カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?向上させるコツや成功事例を簡単に解説
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客が商品やサービスに接するすべての過程で得る体験のことです。 認知から購入、利用、サポートに至るまでの体験全体が対象であり、満足度やブランドへの信頼感に大きく影響します。
しかし「重要性は理解しているものの、何から手をつければ良いのかわからない」「CSやUXとの違いも曖昧で、具体的な企画に落とし込めずにいる」とお悩みの方もいるのではないでしょうか?
本記事では、カスタマーエクスペリエンスの基礎知識から、高めるポイントや成功事例をわかりやすく紹介します。
カスタマーエクスペリエンスとは、商品やサービスの購入前後に顧客が体験する驚きや楽しさ、快適さなどの感覚的な付加価値
顧客に提供する、形にならない「価値」
カスタマーエクスペリエンスは、商品やサービスの購入前後に顧客が体験する驚きや楽しさ、快適さなどの感覚的な付加価値を指します。つまり、企業は製品やサービスだけではなく、顧客に対して「購入に伴う一連の体験」をも提供しており、その価値を高めることで顧客からの支持を得ようという発想です。
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体験の質が顧客の行動を左右する
購入に伴う一連の体験は、来店から退店までを指すわけではありません。その前後で発生している企業との接点において、顧客が体験するすべてのことが含まれます。広告、製品サイトの構成やデザイン、問い合わせに対するレスポンスのほか、実店舗の設計や雰囲気、スタッフの応対、SNSやメールでの情報提供。さらには、購入後のアフターケアやサポートまで、あらゆる場面を含みます。
これら、多くの接点において、顧客は「良質な体験を得たい」と思っています。2023年7月にセールスフォース・ジャパンが行った調査では、「企業が提供する体験は、製品・サービスと同じくらい重要だ」と答えた顧客が全体の80%にも上りました。
製品やサービスの品質や価格だけでなく、それとは直接つながりがないように見える良質な体験が、人々の購買行動に大きな影響を及ぼしているのです。
カスタマーエクスペリエンスの高低で何が変わるのか?
カスタマーエクスペリエンスが向上することで、どのような変化が起こるのでしょうか?
まず、リピーターの獲得につながります。製品以外の価値に顧客が満足すれば、それは競合他社に対する差別化となります。顧客が製品のコストパフォーマンスとは別に、「この企業の製品を使いたい」と感じてくれれば離脱せず、ロイヤルカスタマーへと育ってくれるでしょう。これは企業にとって、LTV(顧客生涯価値)の増大であり、安定収益につながります。
さらに、こうした顧客が口コミで新たな顧客を広げ、そこでまた良質な顧客体験を提供できれば、この好循環が次々と広がっていきます。その結果、企業のブランド力の向上が実現できます。
カスタマーエクスペリエンスが低いままでは、これとまったく反対の結果を招くでしょう。リピーターが育たず、毎月の売上確保に躍起になり、反面、企業ブランドが確立できないということになってしまいます。
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カスタマーエクスペリエンス(CX)とCS・UXの違い
カスタマーエクスペリエンス(CX)と似た言葉に、顧客満足度(CS)とユーザーエクスペリエンス(UX)があります。
これらの違いを正しく理解することが、カスタマーエクスペリエンス向上の取り組みを正しく進めるための第一歩となるので、順番に解説します。
CXとCSの違い
カスタマーエクスペリエンス(CX)と似た言葉に、顧客満足度(CS)とユーザーエクスペリエンス(UX)があります。
これらの違いを正しく理解することが、カスタマーエクスペリエンス向上の取り組みを正しく進めるための第一歩となるので、順番に解説します。
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CXとUXの違い
カスタマーサティスファクション(CS)は、日本語で「顧客満足度」と訳されます。サービスや商品そのものに対する評価を数値で測定するのが特徴です。
一方CXは、認知・購入・利用・アフターサポートに至るまで、顧客が企業と接触するすべての体験を含む広い概念です。
たとえばレストランでは、CSは「料理の味」や「価格」など部分的な満足度に注目しますが、CXは来店前の検索体験から、スタッフの対応、退店後の印象までを総合的に捉えます。
