦略的な広告による認知度向上、さらには無担保融資によるキャッシュフロー強化といった「正のスパイラル」によって、これからも確実な成長を遂げていくことになるでしょう。しかしその原点はあくまでも「会社の数字を見えるようにする」という、当たり前のことをシンプルにやってきた結果だと、鳥居氏は語ります。

「数字が見えれば間違いなく、社員の意識が数字をコントロールすることにいきます。実際に当社の部長は私が示した目標に対して『さらに5%上を目指します』といったことを提案してくれます。いい人たちと、前向きに、いい仕事ができる会社となり、今では事業成長が会社と人の成長にとって、とても大事なことだと感じています」。

最後に鳥居氏から、読者への次のようなメッセージもいただきました。

「数字は全ての入口であり、状況を表す事実です。どれだけコントロール可能な数字を作れるか、それをもとに会話できる文化をいかに定着させるかが重要です。これはエクセルやスプレッドシートでは到底実現できません。事業成長のために企業文化をどうしていくかに悩んでいるのであれば、まずはSalesforceを入れてコントロールすべき数値を可視化し、事業計画を因数分解して組み立てていくことです。価格以上のパフォーマンスは確実に出せるので、入れない理由はないと思います」。

 
 
毎年の売上増加率
 
 
※ 本事例は2023年10月時点の情報です
 

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