リテンションとは?解約防止のリテンションマーケティング、メリットや手法・成功事例まで解説

 
2022.12.22
リテンションとは、「保持」「維持」という意味で、マーケティング領域では「既存顧客の維持」という意味で使用されます。解約防止を目指すリテンションマーケティングのメリットから手法、成功事例まで解説します。
 
 
 
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リテンションとは

マーケティングにおけるリテンション(retention)とは、既存顧客との関係を維持、つまり解約を防止するための施策全般のことです。たとえば、メールマーケティングやレコメンドマーケティングなどが該当します。リソースのかかる新規顧客獲得よりも、低コストで始められる既存顧客へのアプローチを強化することで、安定的な収益を得やすくなります。

なお、リテンションという言葉は人事領域でも使われます。人事領域でのリテンションは、自社にとって優秀な人材を確保しておくための「人材の保持」という意味になります。

リテンションマーケティングの重要性

近年、リテンションマーケティングに注目が集まっているのは、以下のような理由があります。

  • 人口減少により、新規顧客獲得の難易度が上がっている
  • 新規顧客獲得と比べて、売上増加につながりやすい
  • 新規顧客と比べて、顧客育成に必要なリソースが少ない

既存顧客は、すでに自社や商品への理解をある程度もっているので、マーケティング施策を実行する土台が整っています。そのため、新規顧客に比べて売上増加に必要なリソースが少なく済み、土台がある分アプローチもしやすいです。

また、人口減少が進むこれからの時代において、新規顧客獲得の難易度が上がっている点からも、リテンションマーケティングの有用性は増しているといえます。

リテンションマーケティングのメリット

リテンションマーケティングで得られるおもなメリットは、以下の3点です。

  • 収益の安定化とLTV(顧客生涯価値)の最大化を図れる
  • 新規開拓よりコストが低く、利益率が高い
  • 顧客の離脱防止と、休眠顧客の掘り起こしができる

新規顧客獲得とのコスト比較はもちろん、既存顧客のニーズを深掘りすることで、顧客のロイヤルカスタマー化やファン創出効果も期待できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1)収益の安定化とLTV(顧客生涯価値)の最大化を図れる

リテンションによって既存顧客へ働きかけることは、顧客ニーズの掘り起こしの機会にもなります。クロスセルやアップセルといった手法を使えば、LTV(顧客生涯価値)向上につながります。また、そこで得たノウハウをほかの顧客にも活用することで、全体的なニーズを増やし、収益の安定化も期待できます。

2)新規開拓よりコストが低く、利益率が高い

新規顧客へ販売するコストと既存顧客へ販売するコストを比べた場合、既存顧客への販売コストは新規販売の5分の1で済む「1:5の法則」というものがあります。

この法則によれば、新規顧客の獲得には、既存顧客維持の5倍のコストがかかるとされています。既存顧客は、自社への知識がすでにある状態なので、すぐに商品やサービスの紹介から施策をスタートできます。

新規顧客よりも容易に、キャンペーンやセールのお得さを理解してもらえるでしょう。

また、すでに取引実績がある場合は、顧客ごとの興味の傾向を把握することで、より効果的なPRが可能です。既存顧客へのアプローチは新規顧客獲得よりもはるかに低コストで済み、効率よく利益を上げられるのです。

3)顧客の離脱防止と、休眠顧客の掘り起こしができる

休眠顧客(しばらくサービスを利用していない顧客)の掘り起こしにもリテンションは有効な手段です。顧客が休眠した原因を分析し、傾向化することで、休眠顧客がアクティブな顧客へ呼び戻せる可能性があります。

また、分析から得られたノウハウを活用すれば、現在アクティブな顧客を休眠顧客にしないための施策や、顧客の離脱防止施策の考案にも役立つでしょう。

リテンションマーケティングの手法

リテンションマーケティングはチャネルごとにさまざまな手法があります。いずれの方法も軸として以下の3点を意識することが重要です。

  • 顧客に合わせたアプローチの実施
  • カスタマーサクセスの導入
  • CRMツールの活用

リテンションマーケティング施策は、既存顧客1人1人と向き合うことが大切です。顧客が求めていることを理解し、より良い関係を築くことが成功につながります。

1)顧客に合わせたアプローチの実施

既存顧客のなかにも、さまざまな属性を持った層が存在します。顧客を傾向によってある程度、区分し、それぞれに合わせたアプローチをすることが大切です。

<顧客に合わせたアプローチの例>

  • 購入頻度の高い顧客を対象としたロイヤルティプログラムの導入
  • 休眠顧客を対象とした限定クーポンの配信
  • リピーターを対象としたレコメンドの実施

顧客の傾向ごとに、リピートやアップセル・クロスセルを促すことで、LTV向上が期待できます。顧客の状況に応じた区分の変更や、カスタマージャーニーとの連携も検討しておきましょう。

