CDPとは?顧客データを統合する仕組みやメリット、3つの成功事例を解説
「顧客データはたくさんあるのに、うまく活用できていない…」
「部門ごとにデータがバラバラで、顧客の全体像が見えない…」
「一人ひとりに響くアプローチをしたいけれど、どうすれば…?」
もしあなたがこのような課題を感じているなら、その解決の鍵は「CDP(カスタマーデータプラットフォーム)」にあるかもしれません。
CDPとは、さまざまなツールやシステムに分散している顧客データを統合し、分析・活用するためのプラットフォームです。統合した顧客データの分析によって、顧客一人ひとりにマッチしたアプローチを行なうOne to Oneマーケティングを実現できます。
「でも、CDPって具体的に何ができるの?」「DMPやCRMとはどう違うの?」「導入すると本当に成果が出るの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。
この記事では、CDPの基本的な仕組みや導入のメリット、他のツールとの明確な違い、そしてCDPを活用してビジネスを成長させるためのポイントまで、わかりやすく解説します。この記事を読めば、CDPがあなたのビジネスにもたらす可能性をご理解いただけるでしょう。
本記事でわかること |
CDPとは

CDP(Customer Data Platform:カスタマーデータプラットフォーム)は、顧客の属性や行動履歴などのデータを収集し、管理・活用するプラットフォームです。
以下のように、収集できるデータの範囲が広い点が特徴です。
- 顧客のメールアドレスや識別ID
- Webサイトやプラットフォームへのアクセスログ
- トランザクションデータ
- Webサイトやプラットフォーム内での行動履歴
CRMやSFAなどの既存システムやツールと連携し、社内に分散している顧客データを統合したうえで分析できるため、従来よりも顧客理解を深められます。顧客一人ひとりにあったアプローチの選定に役立ち、One to Oneマーケティングを支えるでしょう。
CDPのようにマーケティングに役立つツールはほかにもありますが、活用目的や使用用途が異なります。それぞれの違いを理解し、自社が求める機能をもったツールを選びましょう。
- CDPとDMPの違い
- CDPとMAの違い
- CDPとCRMの違い
CDPとDMPの違い

CDPとDMP(Data Management Platform:データマネジメントプラットフォーム)(※)は、顧客データを収集し、管理・活用するプラットフォームである点は同じですが、分析できるデータの範囲が異なります。それに伴い、活用目的・使用用途も変わるのです。
両者が分析できるデータの範囲は、以下のように異なります。
- CDPデータの分析単位:個人単位
- DMPデータの分析単位:セグメント(属性)単位
個人単位で顧客データを分析できるCDPは、顧客一人ひとりにあったOne to Oneマーケティングに活用できます。一方、セグメント単位で顧客データを分析できるDMPは、デジタル広告の施策を最適化するために活用可能です。
自社の課題や目的に応じて、CDPとDMPどちらを使用するかを決める必要があります。
プライベートDMPとパブリックDMPの違い
本記事のDMPは、プライベートDMPのことです。DMPには、プライベートDMPとパブリックDMPがあり、扱う顧客データの違いは以下のように異なります。
- プライベートDMP:ファーストパーティデータ(直接関わったことがある顧客のデータ)
- パブリックDMP:サードパーティデータ(間接的に関わった匿名顧客のデータ)
CDPとMAの違い
CDPとMA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)の違いは、役割と使用用途です。
CDPはデータプラットフォームであるのに対し、MAはマーケティングツールです。CDPは、顧客データを統合し分析までを担います。MAは、CDPの分析データを基に顧客をスコアリングし、メール施策をはじめとするマーケティングアプローチを展開します。
このように、役割と使用用途が異なる両者を併用することで、より精度の高いOne to Oneマーケティングを実行できるでしょう。
CDPとCRMの違い
目的 | 主に既存顧客との良好な関係を維持・向上させること。営業活動の効率化や顧客満足度の向上を目指す。 |
