NPSとは?計算方法や3ステップの活用法、4つの問題点を解説
そこで、顧客の反応を数値化・分析するために、注目されているのがNPSです。ここでは、NPSとはいったい何なのか、また、業績アップのためにどのように活用していけばいいのかについて解説します。
NPSとは、顧客ロイヤルティを数値化した指標のこと
企業や製品・サービスに対する、顧客からの愛着や信頼のことを顧客ロイヤルティといいます。顧客が企業や製品・サービスに対し、「信頼できる」「ここなら大丈夫だ」と感じていれば、それだけリピート率も高くなります。友人や家族に、「いいお店を知らない?」と聞かれたときに、すすめてもらえる可能性も高くなるでしょう。
顧客がどのくらいの顧客ロイヤルティを持っているかを測ることができれば、顧客からのリアルな評価を知ることができます。そこで、誕生したのがNPSです。NPSを測定することで、可視化しづらい顧客ロイヤルティを数値として知ることができるようになります。
顧客の反応を見るための指標は顧客満足度からNPSへ
これまで、顧客の反応を知るための指標には、「顧客満足度」がしばしば利用されてきました。顧客満足度とは、「製品やサービスに対して、顧客がどれほど満足しているか」の度合いであり、本来は顧客ひとりひとりによって異なる主観的なものです。そのため、アンケートなどを通じて数値化し、客観的な評価指標として利用されています。
また、近年SNSが発達したことによって、個人による口コミが、製品・サービスに及ぼす影響が以前よりも大きくなりました。個人がある製品を紹介することで、これまで知名度の低かった物が爆発的に売れるようになるという現象もしばしば起こっています。反対に、SNSの悪い口コミが売上に悪影響を及ぼすこともあります。
近所の友人や知人、家族といったつながりを超え、誰もが世界中に向けて気軽に意見を発信できる昨今、NPSによって「他の人への推奨度」を測ることに注目が高まっています。
NPSの3つのステップでの測定方法
NPSの測定は、3つのステップで進めます。各ステップについて、順を追って詳しく見ていきましょう。
<測定方法>
- ステップ1 アンケートをとる
- ステップ2 集計する
- ステップ3 計算する
ステップ1 アンケートをとる
ステップ2 集計する
ある程度の回答が集まったら、結果を集計します。NPSでは、選択した数字によって、顧客を「批判者」「中立者」「推奨者」の3つのカテゴリに分けて計算を行います。
そこで、集計を行う際も、この3つのカテゴリに属する顧客が何人いるかを確認します。選択した数字ではなく、それぞれのカテゴリごとの人数をチェックするという点に注意しましょう。
- 0~6をつけた顧客:批判者
- 7、8をつけた顧客:中立者
- 9、10をつけた顧客:推奨者
上記に従って、アンケート結果を分類します。
ステップ3 計算する
最後に、NPSを求めるための計算を行います。
批判者と推奨者が全体の何%を占めているのかを計算しましょう。中立者は計算には必要ないため、省きます。推奨者のパーセンテージから批判者のパーセンテージを引いた数字がNPSとなります。
<NPSの計算式>
NPS=推奨者のパーセンテージ-批判者のパーセンテージ
仮に、1,000人に対するアンケートをとり、批判者が400人、中立者が300人、推奨者が300人だった場合は、批判者が40%、推奨者が30%となりますから、NPSは-10(30-40)となります。
NPSを利用する4つのメリット
続いて、NPSを利用することに、どのようなメリットがあるのかについてご説明します。
<NPSを利用する4つのメリット>
- 特別なプログラムがなくても測定可能
- 結果が数値化されるのでわかりやすい
- 他社のNPSと比較することで顧客の自社への評価が明確になる
- 企業成長との相関関係が高い
特別なプログラムがなくても測定可能
NPSのメリットのひとつに、「思い立ったときにすぐに導入できる」ことがあります。NPSの数値測定は、特別なプログラムを組むことなく、紙面によるアナログのアンケートでも行える手軽なものです。たとえば、オンラインサービスのフォーム作成機能で「あてはまる数字を選んでください」というアンケートを設置すれば、誰でも今すぐに始めることができ、集計も自動で行えます。
