ステップメールとは?例文の作り方やおすすめツール、2つの成功事例を解説
ステップメールとは事前に用意しておいた複数のメールを、決められた「シナリオ」に沿って配信していくマーケティング手法
ステップメールとは、特定の行動を起こしたユーザーに対して、事前に用意しておいた複数のメールを、決められた「シナリオ」に沿って配信していくマーケティング手法です。このとき、ユーザーの心理や状況に適した内容とタイミングでメールを送って興味を引き、徐々に販売・成約へつなげていく効果が期待できます。
ステップメールの作り方は、まず起点となるユーザーの行動をスタートとして、ゴールとなる目的まで誘導するようにシナリオを作成し、それに沿ってメールを作るのが基本です。また、改善のPDCAを回していくためにも、目標と測定基準の設定を忘れずに行いましょう。
起点となるユーザーの行動の例
- 会員登録
- デモ製品のダウンロード
- 問い合わせ
- サービスの成約・商品の購入
ステップメールのゴール(目的)の例
- サービスの成約・商品の購入
- デモ製品から本製品への移行
- 有料会員登録
- リピーター化
ステップメールのシナリオとは、ステップメールの起点からゴールまでの道筋
ステップメールの「シナリオ」とは、ステップメールの起点からゴールまでの道筋を指します。シナリオは期間や手法、内容の方向性などのプロットによって組み立てられます。
たとえば一般的なBtoB企業の顧客であれば、製品資料のダウンロードをユーザー行動の起点とし、他のホワイトペーパーを複数ダウンロードしたのちに問い合わせ・契約というゴールに至る、といった具合です。
シナリオ作りで重要なのは、ユーザーの行動や心理をイメージすることです。そのときどきによって変わるユーザーの需要を理解できれば、悩みに寄り添い、次のステップへと導けます。
ステップメールの5ステップの基本形
ステップメールの基本形は下記の5ステップにより構成されています。
- インパクトを与え、ユーザーの注意を惹く
- その製品で得られるメリットやベネフィットを訴求する
- 導入例や体験談で疑似体験させ、購入欲を高める
- どこでどのように購入できるのか、販売情報を与える
- 売り込みをかけ、販売・成約につなげる
最初から売り込もうとするのではなく、顧客の購入意欲が十分に高まってから初めて売り込むことで、成約率が高まります。そのためには、その製品を使うことでどんな利益を得られるのか、メリットとベネフィットを十分にアピールし、ユーザーの興味をかき立てることが重要です。
メルマガとステップメール違い
メールを使った代表的なマーケティング手法には「メールマガジン」、通称メルマガがあります。配信リストに同一内容のメールを一斉配信します。宣伝ハガキ・ダイレクトメールと同じ手法がeメールに置き換えられたものというイメージです。
一方で、ステップメールはMA(Marketing Automation)ツールで取得できる資料請求やデモ版の利用といったユーザーの行動情報を条件として、その状況に適した内容(製品の使い方、設定方法など)を受け取り側に合わせたタイミングで発信する手法です。
そのため、ステップメールは、メルマガ以上にタイムリーなコミュニケーションをとることができ、スムーズに購入・成約へと導くことが可能になるのです。
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ステップメールの4つのメリットと・2つのデメリット
ステップメールの4つのメリット
ステップメールにはメリットがある一方で、デメリットもあります。それを理解した上で、うまく活用することがポイントとなります。
- ユーザーの親近感を高め、売上に誘導できる
- 高額な商材やサービスに効果を発揮する
- BtoBの形態にフィットする
- BtoCの場合は継続利用を促すために使うと効果的
ステップメールは、製品について徐々に知ってもらう特性上、「高額で本当に良いもの」を理解してもらうのに適しています。また、メールを受け取った担当社とは別に決裁者がいるケースが多いBtoBの形態でも、複数回のメールコミュニケーションによって担当者に十分な信頼感を持ってもらうことで、決裁者を強力に説得してもらえます。
『メールマーケターのためのベストプラクティス50選』では、メールマーケティングで信頼を築くためのポイントをまとめています。購読者にメッセージを読んでもらえるよう、信頼を勝ち取りましょう。
ステップメールの2つのデメリット
ステップメールはメリットが多い一方で、下記のようなデメリットも存在します。
- シナリオやメール作成に工数がかかる
