※本記事は2024年11月20日に米国で公開されたThe Force Behind Agentforce: How Data Cloud Fuels the Customer 360 Platform and the Next Era of AIの抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。
米国Salesforce(以下、Salesforce)はAgentforceの一般提供開始を発表し、ビジネスにおける重要な自律型エージェントのマイルストーンと位置付けました。Agentforceは、 AI エージェントを構築、展開、拡張するために設計されたSalesforceプラットフォーム上の統合AIソリューションです。Agentforceは、チャットボット やCopilotの領域を超え、高度な推論能力を駆使してカスタマーケースの解決、セールスリードの選別、マーケティングキャンペーンの最適化などに対する意思決定や行動を起こします。一方で、データはAIを動かす原動力でもあります。データをクリーンに統合し、文脈に即したものにすることで、Agentforceの顧客理解が深まります。
Salesforce Data Cloudは、Agentforceの次世代機能の中核です。Salesforceプラットフォーム上の大規模なデータエンジンであるSalesforce Data Cloudは、Agentforceが顧客情報に基づく実用的なインサイトを得るために必要なすべてのデータおよびメタデータを提供します。他のAIエージェントやCopilotは、顧客の詳細な情報を提供するために必要なデータにアクセスできないため、こうした機能は提供できません。さらに重要なことは、Data Cloudは、AIエージェントと顧客データを統合しようとするときに企業が直面する、次のような多くの問題を解決します。
- データのサイロ化(英語):企業は、異なるシステム間に分散されたデータを統合し、シームレスな顧客体験を作り出すことに苦労しています。このデータの多くは、Slackでの顧客や従業員とのやり取り、PDF、Googleドキュメント、動画、サポートチケットなど、非構造化フォーマットで保存されています。そのため、関連情報を迅速かつ効果的に取得することが特に難しく、サポートチームが顧客のニーズにリアルタイムで対応することに限界がありました。
- 信頼できるコンテキストの欠如: より多くの情報に基づいた意思決定を行うために、AIエージェントはカスタマージャーニー、インタラクション、嗜好を徹底的に理解する必要があります。非構造化データは毎年55%から65%(英語)の割合で増加しています。 IDC(英語)によれば、2022年には組織で生成されるデータの90%が非構造化データになると言われていますが、非構造化データを活用できている組織はわずか18%(英語)に過ぎません。統合や管理ができない企業データやナレッジが散在することで、インサイトは分断されてしまいます。そのため、ビジネスと顧客のニーズを理解した、コンテキストを意識した信頼できる知見を生成することはほぼ不可能です。
- 実行可能性の低さ: インサイトは貴重ですが、その価値を高めるのは、インサイトで素早く何かを実行することです。多くの組織では、インサイトから行動に移す際に遅延やボトルネックに直面し、市場の需要への対応、従業員や顧客のニーズへの対応を妨げています。AIが信頼できるインサイトを生成するには、信頼できる管理されたデータが必要です。精度、コンテキスト、正確性、規制遵守がなければ、DIY(Do It Yourself)AIモデルやCopilotは、不完全で信頼できない結果を生み出すことになり、最終的にはユーザーの信頼を損なうことになります。
AgentforceのData Cloudの利点
Data Cloudを使用すると、Agentforceは、企業内の信頼できるナレッジ(ファイル、動画、画像、Webサイト、チケット)とデータ(システム、データレイク、データウェアハウス、Customer 360 全体)のあらゆる部分にアクセスできるだけでなく、そのコンテキストを理解し、インテリジェントで実用的、かつ信頼できる提案をリアルタイムで行うことができます。これこそが、Agentforceが非常に強力になる点です。
