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ボットからAIエージェントへ:自律型AIによる次なる大きな飛躍

Jayesh Govindarajan, typing on a laptop, writing about the rise of agentic systems.

※本記事は2024年8月22日に米国で公開されたFrom Bots to Agents: The Next Great Leap Forward Is Autonomous AIの抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。


生成AIが登場した当初、人々は主にレシピ作成や旅行の計画といった単純な作業に利用していました。しかし、AIの機能に慣れてくると、メールの下書き作成、会議メモの要約、文書作成など、一般的な業務関連のタスクへの活用にも関心が高まってきました。
今や、あらゆる企業がAI企業を目指しています。実際、経営陣がAIの導入に対して感じる緊急性は、わずか半年で7倍に増加し、インフレや経済全体の懸念を上回る最優先事項となっています。さらに、77%のビジネスリーダー(英語)が、迅速にAIを導入しなければ、このAI革命に乗り遅れるのではないかと危機感を抱いています。

今や、あらゆる企業がAI企業を目指しています

Salesforce AIプラットフォーム担当EVP、ジェイッシュ・ゴビンダラジャン(Jayesh Govindarajan)

その危機感はまさに的を射ています。AIを導入しない企業は、競合に大きく遅れを取るリスクがあり、そのリスクは、チャットボットからCopilot、そして自律型AIエージェント(英語)、いわゆるエージェントシステムへと進化する中で、企業が予想するよりも早く現実のものとなる可能性があります。

チャットボットからCopilotへ

大規模言語モデル(LLM)や生成AIが登場し、AIがビジネスや消費者の関心を集める以前から、多くの人々は知らず知らずのうちに初歩的なAIチャットボット(英語)とやり取りしていました。これらのチャットボットは、よくあるFAQへの回答や顧客の購買履歴に基づく商品の推奨など、定型的かつシンプルなタスクを処理していました。企業は、より優れた顧客体験を効率的かつ費用対効果の高い方法で提供するために、これらのチャットボットを積極的に活用してきました。たとえば、SalesforceのEinstein Botsは、3,000社以上の顧客に利用され、毎月約6,500万回のセッションを処理しています。

ヒースロー空港では、Einstein Botsを活用し、24時間体制でサポートを提供しています。これにより毎月4,000件の質問に対応し、電話の件数を27%削減しています。2023年5月にライブチャットを導入して以来、その利用率は450%増加し、オペレーターの業務負担を軽減し、効率性を向上させています。現在、Einstein Botsを導入したヒースロー空港のコールセンターでは、1件あたりの対応時間が40秒から60秒短縮されています。

しかし、チャットボットは通常、特定のスクリプトに依存しているため、自然言語処理や推論能力が十分でなく、機械的に感じられることがあります。さらに、顧客に関する企業データやメタデータに基づいていない場合、ニュアンスや文脈が欠如し、パーソナライズされていないこともあります。

Copilotは、生成AIや自然言語処理(NLP)、そしてビジネスユースケースではCRMを組み合わせてルーチンワークを簡素化し、よりダイナミックで効率的な提案を業務フローに組み込むことで、この状況を変え始めています。たとえば、Einstein Copilotにより、企業はEinstein Trust Layerを用いてプライバシーとデータガバナンスを確保しながら、Agentforce(英語)を基盤とするData Cloudを通じて企業固有のデータやメタデータを活用し、強力な顧客インサイトとレコメンデーションを生成できます。企業データを十分に活用できない他のAIアシスタントやCopilotとは異なり、Einstein Copilotは、企業固有の信頼性の高いデータを使用して回答を生成できる企業向けのCopilotです。

ボンバルティア社は、世界中の個人、企業、政府向けに高性能航空機の設計、製造、メンテナンスを行う大手ジェット機メーカーです。同社は、Einstein Copilotを活用して、会議前に営業担当者が知っておくべき見込み客の情報を集約し、最適なアプローチ方法に関するレコメンデーションを得ています。Einstein Copilotにより、顧客とのミーティングや、やり取りの音声メモを書き起こせるため、営業チームは新規の見込み客とのミーティングや既存顧客のサポートに費やす時間を節約することができます。

Einstein Copilotにより、顧客とのミーティングや、やり取りの音声メモを書き起こせるため、営業チームは新規の見込み客とのミーティングや既存顧客のサポートに費やす時間を節約することができます

それでも、Copilotは完全に自律的ではありません。ビジネスの現場では、会議のスケジュール調整、CRMレコードの更新、メールの下書き作成、事前調査など、さまざまな業務のサポートに非常に有用です。その一方で、ユーザーに代わって複雑なタスクを調整する能力はありますが、それにはスキルの設定が必要であり、最大限のパフォーマンスを発揮するためには一定のサポートが欠かせません。Copilotは非常に優秀で、単純な作業に優れているインターンや新入社員のように、より高度な業務を遂行するには指導や監督が必要になります。

