大きなトラブルを事前に防ぐインシデント管理の基礎知識

投稿日:2021.7.19
大きな障害に発展する前に、その芽を摘み取るインシデント管理。今や多くの企業にとって重要な課題となっています。では、どのようにインシデントを処理していけばいいのでしょうか。
ここでは、インシデント管理を行うことのメリットや管理方法について解説します。さらに、インシデント管理にツールを活用するメリットについてもご紹介します。

インシデント管理とは何か?

「インシデント管理」という言葉は幅広い分野で使われていますが、この記事では、ITサービスにおけるインシデント管理について解説します。
現在、多くの企業がさまざまなITサービスを利用していますが、何らかの不具合が起こった場合、その影響は非常に大きなものになります。不具合の内容によっては、業務全般が止まってしまいますし、顧客情報の流出など、顧客も巻き込んだトラブルにまで発展しかねません。そうなれば、企業の存続にも関わる問題にもなりえます。
そうした事態を未然に防ぐため、トラブルがまだ表面化する前の「インシデント」の段階で察知し、回避するのがインシデント管理の目的です。

インシデントの意味

インシデントとは、元々「良くない出来事」あるいは「ちょっとした異変」という意味の言葉です。一般的には、「もしかしたら重大な事態に発展したかもしれなかった出来事」「大惨事につながりかねない異変」といった意味合いで用いられます。工場や工事現場で使われる、「ヒヤリハット」と似た意味の言葉です。
ちなみに、インシデントは国際的な規格である「ISO 22300」でも定義されており、「中断・阻害、損失、緊急事態又は危機になり得る又はそれらを引き起こし得る状況」とされています。

インシデント管理によるメリット

インシデント管理を行うことで、大きなアクシデントを未然に防ぐ、危険回避のメリットが生まれます。サービス提供側、ユーザー側から見た、それぞれのインシデント管理のメリットをご紹介しましょう。

サービス提供側のメリット

各種ITサービスの提供企業から見れば、自社提供のサービスに何らかの障害が起こるということは、なんとしても避けたいところです。何より、ユーザーに迷惑をかけることになりますし、自社の信用にも関わります。
そうした事態を未然に防ぐインシデント管理は、まさに「転ばぬ先の杖」といえます。大事に至る前に対応することができれば、大きな安心感につながります。

また、過去に起こったインシデントの事例をデータベース化して一元管理しておけば、ユーザー側のシステム等に起因するトラブルにも、すばやく正確に対応することができます。ユーザーからの問い合わせに対して最短距離で解決にたどり着くことができれば、サポートの業務効率が高まりますし、ユーザー側の満足度も向上するでしょう。

さらに、インシデントに対する管理体制をきちんと構築しておけば、インシデント発生時の状況に応じて対応レベルを変えることができます。つまり、日常的に起こるものはユーザーサポートの担当者レベルで解消し、より大きなインシデントや状況の分析などはマネージャークラスが担当するという具合に、役割を分担することができるのです。
「問題が起こったら解決する」という場当たり的な処置の繰り返しではなく、分析結果をフィードバックして、さらに品質と安全性を高めることにつなげられます。

ユーザー側のメリット

トラブルとはいえないほどの出来事であっても、迅速で的確なサポートによって大事に至る前に解決することができれば、ユーザーにとっても歓迎すべきことです。
それが信頼となって、サービスやサポートに対する安心感につながります。

インシデント管理の方法

インシデント管理は、いかに効率良く、しかもスピーディかつ正確に処理していくかという点が重要なポイントといえます。
ここからは、インシデント管理の方法を、順を追って解説していきます。

1. インシデントの検出

まずは、ユーザーからの連絡や問い合わせ、あるいは監視システムからのアラートなどによって、インシデントを検出します。個々のインシデント管理は、ここから始まります。インシデントであると確認できれば、次のステップに進みます。

2. インシデントの分類

現状を把握した上で、過去に同じ事例がないかを確認します。同じ事例があればそれを参照し、影響を及ぼす範囲や今後の予測を立てていきます。同時に、インシデントがどのような種類のものかを分類し、レベルを設定します。
ここでいう「レベル」とは、業務への影響などを踏まえた、緊急度や優先度を指します。これらのレベルが高くないなら現場担当者が対応することになりますが、レベルが高ければ上位レベルに報告し、対応をゆだねる「エスカレーション」の必要があるでしょう。それらを判断するのが、このプロセスです。

3. インシデントの解決

低レベルのインシデントは、現場レベルで対応します。ユーザーへの対応はユーザーサポートが窓口となりますが、インシデントの内容によってシステム担当者など、最適なサポートメンバーを起用して解決にあたります。
なお、現場担当者では解決できないインシデントの場合は、マネージャーにエスカレーションします。状況によっては、マネージャーとシステム責任者で問題の解決にあたることもあるでしょう。

4. インシデントの記録・登録、経過観察など

インシデントが解決したら、一連の記録をナレッジとしてデータベースに登録しておきます。そのためには、後日いつでも参照できるよう、フォーマットを決めておく必要があります。
ユーザーへのフォローを行い、必要であれば経過観察を行いましょう。この場合は、すべてのフォローが完了するまで、管理が続くことになります。

5. 報告・終了

管理ツールを活用してインシデント管理するメリット

インシデント管理のプロセス、およびその管理の内容は、決して複雑なものではありません。しかし、ナレッジをデータベースとして残すことを考えれば、プロセス全体を何らかのツールで管理すべきです。事態が収束した後でレポートにまとめるといったフローでは、記憶違いや記載漏れが入り込み、ナレッジとしても役立ちません。
インシデントの管理ツールにはいくつもの種類があり、それぞれ使い勝手や細かな機能の上で違いがあるものの、基本的な機能はほぼ共通しています。最後に、インシデント管理にツールを使うメリットをご紹介しましょう。

状況を可視化できる

状況を可視化することで「今、どこで、何が起こっているのか」をリアルタイムで把握することができます。これにより、原因の推測や特定がスムーズにでき、正確ですばやい対応をとることが可能になります。「早急に解決・復旧する」というインシデント対応の重要なポイントを逃しません。

対応フローを標準化できる

インシデントの管理とフローは、標準化され共有されていることが不可欠です。ここに属人性が入り込んでしまうと、対応の質やスピードにばらつきが生まれることになりますし、均質な結果につながりません。管理ツールの導入は、こうしたフローの標準化に寄与します。

作業を自動化できる

管理ツールを使うと、管理プロセスの多くの部分を自動化することができます。たとえば、ユーザーからの問い合わせなどからインシデントを受けつけると、担当者にメール等で通知し、内容に応じた分類や優先度の設定などを自動的に行います。機械的に行える部分をツールに任せることで、担当者はインシデントの解決に集中することができます。

インシデント管理には、常に「今以上の備え」を

“危険の種”が育つ前に事前に対処する。それがインシデント管理です。一時たりとも気の抜けない業務課題ではありますが、万一の事態を引き起こさないためにも、常に今以上の備えを用意しておく必要があります。
自社の体制を見直し、万全なインシデント管理を行ってください。
 

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