コールセンターのナレッジを共有する方法
投稿日:2020.11.27
コールセンターにおける顧客対応では、あらかじめ用意するマニュアルやスクリプトでは収まりきらない、イレギュラーな対話が常に生じます。そのため、オペレーターは顧客と接する中で、伝わりやすい説明方法などのナレッジを個別に日々蓄積しています。
ここでは、オペレーターに顧客の心情やニーズをとらえる最重要のミッションに専念できるよう、このようなナレッジをコールセンター全体の集合知として、正確さ・統一性を担保したかたちで共有するための方法をご紹介します。
オペレーターによるFAQの分担作成
電話応対でオペレーターが正しい回答を行うには、よくある質問(FAQ=Frequently Asked Question)に対する回答をあらかじめ用意し、参照しやすい形式にまとめておく必要があります。
とはいえ、通常業務を休まず回すかたわら、実践的・網羅的なFAQをトレーナーやスーパーバイザー、マネージャーといった一部の顔ぶれだけで完成させるのは至難の業といえるでしょう。ここで参考になるのが、ある生命保険会社の取り組みです。
現場管理者の多忙が続いていた同社では当初、本社が指示したFAQの改正に手が付けられない状態でした。このため外部のコンサルタントとも相談した結果、業務の閑散期を利用してスタッフ全員でFAQを分担作成することとなりました。
コールセンターに寄せられる問い合わせの大まかなパターンをまずトレーナーが分類した後、想定される具体的な質問事項をスーパーバイザーが列挙。これをもとに約120人のオペレーターが「1人1日1問」のペースで回答案を作成しました。トレーナーによるチェックを経て完成した回答は、20日間で2,000件超。ほぼあらゆる場面を網羅するFAQを、わずか1カ月足らずで構築できたことになります。
こうした試みには、当初狙いとした「FAQの充実」にとどまらない効果もあったといいます。つまり、オペレーター全員が一斉につくった回答案のチェックを通じ、トレーナーは「Aさんは説明を丁寧に」「Bさんは専門用語をかみ砕いて」など、1人ひとりのスキル向上に向けた課題を明確化できたのです。より的確な指導・研修が可能となったこのコールセンターの運営は、FAQを分担作成したことを機に、劇的な改善がみられたといいます。
せっかく構築したFAQも、有効に活用されなければ意味がありません。例えば「応対中のオペレーターがキーワードを入力すると、関連性が高いトピックの候補が挙がる」といったように、FAQを運用するシステムには、適切な情報にすぐたどり着ける検索性能の高さが求められます。
いったん網羅的な回答をそろえても、事情の変化に応じた情報の修正や再構成は、その後も随時必要となります。また顧客の自己解決を支援する観点から、もともと社内利用目的で作成したFAQを公開コンテンツに流用する展開なども考えられるところです。
FAQシステムには、こうした多様なカスタマイズに、現場レベルでも容易に対応できるユーザビリティーも重要といえるでしょう。
ナレッジを構造化する「KCS」の手法で、共用と改善を加速させる
「商品Aのサプライ品Cは販売終了と聞いた。今から入手する方法はあるか?」
「直営ECサイトにCの在庫が残っており購入可能だが、新商品であるB向けのサプライ品DをAに流用しても通常の使用に問題はない」
膨大なFAQの1項目として、例えばこんなナレッジがあったとしましょう。電話口で顧客を待たせているオペレーターが短時間でこの情報にたどりつくには、あるいは在庫がなくなった際のアップデートを容易にするには、どのような方法が考えられるでしょうか。
現在、もっとも有力なアプローチとされているのは「構造化」です。具体的には、
「Aのサプライ品Cの入手方法(問題)」
「新モデル発売に伴い、Cは在庫限りで販売終了(条件)」
「直営ECサイトに在庫あり(解決策)」
「新モデルBのサプライ品Dを流用可能(別の解決策)」
のように、問題や考慮すべき条件、解決策などを項目別に箇条書きし、データベースで管理して検索性やメンテナンス性を高める手法で、「KCS(ナレッジセンターサービス)」という名前でも呼ばれています。
KCSが日本に紹介されたのは2006年のことですが、近年コールセンターでAI(人工知能)やチャットボットの活用機運が高まったことに伴い、こうしたテクノロジーを採り入れる基盤づくりの手法としても注目されるようになりました。
項目別に整理されたナレッジは、キーワード検索や予測表示などを通じて迅速に、もれなく拾い上げることが可能です。このためKCSを導入したコールセンターでは「解決時間が5~6割改善し、初回解決率も50%向上する」との調査結果もあります。
「完売した在庫」のような古い内容は丸ごと削除し、必要に応じて適宜新たな情報の追加もできるKCSの高いメンテナンス性は、常時最新の、信頼できるナレッジをオペレーターに提供します。
これにより、マニュアルを用いた事前教育が簡素化できるため、KCSを導入したコールセンターではトレーニング期間が大幅に短縮される傾向にあります。また、マニュアルで統一されないオペレーターの創意工夫を発揮する余地も増えるため、従業員満足度と離職率がそろって改善するとのデータもあります。
KCSを採り入れるコールセンターの多くは、KCS対応のナレッジ管理ツールを用いており、オペレーターが主体的にナレッジを参照し、それらの編集作業にも積極的に加わるよう後押しして成果を挙げています。
ナレッジの作成数、参照された件数などは、コールセンター運営に対するオペレーターの貢献を評価する上で、分かりやすい指標にもなります。KCSに基づくナレッジの可視化と共有化は、オペレーターの成長意欲を刺激し、長期勤続を促すための実効的な方策といえるでしょう。
セールスフォース・ドットコムが提供する「Service Cloud」には、オペレーターと顧客にスピーディに適切な回答を提供するナレッジベース機能が備わっています。
また、SalesforceのCustomer Success PlatformでKCSを実践する方法について、詳しくは下記の資料をご覧ください。
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