Data Cloudは従来のCDPを超えて、データ統合、コンテキストインテリジェンス、および自動化されたアクションの課題にリアルタイムで対応することで、これを可能とします。ハイパースケールデータプラットフォームとして、Agentforceとより広範な Salesforceプラットフォームの信頼できるデータ基盤として機能します。Data Cloudは、構造化データおよび非構造化データ、 データレイク、データウェアハウス、CRMデータをスムーズに統合することで、Customer 360全体に渡って極めてパーソナライズされた体験を提供します。オープンで拡張可能なプラットフォームである Data Cloud は、Salesforceのゼロコピーパートナーネットワークのエコシステムとも統合されているため、AgentforceやSalesforceプラットフォーム全体でデータを活用できます。たとえばFedExは、Data CloudですべてのSalesforce Cloudをつなげることで、顧客体験を向上させ、収益を拡大するカスタマージャーニーを生み出しています。 FedEx(英語)は、Salesforceのエンドツーエンドのデータプラットフォームを信頼し、ゼロコピーによりデータを重複させることなく、既存のデータレイクとシームレスに統合しています。
Data Cloud は、業界をリードする検索拡張生成(RAG) とハイブリッド検索機能を使用して、AIエージェントが組織独自の顧客データに安全にアクセスできるようにすることで、Agentforceの可能性を最大限に引き出します。Data Cloudに組み込まれたRAGは、過去のメール、お問い合わせ、製品画像、ボイスメール、その他のソースなどの非構造化データからリアルタイムのインサイトとコンテキストを追加し、ハイブリッド検索は顧客のコンテキストに基づいて適切なナレッジ記事を特定することで、Agentforceが問題を正確に解決できるようにします。
またData Cloudは、AI、自動化、分析のためにデータを活性化し、業務の流れの中でシームレスにアクションを推進することができます。Wyndham Hotels and Resorts(英語)は、Data Cloudで接続された予約、ロイヤルティ、および CRM データにより、サービスチームに宿泊客のプロフィールに関する統合的な情報を提供することで、対応時間、従業員一人あたりの収益、および顧客満足度を改善しました。
さらにData Cloudを使用することで、チームは、データアクセス、セキュリティ、およびコンプライアンスを統合的に管理する、管理された安全なプラットフォーム(英語)を通じて、顧客との信頼を築くことができます。
Salesforce Data CloudがAgentforceを強化する仕組み
Data Cloudは、Agentforceの機能の中心であり、多数のソースからの構造化データおよび非構造化データをリアルタイムで統合します。Data Cloud は、Customer 360に統合されたプラットフォーム、Agentforceのための信頼できるコンテキストデータ、およびワークフローにおける自律的なアクションを提供することで、Agentforceが最も包括的な顧客情報を利用できるようにします。
深化したプラットフォーム統合によるCustomer 360
Data Cloudは、すべての Salesforce Customer 360アプリケーションで信頼できる顧客データを表示し、パーソナライズされた顧客体験とリアルタイム分析の基盤を築き、データ駆動型のアクションとワークフローを実行し、すべての Salesforceアプリケーションで AI を安全に駆動します。ゼロコピー技術とMuleSoftコネクタにより、Data Cloudはデータレイクやデータウェアハウスを含む何百もの多様なデータソースからデータを取り込むことが可能です。そのネイティブベクトルデータベースは、顧客データの90%(英語)に含まれるPDF、テキスト、通話、ボイスメール、動画、画像など、さまざまなデータ形式をすぐに使えるデータに変換し、構造化データと調和させて、統合データ基盤にメタデータ(市外局番やロイヤルティプログラム番号など、データに関するデータ)として保存される包括的な顧客プロファイル(英語)を作成します。Salesforceプラットフォームに完全に統合されているため、このメタデータは、設定されたガバナンスポリシーに基づいて、どのSalesforceアプリケーションにもシームレスに取り込むことができます。これにより、あらゆるチームが顧客に関する全包囲の情報を得られ、信頼できるAIを活用し、データセキュリティを損なうことなく、あらゆるタッチポイントで自動化と分析を推進することができます。
Salesforceは、オープンなエコシステムとあらゆるレイヤーでの拡張性を信条としています。何年もの間、AppExchangeを通じてISVと顧客開発のエコシステムを育成してきた実績があります。現在、この取り組みは、BYO(Bring Your Own)AIモデルとゼロコピーによってさらに進んでいます。実際に今日では、顧客やパートナーは、特定のデータソースを取り込むためのカスタムコネクタの構築から機能の拡張性まで、あらゆる面で柔軟性を手に入れることができます。