主な対象データ | 顧客の連絡先情報や対応履歴、購買履歴、契約情報など、主に営業担当者やカスタマーサポート担当者が直接入力・収集するデータ。 |
主な機能 | 顧客情報管理や営業案件管理、問い合わせ管理、メール配信、レポート作成。 |
活用シーン | 営業活動の進捗管理や既存顧客へのフォローアップ、問い合わせ対応の効率化、顧客満足度調査。 |
目的 | CRMがカバーする既存顧客のデータに加え、匿名の見込み顧客段階からのあらゆる接点のデータを統合し、マーケティング活動全体での顧客理解とパーソナライズを実現すること。 |
主な対象データ | CRMデータに加え、ウェブサイトやアプリの行動ログ、広告接触データ、オフライン店舗の購買データ、IoTデータなど、あらゆるチャネルのオンライン・オフラインデータを統合。 |
主な機能 | CRMよりも広範なデータ収集・統合、高度な顧客分析とセグメンテーション、MA、広告プラットフォームなどの他のマーケティングツールへのデータ連携。 |
活用シーン | CRMのデータだけでは見えなかった顧客インサイトの発見、潜在顧客から優良顧客までの全カスタマージャーニーの可視化と最適化、より精緻なターゲティングにもとづく施策実行。 |
CDPの目的
CDPの最終的な目的は、顧客にあわせた最適な体験の提供です。目的を達成するために、顧客データを収集・分析し、マーケティング活動に活用します。
CDPの魅力は、社内に分散しているさまざまな顧客データをひとつのプラットフォームに統合し、活用できることです。単独でデータを活用するよりも、複数のデータを相互に比較したり掛け合わせたりして分析することで、真価を発揮します。
CDPによって収集・統合された顧客データを分析すると、顧客の傾向やニーズをつかみやすくなるでしょう。
CDPが必要とされる2つの背景

CDPが必要とされる背景には、以下の2つがあります。
- 顧客の購買行動の変化
- One to Oneマーケティングの広がり
社会と市場・顧客ニーズの変化にあわせて柔軟にマーケティング施策を展開することで、市場優位性を確保できるはずです。
顧客の購買行動の変化
CDPが必要とされる背景には、顧客の購買行動の変化があります。
近年、決済サービスの多様化やSaaS・シェアリングサービスなどの新たなビジネスモデルの普及により、顧客の購買行動が以前より複雑になっています。
複雑化した購買行動を理解するためにCDPを活用して、顧客が抱えるニーズの傾向や属性・ニーズの相関などを明らかにする必要があるのです。
One to Oneマーケティングの広がり
One to Oneマーケティングの広がりも、CDPが必要とされる背景として挙げられます。
One to Oneマーケティングは、一人ひとりの顧客ごとに最適化されたマーケティング施策を展開する手法です。顧客の購買活動やニーズが多様化したことで、企業はこれまで以上に顧客それぞれの特性にあわせ、マーケティング活動を進める必要があります。
CDPによるデータの分析は、この1to1マーケティングの実現にも貢献します。
以下の記事では、BtoB企業向けにCDPの活用ポイントを解説しているので、参考にしてください。
以下の動画では、CDPがOne to Oneマーケティングにどのようにつながっていくのかを解説しているので、あわせてご覧ください。
CDPで解決できる課題
「CDPが重要だとは聞くけれど、具体的に自社のどんな悩みを解決してくれるのだろう?」と感じるのではないでしょうか。ここでは、多くの企業が抱える顧客データに関する代表的な課題と、CDPがそれらをどのように解決に導くのかを具体的に解説します。
自社の状況と照らし合わせながらご覧ください。
課題1:顧客データが社内に点在し、全体像が見えない
- ウェブサイトのアクセス履歴はマーケティング部、購買履歴は営業部、問い合わせ履歴はカスタマーサポート部と、顧客に関する大切なデータが各部門のシステムにバラバラに保管されていて、横断的に活用できない。
- 結果として、ある顧客がどのような経緯で商品を知り、購入し、現在どのような関心を持っているのか、その全体像を誰も把握できていない。
CDPは、社内外に散在するこれらの顧客データを、オンライン・オフライン問わず一元的に収集・統合します。
ウェブサイトの行動ログやアプリの利用履歴、店舗での購買情報、CRM/SFAの顧客情報、MAの反応データ、さらには広告接触データまで、あらゆるデータを顧客IDベースで紐付け、顧客ごとの総合的なデータを構築します。
