ビジネスにおける「ペルソナ」とは?作り方や参考例などを解説
ペルソナとは、サービスや商品を利用すると考えられる人物像のことで、マーケティングに活用される概念です。
具体的な人物像を作り上げることで、商品開発やマーケティング戦略において効果を発揮します。ただし、ペルソナ設定の考え方や作成のステップを間違えてしまうと、逆効果になってしまうため注意が必要です。
本記事では、ペルソナの定義や設定のメリット、ターゲットとの違いから、作り方、ビジネスやマーケティングにおいての活用方法までを詳しく解説します。
ペルソナとは
ペルソナとは、サービスや商品を利用すると考えられる具体的な人物像のことで、商品開発やマーケティングにおいて欠かせない言葉です。
本章では、ペルソナの定義とペルソナとターゲットの違いを詳しく解説するので、参考にしてみてください。
ペルソナの定義
ペルソナは心理学用語で「人格の側面」を表し、もともとは古典劇で登場人物が着用する“仮面”を指す言葉です。
これらの「人の側面」や「役を演じるための仮面」といった言葉が転じて、マーケティングにおける「仮の人物像」という意味で用いられるようになりました。
ビジネスの場においてペルソナが用いられるのは、商品やサービスを開発する際やマーケティング戦略を立案する場面です。利用者の属性やライフスタイル、好み、仕事内容などを想定することで、仮の人物像を生み出し、マーケティング戦略の具体化に役立てます。
ペルソナとターゲットの違い
ペルソナとターゲットは似ている概念ですが、大きな違いは具体化のレベルです。
ターゲットとは、「想定顧客層」を指す言葉です。属性や条件によって分類され、「30代から40代の男性サラリーマン」や「20代から30代の主婦」のように、想定する顧客を大まかにグループ化するのに用いられます。
活用シーンとしては、広告出稿する際の属性設定やターゲットに沿った顧客サービスを展開するなどが考えられます。
一方で、ペルソナでは、より具体的な顧客像を設定します。「35歳既婚女性、子ども2人の育児中、IT系の職業に従事、趣味はスポーツ」といったように、年齢や職業、趣味、性格などを細かく想定し、一個人レベルの顧客像を描いていきます。
活用シーンとしては、カスタマージャーニーを定義する際や、商品のキャッチコピーを考える際に参考にできます。
ペルソナを設定する3つのメリット
ペルソナを設定するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- ユーザーのニーズを明確にできる
- チーム内で顧客像を統一することでズレがなくなる
- 精度の高いマーケティングを実現できる
それぞれ詳しく解説します。
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ユーザーのニーズを明確にできる
漠然とした顧客イメージではなく、具体的な人物像を描くことで、その人物が抱える課題や欲求といったニーズを明らかにできます。
顧客のニーズは、商品やサービスをアピールする上でとくに重要なポイントです。ニーズが明確になれば作成するコンテンツの方向性が定まり、適切なコミュニケーション方法の選定にも役立ちます。
結果として、顧客満足度の向上につながり、ビジネスの成長を後押しできるでしょう。
チーム内で顧客像を統一することでズレがなくなる
ペルソナを設定することで、組織全体で明確な顧客像を共有でき、業務を進める上でのズレがなくなります。
ペルソナを活用する際は、マーケティングチームだけでなく、営業や製品開発など、異なる部署間でも共通の顧客像をもつことが大切です。
想定する顧客像を統一することで、各部門の取り組みが同じ方向を向き、効果的な協力体制が築けます。
結果として、部門間のコミュニケーションが円滑になり、プロジェクト全体の効率が大幅に向上します。
精度の高いマーケティングを実現できる
ペルソナを活用することで、より的確なマーケティング施策を展開できます。
具体的な顧客像があることで、その人物に響く言葉遣いやビジュアル、メッセージの内容を細かく設計可能です。
たとえば、読書が趣味の人を対象にマーケティングを行う場合、小説が好きな人もいれば、エッセイが好きな人もいます。また、紙書籍派と電子書籍派では、ニーズも違えば、よく見る広告媒体も異なるでしょう。
具体的なペルソナを作りあげることで、ユーザーの行動パターンをイメージできるため、適した内容とタイミングで情報を届けやすくなります。結果的に、効果的なマーケティング施策を実現できるのです。
ペルソナを設定するときの3つの注意点
ペルソナの設定は、商品開発やマーケティングにおいて不可欠なものですが、やり方や考え方を間違えると、効果が得られません。