- 期間限定のキャンペーン情報の発信には不向き
ステップメールは作成前にユーザー側の状況を想定する必要があり、より正確なペルソナ設定やターゲッティングが必要になります。また、期間限定キャンペーンは、リアルタイム性が求められる情報です。ステップメールはユーザーの時間軸をベースに動くため、配信日時が重要となる情報の伝達には適していません。
ステップメールの4ステップでの作り方
ステップメールの考案から配信するまでの流れは下記の4ステップにより進められます。
- 配信の目的を決める
- ターゲットを決め、シナリオを作る
- メールの文面を作成する
- 結果を検証し、改善策を次回に反映する
それぞれのフェーズで覚えておきたいポイントをチェックしておきましょう。
また、『メールマーケターのためのベストプラクティス50選』では、実践から得られた50のベストプラクティスをまとめています。顧客の心に響き、価値を感じさせるメールの作成方法を解説していますので、ROI(投資利益率)の向上にお役立てください。
1. 配信の目的を決める
最初に行うのはステップメール配信のゴール、つまり目的の決定です。
このとき、最初は具体的な数値まで設定する必要は無く、クロスセルやアップセルの達成、顧客満足度の向上といった、方向性レベルから決めていきましょう。
2. ターゲットを決め、シナリオを作る
目的が決定したら、そこへ導くユーザーの層を決定します。
ステップメールは、受け取り手の状況に合わせた具体的な内容が必要です。それだけに、ターゲッティングの精度は重要で、そこからスタートするシナリオにも妥当性が求められます。
このときに活用したいのが「CRM(Customer Relationship Management)」と呼ばれるツールです。CRMは顧客の情報を蓄積・管理し、関係性の把握やニーズの分析などに役立ちます。顧客を深く知ることで、より精度の高いターゲッティングとシナリオ作成を実現できます。
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3. メールの文面を作成する
目的に沿った本文を作成します。最初からうまく書こうと構えてしまうと、なかなか書き進めることができません。まずは目的に沿って伝えたいことを書き出し、それぞれを文章化するようにすればスムーズです。
ポジティブで建設的な内容を主軸にすべきですが、自社製品の欠点やデメリットなど、ネガティブな要素にふれる場合もあるはずです。そんなときは、ネガティブ要素への対応策も同時に入れ込むなどして、ユーザーに安心感を与えることが大切です。
書き上がったメールは第三者に確認してもらい、客観的な意見を受けてブラッシュアップを図るといいでしょう。文面が完成したら、配信ツールを使って送信します。
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4. 結果を検証し、改善策を次回に反映する
ステップメールもメルマガと同じく、その後の効果測定が重要です。配信した曜日や時刻、タイトルなどとともに、開封率やクリック率、コンバージョン率などの情報を整理・分析して、次回のメールに活かすようにしましょう。
その繰り返しが、ステップメールをより洗練されたものへと磨き上げていきます。
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ステップメール運用に役立つ3つのツール
ステップメールには「メール配信システム」がよく用いられますが、MAツールやCRMツールにもステップメールの送信機能は実装されています。ツールを選ぶときは、各システムの中心となっている機能から選ぶとよいでしょう。
各ツールの特徴は、下記のとおりです。
ツール | 内容 |
メール配信システム |
メール配信機能に特化したツール。顧客管理機能を併せ持つものもある |
MAツール |
マーケティングの効率化を目的としたツール。機能の1つとして、メール配信システムを備える |
CRMツール |
顧客情報の管理や分析を目的としたツール。顧客情報を整理しつつメール配信にも利用できる |
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ステップメールの2つの活用事例
事例1:ステップメール1本で、数十人の来院増加
銀座、新宿に拠点がある、銀座美容外科クリニックを運営する医療法人社団銀美会。2010年の開院以来、30万件以上の症例数を誇る銀座美容外科クリニックでは、手書きの問診票とExcelを使った情報管理が、現場の作業を圧迫していました。