これにより、これまで分断されていた顧客の姿が明確に見えるようになります。
課題2:顧客を「個」として理解できず、真のニーズをつかみきれない
- 収集したデータは存在するものの、それを分析して本音や動機などの顧客インサイトを導き出すことができていない。
- 年齢や性別、居住地などの顧客の属性情報や過去の購買履歴だけで判断してしまい、その時々の興味関心や次に求めているものといった、より深いニーズを理解できていない。
CDPは、統合された顧客データを用いて、詳細な顧客分析を可能にします。たとえば、特定の行動パターンを持つ顧客群の抽出、購買傾向の分析、LTV予測、解約予兆の検知などが行えます。
これにより、データにもとづいた客観的な顧客理解が深まり、これまで気づかなかった真のニーズやインサイトの発見が可能です。
課題3:メッセージが画一的で、顧客に響かずスルーされてしまう
- 全員に同じ内容のメールマガジンを送ったり、誰にでも同じようなウェブ広告を表示したりと、画一的なコミュニケーションしかできていない。
- 結果として、顧客からは「自分には関係ない情報だ」と無視されたり、最悪の場合、ブランドイメージを損ねてしまったりしている。
たとえば、特定の製品カテゴリーに高い関心を示している顧客、最近購入頻度が落ちている優良顧客など、CDPで得られた深い顧客理解と詳細なセグメンテーション情報を活用することで、一人ひとりの顧客の状況や興味関心に合わせた、真にパーソナライズされたメッセージを適切なタイミングで届けることが可能になります。
MAツールや広告配信プラットフォームと連携し、CDPの情報を基に施策を実行することで、顧客エンゲージメントの大幅な向上が期待できます。
課題4:LTVの向上や優良顧客育成が思うように進まない
- 新規顧客の獲得ばかりに目が行きがちで、既存顧客との長期的な関係構築や、より多くの利益をもたらしてくれる優良顧客の育成が後回しになっている。
- 一度購入してくれた顧客が、その後リピートに繋がらず離れていってしまう。
CDPを活用することで、顧客の行動や購買履歴からロイヤルティの高い顧客や、今後優良顧客になり得る層を特定できます。
そして、これらの顧客に対して特別なオファーを提供したり、限定のイベントへ招待したりするなどきめ細やかなアプローチを行なうことで、顧客満足度とブランドへの愛着を高め、LTVの向上に貢献します。
また、解約の兆候が見られる顧客を早期に発見し、適切な働きかけを行なうことで、顧客離反防止も期待できるでしょう。
課題5:部門間の連携不足で一貫性のない顧客対応になっている
- マーケティング部門が送ったキャンペーンメールの内容を営業担当者が知らず、顧客との会話が噛み合わない。
- カスタマーサポートに寄せられたクレーム情報が商品開発部門に共有されず、同じ問題が繰り返される。
CDPは、全部門が同じ顧客データを参照できる「唯一の信頼できる情報源」となることで、部門間の壁を取り払い、スムーズな情報共有と連携を促進します。
たとえば、マーケティング施策への反応を営業担当者がリアルタイムに把握したり、カスタマーサポートでの対応履歴を踏まえたうえで営業アプローチを行なったりと、顧客に対して一貫性のある、より質の高い体験を提供できるようになります。
これらの課題は、多くの企業にとって他人事ではないはずです。CDPは、これらの根深い課題をデータという側面から解決し、顧客中心のビジネス変革を力強く後押しする基盤となるのです。
CDPの3つの機能

CDPは、大きく分けて以下3つの機能を有しています。
- データの収集
- データの統合
- データの分析
基本的な機能から、CDPに対する理解を深めましょう。
データの収集
CDPの3つの機能のひとつは、データ収集です。
CDPは、社内基幹システムやMAツール、SFA、CRMなど、さまざまなシステムと連携し、顧客データを収集します。
データ共有を前提としたシステムはもちろん、これまで顧客データを共有していなかったデータベースからも収集可能です。実店舗で獲得できるオフラインデータの収集に対応しているケースもあります。
多様な顧客データを収集できると、より精度の高い顧客インサイトを獲得できるようになるでしょう。
精度の高いデータを基に、OMO(オンラインとオフラインの融合)やMAによるOne to Oneマーケティングを進める際に役立つ機能です。
データの統合
データの統合もCDPの機能のひとつです。