具体的には、以下の点に注意する必要があります。
- 思い込みや理想だけで判断しない
- チーム内で解釈のズレを防ぐ
- 定期的にペルソナを見直す
それぞれ詳しく解説します。
思い込みや理想だけで判断しない
ペルソナを設定する際には、自己の経験や希望的観測に頼らないようにしましょう。
客観的なデータや実際の顧客の声をもとに、ペルソナを構築する必要があります。
たとえば、アンケート調査やインタビュー、ウェブサイトの行動分析などから得られた情報を活用するのがおすすめです。また、社内の営業チームや顧客サポート部門からの意見も貴重な資料となります。
これらの多角的な視点を組み合わせることで、より現実に即したペルソナが作成できます。
チーム内で解釈のズレを防ぐ
二つ目の注意点は、ペルソナに関する共通理解をチーム全体でもつことです。
せっかく作成したペルソナも、メンバー間で認識が異なれば理想的な効果を発揮できません。認識のズレを防ぐためには、ペルソナ設定のプロセスから多くの部署を巻き込むのが有効です。
また、写真や動画などのビジュアル素材を活用するのも、チームメンバー間での解釈のズレを防ぎます。
定期的にペルソナを見直す
作成したペルソナは固定化せずに、継続的に見直して更新することが大切です。
市場環境や顧客のニーズは常に変化しており、一度設定したペルソナがいつまでも有効とは限りません。たとえば、一定の期間やマーケットトレンドの変化などを見直すタイミングとして考慮してみましょう。
このような柔軟な姿勢でペルソナを進化させることで、常に最適なマーケティング戦略を立案・実行できるようになるのです。
ペルソナ設定は古いのか?
近年「ペルソナマーケティングは古い」と言われることがあります。その理由として、よく挙げられるものが以下です。
- タッチポイントの多様化
- MAツールなどの発達
ペルソナマーケティングが提唱されたころは、今よりもメディアやチャネルが限定的で、ペルソナだけで顧客像をある程度絞り込めました。急速にデジタル化が進むにともない、ペルソナだけでは不十分となりつつあります。
しかし、ペルソナが不要になったわけではありません。ペルソナは顧客理解を深めるために有用であり、顧客が抱える課題や問題へのアプローチ方法を考案することにも役立つ概念です。また、顧客の属性をペルソナという仮想人格にすることで、組織内における共有も容易になります。
つまり、これからのペルソナマーケティングは、既存の手法をベースに、MAツールのような新たな取り組みを加えてアップデートしていく必要があると言えるでしょう。
ペルソナの設定方法
ペルソナ作成の流れは、以下のとおりです。
STEP 1. ターゲット層を決める
STEP 2. 情報を収集する
STEP 3. ペルソナの構成要素を決める
STEP 4. 具体的な人物像を作成する
STEP 5. 定期的に見直しをする
全体的な流れは、大きなターゲット層を決めてから徐々に具体化していき、定期的に見直すという手順で進めます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
STEP 1. ターゲット層を決める
まずはサービスや商品を利用するターゲット層を絞ります。具体的なペルソナを決める前にターゲット層を設定することで、ペルソナのミスマッチを防げます。
ターゲット層を決める際には、若年層・中高年層・男性・女性など、大きな枠組みから決め、徐々に詳細化していきましょう。注意すべき点は、この段階で決めるのは「母数が大きな共通属性」に留めることです。あくまでペルソナを設定するための、母集団の選定としてターゲット層を決めていきます。
また、ターゲット層を決める際には、なんとなくで枠組みを決めるのではなく、自社や顧客の分析が大切です。市場における自社の立ち位置や顧客から評価されているポイントを理解することで、自社にとってのベストなペルソナを作成できます。
STEP 2. 情報を収集する
次に、設定したターゲット層から年齢層、性別、趣味、職業、ライフスタイルなどの情報を収集します。情報収集には、以下のような方法を用います。
- アンケート
- 顧客へのインタビュー
- 口コミ
- ブログ
- SNS
方法を選択するポイントは、どこで必要な情報の収集ができるか、目星をつけてからスタートすることです。アンケートやインタビューでは、あらかじめ必要な情報が聞き出せそうな設問を考えておきましょう。
なお、収集した情報だけでなく、既存の顧客データを分析することも有効です。両方のデータを組み合わせれば、より具体的なペルソナ像を作成できます。
