ソーシャルリスニングで、ユーザーの生の声をビジネスに活かす

投稿日:2021.11.12
市場の声、顧客の声に応えることは、ビジネスの基本です。しかし、市場に散らばる無数のユーザーの声をひとつひとつ聞き取ることは、簡単ではありません。 そこで注目されているのが「ソーシャルリスニング」です。ソーシャルリスニングとはいったい、どのような方法なのでしょうか?ソーシャルリスニングでわかることや、ソーシャルリスニングの手順などを解説します。

ソーシャルリスニングとは?

BtoCのビジネスでは、ユーザーの動向や市場のトレンドをいち早くつかみ、製品やサービスに反映することが、そのまま商機をつかむことにつながります。しかし、個人の価値観や嗜好が多様化している現代では、市場全体を見ていても個々の動きを知ることはできません。
そのため、重要性を増しているのがユーザーボイス、つまり個々の顧客の声です。中でも、SNSでの発言やコメントを収集してユーザーの生の声をくみ取る「ソーシャルリスニング」の手法が、注目を集めています。

アンケートとの違い

顧客の声、市場のニーズをくみ取る方法としては、アンケートの活用があります。テスターを使っての市場調査や、キャンペーンなどを通じて集めるユーザーボイスのほか、食品や飲料であれば、店頭での試飲会・試食会で消費者の感想を集めるということが長く行われてきました。
しかし、こうした方法では、質問とその回答をあらかじめ企業側が用意することになります。そのため、ユーザーの自由な意見が出にくいという面があるでしょう。さらに、あまりにネガティブな意見は言いにくいという心理も働くため、ユーザーの本音に迫るのは、なかなか簡単ではない部分もありました。
そうした「越えられない壁」を越えるのが、ソーシャルリスニングというわけです。

ソーシャルリスニングでわかること

従来の方法と比較すると、ソーシャルリスニングでは得られる情報の質や量に大きな違いがあります。また、その内容を分析することで得られる情報は多く、各種施策への効果測定や商品開発などに活用することも可能です。
続いては、ソーシャルリスニングでわかることをいくつかご紹介しましょう。

ユーザーの本音

ソーシャルリスニングの第一のメリットが、ユーザーの本音を知れることでしょう。SNSでのコメントやつぶやきは、その多くが個人の感想や意見です。つまり、限りなくプライベートに近い発言ですから、個々のユーザーの本音がそのまま表れます。
もちろん、好意的なものばかりではありません。批判的なものや改善要望を述べたものもあるはずです。そうした批判的な意見も、同じコメントが相当数あるようならば、改善・改良を施すための根拠になります。また、そうした声を基に、すみやかな改善・改良の対応を行えれば、その結果、自社の評価が高まることも期待できるでしょう。

客観的なブランドイメージ

自分自身に対する評価と他者からの評価というものは、往々にして食い違うものです。「自分は頑固なところがあっていけない」と思っていても、周囲からは「ぶれない芯を持っていて心強い」と思われていたりします。これは、企業でも同じことです。消費者から見たときに、自社がどのような位置づけにいるのか、どこを評価されているのか。それを正確に、客観的に知ることは簡単ではありません。
しかし、SNSで発信されるコメントを集め、分析することで、自社と自社ブランドの認知度、評価、イメージなどを客観的に知ることが可能です。そして、消費者から見た自社の位置づけがわかれば、商品開発や各種施策に活かせられます。

潜在的な市場ニーズ

ソーシャルリスニングでユーザーの声を集めると、市場のトレンドも見えてきます。そこをさらに深掘りすることで、顕在化していないニーズを掘り起こすことも可能です。これは、表面的な回答に落ち着きやすいアンケートなどでは、知ることができない情報といえるでしょう。
潜在的な市場ニーズをいち早くつかむことができれば、まだ世の中にない商品やサービスを生み出し、市場をリードすることもできます。ソーシャルリスニングには、そうしたチャンスも眠っているのです。

競合他社との比較

ソーシャルリスニングでは自社だけでなく、競合他社の製品・サービスに関する声も集めることができます。自社ブランドへの評価と組み合わせて分析すれば、市場の中でも自社と競合他社との位置づけを、立体的にとらえることができるでしょう。
「消費者から見た場合、自社が他社よりも劣っている点はどこか」「他社よりも自社が優位にあるのはどんな点か」「どのような面が消費者に好まれ、どんな部分が避けられているのか」といった多角的な分析を行えば、自社の強みを伸ばし、弱みを改善することにつながります。さらに、分析結果を商品開発やマーケティング施策に反映することで、競合他社のユーザーを自社に引き込むことも可能です。

