小売業でMAを活用するための基礎知識

投稿日:2022.6.2
個人を相手にする小売業は、MAと相性の良い業種です。ひとりひとりの見込み顧客や顧客にフィットした、きめ細かな施策を打っていくことで、新規顧客をリピーターへ、さらに優良顧客へと育成することが可能になります。
ここでは、ECサイトも含め、小売業においてMAを活用するための基礎知識を解説します。
小売業でMAを活用するための基礎知識

MAが実現する、小売業のOne to Oneマーケティング

MAが実現する、小売業のOne to Oneマーケティング

BtoCである小売業は、BtoBとは異なる特性を多く持っています。特徴的なものには「購買の意思決定者が消費者自身であること」や、「購買決定までの期間が短いこと」が挙げられます。そのため、BtoC領域では、個々の見込み顧客に合わせたOne to Oneマーケティングが重要になるというわけです。

そこで活躍するのが、MA(マーケティングオートメーション)です。さまざまな属性を持つ見込み顧客に対して、メールやSNSでアプローチする。サイト訪問や問い合わせなどの行動に対して、興味や関心を惹くコンテンツを提供する。タイミングを逃さず、スムーズに購買へ導く。このような、ひとりひとりの見込み顧客に最適化されたOne to Oneマーケティングを、MAによって実現できるのです。

小売業でMAをどう使うか

小売業でMAをどう使うか
MAは、個々の見込み顧客の基本情報や行動履歴を記録・管理する機能を持っています。そして、あらかじめ作成しておいたシナリオにもとづき、最適なチャネルを使って見込み顧客にアプローチし、個人の趣味や関心にフィットした販売促進を行うことが可能です。
ここからは、小売業におけるMAの使い方について解説していきます。

複数チャネルでのコミュニケーションを行う

BtoBの場合、企業と見込み顧客とのコミュニケーションは、ウェブサイトとメールが中心です。しかし、BtoCではかなり事情が変わり、メールよりもパーソナルなSNSが好まれる傾向がありますし、使用するデバイスも、PC、スマートフォン、タブレットと、人によって違います。個人の生活スタイルや好みによって、まさに千差万別です。
MAを駆使すれば、こうした多様なチャネルとデバイスに対応できます。季節商品や新製品の案内などはメールでしっかり情報を伝え、期間限定セールなど、時事性の高い情報はSNSでタイムリーに伝えるというように、メッセージの内容に合わせて使い分けることも可能です。

個々の見込み顧客にフィットした販売促進を行う

MAは、見込み顧客の行動に対するスコアリング機能を備えています。製品の問い合わせやウェブサイトの閲覧など、見込み顧客の行動に合わせてポイントを加算していき、一定の値に達すると自動的にメールやメッセージを送るという使い方が可能です。
この機能と、MAに蓄積された情報を組み合わせることで、個々の見込み顧客にフィットした販売促進を実現できます。見込み顧客の基本情報と購買履歴のほか、最近の商品検索や閲覧ページの記録を参照して、たとえば「誕生日の1か月前に、見込み顧客が気になっているであろう商品の割引クーポンを自動送信する」という方法をとることも可能です。

ECサイトでMAを活用するためのポイント

ECサイトでMAを活用するためのポイント
ECサイトでは、見込み顧客や顧客とのやりとりを、すべてデータとして記録できます。そのため、実店舗以上に、MAの活用範囲は広いといえるでしょう。ただし、闇雲にMAを導入しても、すぐに効果を上げられるわけではありません。
これからご紹介するポイントに注意しながら、MAの導入・運用を検討することが大切です。

導入のタイミングを見極める

MAは、自社の製品に興味を持ち、問い合わせや会員登録などを行った見込み顧客に対して、アプローチするためのツールです。不特定多数に向けた広告と比較すると、アプローチの対象が違いますし、売上につながるまで、ある程度の時間もかかります。
ですから、ECサイトでMAを使うなら、新規顧客の獲得よりも、既存顧客をリピーターへと育てていく、という使い方が適しています。そのためには、顧客の行動履歴の中でも、売上総額や単価、購買頻度などのデータを分析し、セグメント化しておくことが大切です。そして、それぞれの層に対してシナリオを作り、最適なコミュニケーションを図ることも必要になります。

こうしたことを踏まえると、ECサイトのオープン当初にMAを導入しても、大きな効果は得られないかもしれません。広告などで新規顧客を増やし、顧客数が増えてきたところでMAを活用するというように、MAの導入のタイミングを計る必要があります。

売上規模とのバランスを考える

MAの多くはクラウドサービスであり、月額課金制をとっています。MAを使いこなせるマーケティングスキルを持つ人材の確保も必要となると、ランニングコストは決して安くはありません。ですから、自社の売上規模とのバランスは、常に考慮しなくてはならない課題です。特に、導入時のコストシミュレーションは重要です。

