小売業でMAを活用するための基礎知識
個人を相手にする小売業は、MAと相性の良い業種です。ひとりひとりの見込み顧客や顧客にフィットした、きめ細かな施策を打っていくことで、新規顧客をリピーターへ、さらに優良顧客へと育成することが可能になります。
ここでは、ECサイトも含め、小売業においてMAを活用するための基礎知識を解説します。
MAが実現する、小売業のOne to Oneマーケティング
BtoCである小売業は、BtoBとは異なる特性を多く持っています。特徴的なものには「購買の意思決定者が消費者自身であること」や、「購買決定までの期間が短いこと」が挙げられます。そのため、BtoC領域では、個々の見込み顧客に合わせたOne to Oneマーケティングが重要になるというわけです。
そこで活躍するのが、MA(マーケティングオートメーション)です。さまざまな属性を持つ見込み顧客に対して、メールやSNSでアプローチする。サイト訪問や問い合わせなどの行動に対して、興味や関心を惹くコンテンツを提供する。タイミングを逃さず、スムーズに購買へ導く。このような、ひとりひとりの見込み顧客に最適化されたOne to Oneマーケティングを、MAによって実現できるのです。
小売業でMAをどう使うか
ここからは、小売業におけるMAの使い方について解説していきます。
複数チャネルでのコミュニケーションを行う
MAを駆使すれば、こうした多様なチャネルとデバイスに対応できます。季節商品や新製品の案内などはメールでしっかり情報を伝え、期間限定セールなど、時事性の高い情報はSNSでタイムリーに伝えるというように、メッセージの内容に合わせて使い分けることも可能です。
個々の見込み顧客にフィットした販売促進を行う
MAは、見込み顧客の行動に対するスコアリング機能を備えています。製品の問い合わせやウェブサイトの閲覧など、見込み顧客の行動に合わせてポイントを加算していき、一定の値に達すると自動的にメールやメッセージを送るという使い方が可能です。
この機能と、MAに蓄積された情報を組み合わせることで、個々の見込み顧客にフィットした販売促進を実現できます。見込み顧客の基本情報と購買履歴のほか、最近の商品検索や閲覧ページの記録を参照して、たとえば「誕生日の1か月前に、見込み顧客が気になっているであろう商品の割引クーポンを自動送信する」という方法をとることも可能です。
ECサイトでMAを活用するためのポイント
これからご紹介するポイントに注意しながら、MAの導入・運用を検討することが大切です。
導入のタイミングを見極める
MAは、自社の製品に興味を持ち、問い合わせや会員登録などを行った見込み顧客に対して、アプローチするためのツールです。不特定多数に向けた広告と比較すると、アプローチの対象が違いますし、売上につながるまで、ある程度の時間もかかります。
ですから、ECサイトでMAを使うなら、新規顧客の獲得よりも、既存顧客をリピーターへと育てていく、という使い方が適しています。そのためには、顧客の行動履歴の中でも、売上総額や単価、購買頻度などのデータを分析し、セグメント化しておくことが大切です。そして、それぞれの層に対してシナリオを作り、最適なコミュニケーションを図ることも必要になります。
こうしたことを踏まえると、ECサイトのオープン当初にMAを導入しても、大きな効果は得られないかもしれません。広告などで新規顧客を増やし、顧客数が増えてきたところでMAを活用するというように、MAの導入のタイミングを計る必要があります。
売上規模とのバランスを考える
MAの多くはクラウドサービスであり、月額課金制をとっています。MAを使いこなせるマーケティングスキルを持つ人材の確保も必要となると、ランニングコストは決して安くはありません。ですから、自社の売上規模とのバランスは、常に考慮しなくてはならない課題です。特に、導入時のコストシミュレーションは重要です。
MAの導入・運用によって、たとえば売上が5%向上したとしましょう。その増益分で、MAの運用コストを払い、なおかつ利益を見込めるかどうかという点は、精査しておく必要があります。そこまでの売上規模に達していないならば、その分の予算を広告などに回し、新規顧客の増加を狙ったほうが良いと判断する場合もあるはずです。
MAがフィットするECサイトの例
十分な既存顧客がある
実店舗との併存で、成長が期待できる
こうした状況なら、早くからMAを活用し、顧客データを収集しておくのが得策だといえます。
商品単価や粗利が大きい商品を扱っている
MAの効果的な使い方
導入の目的と運用ルールを決めて、それに従う
運用ルールは、最初からきっちりと詰めておく必要はありません。実際に使ってみないと、わからないことも多いものです。まずは、おおよそのルールだけを決めておき、実際に運用する中で不具合を調整していけばいいでしょう。
シナリオは常に改善を重ねる
どんなタイミングで、どのようなメッセージを、どのチャネルを使って送信したか。そして、その結果がどうだったか。トライアンドエラーを繰り返すことでシナリオを修正し、施策の精度を高めていくことが大切です。
最初から完成されたシナリオを作る必要はありません。時間をかけ、回数を重ねて、じっくり練り上げていきましょう。
重点を置くポイントを絞り込む
マップ上のどのポイントに重点を置くかによって、とるべき施策が変わりますし、必要なコストや期待される効果の大小にも違いが表れます。また、絞り込みが不十分だと、施策の結果を検証する際、どのポイントが効果を上げたのか、見えにくくなることもあります。
マーケティング施策はポイントを絞り、結果を客観的に検証する。その繰り返しが、MAを有効活用し、精度の高いマーケティングを実現することになるのです。
自社に適したMAを選ぶ
MAを活用するために最も重要なことは、自社に合ったMAツールを選ぶということです。人材やノウハウがないのに高機能なものを導入しても、使いきれずにコストばかりがかさんでしまいます。反対に、機能を絞ったシンプルなMAを選ぶと、やりたいことができずに終わってしまうかもしれません。
自社の人的リソースや用意できる予算、そしてMAを利用する目的と、そのために必要な機能。これらの要素を考慮し、自社にフィットするMAを選んでください。
また、ベンダーによる導入・運用サポートや、ユーザーグループでの情報交換などは、困ったときに大きな力となります。このようなポイントも踏まえながら、選定するといいでしょう。
小売業ではMAを活用して、個人にフィットしたマーケティングを行おう
個人を対象とした小売業では、個々の見込み顧客や顧客にフィットした施策が大切です。ぜひMAを使いこなして、One to Oneマーケティングを実現してください。
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