※本記事は2025年3月19日に米国で公開された Building the AI Powered Workforce: Inside Salesforce’s Strategy for Agentic AI Adoption の抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。
直近の調査によると、デスクワーカーのほぼ半数 にあたる48%(英語) が、職場での一般的な業務にAIを使用していることを上司に伝えづらいと回答しています。
AIエージェントは、従来の補助的な役割とは異なり、飛躍的な進化を遂げ、私たちの仕事のあり方そのものを再定義しようとしています。しかしそれは同時に、テクノロジーの導入、従業員のトレーニング、組織設計にいたるまで、独自の課題も提示しています。
プロアクティブなAIエージェント(人間による監視を常に必要とせず、裏側で機能するソフトウェア)を導入するには、新たなテクノロジーを導入するだけでは不十分です。人間とAIエージェントが効果的に協働できる、シームレスで協力的な環境を構築するには、デジタル労働力を企業文化の一部として組み込み、そのメリットを明確に伝え、さらに従業員に成功するためのスキルを習得してもらう必要があります。
実験文化の醸成
実験を奨励する文化は、AIエージェントの広範な受容を促進し、そのメリットを最大化するために不可欠です。
Salesforceでは、会長兼CEOのマーク・ベニオフがそのスタートを切りました。Dreamforce 2024 で、ベニオフはSalesforceがAIエージェント時代への移行を牽引し、人間とデジタル労働力の協働を重視する文化に取り組むことを宣言しました。これは、Salesforceのデジタル労働プラットフォームであるAgentforceについて学び、試してみるべきだという従業員へのメッセージでもありました。このテクノロジーは、記録的な速さでSalesforceのサポートページ help.salesforce.comに導入されました。
Salesforceのデジタル労働力が、何万件にもおよぶカスタマーサービスの問い合わせを解決することで、人間である従業員がより複雑な課題や顧客に関わる業務に集中できるようになるのです
Salesforce 会長兼CEO、マーク・ベニオフ(Marc Benioff)
ベニオフは次のように述べています(英語)。「Salesforce社内でAgentforceを採用することで、驚くべき成果が生まれています。Salesforceのデジタル労働力が、何万件にもおよぶカスタマーサービスの問い合わせを解決することで、人間である従業員がより複雑な課題や顧客に関わる業務に集中できるようになるのです」
SalesforceのProfessional Services兼Global AI Practice担当 RVP であるIrina Gutman(イリーナ・グットマン)によると、職場でのAIエージェントへの適用は、トップダウンとボトムアップの両面から進める必要があるとのことです。
「社内で技術の利用を推進する、変革の担い手を特定することも重要です。上司からの指示ではなく、隣の席の尊敬する同僚から、『これは本当にすごいよ、やってみるべきだよ』と言われることが大きな違いを生むのです」
AIエージェントの価値を伝える
デジタル労働力の目的とメリットについて従業員に透明性のあるコミュニケーションをとることも、受容を促進するうえで大切です。
グットマンは、自動化のメリットに焦点を当てることを推奨しています。例えば、カスタマーサービスでは、多くのサービス担当者が、単純で繰り返しの多い質問に答えており、それが全体の大きな割合を占めています。このようなワークフローを自動化すれば、担当者が同じ質問に繰り返し対応する必要がなくなり、従業員の満足度が向上につながる可能性があります。
グットマンは次のように述べています。「人間なら誰でも、同じ質問に繰り返し答えたくないでしょう。知的な刺激がなく、雑音にすぎないからです」
Salesforce デジタルカスタマーサクセス担当VPとして、SalesforceのAgentforce導入を牽引したBernard Slowey(バーナード・スローイー)は、「従業員にとってのメリットを示す必要があります」と述べ、導入初期から従業員を巻き込み、範囲とメリットを明確に伝えることを推奨しています。