CDPで収集する前の顧客データには、WebサイトやSNS、アプリなどの閲覧・行動履歴、購買履歴、アンケートデータ、スマートフォンの位置情報など、さまざまデータがあります。。分散している顧客データをCDPに統合することで、顧客一人ひとりのデータの精度を高め、厚みをもたせることが可能です。
一度、顧客ごとにデータをCDPに紐づければ、その後の顧客行動は自動的に集約されます。
たとえば、メールキャンペーンがきっかけではじまったやりとりを顧客情報に関連づけ、Webサイト上でも同じ顧客に引き継ぎが可能となるクロスデバイスIDなども実現できます。
データの分析
CDPにはデータ分析の機能もあります。
CDPでは、収集・統合したデータ同士を掛け合わせることで、顧客の傾向や相関関係などを分析できます。また、分析データをMAやCRMなどで活用することも可能です。各種ツールの相互連携・活用によって、顧客インサイトが明らかとなり、新たなソリューションを提供できる可能性が高まるでしょう。
顧客の統合プロファイルをリアルタイムに活用することで、顧客ごとに最適な体験を設定することも可能です。メール送信やコンテンツ管理などのデータとも連携でき、分析データは幅広く活用できます。
また、自社で保有するデータだけでなく、外部サービスのデータとも連携可能です。既存顧客情報と新たな情報を組み合わせて分析できます。
CDPの4つのメリット

CDPには、4つのメリットがあります。
- 顧客理解を深化できる
- データ分析やマーケティング施策の立案・展開を効率化できる
- 部門間で情報共有ができる
- 個人情報保護法の改正に対応できる
CDPのメリットは、自社に導入すべきかどうかを検討する際に役立つので、参考にしてください。
顧客理解を深化できる
CDPを活用すると、社内に分散された顧客情報を集約したうえで分析できるため、従来よりも顧客理解をより深められます。
顧客理解の深化によって、顧客の特性に応じた最適なマーケティングを選定できると、One to Oneマーケティングの精度が上がるでしょう。その結果、顧客の購買行動が促され、売上の向上を期待できます。
データ分析やマーケティング施策の立案・展開を効率化できる
CDPは、データ分析やマーケティング施策の展開を効率化できます。
CDPでデータの収集・統合を自動化すると、データ分析に至るまでの時間を大幅に短縮できます。また、これまで分析に活用できていなかったデータも分析対象になり、より正確なマーケティング施策の立案が可能です。
部門間で情報共有ができる
部門間での情報共有が容易になる点もCDPのメリットです。
CDPは、各部門が個別に管理している顧客データを収集・統合します。わざわざ各部門に協力を依頼しなくても、社内の顧客データが蓄積され、一元化可能です。
各部門が分析結果を活用できるため、マーケティングだけでなく新たな商品・サービスの開発や改善など、さまざまな企業活動に貢献します。
個人情報保護法の改正に対応できる
CDPは、個人情報保護法の改正にも対応でき、サードパーティデータの活用が危うくなってきているこれからの時代のマーケティングを安定させます。CDPは、ファーストパーティデータの収集・活用に長けているためです。
サードパーティデータとは、第3者による収集データです。Webページに掲載されている他社の広告にはサードパーティクッキーが搭載されているケースがあり、サーバーを通じてユーザーの行動情報を取得できます。自社のWebサイトに訪れたわけではないユーザーの情報を取得できるわけです。
EUでは、クッキーそのものが個人情報にあたるとして、規制対象となっています。ユーザーから同意を得られなければ、情報を取得できない仕組みになっています。2018年には同意の要件が厳しくなりました。
さらに、Googleが提供するブラウザであるChromeも、2024年1月からサードパーティクッキーのサポートを終了しました。
日本でも2022年4月に個人情報保護法が改正され、サードパーティクッキーの規制が強まると見られています。
一方、自社が収集するファーストパーティデータは個人情報として見なされず、規制されていません。もし、サードパーティデータを取得できなくなっても、CDPを活用し顧客データを分析・活用できるのです。
以下の記事では、ファーストパーティデータの活用ポイントを解説しているので、あわせてご覧ください。
CDP導入を成功に導くためのステップ
CDPの重要性やメリットを押さえた上で、次に気になるのは「実際にどうやって導入を進めれば良いのか?」といった点ではないでしょうか。
