カスタマーサクセスで重要なKPI13選|設定する理由と手順を解説
サブスクリプション型SaaSサービスや商品を提供している企業にとって、自社のサービスや商品を通じて顧客を成功に導くカスタマーサクセスが重要です。
カスタマーサクセスが実現すると、顧客からの企業やブランドへの信頼度が高まり、LTV(顧客生涯価値)の向上が期待できます。カスタマーサクセスを実現するためには、適切なKPI設定とマネジメントが必要です。
本記事では、カスタマーサクセスを成功させるために重要なKPIと設定手順を解説します。「カスタマーサクセスに取り組んでいるものの成果につながっていない」「KPIの設定が曖昧」などと悩まれている方は、ぜひ最後までお読みください。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは「顧客の成功」を意味し、顧客を成功に導くために企業が行うサポートや役割を指します。
たとえば、顧客が自社サービスを使って業務効率を改善したい場合、サービスの適切な利用と定着が必要です。そのため、まずはサービスをスムーズに導入・浸透できるよう、オンボーディングを行います。
このように、カスタマーサクセスでは、顧客が目標や目的を達成できるよう能動的に顧客をサポートします。
カスタマーサクセスは、従来の営業やカスタマーサポートとは異なり、提供企業と顧客双方の利害が一致したうえで実行されるため、他社と差別化しやすい点が特徴です。
したがって、サブスクリプション型SaaSビジネスを展開する企業のなかには、他社と差別化を図る目的で、カスタマーサクセスを専門に行う部署を設置するケースも見られます。
以下の記事では、SaaSビジネスを展開する企業でカスタマーサクセスが重視される理由を解説しているので、あわせてご覧ください。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、役割はもちろん、働きかけ方やサポート期間にも違いがあります。カスタマーサポートは受動的かつ短期的なサポートであるのに対し、カスタマーサクセスは、能動的かつ中長期的なサポートです。
カスタマーサポートとは、顧客からの問い合わせに対応したり、FAQやよくある質問の構築で疑問の自己解決をサポートすることです。サービスや商品を利用中の顧客に対し、短期的なコミュニケーションで問題解決に導き、顧客満足度の向上を狙います。
一方、カスタマーサクセスは、顧客の成功に向けてサポートを提案・実行するため、サービスの利用期間中は継続して行うことになります。
カスタマーサクセスを実現するためには、カスタマーサポートを充実させ、顧客の疑問や不満を解消することが大切です。
以下の記事では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いをより詳しく解説しているので、参考にしてください。
カスタマーエクスペリエンスとの違い
カスタマーサクセスとカスタマーエクスペリエンスは、意味が異なります。
カスタマーエクスペリエンスとは「顧客体験」を意味し、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスや利用中に発生するすべての体験を指します。
たとえば、サービスの認知のきっかけとなった広告やサービスサイト、SNSのことです。購入後のアフターケアや、カスタマーサポートの応対なども含まれます。
顧客が各接点で良質な体験を得られると、顧客満足度が向上し、ロイヤルカスタマーへと育つ可能性が高まります。また、よい口コミが広がり、新規顧客の獲得にもつながるでしょう。
カスタマーエクスペリエンスが向上すると、カスタマーサクセスの実現につながるため、カスタマーサクセスを見据えてカスタマーエクスペリエンスを構築することが大切です。
以下の記事では、カスタマーエクスペリエンスを高める方法を解説しているので、あわせてご覧ください。
カスタマーサクセスでKPIの設定が求められる理由
カスタマーサクセスを実現するためには、施策を最適化するためにKPIの設定と評価が必要です。
たとえば、継続率の向上を目指す際、カスタマーサクセスの施策として、設定方法を閲覧できるオンボーディング動画を用意したとします。1ヵ月後、継続率が向上していなければ、動画がオンボーディングの役割を果たせていないとわかるはずです。
