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Salesforceが予想するテクノロジーとAIの未来 – 2024年に着目すべき予測とトレンド

※本記事は、米国で公開された The Future of Tech and AI According to Salesforce – Predictions & Trends to Watch in 2024 の抄訳です。本資料の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。


人生と同様、テクノロジーも常に変化を続けています。本記事では、Salesforceのリーダーたちが予測する「テクノロジーがもたらす今年の動向」についてご紹介します。

Salesforceとは?(Salesforceの幹部が未来を予測する理由)

Salesforceは、顧客関係管理(CRM)のグローバルリーダーで、企業がまったく新しいかたちで顧客とつながることを支援します。SalesforceはデータやAI、CRM、そして信頼の力を活用しながら、あらゆる顧客体験をパーソナライズして価値を高め、顧客の心に残るようにすることで、顧客中心のDX(デジタルトランスフォメーション)をさまざまな規模や業種の企業で実現させます。

ビジネスに影響を与える最新トレンド、テクノロジー、課題の最前線にいるSalesforceのリーダーたちが、市場分析や顧客とのやり取りなどから得た専門知識とインサイトをもとに、今後の動向を明らかにします。

AIが変革する働き方の未来を示す6つの予測

デスクワーカーは、生成AIによって1週間に5時間の節約が可能だと見積もっています。これは企業にとって喜ばしいことであり、チームの創造性や戦略的思考を高め、これまでにないイノベーションを起こすなどの新たな機会を生み出します。Salesforceの専門家は、職場で起こる変化を次のように予想しています。

1. 人間の生産性に対する考え方(および測定方法)をAIが変革

経営幹部の60%は、『チームの生産性を測定するために、労働時間や送信メール数などの活動指標を追跡している』と回答しています。しかし、職場でAIが普及するとそれは一変するでしょう。長年私たちが生産性の基準としてきた繰り返しの日常業務が、AIに代替されていくからです。

来年には企業がパフォーマンスと生産性の測定方法を改め、これまでのように過程やインプットの量ではなく、製品の発売や生み出されたリードといった成果に焦点を当てるようになるでしょう。そのために、リーダーは測定の対象を『活動』から『インパクト(効果)』へと変更する必要があります。リーダーは求める結果を明確に定義し、定めた明確な目標に対して各チームメンバーの取り組みが沿うようサポートすることが必要になります」

– Slack 調査・分析担当SVP、クリスティーナ・ジャンザー(Christina Janzer)

2. AIの自律性が向上するにつれ、より意味のある業務に時間を充てることが可能に

「今後1年間のAIの主な使用目的は、AIテクノロジーを使って企業内で完全な自律化を実現し、標準ワークフローを完全に自動化することです。AIは、注文処理から決済、販売後のサポートに至るまで、あらゆる日常業務を自動化できる可能性を秘めています。

反復作業の特定やデータ統合を活用して情報に基づいた予測と自動化を行うことで、AIは現在の定型的な仕事のパターンを取り込み、私たちは充実度・生産性・収益性の高い業務に時間を割くことができるようになります」
– Salesforce オートメーション & インテグレーション担当EVP 兼 GM、パラム・カーロン(Param Kahlon)

AIは現在の定型的な仕事のパターンを取り込み、私たちは充実度・生産性・収益性の高い業務に時間を割くことができるようになります

3. 担当者不足といった人的要因をAIの活用で代替

「歴史的に低い失業率により、カスタマーサービス担当従業員の雇用維持という問題が深刻化してきました。生成AIはセルフサービスの品質とサービス担当者の生産性を向上させることができるため、採用コストの削減につながります」
Salesforce デジタルマーケティング・ストラテジスト、エド・トンプソン(Ed Thompson)

4. 企業がデータとAIを活用し、よりスピーディに高い生産性を実現

「標準的なデスクワーカーは情報の氾濫に悩まされています。実際、データのサイロ化によって週に1時間以上の無駄が生じています。来年には、私たちの働き方やデータの取り扱い、生産性の考え方に対する生成AIの影響を体感できるようになるでしょう。

そのきっかけとなるのは、AIを活用したナレッジ検索などの機能でしょう。私の考えでは、これがもっとも効果的に既存顧客のデータの価値を引き出し、即時に活用できる方法だと思います。長期的に見ると、タスクの自動化、トレンドやインサイトを事前に抽出する機能などの高度な生成AI機能によって、生産性の成果に明らかな違いが生じるでしょう」