各種施策の反応

新たな商品や打ち出した広告に関して、SNSでは実に多くのコメントが飛び交います。これらの情報は、商品開発はもちろん、各種のマーケティング施策の効果測定としても大いに有用です。
たとえば、自社の広告に関するコメントを抽出し、それを時間軸や媒体別に整理すれば、どの時間帯、どの媒体での反応が強いか、すぐにわかります。また、コメントの内容を分析すれば、その広告を見た人がどう感じたかも明らかになるでしょう。広告だけでなく、各種プロモーションやキャンペーンについても、どれほどの効果を上げられているか、タイムリーに把握することができます。
こうした分析結果を、次の施策に活かす流れを作っておけば、市場の反応を的確にとらえた、迅速なマーケティング施策を打つことが可能になります。

ソーシャルリスニングの手順

ソーシャルリスニングは、さまざまなチャネルで交わされるテキストデータを追いかけ、その内容を収集し評価・分析するというのが基本的な流れです。幅広い範囲からユーザーの生の声を集める必要があるので、各種SNSに加えて、個人ブログや動画サイト、掲示板、口コミサイト、Q&Aサイトなどもソーシャルリスニングの対象となります。

ソーシャルリスニングは効果的な情報収集と分析のためにも、基本的な手順どおりに行うことが大切です。ここを曖昧にしてしまうと、せっかく集めた情報を「どう扱えばいいのかわからない」ということにもなりかねません。そうならないためにも、ソーシャルリスニングの手順について確認しておきましょう。

1. 知りたいことを決める

まずは、ソーシャルリスニングで何を知りたいか、明確にします。自社あるいは競合他社に対する評価や評判、製品・サービスについてのコメント、CM・キャンペーンなどの反応など、ソーシャルリスニングで読み取れることは多々あります。それらの中から知りたいことを決めて、その情報を取得するためのキーワードを設定し、対象のセグメントへと落とし込んでいきます。

2. 分析対象を決める

分析対象は、発言者と発言内容に分かれます。キーワードを設定して、それに関連するコメントを拾い上げていくだけでは、精密な分析はできません。SNSでの発言は、「どんな人が発言したのか」によって、その意味や影響力が違ってきます。
また、発言の内容も、より詳しく設定する必要があります。単に「スマートフォンについての発言」とするよりも、たとえば「スマートフォンの料金設定についての発言」としておけば、焦点を絞った検索ができ、分析の精度を上げることができるのです。

3. 情報を集め、分析する

続いて、ソーシャルリスニングツールを使って情報を集め、分析をかけていきます。ソーシャルリスニングツールにはさまざまな分析機能が実装されており、それらを駆使してユーザーのニーズや傾向などを読み取っていきます。ネガティブな意見もポジティブな意見もあるはずですが、単に「こういう声が多い」という定量的な見方をするのではなく、その意見の内容も含めて分析していくことが大切です。

また、分析の際には、情報を読み解く能力が必要です。ブログやQ&Aサイトはまだしも、SNSは短文のコメントがほとんどです。そのため、発言そのものが端的になりやすく、その裏にあるニーズや消費者の傾向を読み取るのは、簡単ではありません。新たな商品開発のために隠れたインサイトをくみ取ろうとするなら、個々のコメントを深く読み解く能力が必要となります。

ツールを使えば、多くのコメントを収集でき、それをさまざまな角度から分析することが可能です。しかし、コメントの発信者とそれに対する周囲の反応を表面的になぞるだけでは、十分とはいえないということは知っておいたほうがいいでしょう。

ソーシャルリスニングツールの基本機能

インターネット上で交わされるコメントはあまりにも膨大で、ひとつひとつを追いかけることはまず不可能です。そのためソーシャルリスニングを行うためには、ソーシャルリスニングに特化したツールが一般的に使われています。
現在、市場に登場しているツールはいくつもありますが、データ収集やデータ分析、ユーザー分析といった基本的な機能はほぼ共通です。ここからは、ソーシャルリスニングツールの基本的な機能について解説していきましょう。