MAの導入・運用によって、たとえば売上が5%向上したとしましょう。その増益分で、MAの運用コストを払い、なおかつ利益を見込めるかどうかという点は、精査しておく必要があります。そこまでの売上規模に達していないならば、その分の予算を広告などに回し、新規顧客の増加を狙ったほうが良いと判断する場合もあるはずです。

MAがフィットするECサイトの例

MAがフィットするECサイトの例
MAの導入・運用に適したECサイトにはどのようなものがあるでしょうか。その例をいくつか挙げておきましょう。

十分な既存顧客がある

すでに十分な数の既存顧客があり、新規顧客も順調に増えているECサイトであれば、MAの導入に踏み切ってもいいでしょう。新規獲得と並行して既存顧客とのコミュニケーションを重ね、自社製品のファンへと育成すれば、売上向上とLTV(顧客生涯価値)の最大化につなげることができます。

実店舗との併存で、成長が期待できる

すでに実店舗で、ある程度の売上を得られている場合には、ECサイトのオープンと同時にMAを導入し、積極的に活用してもいいでしょう。まったくのゼロからのスタートではありませんから、サイトオープンと同時に新規顧客の獲得が見込めますし、今後の成長が期待できます。
こうした状況なら、早くからMAを活用し、顧客データを収集しておくのが得策だといえます。

商品単価や粗利が大きい商品を扱っている

輸入家具や貴金属、金融商品のように、商品単価や粗利の大きい商品は、販売数は少なくても十分な利益を見込めます。このような場合、初期段階からMAを導入してもいいかもしれません。ただし、事前のコストシミュレーションはしっかり行っておきましょう。

MAの効果的な使い方

MAの効果的な使い方
MAは、導入するだけで売上が伸びるというものではありません。成果を期待するなら、効果的に使う必要があります。続いては、実店舗・ECサイトに共通する、MAの効果的な使い方について解説します。

導入の目的と運用ルールを決めて、それに従う

MAを使って何をしたいのか、そのためにどのように使うのかというように、MA導入の目的と運用のルールは、あらかじめ決めておきます。既存顧客のリピーター化、休眠顧客の掘り起こしなど、MAを使う目的はさまざまです。まずは、そこを固めておくことが大切です。
運用ルールは、最初からきっちりと詰めておく必要はありません。実際に使ってみないと、わからないことも多いものです。まずは、おおよそのルールだけを決めておき、実際に運用する中で不具合を調整していけばいいでしょう。

シナリオは常に改善を重ねる

MAによるメールやSNSでのアプローチは、顧客の行動に合わせて自動的に行われます。それをあらかじめ指定しておくのが「シナリオ」ですが、これは常にブラッシュアップし、改善していくことが必須です。
どんなタイミングで、どのようなメッセージを、どのチャネルを使って送信したか。そして、その結果がどうだったか。トライアンドエラーを繰り返すことでシナリオを修正し、施策の精度を高めていくことが大切です。
最初から完成されたシナリオを作る必要はありません。時間をかけ、回数を重ねて、じっくり練り上げていきましょう。

重点を置くポイントを絞り込む

見込み顧客が製品を購入し、リピーターになり、やがて優良顧客に育っていく。その過程には多くの分岐がありますが、その道筋を視覚化したものが、カスタマージャーニーマップです。何らかの施策を立てる際には、このマップの中のどのポイントに重点を置くか、絞り込んでおくことが大切です。
マップ上のどのポイントに重点を置くかによって、とるべき施策が変わりますし、必要なコストや期待される効果の大小にも違いが表れます。また、絞り込みが不十分だと、施策の結果を検証する際、どのポイントが効果を上げたのか、見えにくくなることもあります。
マーケティング施策はポイントを絞り、結果を客観的に検証する。その繰り返しが、MAを有効活用し、精度の高いマーケティングを実現することになるのです。

自社に適したMAを選ぶ

MAを活用するために最も重要なことは、自社に合ったMAツールを選ぶということです。人材やノウハウがないのに高機能なものを導入しても、使いきれずにコストばかりがかさんでしまいます。反対に、機能を絞ったシンプルなMAを選ぶと、やりたいことができずに終わってしまうかもしれません。
自社の人的リソースや用意できる予算、そしてMAを利用する目的と、そのために必要な機能。これらの要素を考慮し、自社にフィットするMAを選んでください。
また、ベンダーによる導入・運用サポートや、ユーザーグループでの情報交換などは、困ったときに大きな力となります。このようなポイントも踏まえながら、選定するといいでしょう。

小売業ではMAを活用して、個人にフィットしたマーケティングを行おう

小売業ではMAを活用することでリピーターを育成し、自社ブランドや店舗のファンを増やすことができます。ユーザー・顧客の好みや行動パターンに合わせ、きめ細かな販促活動を展開できれば、それに見合う結果が表れてくるでしょう。
個人を対象とした小売業では、個々の見込み顧客や顧客にフィットした施策が大切です。ぜひMAを使いこなして、One to Oneマーケティングを実現してください。
 

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