エージェント・システムの台頭

このような業務には、デジタルアシスタントとは異なる、信頼できるエージェント・システムが求められます。

AIの高度な形態である自律型AIエージェントは、人間による細かなサポートをほとんど必要とせず、高度な計画、推論、調整を実行できます。従来のソフトウェアプログラムがあらかじめ定められたルールに基づいて動作するのに対し、自律型AIエージェントは生産性の向上に寄与するだけでなく、従業員に新たなスキルと能力を提供し、顧客との関係を強化する役割を果たします。さらに、ルーチン業務を完全に自動化し、利益率の向上に寄与します。そして、人間と同じように同僚や顧客と自然にやり取りすることが可能です。
たとえば、Salesforceは最近、営業チームの成長とトレーニングを支援する2つの新しい完全自律型セールスエージェントを発表しましたAgentforce(英語)を基盤とするAgentforce SDRは、見込み客と自然言語で自律的に対話し、問い合わせへの対応や営業担当者とのミーティングの設定を行います。一方、Agentforce Sales Coachは、ヒアリング、プレゼン、交渉時のシミュレーションを行い、顧客役となり営業担当者と自律的なロールプレイを実行します。

今回の発表は、今年7月に発表されたSalesforce初の完全自律型AIエージェント、Agentforce Service Agentに続くものです。Agentforce Service Agentは、あらかじめプログラムされたシナリオに縛られることなく、サービスに関する幅広い問い合わせに対して信頼性の高いカスタマーサポートを24時間365日提供します。また同時期に、Workdayとの提携も発表し、オンボーディング、健康関連の福利厚生、キャリア開発などの、従業員向けサービスに新しいAIアシスタントを提供することも発表しました。今後数か月の間に、Salesforceは特定の職種向けの業務機能を自動化する他のAIエージェントをリリースする予定です。これらのAIエージェントの一部はすぐに利用可能で、その他のAIエージェントは最終的に顧客の特定のニーズに合わせてカスタマイズできるようになる予定です。

AIエージェント向け統一プラットフォームの構築

初期段階では、これらのAIエージェントは独立して動作し、他のタスクに特化したAIエージェントとは連携しません。しかし、営業担当者がサービス担当者やマーケティング担当者と連携する必要があるように、また人事担当者が社内弁護士や採用担当者に定期的に相談するように、自律型AIエージェントも最終的には他のAIエージェントと連携する必要があります。 

もちろん、かなり複雑になる可能性があるため、単独でも、または連携しても動作する自律型AIエージェントをカスタマイズで構築し、訓練して監督する、Agentforceのような統合プラットフォームが必要になります。現実世界の企業と同様に、AIエージェントの世界でも、監督とモニタリングを行い、必要に応じて迅速に対応を行い、目標達成を目指しながらそのパフォーマンスを監査するシステムが求められます。

エージェント・システムについては、まだ理解すべきことが多くあります。この進化の過程は、車の自動運転の発展に似ています。初期段階では、車線逸脱警告、自動駐車、緊急ブレーキといった機能がドライバーの任意で有効にできる形で提供されていました。しかし、技術が進化するにつれて、最も交通量の多い市街地でも無人タクシーが乗客を乗せて走行できるようになりました。

重要な点は、自律型システムには単独で動作するものから連携して動作するものまで、さまざまなオプションが存在するということです。チャットボットやCopilot、AIエージェントがビジネスニーズに応えるだけではなく、それらが一体となって、エンタープライズITの未来を形作っていくのです。

チャットボットやCopilot、AIエージェントがビジネスニーズに応えるだけではなく、それらが一体となって、エンタープライズITの未来を形作っていくのです

Salesforce AIプラットフォーム担当EVP、ジェイッシュ・ゴビンダラジャン(Jayesh Govindarajan)

ガードレールと信頼に集約

テクノロジーに対する信頼がいまだ確立されていないため、多くのビジネスリーダーは完全自律型AIエージェントに対して慎重な姿勢を示しています。彼らは、古いデータに起因するエラーが効率性に悪影響を及ぼす可能性を認識しています。
しかし、一部のLLMのように、数年ごとに公開情報に基づいてモデルを訓練するのではなく、自社のデータを継続的に使用することで、正確性と関連性の問題を克服できます。また、AIの問い合わせをEinstein Trust Layerのようなシステムで実行することで、個人識別情報(PII)をマスキングし、AIエージェントが従うべき明確なパラメータやガードレールを設定でき、信頼性の問題にも対応できます。

AIエージェントがその広範な能力を理解し、実行することは重要ですが、それ以上に大切なのは、AIエージェントが自らの限界を認識し、人間の介入が必要な場面を理解することです。当社のAIエージェントは、未知の状況に直面した際には一歩引いて、適切なガードレールを設定した上で人に引き継ぐよう訓練されています。
Salesforceは、顧客のAI導入プロセス全体を通じて緊密に協力し、カスタマイズされたソリューションを提供することで、市場に出回っているAIの自律機能の活用に対する安心感と信頼を育んでいます。今こそ、達成可能なことに注力するのではなく、避けられない事態に備えることが重要です。

詳細情報:

  • Agentforceの詳細は、こちら(英語)
  • Agentforce Sales Agentの詳細は、こちら
  • Agentforce Service Agentの詳細は、こちら
  • エンタープライズAIを成功させる4つの鍵は、こちら(英語)
  • Einstein Trust Layerの詳細は、こちら
  • Salesforce Data Cloudの詳細は、こちら