川崎重工業株式会社 米国 エンジン事業部のITビジネス戦略シニアマネージャーであるトニー・ゴンディック(Tony Gondick)氏は、次のように述べています。「Data Cloudは、技術プラットフォームを切り替えるのではなく、1 つのシンプルなシステムで戦略的な意思決定を支援するために、すべての(異なる)部門にわたって業務を合理化するのに役立っています。非構造化データから知見を引き出すData Cloudの価値を肌で感じています。そのため、Agentforceのパイロット顧客となり、豊富なコンテキスト情報を活用して、問題を迅速に解決し、より多くの機会を発見し、サードパーティシステムとよりシームレスに統合することで、お客様のニーズにより迅速に対応し、その行動を予測できるようにしました」
非構造化データ統合をさらに強化し、Agentforceの次世代エンタープライズナレッジを促進するために、Salesforceはこのほど、データ管理の先進プロバイダーであるZoominを買収(英語)しました。Data Cloudのエンタープライズナレッジを強化することで、Google Drive、Microsoft SharePoint、YouTube動画、Webサイト、コンテンツ管理システムファイルなど、すべてのエンタープライズ非構造化データにエージェントを組み込むことができ、複数のタッチポイントやコンテキストエンタープライズナレッジにまたがる顧客の新しい使用事例を促進できます。この統合により、顧客が非構造化データを解放し、Agentforce の可能性を最大限に引き出す方法が加速され、サービスチームは顧客についてより文脈を理解できるようになります。
Agentforceのための信頼できるコンテキストデータ
業界をリードするRAGと、ベクトルデータベース、ハイブリッド検索、ノーコード検索(レトリーバー)などの組み込み機能により、Data CloudはAgentforceが貴重なコンテキストインサイトを検索および要約できるようにします。RAGは適切なソースから適切なデータを検索し、ユーザープロンプトを補強し、大規模言語モデル(LLM)(英語)から情報を抽出します。RAGを使用すると、ユーザーはData Cloudに取り込まれた構造化、および非構造化エンタープライズデータの両方を検索できます。ハイブリッド検索では、ベクトル検索のセマンティック機能とキーワード検索の完全一致機能を組み合わせることで、企業のナレッジベースから最も関連性の高い情報を見つけることが可能です。
現在、一般的に利用可能となったData Cloudのノーコード検索(レトリーバー)は、管理者やビジネスユーザーが、クリック操作のみの簡単な設定で、構造化データと非構造化データの両方に対してカスタマイズされたRAG機能を実装することも可能にします。データがData Cloudにインポートされインデックス化されると、ノーコード検索により、データは直接プロンプトテンプレートと自動化フローに組み込まれ、AgentforceはPDF、ナレッジ記事、通話記録などの非構造化データソースから重要な詳細情報にアクセスできるようになります。これにより、Agentforceは特定のカテゴリーのコンテンツやファームウェアのアップデートなど、フィルターを使用して特定のユースケースをベクトルクエリコードを書き込むことなく簡単に特定できます。ノーコードでありながら、ユーザーはフィルターの定義、アルゴリズムのランク付け、取得データの希望する詳細レベルの指定など、取得プロセスをカスタマイズすることができます。Data Cloudのノーコード検索は、アクセシビリティの向上、開発時間の短縮、データ品質改善を実現する次世代のエクスペリエンスを提供します。
「Salesforce Data Cloudは飛躍的な成長を遂げ、今やAgentforceの原動力となっています。当社の新しいノーコード検索とZoominの非構造化コンテンツ機能の統合は、当社のお客様にとって画期的なものです」とSalesforce Data Cloud担当EVP兼ゼネラルマネージャーのラウール・アウラドカー(Rahul Auradkar)は述べています。「Agentforceでコンテキストを認識したうえでインサイトを構築し、展開する際の技術的な障壁を取り除くことによって、企業はこれまでにないほど簡単に企業データの完全なデータセットを活用できるようになります。これにより現在、チームはコンテキストに富んだ高機能なAgentforceのやりとりを迅速に作成し、大きな成果を上げることができます。それと同時に、データ統合や取得に関連するコストを大幅に削減することも可能です」