– Slack 製品・AI&拡張担当VP、ジャッキー・ロッカ(Jackie Rocca)

5. AIが職場をよりスマートに

「チャットボットとバーチャルアシスタントは、チームのニーズに沿った適切な会議室を自動的に予約することで、従業員体験を簡素化します。またAIは、問い合わせへの速やかな対応や、従業員へのリソース提供、サービス依頼に対する円滑な対応なども促進します。さらに、AIは従業員が必要だと気づく前に、成果を出すために必要な場所やサービスを予測し、先を見越した従業員エンゲージメントや従業員体験を促進します」

– Salesforce、不動産・ワークプレイスサービス担当EVP、レリーナ・バルチャンダニ(Relina Bulchandani)

「今日の優秀な人材は、給与以上の期待を会社に寄せています。この状況に対応するために、企業は職場の文化や職場内外での従業員支援に焦点を当てることになるでしょう。このような投資は従業員の満足度と定着率の向上、全体的なビジネスの成功につながります。こうした分野への注力を選択した企業は、今後も引き続き優勢となるでしょう」 

– Slack および Salesforce エンプロイーサクセス責任者、デビッド・アード(David Ard)

生成AIがビジネスの未来を変える5つの方法

ビジネスリーダーの77%が「自社の生成AIに見落としがないか不安」に感じています。生成AIのテクノロジーで実現できること以外にも、ビジネスや業界に対する蓄積効果や拡大する影響があるからです。生成AIがもたらす来年の影響について、Salesforceの各責任者たちの見解を紹介します。

1. 生成AIは、企業全体で本格的に運用される

「生成AIの運用はソフトウェア開発、顧客サービス、営業、マーケティングから開始しますが、実際には最終的にすべての部門とワークストリームに影響を及ぼします。大規模言語モデル(LLM)がコンテンツの生成や分析だけでなく、意思決定やワークフローの自動化にも活用されれば、さらに大きく前進するでしょう。AIが発展してAIエージェントなどの機能が広範囲で導入されると、改善サイクルが発生して効率が向上します。

基本的なLLMが生成AIの根幹ではありますが、コストやパフォーマンス、レイテンシーの観点から、より小規模でドメイン特有の言語モデルを組み合わせて使用を開始する企業も出てくるでしょう」

2. AIがあらゆる業界を変革

「製品ロードマップとプラットフォームのあらゆる段階でAIが導入され、お客様に価値をもたらすでしょう。その影響を受けるのは半導体やゲームの企業だけでなく、SaaS企業も同様です。AIは開発の本質や製品の構築方法にも影響を与えます。日常的なコーディング業務を改善することで開発者の生産性が高まり、より困難な問題にスキルを集中させることができます。そして、絶え間なく変化するビジネスモデルにおいて生産性が向上していく中で、ようやくAIの存在感が実感されるはずです。つまり、AIはテクノロジー業界とその市場にあらゆる側面から影響を与えることになります」

– Salesforce GTM&戦略担当VP、ローリ・パルミエリ(Lauri Palmieri)

3. 生成AIにより効率が飛躍的に向上し、「セマンティック検索」という用語が浸透

「セマンティック検索とは、原則的に『人間』の言語で書かれた質問が機械語に翻訳されることを意味します。これは、カスタマーサービスを激変させるでしょう。テキストや画像、動画、音声を検索対象にできるAIを使用して、企業は迅速かつ有意義で高度にパーソナライズされたサービスを提供できるようになります。こうして操作性と応答性の高いデジタル経済の土台が整うことで、企業とエンドユーザーの両方にメリットがもたらされます。

2024年はセマンティック検索がAIの要となるでしょう。構造化と非構造化、どちらのデータセットからもインサイトを収集できるAIの能力が向上するにつれて、セマンティック検索機能を導入してデータを結合する企業が急増するでしょう。結合される構造化データとしては売上高や人口統計、非構造化データとしてはブログやカスタマーレビュー、ソーシャルメディアのコメントなどが挙げられます」

– Salesforce データサービスおよびEinstein統合担当EVP 兼 GM、ラウール・アウラドカー(Rahul Auradkar)