CDP導入は決して小さなプロジェクトではありません。だからこそ、事前の準備と正しいステップ、そして慎重な製品選定が成功の鍵を握ります。以下では、CDP導入を成功に導くための具体的なステップについて詳しく解説します。
CDP導入検討の前に目的と課題を明確にする
本格的な導入検討に入る前に、最も重要なのは「なぜCDPを導入するのか?」という目的と、「CDPで何を解決したいのか?」という課題を明確にすることです。
解決したい経営・事業課題の特定 | 「顧客理解を深めてLTVを向上させたい」「新規顧客獲得の効率を上げたい」「部門間のデータ連携を強化して業務効率を改善したい」など、具体的なビジネス課題をリストアップします。 |
CDP導入によって達成したい目標(KGI・KPI)の設定 | 課題解決の結果として、どのような状態を目指すのかを定量的な目標で設定します。これにより、導入効果を測定しやすくなります。(例:顧客単価〇%向上、解約率〇%削減、施策実行までの時間〇%短縮など) |
関係部署との合意形成 | CDPはマーケティング部門だけでなく、営業、カスタマーサポート、IT部門など、複数の部署が関わることが多いため、早い段階から関係者間で目的・目標を共有し、協力体制を築くことが不可欠です。 |
現状のデータ環境の把握 | どのようなデータがどこに、どのように存在しているのか、データの品質はどうかといった現状を把握することで、CDPに必要な要件が見えてきます。 |
これらの事前準備を怠ると、導入プロジェクトが途中で迷走したり、導入したものの活用されなかったりといった事態に陥りかねません。
CDP導入の基本的な流れ・5ステップ
CDP導入は一般的に以下のステップで進められます。
ステップ1:企画・要件定義 | 前項で明確にした目的・課題にもとづき、CDPに求める機能や性能、必要なデータ項目、連携システムなどを具体的に定義します。予算や導入スケジュールの大枠もここで策定します。 |
ステップ2:情報収集・製品選定・PoC(概念実証) | 複数のCDPベンダーや製品について情報を収集し、比較検討します。必要に応じて提案依頼書を作成し、提案を受けます。有望な製品については、PoCを実施して実際のデータで機能や効果を検証し、自社との適合性を確認します。 |
ステップ3:設計・構築 | 選定したCDP製品をベースに、データモデル設計、連携インターフェース設計などの詳細なシステム設計を行ない、実際の環境構築作業を進めます。 |
ステップ4:データ移行・システム連携 | 既存システムからCDPへのデータ移行や、MA、CRM、BIツールなどの必要な外部システムとの連携設定を行ないます。データのクレンジングや名寄せもこの段階で重要になります。 |
ステップ5:運用開始・効果測定・改善 | CDPの運用を開始し、設定したKPIにもとづいて効果測定を行ないます。実際に活用する中で出てきた課題や改善点については、継続的に対応していく体制を整えることが重要です。ユーザー部門へのトレーニングやサポートも欠かせません。 |
CDP導入でよくある失敗と対策
CDP導入は大きな期待とともに進められますが、残念ながら失敗に終わるケースも存在します。よくある失敗例とその対策を理解し、事前に備えましょう。
失敗例 | 対策 |
目的が曖昧なまま「CDP導入ありき」で進めてしまう | 前述の通り、具体的な目的と課題解決を明確にし、CDPが本当にそのための最適な手段なのかを冷静に判断する。 |
データの品質を軽視し、汚れたデータのまま統合してしまう | 導入前にデータクレンジングや名寄せの計画を立て、データの品質を担保するプロセスを組み込む。 |
現場の活用体制やスキルが伴わず、宝の持ち腐れになる | CDPを実際に活用する部門のメンバーへの十分なトレーニングや、データリテラシー向上のための教育機会を提供する。運用ルールやサポート体制を整備する。 |
ベンダーに丸投げしてしまい、自社の主体性が失われる | 自社内にプロジェクトオーナーと推進チームを明確に置き、主体性を持ってプロジェクトをリードする。ベンダーとはあくまでパートナーとして協力関係を築く。 |
短期的な成果を求めすぎ、長期的な視点が欠ける | CDP導入は継続的なデータ活用と改善の取り組みであり、すぐに大きな成果が出るとは限らないことを理解する。スモールスタートで成功体験を積み重ね、段階的に活用範囲を広げていく。 |