これにより現在、チームはコンテキストに富んだ高機能なAgentforceのやりとりを迅速に作成し、大きな成果を上げることができます。それと同時に、データ統合や取得に関連するコストを大幅に削減することも可能です。
Salesforce Data Cloud担当EVP兼ゼネラルマネージャー、ラウール・アウラドカー(Rahul Auradkar)
Data Cloudの変換、インデックス作成、検索、およびセマンティック機能は、Atlas推論エンジンと深く統合されています。Data CloudとAtlas推論エンジンのパワーを活用することで、AIエージェントは複雑な非構造化データと組み合わせた複雑な質問からインサイトを読み解き、顧客にシンプルで的確な回答を返すことができます。Atlas推論エンジンは、顧客データの全体像を把握していない他のDIY AIボットやCopilotには不可能な、豊富なコンテキストを生成することができます。例えば、Agentforceは顧客から送られてきた写真に写っている部品番号をもとに、その製品カテゴリーに関連する記事を検索し、顧客の問題をより迅速に解決するためのサポートをオペレーターに提供することができます。
非構造化データを取り扱う能力は、Data Cloudの最も重要な差別化要因の1つであり、AIエージェントが、効果的な対応と結果を提供するために必要な知識を装備するうえで不可欠です。
ワークフローにおける自律的なアクション
タイムリーでパーソナライズされた顧客体験を提供することは、ビジネスユーザー、データチーム、および技術ユーザーが実用的なデータに簡単にアクセスできるようにすることを意味します。Data Cloudが顧客プロファイルを統合することで、営業チームはアップセルやクロスセルの機会を特定し、サービスチームは顧客のニーズに積極的に対応し、マーケティングチームは顧客行動や嗜好に基づいてキャンペーンをパーソナライズします。データを民主化することで、Salesforceは組織全体でよりスマートでターゲットを明確にした顧客対応を推進するためのインサイトを、すべてのチームが活用できるようにします。
Data Cloudは、組織が自らインサイトを自律的なアクションに変換することを可能にします。統合されたアナリティクスとアクションレイヤーにより、インサイトはもはや受動的なものではなく、自動化、アナリティクス、Agentforceへのリアルタイムの提案など、アクションへの直接の働きかけとして機能します。秒単位で処理されるE2Eリアルタイムレイヤーにより、企業はSalesforce全体でリアルタイムにデータを取り込み、変換し、インデックスを作成し、ハイブリッド検索を実行し、検索拡張生成(RAG)を行い、管理することができます。これにより、Data Cloud上に構築されたEinstein Personalizationが、リアルタイムのAIレコメンデーション、アナリティクス、自動化とともに強化され、顧客接点全体にわたって迅速な意思決定と即時のパーソナライゼーションが可能になります。
Data Cloud は、データを起点としたワークフロー、高度な分析および信頼できるデータに基づいて構築されたAI搭載アプリケーションによる自動化を可能にします。ローコードとプロコードの両方のツールにより、組織の誰もがデータにアクセスして行動できるようになり、セルフサービス、情報に基づく意思決定、チーム全体のイノベーションが促進されます。Agentforceは、Data Cloudの機械学習(ML)と生成AIのインサイトを使用して、パーソナライズされた推奨事項を提供します。Agentforceは、オーダーメイドの店舗プロモーションからクロスチャネルでのオファーまで、秒単位以下のデータの取り込みと調和に支えられたリアルタイムのエンゲージメントを実現し、Slackでの即時通知とTableauで利用可能なインサイトを提供します。
Data CloudとAgentforceを使い始める
AIエージェントは、データ、AI、自動化そして人間の力を活用することで、最も優れた効果を発揮します。Salesforce PlatformとAgentforceの基盤であるData Cloudは、これらの要素をすべて統合し、企業はカスタマーサポートの合理化から従業員のワークフロー強化まで、多様なニーズに対応する知的で即応性の高いAIエージェントを構築し、よりパーソナライズされた効率的かつ効果的なインタラクションを実現できます。
詳細情報:
- データの可能性を最大限に引き出すために、Salesforce Data CloudがAIとAgentforceの機能をどのように高め、真の差別化を実現する顧客体験と従業員体験を生み出すかは、こちらからご覧ください。
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