4. 2025年までに企業は「クラウドファースト」と「デジタルファースト」戦略をやめ、顧客中心の戦略に集中

「現在あらゆるものがデジタル化されており、その中にはチャットボットやモバイルアプリ、Webサイト、そして生成AIなどがあります。顧客にとっての価値は、彼らが実行したい、または、彼らの代わりに実行させたいプロセスの健全性にあります。ビジネスにとっての目標はより良いビジネス成果を残すことです。テクノロジーそのものは、顧客や従業員から見るとプロセスの実行手段であり、目的ではありません」

– Salesforce イノベーション戦略担当SVP、マイケル・マオズ(Michael Maoz)

5. 生成AIを活用しない企業は取り残される

Gartnerは、『2023年には5%未満だった企業の生成AI使用率や本番環境への生成AI対応アプリの導入率が、2026年には80%以上にのぼる』と予想しています。AIプラットフォームにより、AIを活用したデジタルアシスタントの利用が推進され、経営幹部は戦略的な意思決定を行う際にAIのインサイトを活用し、現場の従業員は日常業務をAIを活用するなど、組織のあらゆる階層で浸透していきます。市場の変化を予測する営業部門や人材獲得を最適化する人事部門にいたるまで、一連の職種でAIによる変革が起きるでしょう。

中堅・中小企業も直感的なAIプラットフォームを導入し、爆発的なイノベーションを起こして市場競争に臨めるようになります。2025年までに、AIは補助的なツールではなく、成功しているビジネスの中心として、かつてないほど変革の時代を作り上げるでしょう」

Salesforce Platform担当EVP 兼 GM、アリス・スタイングラス(Alice Steinglass)

データ、AI、顧客体験、セキュリティの未来への4つの予測

信頼できるデータは、信頼できるAIの基盤です。その証拠に、最近の報告では分析およびITリーダーの92%が「信頼できるデータの必要性がこれまでにないほど高まっている」と答えています。しかしデータの正確性は要素の1つに過ぎず、AIがデータを最大限に活用するにはデータの安全性、可用性、信頼性も必要です。今後の展開について、Salesforceのリーダーたちは次のように考えています。

1. AI革命はデータ革命に

「組織がAIの力を存分に発揮できるのは、正確で包括的なデータが揃っている時です。より堅牢なデータガバナンスフレームワークの実装、データの収集・保存・使用に関する明確なポリシーの確立、トレーニングデータの監視と監査など、データのプライバシーとコンプライアンスを重視した取り組みが続くでしょう。

また、多くの組織は信頼できる唯一の情報源を持っておらず、サイロ化された膨大なデータに直面しています。ビジネスリーダーがデータソースから価値を適切に引き出してAIを効果的に活用するためには、データの調整は極めて重要な優先事項です。強力なデータドリブン企業として成長するには、導入を推進するための自信、ひいては信頼に焦点を当てる必要があります」

– Salesforce 最高データ責任者、ウェンディ・バチェルダー(Wendy Batchelder)

2. 誰もがデータを利用できるようになり、さらにスマートに

「パフォーマンス管理の需要を受けて分析とダッシュボードの利用が普及していますが、知識を活かすナレッジワーカーにとっては依然としてパーソナライズされたインサイトの獲得が課題です。2024年にはデータと分析を誰もが利用できるようになることに焦点が当てられ、新たな局面を迎えるでしょう。データアナリストがいなくても潜在的なビジネスデータの異常を自動検知し、自然言語でインサイトを提供し、ユーザーが質問するとすぐに回答が得られる機能などを実現することで、データと分析はより先を見越したものになるでしょう」

– Tableau最高製品責任者、サザード・ジョーンズ(Southard Jones)

3. 顧客体験、製品価値、市場適合性を向上させるデザインの重要性がさらに高まる

「目標を達成しつつ、『便利なだけでなくお客様が快適に使用できる』製品を提供する上で、デザインの役割の重要性を認識する必要性が高まっています。もっとも重要なのは総合的なユーザーエクスペリエンスです。チームは顧客からのフィードバックを考慮しながらプロトタイプの作成、ユーザー体験に対する取り組み、継続的な改善を設計プロセスに取り入れていく必要があります。

こうした変化はソフトウェア企業の技術と独自性に対する熱心な取り組みを反映し、顧客とのより密なつながりを構築するでしょう」

– Slack デザイン担当SVP、イーサン・アイスマン(Ethan Eisman)