結果を受けて、動画の閲覧数や閲覧時間がどうなっているかを確認し、そもそも動画への導線が整備されているか、動画内容や時間が顧客にとって適切かなど、施策の改善を行わなければなりません。
また、KPIを設定することで、担当者の対応が適切かどうかも評価でき、応対品質の改善やスキルの標準化も図れます。だれが対応しても顧客を成功に導ける体制が整うと、顧客満足度の向上が加速するでしょう。
カスタマーサクセスにおけるKGI
カスタマーサクセスにおけるKPIは、KGIから逆算して設定するのが一般的であるため、まずはKGIを検討する必要があります。KGIとは、重要目標達成指標のことで、最終的なゴールです。
ここでは、カスタマーサクセスにおけるKGIに用いられる代表的な指標を2つ紹介します。
- LTV(顧客生涯価値)
- MRR(月次経常収益)
カスタマーサクセスのゴールを明確化し、なんのために顧客の成功を目指すかを社内で共有しましょう。
LTV(顧客生涯価値)
LTV(顧客生涯価値)とは、顧客が自社の商品やサービスを使いはじめてから使い終わるまでの間にもたらされる利益を指します。
提供サービスがサブスクリプション型SaaSの場合、計算式は以下のとおりです。
LTV=ARPA÷カスタマーチャーンレート(解約率) |
各用語の解説は、以下をご覧ください。
項目 | ARPA | カスタマーチャーンレート (解約率) |
意味 | 1アカウントあたりの平均売上 | 顧客数をベースとした解約率 |
計算式 | ARPA=売上÷アカウント数 | カスタマーチャーンレート=ある期間の解約したユーザー数÷ある期間より前のユーザー数×100 |
サービスの提供形態によって、計算式が異なる場合があるためご注意ください。
カスタマーサクセスにおける施策が適切であれば、KPIの目標値が達成され、LTVが向上します。そのため、最終的にLTVの向上につながるように、KPIを設定することが大切です。
以下の記事では、買い切り型の商品・サービスのLTVの求め方や向上施策を解説しているので、参考にしてください。
MRR(月次経常収益)
MRR(月次経常収益)は、毎月継続的に得られる収益のことで、サブスクリプション型SaaSビジネスの健全度合いを測定できる指標です。
カスタマーサクセスのKGIとしてMRRを設定しておくと、各施策が収益に与える影響を測定し、適切かどうかを判断できます。
当月のMRRを求める場合の基本的な計算式は、以下のとおりです。
MRR=月額利用料×顧客数 |
なお、MRRは以下の4つに分類でき、それぞれ計算式が異なります。
各計算式と改善方法は、以下の記事で詳細に解説しているので、あわせてご覧ください。
カスタマーサクセスで重要なKPI(指標)13選
カスタマーサクセスにおけるKPIは、KGIから逆算して設定します。このとき、顧客のサービス利用段階や評価目的に応じて、適切なKPIを設定することが大切です。
ここでは、3つのサービス利用段階と総合評価をカテゴリとし、KPIを分類しました。
カテゴリ | KPI(指標) |
サービスの導入 | オンボーディング完了率 |
サービス利用 | アクティブユーザー数(AU) |
平均セッション時間 | |
継続率(リピート率) | |
解約率(チャーンレート) | |
顧客維持率(リテンションレート) | |
利用範囲の拡大 | アップセル・クロスセル率 |
総合評価 | NPS(顧客推奨度) |
NRR(売上継続率) | |
CSAT(顧客満足度スコア) | |
CSQL(Customer Success Qualify Lead) | |
口コミ・レビューサイトの投稿獲得数 | |
ヘルススコア(成功スコア) |
各段階で適切なKPIを設定し、カスタマーサクセスによる顧客への貢献度合いを測定しましょう。
以下の動画では、基本的なKPIの設定方法を解説しているので、参考にしてください。
オンボーディング完了率
オンボーディングとは、サービスの利用開始時点で、顧客がスムーズに商品やサービスを扱えるようにサポートすることで、カスタマーサクセスに向けたサポートのひとつです。
オンボーディング完了率は、オンボーディングを提供している顧客に対して、自社が設定したオンボーディングのゴールに到達した顧客の割合を指します。
計算式は以下のとおりです。
オンボーディング完了率=(自社が設定したオンボーディングのゴールに到達した顧客数÷オンボーディングを提供している顧客数)×100 |
