私は、グローバル不動産部門のリーダーとして、Salesforceの従業員を適切なタイミングでオフィスに安全に復帰させるための計画の立案を担当しています。新型コロナウイルスに端を発して世界中の国、州、都市がさまざまな厳しい規制を適用しました。そしてその緩和が議論されている状況下で、私たちのチームは、5万人の従業員の健康と、彼らが生活する地域社会の安全を確保しながら、160か所を超える世界中の拠点を再始動するための計画を策定する責務を負っています。
思うに、このプロセスは、照明のスイッチをオンにするというより、調光器で徐々に明るくしていくのに似ています。再始動初日から、ドアを全開にして全従業員をオフィスに呼び戻すつもりはありません。オフィス業務に不可欠なスタッフから順番に、段階的に再開することを考えています。再始動のタイミングは、オフィスがある地域の各種ガイドラインやアメリカ疾病管理予防センター(CDC)その他保健機関のガイダンスに従います。Salesforceの日本国内における各オフィスの再始動のタイミングに関する動向は、こちらの最新情報を参照してください。
オフィスの再始動に向けて準備を進める中で、私たちは今後の行動に関し、次のような指針を定めました。この記事が皆様のお役に立てば幸いです。
当然ながら、不確定要素は依然として多く存在しています。このプロセスについての私たちの認識は、全体として機敏な行動が重要だということです。完璧は目指していませんし、試行錯誤が続くことも覚悟しています。さらにその上で、従業員の安全こそが常に最優先されるべきであると考えます。
1.再始動のガイドライン指標を作成する
私たちは、Salesforceの各拠点の再始動を検討するうえでの評価基準となる、多様な情報に重みづけをするための意思決定プロセスを策定しました。
このガイドライン指標に沿って、政府のガイダンス、医療専門家のアドバイス、自治体リーダーからのフィードバックなどの重要な情報を慎重に検討します。国や地域によって勧告の内容が異なるため、データの投入とレビューは拠点ごとに行います。
この指標を早期に作成することが私たちの最優先事項でした。というのも、特定の拠点でウイルスが再び勢いを増した場合に、その拠点を部分的に、あるいは全面的に再び閉鎖するかどうかの新たな意思決定に使用できる、明確で確固としたプロセスが必要だったからです。
2.新しい安全衛生基準に従って準備する
従業員がオフィスに出社し始めたら、彼らの安全をどのように確保すればよいでしょうか。ニューエコノミーと職場復帰への橋渡しの役目を果たすのは、迅速かつ有効な検査です。
Salesforceでは、検査に加えて他の重要なツールや測定手段の導入も検討しています。それは、オフィス入り口での体温測定(日本語訳注釈:米国オフィスでの対応となります)、フェイスカバーの着用、物理的な距離を確保するためのワークプレイスの再設計、念入りな清掃の頻回化と定期化、ソーシャルディスタンスなど新しい生活様式の維持を促す標識の設置、手動での接触者追跡などです。
3.今後の見通しを立て、過剰なほどのコミュニケーションを意識する
職場復帰にあたって不安を感じるのは自然です。従業員からたくさんの質問を受けることが想定されます。だからこそ、コミュニケーションの内容、タイミング、手法が非常に重要になります。
そうしたコミュニケーションジャーニーは、再始動のあらゆる段階に対応する総合的なプランとして設計します。Salesforceでは、職場復帰した従業員ができるだけ安心して「戻ってきて良かった」と思える体験をどうすれば創り出すことができるか、きめ細かく配慮して計画を作っています。
私たちは、従業員がオフィスに足を踏み入れる前に、新しいワークプレイス環境に関する情報を共有し、心の準備をしてもらおうと考えています。Webセミナー、再始動プレーブック、Trailheadトレーニング、多数の映像などを通して、全員に準備をしてもらい、今後の見通しについて知ってもらいます。
オフィスへの復帰後は、ワークプレイスサービスチームが提供するオンサイトの標識やコミュニケーションなどを通じて、「ニューノーマル(新しい日常)」なワークプレイスのあり方を周知します。従業員の健康状態に配慮し、不安を取り除くために、過剰なほどのコミュニケーションを目標とします。
4.オフィスを再設計してソーシャルディスタンスを確保する
私たちはソーシャルディスタンスという新しい現実に対応し、従業員の作業フロア、会議室、キッチン、談話室、コーヒールーム、ロビー、エレベーター室(日本語訳注釈:米国のみ)、受付などワークプレイス全体を再設計しています。
それに従い、作業フロアや会議室の収容人数は、通常のわずか40~50%(日本語訳注釈:米国本社オフィスの場合)になるでしょう。段階的な再始動計画を立てるにあたってはこの点を考慮しなければなりません。
またSalesforceでは、オフィスや各フロアにおける人の密度を常に一定以下に保つために、ワークシフトやチームの出社を交代制にする働き方モデルも検討しています。連携によって最もメリットを享受できるチームの組み合わせを見極めるには、人事部に協力を仰ぐのが有効でしょう。
たとえば、Salesforceではデータを分析し、出社時間や通知をグループごとにずらすことで、エレベーターの収容人員を効果的にコントロールするモデルを考案しました。長時間のエレベーター待ちでロビーが混雑し、歩道にまで人があふれるような事態は避けなければなりません。
リモートワークが可能なチームは、再始動計画が次の段階に進むまで、リモートワークを継続する必要があるかもしれません。
5.可能なかぎり強靭なサプライチェーンを構築する
どんなに理想的なプランを作成しても、清掃用品や手のアルコール消毒液、フェイスマスクなどの必要な物資が揃わなければ再始動は不可能です。
私たちは早い段階で、サプライチェーンの再チェック、再考、場合によっては再構築が必要だということに気づきました。これまで使用してきた製品に加えて、体温測定器、フェイスマスクなどの新しい製品も新たに調達する必要があり、既製品についても新しい安全衛生基準を満たすために数を調整しなければならないことがわかりました。
6.これまで以上に念入りな清掃を徹底する
手の洗い方なら誰でも知っています。しかし、新型コロナウイルスとの共生が新たな現実となった今、ワークプレイスを念入りに清掃し、消毒する最良の方法とはどのようなものでしょうか?
清掃の手順については優れたガイドラインが公開されています。Salesforceではオフィスの清掃サービスの回数とレベルの両方を増やすことを計画しています。
たとえばSalesforceでは、エレベーターのボタンやドアノブ、電灯のスイッチ、テーブルやカウンターの上など日中の定期的な清掃に加え、夜間に念入りな清掃(日本語訳注釈:米国本社オフィスの場合)を行います。
また私たちは、銅、真ちゅう、青銅といった抗菌性金属などの新素材が、今後のオフィスデザインに大きな役割を果たすと考えています。新型コロナウイルスは空気中を漂うため、Salesforceの建物管理チーム全体と連携して、空調などの中核システムからの感染を防ぐための最適化を進めています。
冷暖房空調ろ過システム、配管、キッチン設備、主要な建築構造など、必要不可欠なシステムのチェックリストを作成しましょう。
オフィスの再始動計画を堅牢なものにするための鍵は俊敏性と柔軟性であり、必要に応じて再度閉鎖できる体制が必要です。データ管理の課題が山積していますが、その多くはまったく新たな、これまで解決する必要のなかった問題です。しかし、慎重に計画してコミュニケーションを継続し、主要なデータを常に把握・管理できれば、私たち全員が安全にワークプレイスに復帰でき、ふたたび同僚と顔を合わせることができると考えています。
再始動への課題解決にWork.com(日本語訳注釈:日本市場向け製品提供時期は後日発表いたします)をお役立てください。