データ収集

ソーシャルリスニングツールの基本機能は、データ収集です。FacebookやTwitterなどのSNSをメインに、個人ブログや動画サイト、口コミサイト、Q&Aサイト、掲示板などから、キーワードを設定してコメントを収集します。
ただ、リサーチ対象を広げすぎてしまうと情報量が多すぎ、収拾がつかなくなってしまいますし、それらの情報がすべて信頼に足るものである保証はありません。ですから、知りたい情報に合わせて対象を選び、タイムリーかつ信頼できる情報を集めるようにしましょう。

データ分析

ソーシャルリスニングツールでは、特定の商品についてのコメントを集めることで、その商品がどれほどの注目を集めているのかを分析することができます。新たに投入する新商品や新サービス、企業からのプレスリリースに対して、時系列に沿った分析を行うことも可能です。
この段階での分析結果を反映し、改善を加えてアップデートした商品を市場投入するという手法も有効でしょう。

ユーザー分析

コメントを発した人の年齢や性別、職業などのユーザー分析も可能です。
この機能を使うと、どのような層のユーザーに自社製品・サービスが受け入れられているのか、あるいは避けられているのかがわかります。

アカウント分析

SNSやブログの発信者の中には、強い影響力を持つインフルエンサーと呼ばれる人々もいます。アカウント分析を行うと、個々の発信者の影響力や範囲を知ることが可能です。
インフルエンサーは現代のマーケティングにおいて、大きな意味を持ちます。アカウント分析を通じて、その存在を見つけ出しましょう。

炎上検知・警告通知

いわゆる「炎上」は、いつどこで起こるか予測がつきません。不具合や苦情を放置したために起こる場合もあれば、誤った情報や完全なデマによって炎上騒ぎに発展することもあります。
ソーシャルリスニングツールには、自社製品やサービスに関する発言が急増した場合、炎上とみなして、警告を発する機能が搭載されています。早急な対策を施すことで、早期の鎮火が図れます。

ソーシャルリスニングの活用事例

最後に、ソーシャルリスニングを活用してユーザーのリアルな声を収集し、サービスの改善につなげた例として、楽天Edy株式会社の事例をご紹介しましょう。

事例企業:楽天Edy株式会社
事業内容:金融

本当のお客様の声を聞きたい!

楽天Edy株式会社が提供する電子マネーのトップブランド「楽天Edy」。コンビニやスーパー、ドラッグストアなど、利用可能な店舗は、2021年時点で78万か所といわれます。同社は、「あらゆるモノをEdyで支払えるようにする」を事業ミッションとして、利用店舗の拡大やアプリの開発に取り組んできました。
その根本となるのは、ユーザーのリアルな声です。楽天Edyのユーザーが何を求め、何に困っているのか。それを知るために同社が選んだのが「Social Studio」でした。このツールを使って、大手SNSのみならず、ブログやQ&Aサイトでの発言をモニタリングし、得られた情報を社内で横断的に共有しています。これにより、普段はユーザーと接することのないシステム開発やアプリケーション企画などの部署でも、ユーザーの生の声を知ることが可能に。その結果、ユーザーボイスを反映したサービスを、他社に先駆けて提供できるようになりました。

的確なサービス改善と、きめ細かなサポート

「スマホを機種変更すると、Edyのポイントがゼロになってしまう」という誤った情報が発信された際には、拡散する前にすばやく検知し、オフィシャルから正しい情報を発信。炎上を未然に防ぐことができたばかりか、すばやい対応に対する感謝と評価のコメントが数多く寄せられたそうです。
現在では、SNS上で発信された悩みや困り事を早期に見つけ、コンタクトセンターに引き継いでフォローするという社内連携の体制も構築できており、ユーザーに寄り添い、的確できめ細かなサポートを実現しています。

ソーシャルリスニングで、個人に寄り添うマーケティングの実現を

SNSのユーザー数は、年代によってかなりのばらつきがあります。しかし、今や企業にとって、特に個人を対象とするBtoC企業にとっては、SNSの存在は無視できないレベルにまで膨らんでいます。
個人が発信するひとつひとつの情報を網羅的にすくい上げ、細かく分析できるソーシャルリスニング。この手法で、より個人に寄り添ったマーケティングを実践してみてはいかがでしょうか。ソーシャルリスニングにご興味のある方は、「ソーシャルメディアのベストプラクティス50選」もご覧ください。
 

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