オンボーディング完了率が向上すると、顧客がスムーズにサービスを利用できる状態になっていると判断できるとともに、解約リスクの抑制効果を見込めます。
オンボーディングの内容をブラッシュアップしたり、顧客にあわせて改善したりして完了率が高まると、LTVの向上にもつながり、カスタマーサクセスの実現に近づくでしょう。
アクティブユーザー数(AU)
アクティブユーザー数(AU)とは、現在サービスを利用している顧客数のことです。アクティブユーザー数が多いほど、サービスが多くの顧客に使われていることを意味します。
アクティブユーザー数には、以下の種類があります。
種類 | DAU | WAU | MAU |
意味 | 1日あたりのアクティブユーザー数 | 1週間あたりのアクティブユーザー数 | 1ヵ月間あたりのアクティブユーザー数 |
計算式 | DAU率=1日あたりのアクティブユーザー数÷全ユーザー数 | WAU率=1週間あたりのアクティブユーザー数÷全ユーザー数 | MAU率=1ヵ月間あたりのアクティブユーザー数÷全ユーザー数 |
各アクティブユーザー数の確認も大切ですが、全ユーザー数に対する割合と変動を見ることも必要です。
たとえば、サービスリリース後にダウンロード数が増えても、DAUが低ければ長期的な収益が見込めないでしょう。カスタマーサクセスに向けたサポートによってDAUを改善できれば、長期的な収益につなげられます。
アクティブユーザー数を追うことで、提供するサポートの的確な改善が可能です。
平均セッション時間
SaaSにおいて重要となるセッション時間とは、顧客がサービスを利用している時間の平均を指します。
平均セッション時間が長いほど、顧客はサービスに満足しているといえるでしょう。反対に平均セッション時間が短い場合は、顧客がサービスに利用価値を感じていないため、解約リスクが高まります。
計算式は以下のとおりです。
平均セッション時間=セッション時間の合計÷サービスの利用者数 |
顧客が商品やサービスの使い方をよくわかっていないと、平均セッション時間が短くなる傾向があります。平均セッション時間を延ばすためには、サービスの利用開始段階で充実したオンボーディングを提供し、顧客に使い方を熟知させるといった手法が有効です。
継続率(リピート率)
継続率(リピート率)は、ある期間内でサービスの利用を継続している顧客の割合を指します。
サブスクリプション型SaaSでは、顧客維持率(リテンションレート)と同様に扱われることもありますが、厳密には異なります。
計算式は、以下のとおりです。
継続率=(ある期間の終了時の継続顧客数÷ある期間の開始時の継続顧客数)×100 |
継続率が高いほど、顧客はサービスに満足していると判断できるため、顧客満足度の指標として用いることが可能です。
解約率(チャーンレート)
解約率(チャーンレート)とは、総顧客のうち、解約を選んだ顧客の割合を指します。
解約率にはいくつか種類があり、SaaSの場合関連する指標は以下の2つです。
- カスタマーチャーンレート
- レベニューチャーンレート
サブスクリプション型は売り切り型と異なり、顧客は一定期間ごとに契約の更新または解約を選択します。解約率が高いと「売上目標を達成できない」「顧客満足度が低下する」などにつながるため、カスタマーサクセスを充実させ、解約率を抑制しなければなりません。
顧客が解約するときは、以下のように解約理由をフィードバックしてもらう仕組みを構築し、商品やサービスの改善につなげることも大切です。
- サービスの内容に不満がある
- コストパフォーマンスが悪い
- より優秀な他社製品がある
解約率を抑えることで、継続率が向上し、売上目標の達成につながるでしょう。
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートは、顧客数をベースとした解約率で、以下の計算式で算出します。
解約率=(ある期間で解約した顧客数÷ある期間以前の顧客総数)×100 |
料金プランがひとつしかないSaaSの場合は、カスタマーチャーンレートをチェックするだけでも十分でしょう。
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートとは、売上や収益をベースとした解約率で、以下の種類があります。