カスタマーエクスペリエンスを高めるとは?2つの事例を紹介

そこで、カスタマーエクスペリエンスの成功事例をご紹介していきます。
スターバックス:店舗の体験を通じてカスタマーエクスペリエンス向上を狙う
スターバックスは自社の店舗を、自宅と職場に次ぐ第3の場所「サードプレイス」と位置づけ、質の良いコーヒーと余裕のある空間、スタッフのホスピタリティなどが統合された「スターバックス体験」を売り物としていました。ところが、企業トップの交代によって経営方針が売上拡大に傾くと、業績が傾いていきます。これは、売上に偏重するあまり、スターバックス体験が希薄になったためといわれます。
その改善策として同社は全店舗を一時的に休業し、バリスタの再教育を行ってコーヒーの品質向上を図りました。また、スターバックス体験の再定義を行い、カスタマーエクスペリエンスの向上を狙った数々の施策を打ち出していきます。すると、ほどなくして業績は回復し、成長路線にのることができました。スターバックスの顧客たちはコーヒー以上に、何者にも代えがたいスターバックス体験に対価を支払っていたのです。
Amazon:注文から受け取りまで徹底的に顧客を満足させる姿勢を貫く
Amazonは、企業のミッションとして「地球上で最も顧客を大切にする企業」というスローガンを掲げています。そのために、カスタマーエクスペリエンスを企業全体で追求する姿勢が貫かれています。
サイト内で多様な商品とサービスのカテゴリーを用意し、そこに高品質で安価な製品を数多くそろえ、商品情報を少しでも詳しく掲載して利用者の疑問や不安を解消する。ページは見やすく、商品の比較・検討から購入までがスムーズにでき、使いやすい。注文を受けたら顧客の要望にできる限り合わせ、常に最速で発送して配達する。
このように、あらゆる瞬間におけるカスタマーエクスペリエンスを高レベルで満足させることで、顧客からの信頼を得ています。
カスタマーエクスペリエンスを向上させる手順5ステップ
具体的にカスタマーエクスペリエンスを向上させる手順は以下の5ステップです。
- 現状を把握しデータ分析を行う
- ペルソナとカスタマージャーニーマップを作成する
- 課題を特定し目標を設定する
- 改善施策を立案し実行する
- 効果を測定し継続的に改善する
1.現状を把握しデータ分析を行う
まず、自社のカスタマーエクスペリエンスが現在どのような状態にあるのかを客観的に把握することから始めます。思い込みで施策を進めるのではなく、データに基づいて現状を正しく理解することが大切です。
たとえば、顧客満足度調査や、顧客ロイヤルティを測る指標であるNPS®(ネット・プロモーター・スコア)調査を行い、顧客が自社の商品やサービス、サポートに対してどのように感じているかを数値で把握します。
また、コールセンターに寄せられる意見、SNS上の口コミ、レビューサイトの投稿など、さまざまなチャネルから「VOC(Voice of Customer)=顧客の声」を収集し、どのような点に不満や喜びを感じているのかを分析するのも有効です。
SFA/CRM内にある顧客の購買履歴や問い合わせ履歴、Webサイトのアクセスデータなども、顧客の行動を理解するための貴重な情報源です。
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2.ペルソナとカスタマージャーニーマップを作成する
データから明らかになった顧客像を元に、自社にとって中心的となる顧客モデルであるペルソナを設定します。年齢や職業、価値観、抱えている課題などを具体的に描き出すことで、チーム内で顧客イメージを共有しやすくなります。
また、設定したペルソナが商品を認知し、比較検討、購入、そして利用後に至るまでの各段階で、どのような行動をとり、どのように感じ、何を考えているのかを時系列でまとめたカスタマージャーニーマップも作成しましょう。
これにより、顧客体験のどこに問題点や好機があるのかが一目でわかります。
3.課題を特定し目標を設定する
カスタマージャーニーマップで明らかになった複数の課題の中から、どれに優先的に取り組むべきかを見極め、具体的な目標を設定します。
大前提、すべての課題に一度に取り組むのは現実的ではありません。「顧客への影響度」と「改善の実現性」の2つの軸で評価し、インパクトの大きい課題から優先的に着手します。
また、「顧客満足度を上げる」といった曖昧な目標ではなく、以下のように具体的で測定可能なKPIを設定します。
- NPS®を半年で10ポイント改善する
- 問い合わせへの初回応答時間を24時間以内にする
- 解約率を前期比で5%低減させる
こうすることで、自社の課題が明確になり、施策が上手くいかなかったときでも代替案を考えられるでしょう。