上記の注意点と対策を参考に、慎重かつ計画的にCDPの導入を進めてください。
CDPを選ぶときの5つのポイント

自社にあったCDPを導入するためには、5つのポイントに留意して製品を選ぶ必要があります。
- 従業員にとって扱いやすいか
- 連携できるシステムの数が多いか
- 顧客IDの処理方法がどうなっているか
- プライバシーのセキュリティシステムがどうなっているか
- エンドポイント数が多いか
いくつか製品を選定したあとは、5つのポイントをチェックし、最適な製品を選びましょう。
以下の記事では、CDPの導入方法やポイントを解説しているので、導入前にぜひご覧ください。
従業員にとって扱いやすいか
CDPのなかには、高性能である一方で操作性やインターフェースに問題があり、従業員がうまく扱えない製品もあります。
そのため、性能だけでなく、従業員が導入後すぐに必要な機能を使いこなせるかどうかを重視するとよいでしょう。無料体験がある製品は、実際の画面を見たり機能を試せたりするため、購入前に使いやすさを確認できます。
また、導入後のサポートが充実しているかどうかもチェックしましょう。必要な機能をすぐに使えるようになるためにも、オンボーディングサポートが充実しているかどうかを確認してみてください。
連携できるシステムの数が多いか
CDPの効果を最大限に発揮するためには、CDPが自社に導入済みのCRMやSFAと連携できるかどうかを確認する必要があります。
今後、新たなシステムやツールの導入を想定すると、CDPが連携できるシステムは多いほうが安心です。
社内に分散しているデータの統合を自動化するめにも、連携できるシステムの種類や数を確認しましょう。
以下のウェビナー動画では、社内システムやツールの連携がとれずデータが分散する「データのサイロ化」から脱却し、顧客体験の向上をもたらすCDPの活用について紹介しています。ぜひご覧ください。
顧客IDの処理方法がどうなっているか
CDPは、複数のシステムからデータを統合するため、あらゆる顧客IDを自動で統一できるのが理想です。
たとえば、顧客の名前の登録ルールが社内で統一されていないと、以下のようにバラバラになっているケースがあります。
- CRMの登録名:サトウタロウ
- SFAの登録名:サトウ タロウ
- MAの登録名:サトウタロウ
CDPが、バラバラな顧客名をどのように統一し顧客IDを生成できるか、またはできないかを導入前に確認します。別途、顧客IDの統一作業が発生する場合、どのように行うかといった観点も含めて顧客IDの処理方法を確認しなければなりません。
プライバシーのセキュリティシステムがどうなっているか
CDPは、膨大な個人情報を蓄積するため、厳重なセキュリティが求められます。
基本的なセキュリティシステムの確認はもちろん、プライバシー保護のシステムがどうなっているかは確認したほうがよいでしょう。セキュリティについて詳しくない場合は、担当者への問い合わせや、専門家の協力のもと製品選定を行う必要があります。
エンドポイント数が多いか
CDPに連携エンドポイント数が多いと、さまざまなIT機器からのデータ収集をリアルタイムで行えるようになります。エンドポイント数とは、連携できるデバイスやサーバーの数です。
エンドポイント数が少ないと、社内でシステムを利用できない時間が生じたり、各種システム・ツールからリアルタイムにデータを連携できなかったりと、利便性が落ちてしまいます。
データをリアルタイムに収集・分析したい場合は、エンドポイント数を確認することが大切です。
One to Oneマーケティングの精度を上げるCDP「Data Cloud」

「Data Cloud」は、Salesforceアプリケーションと統合された強力なCDPです。
各種システム・ツールを連携し、データを統合。包括的な顧客プロファイルを作成し、顧客一人ひとりにあわせたアプローチの選定を可能にします。
「Sales Cloud」「Service Cloud」「Marketing Cloud」と連携すると、Data Cloudによる顧客分析から導き出した適切な顧客インサイトに対して、適切なアプローチを選定できます。その結果、One to Oneマーケティングの精度を高められるでしょう。
CDPの活用事例

上の図は、CRMから得た会員情報・購買履歴、基幹システムから得た商品カタログデータ・コンテンツデータ、ECサイトから得た行動データを、CDPが収集・統合して分析した例です。