項目 | グロスレベニューチャーンレート | ネットレベニューチャーンレート |
意味 | 解約によって失った収益をベースとした解約率 | 解約によって失った収益とアップセル・クロスセルで増加した収益をベースとした解約率 |
計算式 | グロスニューチャーンレート=(ある月に失った収益÷月初の収益)×100 | ネットレベニューチャーンレート={(ある月に失った収益-増加した収益)÷月初の収益}×100 |
料金プランにグレードがあったり、オプションが複数あったりするサービスや商品は、アップセル・クロスセルにつながる可能性があるため、レベニューチャーンレートを指標として活用するのが適しています。
顧客維持率(リテンションレート)
顧客維持率(リテンションレート)は、ある期間内で維持できた顧客の割合を指します。
計算式は以下のとおりです。
顧客維持率={(ある期間の終了時の顧客数-ある期間の新規顧客数)÷ある期間開始時の顧客数}×100 |
カスタマーサクセスでは、顧客に長くサービスを使ってもらうことを目的のひとつとしています。「ある期間」を半年間あるいは1年間など任意で設定し、期間中の顧客維持率の変化を見ることで長くサービスを使ってもらえているかどうかの評価が可能です。
以下の記事では、顧客との関係を維持するためのリテンションマーケティングについて解説しているので、あわせてご覧ください。
アップセル・クロスセル率
項目 | アップセル | クロスセル |
意味 | 顧客が利用中のプランからより単価の高いプランへ移行を促すこと | 顧客が利用中のプランのオプションや関連サービスの購入を促すこと |
計算式 | アップセル率=アップセルした顧客数÷総顧客数 | クロスセル率=クロスセルした顧客数÷総顧客数 |
アップセル・クロスセルが果たされると、顧客単価やLTVの向上が見込めます。
ただし、アップセル・クロスセル後に、顧客の成功につながらなければ、顧客満足度が低下し解約につながるおそれもあります。
そのため、アップセル・クロスセルを行った顧客に対し、手厚いサポートを提供することで、カスタマーサクセスにつなげることが大切です。
NPS(ネットプロモーションスコア・顧客推奨度)
NPS(ネットプロモーションスコア・顧客推奨度)とは、顧客の企業に対する愛着や信頼をあらわす顧客ロイヤルティの指標のひとつです。
NPSを測定する際は、利用中のサービスを周囲の人にどの程度勧めたいかをあらわす推奨度を、顧客に10段階で評価してもらいます。その後、点数ごとに顧客を以下の3種類に分類し、顧客ロイヤルティを測定します。
- 0~6点をつけた人:批判者
- 7~8点をつけた人:中立者
- 9~10点をつけた人:推奨者
計算式は以下のとおりです。
NPS=推奨者の割合-批判者の割合 |
NPSが向上すると、自社サービスの推奨者が増えるため、LTVの向上につながります。顧客の満足度も高い状態であるため、カスタマーサクセスの総合評価指標として重要です。
NRR(売上継続率)
NRR(売上継続率)とは、顧客がサービスの利用のために支払っている料金を調査し、前年比や前月比を算出することで、どれだけ売上を維持できているかを測定する指標です。
サブスクリプション型SaaSの場合、利用プランのアップグレードやダウングレードによって使用料が変動するため、顧客全体の利用料の変動を見るために活用します。
計算式は、以下のとおりです。
NRR=月初のMRR+(既存顧客のアップセル/クロスセルによる月間収益-解約した顧客によって損失した月間収益-既存客のダウングレードによって損失した月間収益)÷月初のMRR×100 |
MRRとは、毎月固定で得られる収益を指します。NRRを把握するためには、MRRを算出しておく必要があります。
CSAT(顧客満足度スコア)
CSAT(顧客満足度スコア)は、顧客満足度を測定し、可視化する指標のひとつです。顧客満足度調査をはじめとするアンケート調査で測定します。
もっとも簡単な計算式は、以下のとおりです。
CSAT=(アンケート調査で「満足」と回答された数÷アンケート調査の総回答数)×100 |
CSATが高いと、顧客はカスタマーサクセスに向けたサポートやサービスに満足していると判断できます。CSATの高低を追うと、カスタマーサクセスの課題発見にも役立つでしょう。
以下の記事では、CSAT以外の顧客満足度指標と調査方法を解説しているので、あわせてご覧ください。
