OKRとは?MBO・KPIとの違いやメリット、導入から運用までを徹底解説
チームの目標達成や目標の管理方法に課題を感じていませんか?
OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、日本語では「目標と成果指標」と呼ばれる目標達成のフレームワークです。
目指すべき目標(Objectives)と、目標を達成するためにクリアするべき成果指標(Key Results)を設定するOKRは、GoogleやIntelが実践し効果を上げている手法として注目されています。
本記事では、OKRの基本概念はもちろん、導入ステップ、運用を成功させるための重要ポイントまで、あなたの組織の成長を強力に後押しする情報を徹底的に解説します。
OKRを理解し、活用することで、組織全体の目標達成を加速させ、従業員のエンゲージメントを高められるでしょう。
OKRとは?意味や具体例を解説
組織として達成すべき目標を掲げ、全従業員がそこに近づく努力を傾け、実際にどこまで近づけたのかを成果として数値化する、目標達成のためのフレームワークです。達成が難しいレベルの目標を設定することで、そこに至るために組織内でのコミュニケーションを活発にし、個々のモチベーションを向上させて業務効率を高める狙いもあります。
この考え方そのものは目新しいものではありませんが、GoogleやIntelで導入され、その実効性が話題となったことから注目を集めました。国内外の多くの企業でOKRは導入され、その数は年々増えているといわれます。
企業の目標を個人の目標に落とし込む
たとえば、「売上◯◯万円」が目標ならば、そこに至るための成果指標として「顧客単価を△△万円アップ」「新規ユーザーを□□%増加」などの数値を指標として設定しておくのです。
そして、OKRの特徴的な構造として、会社のOKRの下位に部門のOKRを置き、さらにその下に個人のOKRを配置します。つまり、企業の目標と部門の目標、さらに個人の目標までがひとつの延長線上に置かれることになります。
こうすることで、従業員ひとりひとりが会社のビジョンを理解しやすくなり、また自分に何が求められているかが明確になって、従業員全員が足並みをそろえてひとつの目標を達成するために集中することができます。
OKRとMBO・KPIとの違い
指標 |
特長 |
OKR |
|
MBO |
|
KPI |
|
OKRの4つのメリット
OKRは目標達成管理システムとしての機能はもちろん、派生的なメリットも備えています。そのいくつかをご紹介しましょう。
<OKRのメリット>
- 目標設定が容易になる
- 会社と個人の意思統一ができる
- 個人のミッションが明確になる
- メンバー間のコミュニケーションが活発になる
目標設定が容易になる
組織全体から部門へ、さらに個人へと目標設定を引き下ろしていき、それぞれが自分の目標達成のために努力することで、組織全体が目標達成へと動いていきます。全社的なプロジェクトなど、大規模な業務を多人数で回していくような場合に、OKRは特に有用でしょう。
会社と個人の意思統一ができる
会社と個人が同じ方向を向くことで意思の統一を図ることができ、組織全体の業務効率を高めることにもつながっていくのです。
個人のミッションが明確になる
OKRは、そうした判断の拠り所としても機能します。部門でも個人でも、何らかのアイデアや提案が生まれた際には、OKRに照らしてみるのです。そうすれば、目標達成につながるかどうか、成果指標を高めるかどうかが明らかになり、そのアイデアや提案に着手するかどうかを判断できます。
メンバー間のコミュニケーションが活発になる
これは、ひとつの部門内部だけで起こることではありません。各部門のOKRが全社で共有され、情報がオープンにされていれば、どの部署の誰がどんな仕事で会社の目標達成に貢献しているかがわかります。そこをベースとした従業員間のコミュニケーションやコラボレーションを促進する作用を、OKRは持っているのです。
OKRが目標達成に有効であるメカニズム
野心的目標(Objectives)による挑戦文化の醸成
OKRのObjectivesは、必ずしも100%達成を前提としない、ストレッチゴールであることが推奨されます。これにより、従業員は現状維持ではなく、常に高い目標に挑戦する意識を持つようになります。たとえ目標を完全に達成できなくても、その過程で大きな成長やイノベーションが生まれる可能性が高まります。
Googleでは、「月への到達(Reach for the moon)」という言葉で、大胆な目標設定を奨励しています。これは、たとえ月に到達できなくても、その過程で多くの技術革新が生まれるという考えに基づいています。