AutodeskのCIOであるPrakash Kota(プラカシュ・コタ)氏は、顧客サービスを強化するためにAIエージェントを採用しており(英語)、従業員にAIエージェントの導入を促すためにはゲーミフィケーションが有効であると語っています。
コタ氏は最近のSalesforce CIO Corner(英語)で次のように述べています。「ゲーミフィケーションとインセンティブを与えることで、従業員の間に健全な競争心が生まれ、『殿堂入り』を目指して自分を認めてもらおうと努力するのです」
ゲーミフィケーションとインセンティブを与えることで、従業員の間に健全な競争心が生まれ、『殿堂入り』を目指して自分を認めてもらおうと努力するのです
Autodesk CIO、Prakash Kota(プラカシュ・コタ)氏
コタ氏は、従業員がAIに対して懐疑的であることは理解しているものの、同僚となるデジタル労働力が日々もたらす成果や価値を共有することで、その不安を緩和してきたと述べています。
「当初、従業員はAIエージェントがコスト削減の手段になるのではないかと懸念していました。しかし、一次解決率や問い合わせ回避などの指標を収集し始めると、多くの従業員が積極的にこれらの取り入れようとするようになりました」
スキル格差の克服:AIエージェント向けた人材育成
AIエージェントがより多くの責任を担うようになれば、従業員の役割も進化し、デジタルの同僚と効果的に協働するための新しいスキルと能力が求められます。この変化を乗り切るために、企業はリスキリングとスキルアップの取り組みに投資し、従業員が新しい環境で活躍できるよう、知識とツールを身につけさせる必要があります。
例えば、SalesforceはAIエージェント時代に必要なスキルのトップ10を特定しています。AIエージェントやAIリテラシー、人間とAIエージェントの協働など、AIエージェントに重点を置いたテクノロジースキルに加えて、適応力、説明責任、協働、感情的知性などのヒューマンスキルの開発に重点を置いています。問題解決力、データ解釈、創造的思考、ストーリーテリングなどのビジネススキルも引き続き優先事項となります。
Salesforce人材育成担当EVPを務めるLori Castillo Martinez(ロリ・カスティーヨ・マルティネス)は、「測定できないものには対応できません。Salesforceでは、2025年末までにこれらのスキルを少なくとも80%の社員に提供することを目標にしています。そして、それを実現するための技術と機会を提供しています」とリスキリングの重要性を訴えています。
このスキルを開発することは、仕事を成し遂げるためにも、そして熱中するためにも大切です。Salesforce Futuresのバイスプレジデント(VP)である Mick Costigan (ミック・コスティガン)は次のように述べています。「仕事では多くの『意味付け』が行われます。厳しい価値観に基づくリーダーシップの決定や主観的判断、リスク評価については、個人とコミュニティの双方におけるアイデンティティの核となります」
リスキリングを戦略的な優先事項として受け入れることで、企業は従業員に変化する労働環境を乗り切る力を与え、AIエージェント時代に価値のある、関連性の高い、将来性のある人材へ導くことができます。
AIエージェントと人間が仕事の未来に
AIエージェントは単に技術の進歩ではありません。人間とAIの新たな協働時代への触媒です。この変化を乗り超えるには、技術的な要素と同様に、人間的要素を優先する必要があります。 これには、従業員が AI の可能性に脅威を感じず、力を与えられていると感じられる文化を育むことが含まれます。
コスティガンは次のように述べています。「より多くの業務を自動化に委ねられる世界で、自社の文化を維持・強化するには何が必要かを、企業は真剣に考え始めるべきです。AI時代の成功は、適応力があり、顧客および従業員との関係構築に注力し、効率化だけでなく『より人間的な』ビジネスを築くことができるリーダーにかかっています」
詳細情報:
- スキル格差とその克服に向けた取り組みについて、SalesforceのGrowth兼 Development責任者による取り組みの解説はこちら(英語)。
- デジタル労働力が企業にもたらす変革についてはこちら。
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