ファーストパーティデータとは?サードパーティデータとの違いや活用方法を解説
企業が自社で直接収集する「ファーストパーティデータ」。その重要性は、今後も高まるばかりだとみられています。
ここでは、ファーストパーティデータの重要性や収集方法、用途のほか、活用にあたってどのような点に注意すべきなのか解説します。
最新のマーケティング事情
ファーストパーティデータは企業が自社で収集したデータのこと
ファーストパーティデータとは、第三者を経由せず、企業が自社で収集したデータを指します。たとえば、「自社ウェブサイトからの問い合わせや会員登録で集めた、見込み顧客や顧客の情報」「展示会でのアンケート結果と、その分析データ」「セミナーで収集した名刺データや、参加者のコメント」「自社顧客の購買履歴や行動履歴」などが、このデータに含まれます。
ファーストパーティデータは、入手した方法がオンラインなのかオフラインなのかは問いません。自社が直接入手した情報であり、しかも、収集場所を特定できることから、信憑性の高い貴重なデータといえます。
セカンドパーティデータとサードパーティデータの違い
市場のニーズを探ったり、より多くの層に向けてマーケティング活動を行ったりする場合、情報は多いほどいいはずです。とはいえ、自社だけで収集できる情報量には限りがありますから、企業はさまざまな方法で情報を購入したり、他社と共有したりして情報量を増やします。
これらは、セカンドパーティデータ、サードパーティデータと呼ばれるものです。その概略を簡単に説明しておきましょう。
セカンドパーティデータ
購入したり共有を受けたりした他社が収集したデータを、セカンドパーティデータと呼びます。
セカンドパーティデータは、メディアなどが自社で収集したデータを広告主に販売したり、自社が集めたデータを子会社やパートナー企業と共有したりといった形で流通されています。
サードパーティデータ
サードパーティデータとは、第三者から提供されたデータを指します。政府や自治体が行っている大規模調査の統計データや、リサーチ会社などを通じて得られたデータが代表的なものです。
サードパーティデータは、自社とは関係のない第三者機関で収集したものです。そのため、調査対象の属性が、自社の目的と合致していないことが多々あります。また、信憑性の面でも、発信元の信頼度は十分か確認が必要となります。
最新のマーケティング事情
ファーストパーティデータが重要な3つの理由
ファーストパーティデータは、セカンドパーティやサードパーティからのデータに比べ、企業にとっては重要度の高いものです。この傾向は、今後ますます強まるとみられていますが、そこには「クッキー(Cookie)規制」が関係しています。
サードパーティデータを扱うリサーチ会社などは、ユーザーデータの収集のため、ネットユーザーの情報を保存するクッキーのしくみを活用しています。しかし、プライバシー保護の観点から、Safari、Google Chrome、Firefoxなどのブラウザが、クッキー規制に舵を切りました。そのため、今後はサードパーティデータの利用が難しくなり、相対的にファーストパーティデータの重要性が高まっていくというわけです。
ほかにもファーストパーティデータには、下記のような優れた点があります。
信頼性が高い
ファーストパーティデータは自社で収集したものですから、情報の出所が明確です。しかも、「いつ、どこで、誰から入手したものか」という関連情報が明らかであるため信頼性が高く、データの精度も高いという特徴があります。複数のプラットフォームから収集されるサードパーティデータと比較すると、信頼性という点で大きな差があるといえるでしょう。
また、自社の顧客、自社製品・サービスに興味を持つターゲット層から直接収集したデータですから、自社ビジネスとの関連性が強いという点も、ファーストパーティデータならでは優れた点といえます。
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費用対効果が高い
セカンドパーティデータやサードパーティデータは、他社から提供されるデータです。そのため、購入する場合はもちろん、共有の際にもコストが発生することがあります。しかも、データの鮮度は時間とともに落ちていきますから、最新のデータが欲しいとなれば、その都度コストを支払わなければなりません。
しかし、ファーストパーティデータは、自社収集の情報です。最初にデータ収集のしくみさえ作っておけば、常に新しい情報が蓄積され、鮮度の高い情報を低コストで利用できます。
プライバシーリスクが低い
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ファーストパーティデータの6つの収集方法
ファーストパーティデータは、収集方法を選びません。ですから、オンラインでもオフラインでも、あらゆるタッチポイントに、データ収集のチャンスがあるといえます。直接収集できるデータは貴重ですので、データ収集の機会を多く作りましょう。もちろん、プライバシーポリシーの開示や確実な許諾を得ることは大前提です。
<オンラインでのデータの収集方法>
- ウェブサイト内に設置したタグによる行動の追跡
- 資料請求などに伴う、フォームによる収集
- 問い合わせなどのメールやチャットのやりとりを通じた収集
- SNSでのコミュニケーション履歴
<オフラインでのデータの収集方法>
- 展示会やセミナー、講演会でのアンケートや名刺交換
- 実店舗でのメンバーカードの発行
ファーストパーティデータの3つの用途
施策立案に活用する
顧客への理解を深め、サービス向上に役立てる
蓄積したデータから、自社の製品・サービスを好む層の属性が見えてきます。つまり、どんな層が自社製品・サービスを好むのかがわかり、顧客をさらに深く理解することができるというわけです。
このことは、効果的なマーケティング施策の立案に役立つだけではなく、自社製品やサービスの品質向上にもつながります。
CRMツールによる関係維持に利用する
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ファーストパーティデータを扱う際の4つの注意点
収集・活用のコストを考慮する
「ファーストパーティデータは低コストで活用できる」とはいえ、まったく費用がかからないわけではありません。CRMをはじめとする各種ツールが必要ですし、データの管理と保守にも、目に見えないコストがかかります。活用の段階でも、その方法によっては費用が発生するでしょう。
ですから、ファーストパーティデータの収集・活用に踏み出す前に、「どんなしくみを作り、どうやって情報を集め、どのように活用するか」を、しっかり想定しておくことです。さらには、投資対効果に問題はないかも検討し、その上で実践することが大切です。
データの規模と精度が十分かどうか確認する
データを分析する場合、重要なのはそのデータの規模と精度です。ファーストパーティデータは、精度という点では優秀なのですが、規模、つまり情報量という点で、分析に十分な量を用意することが難しいというデメリットがあります。
データの規模が小さいと、分析結果が実状とかけ離れてしまったり、期待した結果を得られなかったりということも起こります。
運用・活用の戦略を練る
ファーストパーティデータは、しくみさえ作っておけば、収集そのものは容易に行えます。しかし、「どのように活用するか」というプランニングができていないと、せっかくの貴重なデータを十分に活かすことができません。
そのデータを使って何がしたいのか、どのような結果を求めているのか。そのために、どのような方法を選ぶべきか、運用と活用の戦略を練っておくことが大切です。
運用する人材を確保しておく
収集したデータを存分に活用するには、そのためのしくみに加え、人材が必要です。広告やマーケティングのエキスパート、あるいはデータ分析のスペシャリストがいれば心強いですし、あるいは、現在の担当者を育成するという選択肢もあります。
どのような人材を用意し、専任とするかは、企業の事情や目的次第ですが、投資に見合う成果が得られるかどうか、精査しておくことが必須です。
十分な準備をして、ファーストパーティデータを活用しよう
マーケティングを効果的に行うには、顧客データの蓄積は欠かせません。ファーストパーティデータは高精度ながら低コストで獲得でき、しかもプライバシーリスクの点でも高い安全性を持ちます。
しくみづくりと人材の確保ができたら、活用プランを十分に練り上げ、その上で自社のビジネスに存分に役立ててください。