この課題を解決するため、「Sales Cloud」を導入。現場の作業負荷を大きく削減し、効率的な情報管理体制を実現した同院は、さらにMAツール「Account Engagement (旧Pardot)」を活用することに。バースデーメールの送信や、過去の施術内容に合わせて次の来院を促す、ステップメールの配信を開始しました。
その結果、メール開封率は60%を突破。1通のメールで60人から70人ものリピーターが来院するようになりました。 さらに、売上データを分析したところ、売上全体の約50%が、全体の3%の顧客で占められていることが判明。
コアな優良顧客を中心に特別な限定サービスを設定し、メールでのアプローチをかけるなど、データ分析とメール戦術を組み合わせたマーケティングも展開することにしました。それにより、作業負荷の軽減と情報入力管理の効率化、セキュリティの強化とともに、売上額の増大を実現しています。
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事例2:ステップメールとAIスコアリングで、効率化と成約率向上を実現
勤怠管理システム「KING OF TIME」をはじめ、生産性を向上させるクラウドサービスを提供する株式会社ヒューマンテクノロジーズ。同社では、設立後いち早く「Sales Cloud」を導入し、情報の効率的な管理を行ってきました。
しかし、働き方改革の効果で問い合わせが増大すると、資料の送付やフォローコールといった営業現場の作業負荷が増大。また、案件化の予測を担当者の感覚で処理していたため、リードが増加する一方で、コンバージョンが下がるという現象も起こっていました。
この課題を解決するべく、同社はMAツール「Account Engagement (旧Pardot)」を導入。シナリオに沿ってステップメールを配信し、丁寧なナーチャリングを行って、購買確度が十分に高まったところで営業部門に引き渡すフローを構築することで、営業現場の作業効率が大きく改善されることになりました。
さらに、「Sales Cloud Einstein」によるリードデータのチェックを行い、AIスコアリングも活用するようにしたところ、スコアの高い、購買意欲の旺盛なリードに優先的に対応することで、成約率の向上も果たしています。
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ステップメールで注意したい3つのポイント
最後に、ステップメールを実施するにあたって注意しておきたいポイントをいくつか挙げておきましょう。これらの点に注意しながら、メールの作成・送信を行ってください。
<3つの注意点>
- 最初のメールが肝心
- ユーザーの興味を維持し続ける内容にする
- 配信ツールの機能は十分か
最初のメールが肝心
第一印象が良ければ、その後もメールを読んでくれる可能性が高まります。それだけに、最初のメールはとても重要です。しかし、奇をてらった文章にしたり、内容を増やしすぎたりするのは逆効果ですし、後が続きません。
まずは、メールでどんなことを伝えていくのか、それによってどんなメリットがあるのかを、簡潔に記載しましょう。また、なぜ顧客がこのメールを購読するのか、何を望んでいるのかを考え、それを軸にコンテンツを作成することで関心を掴むことができます。
ユーザーの興味を維持し続ける内容にする
配信ツールの機能は十分か
専用ツールを使うにしろMAのステップメール機能を使うにしろ、基本的な機能に不足はないはずですから、その点は心配ないでしょう。
しかし、高度な配信機能を使ったり、顧客データを特定条件でグループ分けしたりということになると、ツールによっては「できる・できない」という差が表れます。
ほかのデジタルツールと同様、配信ツールも日々進化しています。必要ならばより高機能なものに入れ替えることも検討すべきです。多くのツールは試用版が用意されているため、実際に使って機能を検証するのがおすすめです。
「Salesforce Marketing Cloud」も30日間の試用が可能で、本番環境そのままのサービスを提供しております。クラウド型のため、つねに最新の環境と機能をご利用いただけます。
ステップメールは、回数を重ねて磨き上げることが大切
ステップメールを上手に利用すれば、顧客により自社製品を知ってもらい、購入・成約へ導けます。そのためには、状況に即したタイミングやシナリオ、文面など、さまざまな要素が重要となってきます。
何度も配信を繰り返して内容を改善し、機能的なツールも使いながら、効果的なステップメールへと洗練させていきましょう。