4. 新たな脅威に対応するサイバー対策の時代が到来

「AIの発展に伴い、デジタルエコシステム全体でAIを活用した不正アクセスや不正利用の企みが今後も増加するでしょう。悪意のある人物にAIテクノロジーが使用されると、コード生成やパスワードクラック、ゼロデイ脆弱性の悪用、設定ミスの特定、さらにはソーシャルエンジニアリングやディープフェイクまで、多岐にわたり乱用されます。

しかしその一方で、異常検知や詐欺やフィッシングの検出、行動予測など、企業の負担が大きいタスクの自動化にAIは役立つでしょう。これによりセキュリティチームの効率が高まるだけでなく、脅威を速やかに広範囲で特定して、対応時間を短縮させることができるようになります」

– Salesforce検出およびレスポンス担当SVP、ケリー・マクラッケン(Kelly McCracken)

AIが社会の未来を変える4つのシナリオ

テクノロジーとAIのビジネスへの活用は、無限の可能性と魅力に溢れています。ここで少し視野を広げて、社会への影響についても考えてみましょう。Salesforceの経営陣が捉えた2024年の展望を紹介します。

1. 公平にアクセスが実現された場合に限り、AIはより良い世界を作るために使われる

「AIはパーパス志向の組織にとって、コミュニティへの優れたサービスを提供するための絶好のチャンスを提供します。しかし、AIテクノロジーを導入するには資金と専門知識が必要で、リソースに制約のある多くの組織には手が届きません。この問題、つまり、世界でもっとも困難な社会・環境問題に取り組んでいる非営利団体がAIに公平にアクセスできる体制を確保することは社会貢献に関わるコミュニティにとって重要な新しい取り組みになるでしょう」

– Salesforce Foundation CEOおよびSalesforce社会貢献活動担当SVP、ベッキー・ファーガソン(Becky Ferguson)

2. 生成AIによって千載一遇の医療改革が始まる

「米国だけの医療費でも3兆7000億ドルが費やされており、この額は1兆ドルの無駄な行政支出に相当します。このことを踏まえると、生成AIは医療を変革するとともに、業界のコストの使い道を根本から変化させると予測しています。生成AIテクノロジーは、請求管理や請求概要作成の効率化、非構造化データのインサイトへの変換、リスクの高い患者を予測できるパターンの特定、診断と予防の新たなチェックポイント作成などに使用されるでしょう」

– Salesforce 医療・ライフサイエンス担当SVP 兼 GM、アミット・カンナ(Amit Khanna)

生成AIは医療を変革するとともに、業界のコストの使い道を根本から変化させると予測しています。

Salesforce 医療・ライフサイエンス担当SVP 兼 GM、アミット・カンナ(Amit Khanna)
3. AIが気候変動対策の取り組みを促進

「2023年は私たちの地球にとって恐ろしい年でした。しかし、地球温暖化対策と気候変動適応策の両方に対してAIを活用した有望なソリューションがあります。WeaveGrid は機械学習を導入して電力会社や自動車メーカー、ドライバーのEV充電を最適化しており、Pano AI は山火事の早期発見にAIを活用しています」

– Salesforce Ventures パートナー、クロディーン・イミオット(Claudine Emeott)

4. 持続可能性報告書の基準が確立し、プロセスの要所をAIが担当

「最近カリフォルニアで可決されたカリフォルニア企業気候データ説明責任法(SB 253)や、まもなく施行される米国証券取引委員会(SEC)の気候関連開示規則EUの企業サステナビリティ報告指令(CSFD)など、気候変動に関連する報告書が新たに義務付けられたため、企業はさらに厳格な世界規模の規制に直面することでしょう。企業がこうした基準を満たしつつ持続可能性報告書の負担も軽減するためには、AIが重要なツールとなります」

– Salesforce EVP 兼 チーフインパクトオフィサー、スザンヌ・ディビアンカ(Suzanne DiBianca)

詳細情報

  • AIに関するSalesforceのニュース&インサイトは、こちら
  • 生成AIに関するデータは、こちらの統計ライブラリ(英語)をご確認ください。
  • AIに関するアメリカ合衆国大統領令についてのSalesforceの見解はこちら(英語)。
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