3つのデータは、単独ではデータ以上の情報を得られませんが、それぞれを掛け合わせて分析することで、そこに内包されている顧客のニーズや好みとその背景、買い物のしかたや頻度などを明らかにできます。
顧客の人物像が明らかになることで、適切な商品・サービスのピックアップやベストタイミングでのアプローチにつながるはずです。
さらに活用イメージを深められるよう、CDPの具体的な活用事例を3つ紹介します。
- 事例1.データの一元化でDXを促進する
- 事例2.顧客体験の向上を目指す
- 事例3.顧客体験を向上させお客様に好きになってもらう
事例を参考に、自社での活用イメージを深めましょう。
以下の記事では、CDPの活用方法を詳しく解説しているので、さらに活用イメージを深めたい方はあわせてご覧ください。
事例1.データの一元化でDXを促進する

霧島酒造株式会社は、Salesforceの「Data Cloud」を導入し、顧客情報を一元化することでデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しました。
従来は、キャンペーンの応募者を中心にデータを蓄積していましたが、さまざまなシステムからData Cloudに顧客データを集約したことで、顧客の幅を広げることに成功しました。その結果、以前は2万通だった父の日に向けのEC販促メールは、7万通へと増加したのです。
CDPを用いたDXの推進により、マーケティング活動の効果を高めています。
事例2.顧客体験の向上を目指す

株式会社カインズは、Salesforceの「Data Cloud」を導入し、顧客体験の向上を目指しています。
従来は、顧客の購買履歴を基にマーケティングを行っていましたが、商品を使ってどのうように行動・活用しているかまでデータとして可視化することで、さらにマーケティング活動の精度を高めたいと考えました。
そこで、店内での顧客の行動や購買後の活用方法など幅広くデータを収集できるよう、Data Cloudを導入。データを基に「次にお客さまが求めていることはなにか」を読み取りながら、新たなマーケティング施策を提案していくようにしたのです。
その結果、AR技術を使ったアプリとしてスマートフォンを通して店内を見たとき、顧客の特性に応じた商品を立体的に紹介する、探している商品の場所まで案内するといった新たなサービスの提案につながりました。
このように、顧客体験を向上させられるサービスの提供を実現しています。
事例3.顧客体験を向上させお客様に好きになってもらう

老舗のインターネット・サービス・プロバイダーであるビッグローブ株式会社はSalesforceを全面採用することで、顧客体験の高度化を目的に、顧客に関わる業務の自動化を加速させています。
すでにSalesforceを活用して成果を着々と重ねてきましたが、その中でも顧客体験の向上に力を入れており、ニーズのある顧客にだけ案内のバナーを表示したり、特定の顧客にのみアンケートを募集したりと過度なコミュニケーションにならないようSalesforceを使用して行なっています。
さらにはEinsteinボットを活用し始め、問い合わせを自動化することで顧客からのQ&Aに素早く対応する組織を構築し、顧客主体のワン・ツー・ワン・マーケティングに積極的です。
「通信回線そのものは、コモディティ化したサービスと言われています。だからこそ、こうした取り組みで顧客体験を向上させ、BIGLOBEを好きになって使っていただけるお客様を増やしていきたいのです」と担当者は話し、CDPを通して様々な施策効果を実現しています。
2025年のCDP最新技術と市場動向
2025年のCDP市場は急拡大を続け、Adobe、Salesforce、Treasure Dataなどの主要ベンダーはAI機能の強化を加速しています。
リアルタイムデータ処理や予測スコアリングに加え、生成AIを活用した対話型インターフェースやコンテンツ自動生成機能が登場し、非エンジニアでも直感的に高度なマーケティング施策を実行できる環境が整いつつある状態です。
Salesforceでいえば「Einstein」というAIが存在し、世界No.1であるSalesforceのCRMに搭載され、営業のスコアリングや次のアプローチ先を提供してくれます。
CDPは単なるデータ統合基盤から、インテリジェントな顧客エンゲージメント基盤へと進化しており、これからも発展が期待できるものといえます。
CDPに関するよくある質問
CDPの導入や運用には、どれくらいのコストがかかる?
