※本記事は2024年6月6日に米国で公開されたConsumer Chatbot Technology Isn’t Enterprise-Ready – Here’s Whyの抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。
多くの企業が最新かつ最高のAIチャットボットの導入に関心を示していますが、華やかな宣伝文句の裏にある基本的な真実を見落としがちです。それは、消費者向けのチャットボットテクノロジーがエンタープライズに適したものではなく、おそらく今後もそれは変わらないであろうということです。
その理由として、AIアシスタントの良し悪しはデータ次第という前提があります。さらに、一部の組織はすでに気付いていますが、ほとんどの大規模言語モデル(LLM)は、重要度の高いビジネスデータや顧客データではなく、公開されているWebサイトから抽出された情報に頼っています。つまり、消費者向けボットに実務的な支援を求めるのはお門違いということになります。仕事の現場で求められる個別性に対応できず、ビジネスの背景を汲み取ることもできないため、従業員が製品の売上アップを達成したり、マーケティング効果を拡大したり、日々の対応やアクティビティの生産性を高めるといった効果は期待できません。
多くの人々がAIに期待するビジョンに到達するには、別のアプローチが必要です。対話型チャットボットとして、上手にメール、エッセイ、ブログ、図を生成するといった隠し芸レベルにとどまらず、自律的に動作するデジタルエージェントとして、人間による直接介入の有無にかかわらず、ビジネスクリティカルなニーズを特定して対処できるレベルまで発展させなければなりません。Salesforceは、信頼できるビジネスルールや権限を遵守し、ビジネスの背景を汲み取りながらルーティンタスクを自律的に実行するというAIの明確なビジョンを見据えています。未来のAIアシスタントは、タスクを独立して実行することなく、人間と同じようにテキストを理解して生成することに特化したLLMに頼るだけでなく、意思決定プロセスと行動プロセスを統合した大規模行動モデル(LAM)も活用します。
Salesforceは、信頼できるビジネスルールや権限を遵守し、ビジネスの背景を汲み取りながらルーティンタスクを自律的に実行するというAIの明確なビジョンを見据えています
Salesforce AI担当シニアバイスプレジデント ジェイシュ・ゴビンダラジャン(Jayesh Govindarajan)
私たちはこのビジョンに向けて確実に前進し、目覚ましい進歩を遂げています。
自律化への道
始まりはSalesforce Data Cloudでした。Einstein 1 Platform上に構築された、この信頼性の高い大規模データエンジンは、企業の各所に閉じ込められたデータを開放し、サードパーティのデータリポジトリと連携することで、企業がデータにもとづいて行動できるように支援します。Data Cloudにより、さまざまなチームが手間をかけずにデータを有効活用できるようになり、ワークフローの自動化や顧客対応のパーソナライズ、スマートなAI構築が可能になります。 さらに、私たちは生成AIから自律型AIへの移行は既定路線であり、プロンプトをメインUIとして、さまざまな基盤言語モデルとやり取りすることになると考えています。そのために開発したのがEinstein Copilotです。これはエンタープライズ対応として業界初となる唯一の対話型AIアシスタントです。Salesforce スタックと完全に統合されたEinstein Copilotは、ファイアウォールの内側、別のユーザーのデータレイク、コロケーション施設など、データの保存場所にかかわらず、組織のあらゆるデータを駆使してグラウンディングされます。
Einstein Copilotは、プランナーや推論エンジンとしても機能します。ユーザーが達成しようとしていることを解釈して判断し、最適なAIモデルとやり取りすることで、問題を解決し、関連するコンテンツを生成し、適切な判断を下せるように助言します。
アクションがアクションを生む
2024年2月の発表以来、私たちはEinstein Copilotのアクションライブラリを積極的に拡大しています。セールス、サービス、マーケティング、データ分析部門の具体的なビジネスニーズに対処するとともに、さらにeコマース、金融サービス、ヘルスケア、教育など、さまざまな業界が抱えるビジネスニーズにも対応してきました。今後も、こうしたイノベーションをさらに追加していきます。
ところで、「アクション」とは何を意味するのでしょうか?たとえば、さまざまな形のLEGOブロック(=タスク)を何らかの法則に従って組み合わせることで、城(=目指すべきプロジェクト成果)が完成します。具体的には、ある見込み客のステータスを評価する場合(プロジェクト)、営業担当者はEinstein Copilotに対して、パーソナライズされた成約プランの作成を依頼したり、商談を今月成約できない理由についてヒントを求めたり、直近の通話で価格について協議したかどうか確認することができます(タスク)。Einstein Copilotは、こうしたアクティビティを調整し、判明した問題に対処するためのレコメンデーションを提示し、すべての対応を詳細なレポートとしてまとめます。理想として、基盤となるアクションには営業担当者の意図が反映されるため、この文書は営業担当者の意思を汲み取った内容になるはずです。
Einstein Copilotのアクションライブラリを構築する中で、こうしたシナリオの実現性がますます高くなっています。ただし、このテクノロジーの実質的なメリットは、情報を収集して整理し、レコメンデーションを導き出すだけでなく、さらにレベルアップして実際に行動できる点にあります。
ただし、このテクノロジーの実質的なメリットは、情報を収集して整理し、レコメンデーションを導き出すだけでなく、さらにレベルアップして実際に行動できる点にあります
Salesforce AI担当シニアバイスプレジデント ジェイシュ・ゴビンダラジャン(Jayesh Govindarajan)
自律型AIはどのように動作するのか?
たとえば、営業担当者がデジタルエージェントに対して、あるテリトリーを訪問し、そこの上位5社の見込み客と面談したいと伝えたとしましょう。AIは、すぐに会社の履歴記録や公開情報を精査し、適切な見込み客の候補を導き出します。さらに、過去のやり取りからさまざまな面談時間の候補を提案し、コストや時間帯から理想的な出張スケジュールを設定し、面談を依頼するための自己紹介メールとともに、面談後に送付する「礼状」を作成できます。また、顧客と実際に面談する際に担当者が活用できるトークポイントも生成できます。さらに、担当者の承認を得たうえで、AIアシスタントはこうしたアクションのいずれかまたはすべてを数秒以内に実行できます。これは、半自律型AIや完全自律型AIの実際の動作の一例にすぎません。可能性はまさに無限大です。
Salesforceは、大量のデータを幅広く格納するData Cloud、膨大なワークフロー処理量を扱うCustomer 360 CRM、アクションライブラリを急速に拡大しているエンタープライズ対応のCopilotを提供し、こうしたすべての機能を実現する絶好のポジションにあります。これは一夜にして成し遂げられることではありません。テクノロジーを発展させる必要があり、組織と人員がAIを信頼して適切に利用できるようにトレーニングも実施しなければなりません。他にも、人間の介入とAIの自律性の間で適切なバランスを取るために、やるべきことはまだ多くあります。しかし私たちは、CRM、データ、信頼できるAIに引き続き投資することで、このビジョンをほどなく実現します。
Salesforceは、大量のデータを幅広く格納するData Cloud、膨大なワークフロートラフィックを扱うCustomer 360 CRM、アクションライブラリを急速に拡大しているエンタープライズ対応のCopilotを提供し、こうしたすべての機能を実現する絶好のポジションにあります
Salesforce AI担当シニアバイスプレジデント ジェイシュ・ゴビンダラジャン(Jayesh Govindarajan)