もちろん、顧客情報と顧客ロイヤルティの数値を一元管理したり、業績の推移と比較を行ったりするといった詳しい分析をするためには、分析に特化した方法が役立ちます。一方で、NPSは「誰でも」「いつでも」「気軽に」始められることも事実であり、大きなメリットのひとつとなっています。
結果が数値化されるのでわかりやすい
NPSの大きなメリットに、「目には見えない顧客ロイヤルティを数値化できる」ことがあります。 「口コミで高い評価を得ている」といわれても、それが本当かどうか数値で示すことができなければ、説得力がありません。また、「半年前の評価」と「今の評価」を比較しようとしたとき、「評価は概ね良いようだ」という程度の分析では、顧客の感情にどのような変化があったのかを正確につかむことはできません。
その点、NPSであれば、「数値が10から15に上がった」といった風に、明らかな変化をキャッチすることができます。これは、顧客のニーズを理解するためにも、今後の経営方針を決定する上でも、大きく役立ちます。
他社のNPSと比較することで顧客の自社への評価が明確になる
同業他社の中で、自社がどのような位置に属しているのかは、売上や企業規模などによって知ることができます。しかし、顧客からの評価を明確に知るためには、売上だけを見ていたのでは不足だといえるでしょう。売り出し方などによっても製品・サービスの売上は変動します。このような条件を排し、純粋に顧客からの評価だけを知るのであれば、NPSが役立ちます。アンケート内に同業他社含めた質問項目を入れれば、顧客の評価を比較できるというわけです。
A社の経営するパスタ店のNPSが10であるのに対し、B社の経営するパスタ店のNPSが30だった場合、顧客ロイヤルティはB社が経営するパスタ店のほうが高いことになります。にもかかわらず、A社のほうが経営状況が良好である場合、B社には製品そのものや顧客ロイヤルティ以外の部分に、何かしらの問題があると考えられます。
企業成長との相関関係が高い
NPSは、企業成長との相関関係が高い指標であるといわれています。顧客満足度が必ずしもリピート率や口コミによる新規顧客開拓と結びつかないのに対し、NPSは業績に結びつきやすく、NPSを高めることは業績を高めることに直結していきます。
NPSは、先程ご説明したとおり、「推奨者から批判者の割合を引く」ことで計算されます。つまり、NPSを高めるためには、推奨者を増やし、批判者を減らす必要があります。「すすめたくない」と感じられてしまう原因を取り除き、「すすめたい」と多くの人に思ってもらうことで、リピーターや新規顧客が増えれば、自然と業績もアップしていくということです。
NPSの4つの問題点
NPSのメリットをご紹介しましたが、問題点も存在しています。それが、数値のぶれです。NPSは、顧客ロイヤルティを数値化するものですから、その数値の算出にぶれが出てしまうと、正確な評価を得ることができません。ぶれが起こってしまう原因には、次のようなことが考えられます。
<4つの問題点>
- 国民性的に正確な値が出てこない場合がある
- 数字別の評価が見えない
- 質問の仕方やタイミングによって答えが変わりやすい
- 具体的な理由は見えてこない
国民性的に正確な値が出てこない場合がある
数字別の評価が見えない
質問の仕方やタイミングによって答えが変わりやすい
NPSについてのアンケートをとる際、「インターネット上で既存顧客に対して聞く」のか、「製品を購入した人にその場で係員が聞くのか」といった違いで、答えに変化が出る可能性があります。
インターネット上でアンケートを取った場合、「すすめる」と思っていても、「9や10というほど強い気持ちではない」と感じて7や8を選ぶこともあるでしょう。しかし、係員が直接質問した場合は、「すすめていただける場合は9や10を選んでください」と補足説明をすることができますし、顧客側にも、目の前にスタッフがいることで「高い数値をつけないと悪いかもしれない」という心理が働きます。