STEP 3. ペルソナの構成要素を決める
情報収集まで完了したら、ペルソナを具体化するための必要な要素を決めます。
一般的には、以下の3種類の要素があります。
要素 | 詳細な項目 |
仕事 |
・企業規模 ・業界 ・職歴 ・業務内容 ・仕事で成し遂げたいこと ・仕事で抱える課題 など |
プライベート |
・家族構成 ・学歴 ・休日の行動 ・趣味 ・家族の夢や目標 など |
商品やサービス関連 |
・商品やサービスの使用履歴 ・検索キーワード ・購入する際の意思決定要因 など |
STEP 4. 具体的な人物像を作成する
ペルソナの構成要素を決めたあとは、具体的な人物像を作成しましょう。
この段階で、できるだけ具体的な情報を盛り込むと、よりリアリティのあるペルソナ像を作成できます。商品やサービスを手に取るまでのストーリーや、人物やシーンをイメージした写真・イラストを加えると、よりイメージを具体化しやすくなります。その上で、その顧客が抱える課題や問題も想定し、それに対する解決策を考えましょう。
BtoBでは、ペルソナの設定に意思決定権や課題、契約意向などの商談に関する条件も必要です。商談の成否は、人物像よりもその人物がもつ権限や、置かれた状況などが大きなウェイトを占めます。ペルソナはマーケティングのために用いられることを念頭に置き、成果を得るための情報も盛り込みましょう。
STEP5.定期的に見直しをする
ペルソナは、ターゲット層の変化へ対応するために定期的な見直しが必要です。顧客のライフスタイルや好みの変化から、新たな課題やニーズが発生することもあります。
また、ターゲット層ではなく、市場環境の変化によっても見直しが必要になります。年に数回はペルソナと顧客像にズレがないかをチェックし、必要に応じてマーケティング戦略に反映させましょう。
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ペルソナの参考例
プロフィール
名前:山田太郎
年齢:48歳
学歴:都内大学
家族構成:3人(妻、娘2人)
居住地:埼玉県所沢市
趣味:釣り、ゴルフ
職業情報 |
勤務先:部品メーカー 会社規模:300人 部署:営業部 役職:事業部長 意思決定の立場:決定権あり |
仕事内容 |
営業本部全体を管理するマネージャー。インサイドセールスからフィールドセールスの目標管理、売上分析、進捗・予実管理を行っている。事業部全体で35名のスタッフが所属。 |
課題 |
営業成績が振るわず、売上が下がっている。組織改革や営業手法のテコ入れが必要で、その方法としてデジタル化は早く着手したいと考えているが、何からはじめるべきかわからず情報収集を行っている。 |
情報収集方法 |
イベント会場に何度か足を運んでいる。 |
契約意向 |
自社に合う製品が見つかったら、今すぐにでもトライアルしてみたい |
検討期間 | 長期間 |
今回、作成したペルソナは、BtoB視点から切り口を設けた、部品メーカーに勤める40代の事業部長です。会社内での意思決定権をもち、同時に営業成績へ課題をもっています。すでに解決方法を見つけるために行動中で、よい製品を見つけたいと思っています。このペルソナを営業目線から見ると、最適な製品さえあれば、すぐにでも商談をもち掛けたい相手ではないでしょうか。
このペルソナ像をもとに、このような潜在顧客をどこで見つけ、どんな手段でコンタクトを取ればよいか、最適なコンテンツやPR法を考えていきます。
BtoC視線でこのペルソナ像を想定する場合は、個人の情報が重要です。家庭状況や趣味などから消費動向を考え、商品やサービスのPR方法を考案します。
ペルソナの活用方法
設定したペルソナは、以下のようなマーケティング施策へ活用できます。
- カスタマージャーニーマップの作成
- ステップメールのシナリオ作成
- MA(マーケティングオートメーション)のシナリオ設計
ペルソナは、単発の施策で使いきるものではありません。具体化された仮想顧客であるペルソナは、顧客を想定するさまざまなシーンで活用できます。ここでは、上記3手法について、ペルソナの活用方法を紹介します。
カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを購入するまでの過程を視覚化したものです。顧客が必要とする情報やアプローチするべきタイミングを把握でき、最適なコンテンツやコミュニケーションの選定に役立ちます。
カスタマージャーニーマップの活用には、ペルソナの設定が欠かせません。具体化された顧客像がたどる意思決定プロセスを視覚化することで、的確なマーケティング戦略を立てられます。