4.改善施策を立案し実行する
設定したKPIを達成するために、具体的な改善策を考え、実行に移します。
その際、顧客との接点ごとに施策を立案するのが有効です。課題となっているタッチポイントに対して、具体的なアクションプランを立てます。
タッチポイント | 改善施策 |
Webサイト | FAQページを充実させ、顧客が自己解決できる範囲を広げる |
購入プロセス | 入力フォームの項目を減らし、購入手続きを簡素化する |
アフターサポート | 製品購入後の顧客に対し、活用方法を案内するメールを段階的に配信する |
5.効果を測定し継続的に改善する
顧客のニーズや市場は常に変化するため、カスタマーエクスペリエンス向上は、一度きりで終わるプロジェクトではありません。設定したKPIの数値を定期的に観測し、施策が狙い通りの効果を上げているかを確認しましょう。
また、PDCAサイクルも継続的に回し続けます。この地道な改善活動こそが、長期的に優れたカスタマーエクスペリエンスを築くための基盤となります。
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カスタマーエクスペリエンスを高めるための6つのポイント

カスタマーエクスペリエンスを高めるためのポイントを6つ紹介します。
<カスタマーエクスペリエンスを高めるためのポイント>
- 顧客を深く理解する
- 全社的に取り組むことが重要
- 部署の垣根を越えシームレスな体験を提供する
- 現状の課題と、その解決策を提示する
- 顧客とのあらゆる接点で施策を行う
- 改善活動を評価する数値目標を設定する
顧客を深く理解する
顧客を深く理解するためには、アンケートやインタビューで直接声を聞いたり、Webサイトのアクセス履歴や購買履歴、問い合わせ履歴といったデータを分析したりする方法があります。
こうした定量・定性両面のデータを集め、顧客像を具体的に描き出すことで、顧客のインサイトが見えてきて、カスタマーエクスペリエンスを向上させられます。
全社的に取り組むことが重要
カスタマーエクスペリエンスの向上は、自社のミッションとして企業全体で取り組むことも大切です。
従業員全員の共通認識として、個々の持ち場でその意識を活かすことで、あらゆる顧客接点で商品やサービスの質を高め、ひいては企業のブランド力を向上させることができます。
部署の垣根を越えシームレスな体験を提供する
顧客は、営業やカスタマーサービス、マーケティングといった部署の違いを意識せず、企業という1つの存在として見ています。それなのに、部署によって対応が異なったり、同じことを何度も説明させられたりしては、顧客は不満を感じてしまいます。
そのため、SFA/CRMなどを活用して顧客情報を一元管理し、全部署が連携して、一貫性のあるシームレスな体験を提供することが不可欠です。
現状の課題と、その解決策を提示する
カスタマーエクスペリエンスを向上させる施策の立案にあたっては、まず現状の課題を認識し、その要因を特定しておく必要があります。自社と顧客との接点を一つひとつチェックし、顧客がネガティブな印象を抱く可能性がないか、あるとしたらその要因は何かを、丹念に検証していきます。
こうしたマイナスの要因は、ひとつとは限りません。むしろ、複数見つかるのが常ですから、それぞれの重要度を測り、解決の優先順位をつけることも大切です。
顧客とのあらゆる接点で施策を行う
あらゆる接点で施策を行うのが理想ですが、リソースの兼ね合いから、それが難しい場合もあるでしょう。そのときは、優先順位に従って実行していきましょう。
改善活動を評価する数値目標を設定する
施策の実行にあたっては、その効果を測る指標とともに、数値目標を設定しておきましょう。
カスタマーエクスペリエンスを測定する指標としては、サイトの平均ページビュー数、顧客獲得率、解約率などのほか、顧客満足度を測るNPS(ネットプロモータースコア)などもあります。
あまり多すぎると収拾がつきませんが、とはいえ1つの指標だけでは実状が見えてきません。顧客を惹きつけ、関係を強化し、定着させることができているかどうか。そうした観点から指標を選ぶといいでしょう。
カスタマーエクスペリエンスが企業の成長のカギになる
カスタマーエクスペリエンスは、近年になって注目されている概念です。自社商品やサービスに興味を持ってくれたユーザーを逃さず、自社のファンになってもらうためには、今後ますます重要性を高めていく考え方だといえます。
激しい競争を生き抜き、企業として成長し続けるためにも、効果的な施策でカスタマーエクスペリエンスの向上を図ってください。
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