GDPR(一般データ保護規則)とは?日本企業がするべき対策を解説

 
最終更新日:2024.3.6

GDPRは欧州連合(EU)が欧州経済領域(EEA)を対象として定めた個人情報の取扱いルールです。日本語では「一般データ保護規則」と呼びます。EUはデータ保護に注力している先進的な地域で、日本の法制度よりも厳格なルールがあります。GDPRはEEA内に拠点がある日本企業はもちろん、拠点がなくても規制の対象となる場合があり、EEA内の企業とデータのやりとりがある企業は対応が必要です。

この記事では、EU加盟各国における個人データ保護の指針GDPRについて、概要や定義、日本企業の対応の必要性について解説します。

 
 

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GDPRとは?個人情報保護法との違いも簡単に解説

GDPR(General Data Protection Regulation)とは、欧州連合(EU)による欧州経済領域(EEA)を対象とした個人情報の取扱いルールで、2018年5月から適用されています。

EUはヨーロッパの27ヵ国が加盟する政治・経済統合体で、経済通貨同盟、共通外交・安全保障政策、警察・刑事司法協力など、欧州連合条約に基づいて幅広い分野で協力体制を敷いています。また、EEAは、EUにEFTA(欧州自由貿易連合)に属するノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインを含めた経済圏のことです。

個人情報保護に対する考え方や法律は、国によって大きく異なります。そこで、EUでは1995年にEUデータ保護指令(Directive 95/46/EC)を制定して法制度の共通化を進めてきました。データ保護指令には、EUデータ保護指令の水準に満たないセキュリティレベルの国には個人データを移転できないとする規定があります。
これにより、日本など各国でもルールが整備されるなど、個人情報保護に対する世界的な意識が高まりました。

日本の個人情報保護法との大きな違いは、GDPRは制定当初からIPアドレスやクッキーの情報も個人データに含んでいたことです。IPアドレスは、それだけでは住所や氏名を特定することはできません。しかし、クッキーと組み合わせると個人を特定できる場合があります。なお、2022年4月から改正個人情報保護法が施行され、国内でもクッキーは規制の対象となりました。

GDPRは、EUデータ保護指令に代わる新たな法令で、EU市民の個人データを確実に保護することを目的としています。EUデータ保護指令よりもかなり厳格で、EU以外の地域に与える影響も多大です。もちろん、日本も例外ではありません。その理由は後述します。

GDPRが個人データの取り扱いについて定めているルール

GDPRは個人データの取扱いや管理、監査機関などについて、さまざまなルールを定めています。ひとつずつみていきましょう。

<GDPRが個人データの取り扱いについて定めているルール>

  • 個人データの処理・移転に関するルール
  • 個人データの管理者と処理者
  • 監査機関設置の規定
  • 個人データの保護と表現の自由

個人データの処理・移転に関するルール

GDPRでは、企業などがEEA内で取得した個人データを処理・移転する際に満たすべきルールを定めています。この場合の移転とはEEA外の第三国における別サービスなどでの再利用を指し、個人データ保護の保障や本人の明確な同意などが求められます。

個人データの管理者と処理者

GDPRでは、個人データの管理者と処理者を明確に区別しています。GDPRで定める管理者とは、個人や企業などで、個人データの取扱いの目的及び方法を決定する役割を意味します。管理者が個人データの処理の適法性とGDPR違反に対する責任を負う仕組みです。一方、処理者は管理者の代わりに個人データを取り扱う個人や企業などを指します。管理者と処理者の責任の範囲を定めることで、組織的・技術的に安全性の高い方法で、適切に個人データを保護できる仕組みになっています。

監査機関設置の規定

GDPRの適用を監視するため、各加盟国に監督機関の設置が義務付けられています。顧客情報漏えいなどの場合には、監査機関によって行政制裁金の支払い、開示や監査、遵守命令、警告などの措置が行われます。

個人データの保護と表現の自由

GDPRでは、個人データの保護と表現の自由を定めています。個人データの保護は基本的人権であるとする一方で、個人のデータに関する権利が強まりすぎると、表現の自由を制限する可能性もあるため、表現および情報伝達の自由についても定めているのです。GDPRではこれらを定めることで、個人データ保護と表現の自由とのバランスを取っています。

GDPRで個人データに該当しないものは?