CSQL(Customer Success Qualify Lead)
CSQL(Customer Success Qualify Lead)とは、カスタマーサクセスに向けた施策によって生成された、アップセル・クロスセルの対象となる可能性が高い見込み客を指します。
ほかの指標とは異なり、数値化できる計算式はありません。
カスタマーサクセスでは、顧客単価の向上が目標のひとつとなるため、顧客をアップセル・クロスセルにつなげる必要があります。CSQLは、アップセル・クロスセルによって顧客単価が向上する見込みが高いため、優先的に働きかけることが大切です。
まずは、カスタマーサクセスに向けたサポートやサービスによって顧客をCSQLに育成し、アップセル・クロスセルに導きましょう。
口コミ・レビューサイトの投稿獲得数
口コミ・レビューサイトの投稿獲得数や評価の高さは、カスタマーサクセスの指標のひとつになり得ます。
もっとも簡単な測定方法は、ある期間内に獲得したレビュー数をカウントすることです。
顧客の生の声である口コミやレビューのなかでもマイナスのレビューは、サービスの具体的な改善点を見つける際に役立ちます。プラスの評価が増えるように、サービスを充実させていくことで、LTVや顧客満足度の向上を狙えます。
ヘルススコア(成功スコア)
ヘルススコア(成功スコア)とは、さまざまな指標を組み合わせて顧客のサービス利用状況を評価する総合的指標です。ヘルススコアをチェックすることで、顧客がサービスを継続してくれるかどうかを判断できます。ヘルススコアが低い場合は、解約リスクが高い状態です。
ヘルススコアの基準には、アクティブユーザー数やNPSなどを用います。複数指標を組み合わせ、100点満点となるように点数を設定することで、ヘルススコアを可視化できます。
ヘルススコアを高めるサポートを提供構築することで、カスタマーサクセスを実現することが可能です。
カスタマーサクセスにおけるKPIの設定例
さまざまなKPIを紹介しましたが、提供する商品やサービスの種別や市場、顧客数などによって、適切なKPIは異なります。
SFA/CRMをはじめとするサブスクリプション型SaaSサービスを提供するSalesforceでは、カスタマーサクセスグループのKPIを以下のように設定しています。
主要なKPI | 具体的な指標 |
契約更新率(継続率) | ・価値 ・お客さまの投資対効果 |
成功スコア(ヘルススコア) | ・ログイン状況 ・データ量 ・連携状況 ・アプリケーション構築数 ・サポートへの問い合わせ数 ・プログラムの活用度 ・追加商談の状況 |
顧客接点(エンゲージメント) | ・トレーニングの受講状況 ・コミュニティやイベントへの参加状況 ・動画資料の視聴状況 ・アプリケーションのダウンロード数 |
参考:『訪問しない時代の営業力強化の教科書 営業×マーケティング統合戦略』(著:株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社パーソル総合研究所、渥美英紀)をもとに作成
Salesforceでは、契約更新率の高さが商品やサービスの評価の証と捉えており、主要なKPIに定めています。解約や契約更新に至るまでのさまざまな指標を分析することで、顧客の状態や変化を察知し、改善につなげます。
実際には、顧客ニーズに沿った取り組みにつなげるために、より具体的な指標に細分化したうえで分析を行っている点には留意が必要です。
なお、SFA/CRMやBIツールを用いてデータの収集・可視化を自動化すると、複数の指標をリアルタイムに追えます。
以下の記事では、Salesforceが実践しているカスタマーサクセスのポイントを解説しているので、あわせてご覧ください。
カスタマーサクセスにおけるKPIの設定手順
ここでは、カスタマーサクセスにおけるKPIの設定手順を大きく3つの段階に分けて解説します。
- KGIを設定する
- 現状を把握する
- カスタマージャーニーにあわせてKPIを設定する
KGIから逆算することで、KPIを適切に設定できます。現在、カスタマーサクセスのKPI設定がうまくいっていない場合は、手順を参考に見直してみてください。
KGIを設定する
KPIを設定する際は、最終的なゴールであるKGIを設定し、KGIを達成するためにやるべきことであるKFS(重要成功要因)を決めます。KFSを達成するために必要な指標がKPIであり、KPIを達成することがKGIの達成につながるというように、つながりを考えることが大切です。