また、今まさに商品を購入したばかりの顧客は、商品に対して、購入に至るだけの強い魅力を感じているということになります。そのため、既存顧客に比べて高い数値を選ぶ可能性が高いでしょう。
このように、アンケート手法や質問するタイミングによって選ぶ数字が変わってしまうと、NPSの測定結果にもぶれが出てしまいます。
具体的な理由は見えてこない
NPSを効果的に活用するための4つの方法
NPSを効果的に活用するには、ただ漠然とアンケートをとって、顧客ロイヤルティを数値化するのではなく、以下のように計画的な運用を行う必要があります。
<効果的に活用するための4つの方法>
- 質問の仕方や対象者を検討する
- できるだけ多くの回答を集める
- フォローを行う
- 結果のフィードバック
質問の仕方や対象者を検討する
NPSを利用して何を知り、どのように活用していきたいのかによって、質問の仕方や対象者は変わってきます。対象者ひとつをとっても、利用者すべてを対象にアンケートをとるのか、1年以内にリピートをした人を対象にするのかによって答えは変わってくるでしょう。年齢や性別、住まいなど、特定のゾーンに含まれる顧客の意見が知りたいということもあります。対象者を誰にするのかは、その後の数値の活用の仕方に直接関わってくる部分ですから、慎重に検討することが大切です。
また、質問の仕方にも注意が必要です。たとえば、1年前の調査では店員が直接質問して謝礼を渡していたが、今回はインターネット上での調査にする場合、実際の顧客ロイヤルティとは異なる理由で数値の変化が出てしまう可能性があります。なんとなく行うのではなく、意図的に質問の仕方や対象者を設定することがNPSの活用には必須です。
できるだけ多くの回答を集める
フォローを行う
NPSの回答別に顧客を分類し、それぞれの分類に応じたフォローを行いましょう。これを行うことで、NPSの数値が低かった顧客の不満を改善し、中立、あるいは推奨顧客に引き上げたり、推奨者が中立者になってしまうことを防いだりする効果も期待できます。
具体的には、問題点の洗い出しと改善、そのためのシステム構築などが挙げられます。顧客ロイヤルティが低い顧客が「カスタマーセンターの対応が遅い」という不満を感じているのであれば、これを改善・周知する必要があります。具体的にどのようにフォローアップを行っていくのか、プランを策定してサービスや製品の改善を進めましょう。
結果のフィードバック
NPSを測定した結果、どのような数値が出て、そこから何が読み取れるのかを分析したら、それを現場にフィードバックする必要があります。NPSは顧客の評価ですから、経営陣など、一部の人だけが知っていても意味がありません。
何をすればNPSを上げることができるのか、どこの部署のNPSが高く、どこが低いのか、問題点は誰がどのように改善していくのかを考えてみましょう。NPSの分析結果を現場と共有することで、顧客への対応を具体的にどう変えていくべきなのかが見えてきます。
ここで大きく役立つのが、回答者が「何をどのように評価したか」という点です。先程解説したように、NPSでは評価が高くても低くても、「なぜその数字を選んだのか」という理由が見えてきません。ですから、現場へのフィードバックの効果を高めたいなら、質問数を増やし、具体的な点について調査することです。 たとえば、ビジネスツールを提供するクラウドサービスの場合なら、「機能」「使い勝手」「価格」など、複数の項目を設け、支持されている点を明らかにするのです。すると、「機能には満足してもらっているが、使い勝手が今ひとつのようだ」「性能に比べて割安感があるらしい」ということが見えてきます。 こうした、「自社の強みと弱み」を知り、それぞれを伸ばして改善していくことが、顧客ロイヤルティをさらに高めることにつながります。
まずはNPSを導入して顧客の意向を把握するところから始めよう
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