以下の記事で、カスタマージャーニーマップの作成手順や事例などを解説しています。ペルソナの活用に不可欠な内容となっているので、ぜひ一度目を通してみてください。
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ステップメールのシナリオ作成
ステップメールとは、メールを使ったマーケティング手法のひとつで、事前に用意した一連のメールをシナリオに沿って順次配信するマーケティング手法です。
顧客心理に適したコンテンツをタイミングよく提供することで顧客の興味を引き、販売・成約につなげます。ステップメールの内容は、受信者に合わせた具体性が求められるため、ペルソナで受信者像を具体化することで、より効果的な内容を作成できるのです。
以下の記事で、ステップメールの作成手順やシナリオ作成のポイントなどを解説しています。基本からわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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MA(マーケティングオートメーション)のシナリオ設計
MA(マーケティングオートメーション)とは、マーケティングの一部または全部を自動化することです。MAは一般的に「MAツール」と呼ばれる自動化ツールが使われ、事前に作成した設計図である「シナリオ」に沿って、コンテンツの自動配信が実行されます。
MAは、シナリオの精度次第で成果が大きく変わってきます。シナリオ設計で重要なのが、適切なカスタマージャーニーの作成とターゲット属性の具体化です。ペルソナを設定してターゲットを具体化すれば、その行動も詳細に予測ができ、より精度の高いシナリオを作成できます。
以下の記事に、MAのシナリオ設計のポイントをまとめています。MAを活用する前に、ぜひチェックしてみてください。
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ペルソナ設定による成功事例
会社名:江崎グリコ株式会社
Salesforceを導入した企業のなかで、顧客ターゲット像の明確化やユーザー分析にあらためて時間を使い、効果的なペルソナ設定を実現した事例を紹介します。
江崎グリコ株式会社は、従来の営業方法では顧客の購買タイミングに合わせた営業活動が難しく、採用に至らないという課題を抱えていました。
そこで、商談化率を高めるために、Salseforceのマーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)の導入を決定しています。
MAツールの導入にあたり、3~4ヶ月かけて、顧客ターゲット像の明確化を行っています。ターゲットを明確化したことで「ペルソナマトリックス」を作成でき、主要ターゲットを決定しました。
ペルソナにもとづいて、各ターゲットのカスタマージャーニーをもとにしたコミュニケーションフローを作成し、MAツールへと実装できています。
結果的に、Webサイト経由でのリード流入量や成約金額が増大し、法人向けの備蓄食糧では問い合わせからの受注率がほぼ100%になりました。
顧客ターゲット像の洗い出しとペルソナ設定により、MAツールの導入を効果的に行えたと言えるでしょう。
効果的なペルソナ設定にはAIの活用もおすすめ
効果的なペルソナ設定を行い、マーケティング施策のパフォーマンス向上を目指すのであれば、AIの活用もおすすめです。
Salesforceの「Einstein」なら、人工知能技術を駆使してマーケティングのさまざまな側面を強化できます。
たとえば、データ分析を活用して、コンテンツやインサイトを生成したり、パーソナライズされた顧客体験を提供したりできます。AIによる自動化と効率化によって、チームの生産性改善や顧客一人ひとりに合わせたジャーニーを実現可能です。
Salesforceの「Einstein」については、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はチェックしてみてください。
ペルソナを設定し効果的なマーケティング戦略を立てよう
ペルソナは、マーケティングのターゲットを明確化し、提供するコンテンツやコミュニケーション手法などを具体化できる、多くのマーケティング手法に用いられる概念です。自社における仮想顧客とも言い換えられ、ペルソナの設定プロセスを通じて、顧客理解を深め、イメージを共有する効果も期待できます。
ペルソナの精度は、マーケティング施策の成果に影響を与える重要な要素です。より効果的な施策を実施できるように、日ごろから顧客に目を向け、ペルソナにフィードバックできる体制を整えておきましょう。