測定可能な主要な成果(Key Results)による進捗の可視化
Objectivesが定性的な目標であるのに対し、Key Resultsは定量的で測定可能な指標です。これにより、目標達成に向けた進捗状況が誰にでも明確に把握できるようになります。進捗が可視化されることで、チームや個人のモチベーションが維持され、遅延が生じている場合には早期に軌道修正を行うことが可能になります。
あるソフトウェア開発チームが「顧客満足度を向上させる」というObjectiveを設定した場合、Key Resultsとして「顧客満足度調査の平均スコアを現在の4.0から4.5に向上させる」「顧客からのポジティブなフィードバック数を月間20件以上にする」といった具体的な指標を設定します。これにより、顧客満足度の向上という目標に対する進捗が明確に測定できるようになります。
透明性の高い情報共有による組織の一体感
OKRは原則として組織全体に公開されます。これにより、各チームや個人の目標が組織全体の目標とどのように関連しているのかが明確になり、組織全体の一体感と共通認識が醸成されます。自分の仕事が組織全体の目標達成に貢献しているという意識は、従業員のエンゲージメントを高める重要な要素となります。
あるマーケティングチームの「ブランド認知度を高める」というObjectiveは、営業チームの「新規顧客獲得数を増やす」というObjectiveと連携していることが全社に共有されます。これにより、各チームが互いの目標を理解し、協力体制を築きやすくなります。
OKRの導入手順
OKRの設定手順は、いたってシンプルです。しかし、各手順が意味するところをきちんと理解した上で進めていかないと、思うような成果を得ることはできません。
OKRを導入する際の設定手順について、順を追って説明していきましょう。
<OKRの導入手順>
- OKR導入の目的と範囲を明確にする
- 目標を設定する
- 成果指標を設定する
- チームごとのOKRを設定する
- OKRの設定を公開する
- 進捗を定期的に確認する
- 成果を測定する
OKR導入の目的と範囲を明確にする
まず、なぜOKRを導入するのか、その目的を明確に定義します。
「目標達成率の向上」「組織の透明性向上」「従業員のエンゲージメント向上」など、具体的な目的を設定することが重要です。
また、全社的にOKRを導入するのか、特定の部署やチームから試験的に導入するのかといった導入範囲も決定します。
目標を設定する
何においても、目標(Objectives)は高めに設定します。
いつもどおりの作業をこなして実現できる目標に意味はありません。OKRの場合、「ストレッチゴール」と呼ばれる、達成可能と考えられる値よりもさらに高い目標を設定することが多々あります。高い目標は組織や個人のパフォーマンスをより高めるという研究結果がありますから、これは理にかなったことです。
「かなりきつい目標値で、ただがんばるだけでは難しい。どうすれば達成できるだろう?」 そうした発想を引き出せるレベルに目標を設定するのが肝要です。
ただし、あまりに目標が高すぎて「実現不可能だ」と感じられてしまうと、あきらめが先に立ち、パフォーマンスが一気に下がってしまいますから要注意です。
成果指標を設定する
当初の目標が高い分、ここでの成果数値も高めの設定となります。KPIなどとは異なり、達成率が60~70%前後になるレベルに設定します。同時に、この数値をいつまでに達成するのかも設定しておきます。
成果指標は通常複数設定しますが、あまり数が多いとパフォーマンスが分散してしまいますから、3つ程度にとどめておくのがいいでしょう。
チームごとのOKRを設定する
全社の目標を受けて、各部署やチームがそれぞれの目標と成果指標を設定します。
チームOKRは、全社OKRと整合性が取れている必要があります。成果指標は具体的、測定可能、達成可能でありながら、挑戦的な目標であることが望ましいです。
OKRの設定を公開する
さらに、個々の従業員にとって自分の業務が会社にどのように貢献しているのかがはっきりし、従業員同士の連携を高めることに役立ちます。
進捗を定期的に確認する
部内での遅れや漏れはメンバー間のサポートで解決し、必要ならば他部署との調整も行います。
成果を測定する
このサイクルを繰り返すことで、業務効率とともに成果を高めていきます。
OKR導入の重要ポイント
組織全体への丁寧なコミュニケーション
OKRの目的、プロセス、期待される効果などを、組織全体に対して丁寧に説明し、理解と協力を得る必要があります。
疑問や不安を持つ従業員に対しては、十分な情報提供と対話の機会を設けることが重要です。
定期的な進捗確認とオープンな議論