2)カスタマーサクセスの導入

リテンション施策を実行するときには、“顧客の成功”を意味する「カスタマーサクセス」を意識しましょう。 リテンションの目的は売上の向上や安定化ですが、その達成には自社の商品やサービスを通じて、顧客がより良い状態になることが不可欠です。

カスタマーサクセスを前提として、自社の商品やサービスを「手法」として提示することで、顧客とより良い関係が構築でき、ひいてはLTV向上にも繋がります。

3)CRMツールの活用

リテンションの施策を効率化するには、「CRMツール」が便利です。

CRMツールとは、CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)を実現するためのツールで、顧客情報の一元管理や属性データの紐づけ、コミュニケーション履歴管理などの機能を備えています。

リテンションを実施するにあたり、属性による顧客区分や、コミュニケーション履歴に基づいた施策選定など、ターゲッティング精度の向上に役立ちます。

 
 
 
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リテンション率の計算方法

リテンション率とは、「新規契約した顧客のうち、一定期間にわたって契約を継続した顧客の割合」のことです。

簡単にいうと「定着化した新規顧客の割合」とも言えます。定着化率上昇と離脱率低下は、業績に直結する重要な指標です。ここではリテンション率の計算方法と活用方法を解説します。

リテンション率の計算式

リテンション率は、以下の計算式で求められます。

<リテンション率の計算式>
(計算期間終了時の顧客数-計算中に登録した新規顧客数)÷計算期間開始時の顧客数×100=リテンション率(%)

たとえば、計算期間開始時に100人の顧客がいて、そのうち30人が解約し、新たに80人の顧客を獲得したとして、最終的に150人の顧客となった場合は以下のようになります。

<リテンション率の計算例>
(150-80)÷100×100=70%

リテンション率の活用方法

リテンション率は、定着率を数値化したものであり、また、100からリテンション率を引いた割合が離脱率となります。これらの数値を継続的に記録・グラフ化することで、自社における定着率・離脱率の推移が可視化でき、時期的な傾向を把握したり、事業の効果を測定したりといった活用が可能になります。

また、リテンション率の改善を、業務上の指標であるKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)に設定し、事業の健全性を図る活用法も考えられます。

リテンションマーケティングの成功事例

ここからは、実際にリテンションマーケティングを起こった企業における成功事例をご紹介します。既存顧客に目を向け、どのようなアプローチで効果を出したのか、その経緯と結果を見ていきましょう。

LTVを最大化する収益モデルへの大転換を実現しパーソナライズキャンペーンでCV数12.5倍!【株式会社NTTドコモ】

 
会社名:株式会社NTTドコモ
事業内容:通信

携帯電話サービスで知られる株式会社NTTドコモでは、収益モデル転換という課題にリテンションが活用されました。従来の収益モデルは通信料を主軸としていましたが、顧客関係強化と最適なサービス提供により、LTVを最大化する収益モデルへの転換を目指したのです。

解決策として行ったのは、8,000万人の顧客に対する、最適なチャネルを使い分けたアプローチです。顧客データベースを基にMAツールのMarketing Cloudを活用、効果測定で改善しながら100本以上のシナリオを稼働することで、コンバージョン率を12.5倍まで増加させることに成功しました。

顧客情報と観光コンテンツ。 すべてのデータ統合で、お客様一人ひとりに寄り添える仕組みを【株式会社JTB】

 
会社名:株式会社JTB
事業内容:旅行業、旅客鉄道会社及びその他の運輸機関の乗車船券類の発売に関する事業、観光地の開発並びに旅行及び観光施設に関する事業など

旅行業大手の株式会社JTBでは、顧客情報を蓄積することで、顧客の特徴を本質的かつ背景的にとらえようと努めています。旅行商品とは、購入スパンが日用品よりも長く、保険や自動車よりも短いものです。また、購入の意思決定には情緒的な要因も影響するため、一般的には購入傾向の把握は難しいと考えられている分野です。

この課題を解決するために、株式会社JTBでは、CRMツールのSalesforceを活用しました。Sales Cloudによる営業情報の集約やMarketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)を使った情報発信など、顧客とのコミュニケーションデータをデジタル上に蓄積することで、顧客が旅行に求める本質や、旅行を決めた前後にある背景の汲み取りに取り組んだのです。

施策はまだ道半ばではありますが、MAツールのMarketing Cloudとも連携し、顧客に働きかけることで本質と背景をつかむ努力を続けています。

今以上の価値を提供し、利益の最大化を

リテンションを成功させるポイントは、顧客が企業や商品・サービスを選定するプロセスを理解することです。なぜ顧客があなたの企業とその商品・サービスを選んだのか、そこに期待するものは何かを理解することで、顧客のニーズをくみ取れるのではないでしょうか。

顧客との関係維持は、顧客の期待に応え続けることでもあります。顧客に今以上の価値を提供することこそが、利益を最大化する近道なのです。

 
 
 
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