カスタマーサクセスにおいて、最終的なゴールは「顧客の成功」です。なにをもって顧客が成功したと判断するのかを考えたうえで、それを実現するためにどのようなKGIを達成する必要があるのかを考えます。
KGIは、大きな目標ではありますが、評価と改善を繰り返すためにも「いつまでにどれくらい達成したいか」という定量的かつ数値的な目標であることが望ましいでしょう。
現状を把握する
KGIを設定したら、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのカスタマージャーニーを整理したうえで、KGI達成までのプロセスを明らかにします。
各プロセスの現状を把握し、カスタマーサクセスの達成度合いと目標との差を確認しましょう。差があまりにも大きすぎる場合は、達成できる目標を再設定する必要があります。
現状把握を通じて、顧客の状態を知ることも大切です。ヘルススコアを集計し、既存顧客の状態がわかれば、適切な施策につなげられるでしょう。
以下の動画では、カスタマージャーニーの価値を解説しているので、ぜひご覧ください。
カスタマージャーニーにあわせてKPIを設定する
現状把握が終わったら、カスタマージャーニーのプロセスごとに、適切なKPIを設定します。
たとえば、商品やサービスの「認知」「導入」「利用中」「更新」というようにプロセスを分けると、どのような指標を測定すべきか見えてくるはずです。このとき、必ずKGIをもとに設定したKFSにもとづき、KPIを選定しましょう。
なお、分析になれていない場合は、最初から多様なKPIを設定すると混乱に陥るため、重点的に追いたいKPIを絞って設定するのがおすすめです。
KPIマネジメントを通じて、PDCAを回しているうちに「あの指標も見ておきたい」となることが多いため、必要に応じて増やしてみてはいかがでしょう。
カスタマーサクセスのKPIを設定するポイント
以下の5つのポイントを押さえておくと、カスタマーサクセスのKPIを適切に設定できます。
- 自社に合った指標を選ぶ
- 短期的に対応できるKPIを設定する
- 定期的に評価・改善を繰り返す
- カスタマーサクセスのKPIを達成するしくみを作る
- MBO(目標管理制度)と個人目標は別で設定する
顧客満足度やLTVの向上に向けて、ポイントを押さえたKPIマネジメントを実行しましょう。
自社に合った指標を選ぶ
企業が抱える課題や提供する商品やサービスの種類、参入市場など、さまざまな要因によって選ぶべき指標が変わるため、自社のビジネスに合ったKPIを選定することが大切です。
たとえば、複数の商品を扱っている場合、以下のようにさまざまな目標があり、設定すべき指標が異なります。
- 全体的な底上げをしたい
- 特定の商品に注力したい
- 成約間もない顧客を手厚くケアして優良顧客に育てたい
- 優良顧客向けのアップセルを強化したい
KPIを設定する前に、カスタマーサクセスにおいて「どの要素を伸ばしたいのか」を決めておくことが大切です。決めた要素に対してKGIとKPIを設定することで、カスタマーサクセスの達成度合いを正しく評価できるでしょう。
短期的に対応できるKPIを設定する
KPIを設定する理由は、カスタマーサクセスの達成度合いを評価し、顧客への貢献度を測定することです。評価しても分析・改善しなければ、KPIを設定する意味がありません。
分析と改善に時間がかかると、顧客離れが進むおそれがあります。
そのため、短期的に対応できるKPIを選ぶことが大切です。測定にある程度の期間が必要な指標を扱うのであれば、それを補う短期指標を併用するといいでしょう。
KPIの動きを見ながら、短期間でPDCAを回していける指標を設定することが大切です。
また、デジタルツールを活用して、データの収集・分析を加速させることで、改善までのプロセスを短縮することも可能です。
定期的に評価・改善を繰り返す
KPIは「一度決めたら、それで固定」というものではなく、定期的に見直し、変更していくものです。
当初設定したKPIが、実際に回してみたらあまり実状を反映していないというケースは少なくありません。むしろ、最初から完璧なKPI設定ができるケースのほうが少ないでしょう。
不適切なKPIをそのまま使い続けていると、KPIを設定した意味が薄れてしまううえ、改善しても期待した効果が得られません。