定期的な進捗確認ミーティングを実施し、OKRの達成状況を共有します。
目標に対する進捗だけでなく、課題や成功要因についてもオープンに議論する文化を醸成することが重要です。
柔軟な目標の見直し
市場の変化や組織の状況に合わせて、OKRを柔軟に見直す姿勢が求められます。
必要に応じて、成果指標の修正や、目標の再検討も視野に入れるべきです。
適切なツールとプロセスの活用
OKRの運用を効率化し、可視性を高めるためのツールを導入し、明確なプロセスを確立します。
たとえばスプレッドシート、専用のOKR管理ツールなどで管理を行なうのがおすすめです。
成功体験の共有と称賛
OKRにおいて注意すべきポイント
目標設定は妥当か、説明は十分か
また、目標に対する成果は、一定期間で区切って評価しますが、このサイクルはあまり長くないほうがいいでしょう。四半期程度のスパンに区切り、評価結果を速やかに現場にフィードバックできる環境を整えておきましょう。
報酬に連動させるのは危険
ですからOKRは、その結果を人事評価には用いないことが基本です。それをやってしまうと目標設定が甘くなったり、正確な分析ができなくなったりと、OKR本来の目的から外れてしまう結果につながるからです。
経営陣・管理職の関与は必須
OKRに限らず、新たなワークフローや評価システムを導入し定着させることは、決して簡単ではありません。なぜそれが必要なのか、導入によって何がどう変わるのかということを、関係者全員が理解し納得する必要があるからです。そしてそのためには、会社の経営陣と現場を管理するマネージャーが積極的に関与することが不可欠です。
人は本能的に変化を恐れます。新たな概念、新たな方法論、新たな環境へ移行することで得られるものよりも、それによって何かを失うのではないかという心配が先に立ちます。そのため、変化に対して消極的になりがちです。
ですから、OKRの導入についても、それがどのような結果を生んでくれるのかを経営陣が熱心に説き、本気で導入・運用にあたらなければ、現場のスタッフはついてきてくれません。反対に、経営陣や管理職がOKRを理解し、その有用性に気づくことが、導入・運用を成功させる第一歩になるのです。
トップダウンのみ、あるいはボトムアップのみに偏らない
目標はトップダウンで示されることが多いですが、成果指標の設定には現場の意見を反映させることが重要です。
双方向のコミュニケーションを通じて、現実的かつ達成意欲を高めるOKRを設定する必要があります。
OKRに関するよくある質問
OKRの導入期間はどのくらいかかりますか?
OKRの導入期間は、組織の規模や文化、事前の準備状況によって大きく異なります。小規模なチームであれば数週間で試験的な運用を開始できる場合もありますが、全社的な導入を目指す場合は、数ヶ月の準備期間が必要となることが一般的です。
まずは一部のチームからスモールスタートし、徐々に範囲を拡大していくアプローチが推奨されます。
OKRはどのような組織に向いていますか?
OKRは、業種や規模を問わず、目標達成意欲の高い組織、変化に柔軟に対応したい組織、従業員のエンゲージメントを高めたい組織など、幅広い組織に適しています。
特に、成長を目指すスタートアップ企業や、部門間の連携を強化したい大企業などで導入される傾向にあります。
ただし、OKRの効果を最大限に引き出すためには、組織文化やリーダーシップの理解と協力が不可欠です。
OKRの目標達成率はどのくらいが適切ですか?
OKRの目標はストレッチゴールであることが推奨されるため、必ずしも100%の達成を目指すものではありません。一般的に、60〜70%程度の達成率が理想的と言われています。
100%に近い達成率が続く場合は、目標設定が低すぎる可能性があります。一方、極端に低い達成率が続く場合は、目標設定の見直しや、目標達成に向けた取り組みの改善が必要です。
OKRの導入に役立つツールはありますか?
OKRのレビューはどのように行うべきですか?
OKRのレビューは、週次、月次など定期的に実施することが重要です。レビューミーティングでは、各チームや個人のOKRの進捗状況を共有し、成功事例や課題を議論します。
重要なのは、進捗状況を批判的に評価するだけでなく、目標達成に向けて協力し、学びを得る場とすることです。必要に応じて、成果指標の修正やアクションプランの見直しを行います。
OKRを設定して個人のモチベーションを組織の目標達成につなげる
しかし、個人のモチベーションを向上させ、それを組織の目標達成に収束できるという点では、とても有効な目標達成管理手段といえるでしょう。
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