一概には言えませんが、CDPのコストは様々な要因で大きく変動します。
CDP導入に関わる、主なコスト構成要素は下記のとおりです。
初期費用 | ・CDPライセンス費用 ・導入コンサルティング費用、要件定義支援費用 ・システム構築・設定費用、既存システムとの連携開発費用 ・データ移行・初期データクレンジング費用 |
月額・年額費用(ランニングコスト) | ・CDPライセンス費用(サブスクリプションの場合、管理するデータ量、イベント数、ユーザー数などに応じた従量課金制が一般的) ・サーバー・インフラ費用(クラウド型の場合はライセンス費用に含まれることが一般的) ・保守・サポート費用、バージョンアップ費用 ・運用代行を依頼する場合の費用 |
機能がシンプルなものから非常に高機能なものまで、また、中小企業向けから大企業向けまで多様なCDP製品が存在するため、価格帯は月額数万円から数百万円以上と幅広いです。
自社の規模や必要な機能、扱うデータ量、求めるサポートレベルなどを総合的に考慮して選定する必要があります。
単純な価格の安さだけで選ぶのではなく、自社の目的を達成できる機能が備わっているか、将来的な拡張性はあるか、サポート体制は十分かなど、費用対効果を見極めることが重要です。複数のベンダーから見積もりを取り、機能と価格を比較検討しましょう。
CDP導入の投資対効果(ROI)は、どのように考えればいい?
定量的な効果 | ・売上向上 ・パーソナライズ施策によるコンバージョン率改善(例:メール開封後の商品購入率〇%向上) ・LTVの向上(例:優良顧客の平均購入単価〇円増加、年間購入回数〇回増加) ・アップセル・クロスセル率の向上 |
コスト削減 | ・マーケティング施策の効率化による広告費削減(例:ターゲット精度向上によるCPA〇%削減) ・業務効率化による人件費削減(例:手作業で行なっていたデータ集計・分析時間の〇時間削減) ・顧客離反率の低減による再獲得コストの削減 |
定性的な効果 | ・顧客満足度・エンゲージメントの向上 ・ブランドイメージの向上 ・データにもとづいた意思決定文化の醸成 ・部門間の連携強化 ・従業員のモチベーション向上 |
目的の明確化 | 何を達成するためにCDPを導入するのか、具体的なKPIを設定する。 |
スモールスタート | まずは限定的な範囲で導入し、成功体験を積み重ねながら段階的に対象を拡大する。 |
継続的な効果測定と改善 | 定期的に効果を測定し、PDCAサイクルを回して施策やCDPの活用方法を改善していく。 |
全社的な取り組み | CDPはマーケティング部門だけのツールではなく、全社で顧客データを活用する意識を持つ。 |
まとめ:CDP導入によるデータ統合・利活用で売上アップにつなげよう

CDPは、各部門が使用しているCRMやSFA、MAなどの各種システム・ツールから顧客データを吸い出し統合できるプラットフォームです。統合された顧客データの分析を行えるため、顧客一人ひとりにあったアプローチの選定に役立ちます。
社会や市場・顧客ニーズが急速に変化するなか、企業の成長を促すためには、One to Oneマーケティングが必要です。CDPは、より精度の高いOne to Oneマーケティングの実現に寄与します。
Saleceforceでは、CDPとして「Data Cloud」を提供しています。各種Saleceforce製品と組み合わせることで、強力なCDPとして効果を発揮可能です。CDPの導入をお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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