そのため、一般に広く使われている数値をKPIに設定したとしても、そのKPIが妥当かどうか、常に検証することが大切です。もしも妥当でないと判断した場合は、ほかの数値に差し換えたり追加したりしながら、改善していきましょう。
カスタマーサクセスのKPIを達成するしくみを作る
適切なKPIが設定できたら、達成するための行動に落とし込みます。
たとえば、アップセル・クロスセルのタイミングを測る際は、顧客ごとにどのような機能がよく使われているのかをチェックし、具体的な行動に移します。
KPIは設定するだけでは意味がなく、達成するための行動が不可欠です。KPIの下に、施策レベルにまで落とし込んだサブKPIを設けておき、その数値を追いかけることでKPIの達成に近づけるというしくみを作っておくとよいでしょう。
解約率をKPIとした場合、初回ログイン率やアクティブ率がサブKPIとなります。初回ログイン率やアクティブ率を向上させるためにどのように働きかけるかを考えていくと、やるべき行動が明確になるはずです。
MBO(目標管理制度)と個人目標は別で設定する
カスタマーサクセス部門の大きな役割は、解約率を抑え継続率を向上させることです。
ただし、解約理由にはさまざまあり、一概にカスタマーサクセスの取り組みが影響しているとはいえないことがあります。
たとえば、営業担当者との相性が原因で解約に至った場合、カスタマーサクセス部門では改善が難しいでしょう。そのため、継続率の達成度を評価指標や個人目標に設定すると、思うように成果につながらず、従業員の負担や不満につながるおそれがあります。
大きな目標として継続率を掲げるのは問題ありませんが、人事評価においてはKPIと個人目標を切り離して考えたほうがよい場合があります。
カスタマーサクセスにおけるデータ活用の重要性
カスタマーサクセスでは、企業の取り組みが顧客の成功にどれくらい貢献したかを測定するKPIを設定したうえで、活動指針としてヘルススコア(成功スコア)を構築することが大切です。
担当者の経験や勘などの主観に頼るのではなく、定量的なデータを活用して客観的に設定することで、より精度の高い施策につなげられます。
SFA/CRMやMAを活用すると、サービス利用状況を定量的に測定することが可能です。また、収集したデータをBIツールで可視化すると、KPIの達成状況をリアルタイムに確認できるようになります。
このように、カスタマーサクセスにおいては、デジタルツールを活用したデータ活用が重要です。
カスタマーサクセスにおけるデータ活用を促進するツール
デジタルツール | 概要 | 特徴 |
Sales Cloud | 営業効率を高めるSFA機能を有した顧客管理ツール | オンボーディングのKPI設計から分析を行える |
Marketing Cloud | メール配信などのマーケティング業務を効率化するMAツール | マーケティング施策のKPI設定から分析を行える |
Data Cloud | Sales CloudやMarketing Cloudなどからデータを収集し、分析・可視化するツール | 設定したKPIをダッシュボードで可視化し、リアルタイムに分析できる |
まとめ:最適なKPIを設定しカスタマーサクセスを成功させよう
カスタマーサクセスでは、顧客への貢献度を測定し、より成功に近づけるためにKPIの設定が必要です。KPIを設定する際は、KGIからKFSに落とし込み、KFSを実現するための細かい指標を選定します。
はじめてカスタマーサクセスに取り組む場合は、あらゆる指標を追うのではなく、いくつか絞ってPDCAを回し、都度指標を見直してみましょう。繰り返し行うなかで、自社に合った指標が見えてくるはずです。
複数のKPIを追う際は、データの収集・分析を自動化するデジタルツールの活用がおすすめです。ツールを活用することで、改善までのプロセスが短縮され、カスタマーサクセスを加速させられるでしょう。
Salesforceでは、業務や業種にあわせて機能を特化したデジタルツールを多数提供しています。
企業が扱う商品やサービス、求める機能によって最適なツールは異なります。解決したい課題や実態に応じて適切なツールを紹介しますので、お気軽にお問い合わせください。
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