GDPRでの個人データは、特定の個人だと識別できる情報と、複数の要素を組み合わせて個人を識別できる情報です。具体的な例を挙げてみましょう。

■個人データの具体例

 
個人データの種類 内容
個人の氏名
従業員名簿や、顧客名簿など、個人の氏名がわかるもの
識別番号
運転免許証や顔認証データ、パスポートの番号、番号の羅列としてのメールアドレス、クレジットカード番号など
所在地データ
住所や、GPSデータ、基地局データなど
オンライン識別子
IPアドレスや、クッキーデータなど
身体的、生理学的、遺伝子的、精神的、経済的、文化的、社会的固有性に関する要因
健康診断の結果や、宗教的な信念、政治的意見など

日本企業もGDPR対応・対策する必要がある理由|適用範囲は?

日本企業もGDPRに対応する必要がある理由は、EU域内とデータのやりとりによって、GDPRの適用を受けるためです。GDPRの地理的適用範囲については、データの取扱いがEU域内で行われるものであるかどうかにかかわらず、EU域内の管理者や処理者の拠点の活動で利用する個人データの取扱いに適用されるとしています。つまり、企業の拠点が日本国内にあり、EU域内には物理的な拠点がなくても、EU域内に管理者や処理者がいる企業などと関わりがあれば、適用を受ける仕組みです。

GDPRの対象となり、現地法人の従業員や顧客の個人データを扱う際に注意する必要があるケースをまとめます。

<GDPRの対象となるケース>

  • EU域内に子会社や支店、営業所を持っている企業
  • EU域内に取引先があり、日本から取引先に商品やサービスを提供している場合
  • EU域内から個人データ処理の委託を受けている企業

GDPR違反をした場合の制裁

GDPRでは、違反があった場合のデータの管理者・処理者に課せられる制裁金についても詳細に定めています。EU内の日本企業の子会社などがGDPRに違反した場合、日本の本社なども含めグループ全体で制裁が課される仕組みです。

GDPRに違反した場合、以下のいずれかの制裁金が課されます。非常に高額となる場合もあるので、違反がないように注意しましょう。

 
違反例
制裁金の内容

手続きの違反

  • 個人データの侵害があったにもかかわらず72時間以内に監督機関に通知しなかった場合
  • 個人データの取扱いについて記録を残さなかった場合
1,000万ユーロ(約12億円)以下、もしくは直前の会計年度における世界全体売上総額の2%以下、いずれか高額な方

重大な違反

  • 個人データを取得する際に必要な情報を提供しなかった場合
  • 域外移転の手続きに違反した場合
2,000万ユーロ(約24億円)以下、もしくは直前の会計年度における世界全体売上総額の4%以下、いずれか高額な方
これまでにイギリスの航空会社ブリティッシュ・エアウェイズが1億8,300万ポンド(約250億円)、検索サービス世界最大手Googleが5,000万ユーロ(約63億円)の制裁金を科されました。また、これに加えて、データの持ち主には損害賠償を求める権利があります。GDPRへの違反は企業経営に大きなダメージを与える可能性があるため、十分な予算を投じて万全のセキュリティ対策を講じることが重要です。

GDPRへの対応は日本企業も必須

GDPRに違反した場合、企業は大きな代償を支払うことになります。GDPRの規制内容や適用範囲とともに、企業内の個人情報の取り扱い状況を見直し、早急に対策を立てましょう。一方で、GDPRへの対応には専門的な知識が必要で、EEA域内の拠点をはじめ総務部門、人事部門など部署を横断した総合的な取り組みが求められます。

自社のみで対応を完結するのは困難なため、専門のソリューションの導入をおすすめします。SalesforceではGDPRへ対応可能なソリューションを提供しています。関連ページでGDPRへの取り組みをご紹介していますので、ぜひご参考としてください。

 
 

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