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企業サステナビリティ報告指令(CSRD):企業向けガイド
欧州連合(EU)およびそれ以外の地域で活動する約50,000社は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に準拠した報告が義務付けられます。社内でどのように準備を進めて準拠できるようにすれば良いか、ご紹介します。
欧州連合(EU)およびそれ以外の地域で活動する約50,000社は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に準拠した報告が義務付けられます。社内でどのように準備を進めて準拠できるようにすれば良いか、ご紹介します。
企業サステナビリティ報告指令(CSRD)とは、財務報告と並行して環境、社会、ガバナンス(ESG)の報告を義務付ける欧州の法律です。その目標は、投資家やその他の主要なステークホルダーが、気候変動をはじめとするESG関連の問題における企業の影響、リスク、機会について適切な情報を確実に入手できるようにすることです。
欧州連合(EU)およびそれ以外の地域の約50,000社が、今後数年間でCSRDに準拠する必要があります。これは抜本的な必須要件であり、2024年から2029年にかけて段階的に導入されています。2024年1月からは、EUに拠点を置く企業および子会社に適用されます。その後、今後4年間で、この法律はEU内のより多くの組織に加え、EUでビジネスを行う企業にも拡大されます。
最初にCSRDの適用対象となる企業は、2025年に報告する準備をするために、2024年にデータの収集を開始する必要があります。また、特に現在ESG指標の追跡や報告を行っていない企業では、データ収集に時間がかかるでしょう。2029年までに、CSRDの影響を受けるすべての組織はコンプライアンスを遵守する必要があります。
2024年はEUに拠点を置く企業がCSRDの対象となりますが、2025年以降はEUでビジネスを行う企業に拡大されます。EU域外に拠点を置いているものの、EU諸国に子会社が登録されている企業については、その子会社の特性に応じて適用開始となる時期がフェーズ1~3に分かれます。
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コンプライアンス違反に対する罰則については、各EU加盟国に委ねられていますが、次に挙げる罰則のうちの1つまたはその組み合わせが予想されます。
非財務報告規則違反に対する既存の法律が厳格であることを考えると、CSRDではさらに厳しくなる可能性があります。罰金に関しては、アイルランドの5,000ユーロからドイツの1,000万ユーロ、または年間総売上高(または収益)の5%、不当に得た利益/回避した損失の合計の2倍まで、さまざまです。
CSRDは、ESGに関わるさまざまなトピックを網羅する広範な開示義務です。CSRDの中で技術的な要件を規定するのが欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)です。組織は、ESRSを使用してCSRDに準拠する必要があります。
ESRS 1および2—これらは、ESG報告の標準化と透明性の向上を目的とした、基本的な一般的な開示要件と原則です。
これらの報告基準は、ESGの全トピックを網羅しています。
環境:ESRS E1、E2、E3、E4、E5—気候変動、汚染、生物多様性と生態系、水と海洋資源、資源利用と循環型経済などの問題に適用されます。
社会:ESRS S1、S2、S3、S4—企業の従業員、バリューチェーン内で働く人、被災コミュニティ、消費者とエンドユーザーなどに関わる問題に適用されます。
ガバナンス:ESRS G1—企業におけるビジネス行動に適用されます。
これらの報告基準はまだ発表されていませんが、最終的に特定のビジネスセクターに適用される予定です。現在、基準の草案には以下が含まれます。
CSRDの対象ビジネスには、横断的な開示と原則の適用が義務付けられます。環境、社会、ガバナンスのトピック別基準の情報開示については、トピックが企業にとって重要であると見なされる場合にのみ義務付けられます。
すべての企業は、気候変動基準であるE1に照らして報告することが義務付けられます。この基準は、ダブルマテリアリティの対象とならない唯一の基準であるため、マテリアリティではないと主張する企業でさえ、どのようにして、かつなぜその結論に至ったのかを説明する必要があります。E1には、スコープ3を含む温室効果ガス(GHG)排出量が含まれます。この基準の下では、企業は気候リスクの評価と、気候変動を緩和し、気候変動に適応するための計画も提供する必要があります。
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ESRSでは、CSRDを遵守する組織にダブルマテリアリティ評価の実施を義務付けています。ダブルマテリアリティとは、ESGトピックが人や環境、ビジネスの財務的成功(リスクと機会の観点)に与える影響を指します。
ダブルマテリアリティ評価では、ビジネスの成功と社会に与える影響が最も大きなESGトピックを特定します。自社のビジネスがサステナビリティの課題にどのような影響を受けているか(内向きの影響)と、自社のビジネス活動が社会や環境にどのような影響を与えているか(外向きの影響)を把握し、報告する必要があります。
CSRDに準拠するには、サステナビリティに関する情報とデータの第三者保証も必要とされます。
企業はまず、第三者監査人から限定的な保証を確保することが義務付けられます。次に、CSRD側から、企業が合理的な保証に移行するためのタイムラインを概説し、第三者が企業のサステナビリティに関する情報開示と関連業務の包括的な評価を実施します。
CSRDは、NFRDに基づくEUの以前のESG報告要件の拡張です。2018年に制定されたNFRDは、財務報告要件に焦点を当てており、環境および社会課題の対策アプローチを財務指標とともに年次報告書で開示するためのガイドラインを企業に提供していました。CSRDの適用が開始されると、NFRDに取って代わることになります。
EUのCSRDとCSDDDは、それぞれ独自ながらも相互補完的な役割を担っています。CSRDは透明性の高いESGの報告と開示の基準を設定しています。その一方、CSDDDはバリューチェーンに起因する人権問題と環境への影響を積極的に特定、防止、軽減するためのデューデリジェンスプロセスを設定することを企業に義務付ける法的枠組みです。
要するに、CSDDDとは企業が組織のサステナビリティパフォーマンスを向上させるシステムを構築するためのメカニズムと考えてください。CSRDは、CSDDDの適用対象企業およびそれ以外の企業の報告要件を規定しています。
SECの気候情報開示規則は、2024年3月に発表されており、CSRDよりもはるかに狭い範囲を規定しています。CSRDとは異なり、SECの気候開示規則は米国の上場企業のみに適用され、GHGインベントリの報告と気候リスクの開示に重点を置いています。また、SECはスコープ1とスコープ2のみの報告を義務付けており、スコープ3は対象外となっている点も特徴的です。CSRDとSECの気候情報開示規則の両方の適用対象となる企業は、どちらも遵守する必要があります。
SalesforceとAkin Gump社が政策とESGの専門家を招き、SECの気候情報開示規制案が施行された場合に何が期待できるか、またその対応策について話し合ってもらいました。
欧州委員会は、企業による高品質で信頼性の高い公開報告を支援し、大きな意味での公的説明責任の文化を醸成することを目的としてCSRDを作成しました。ESG報告は数十年にわたって任意とされてきたため、企業がESG指標について報告するのに役立つ自主的な枠組みが登場してきました。しかし、すべての組織に報告を義務付ける法律や、報告の基礎となる単一のフレームワークがなければ、ステークホルダーは、複数の企業または同じ企業が複数の報告期間にわたって開示した情報の間で公正な評価を行うことが困難です。投資家、顧客、消費者、パートナー、サプライヤーにとっても意思決定が複雑になります。CSRDはヨーロッパ内外に広く広がっているため、法律が直接適用されない企業にも、顧客、投資家、その他のステークホルダーからCSRDに準拠した情報を求められることがあるかもしれません。
CSRDの適用対象企業が抱える課題としては、コストの増加、信頼できるデータの欠如、進化する規制要件への対応の難しさなどが挙げられます。
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