OODA(ウーダ)ループとは?PDCAとの違いと活用方法を解説

 
最終更新日:2024.5.28
OODAとは「ウーダ」と読み、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(実行)の頭文字を取った、意思決定と実行の流れを表すフレームワークです。この4つのプロセスを用いることで、迅速で正確な戦略設計、意思決定を行うことが可能です。
 
 
 
これからの現場に、OODAループ
“慣習”を見直すフレームワーク
 
現場の状況判断はOODAループ、組織の管理にはPDCAサイクル。この組み合わせが、強い組織と柔軟な現場を実現。詳しくはダウンロードしてご覧ください。

OODA(ウーダ)とは

OODA(ウーダ)は、意思決定のためのサイクル理論です。早期の意思決定と行動によって、迅速かつ正確に戦略を立て、成果を得ることを目的としています。

OODAは、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の4つのフェーズから構成されています。PDCAサイクルと比較して語られることも多く、その際はこちらを「OODA(ウーダ)ループ」とも呼ぶこともあります。

OODAの歴史

OODAを提唱したのは、アメリカ空軍の戦闘機パイロットだったジョン・ボイドです。彼は空中戦戦術家として有名で、圧倒的に不利な状況でも40秒以内に逆転する卓越した操縦技術から「40 Second Boyd」の異名を持っていました。

OODAが考案された背景には、瞬時の正確な現状把握や判断を通じて「生存し、敵を撃破する」というシンプルな目的がありました。OODAは、その有用性から広く知られるようになり、やがてビジネスやスポーツなどに応用され、注目を集めていきました。現代では、急激な環境変化に耐えうる、有用なツールとして多くの企業で用いられています。

OODAループの4つのプロセス

OODAループは4つのフェーズに分かれていて、円を描くようにフェーズを繰り返して運用します。

  1. Observe:観察
  2. Orient:判断
  3. Decide:決定
  4. Act:実行

観察・判断・決定・実行のフェーズを繰り返して運用することで、迅速な意思決定や行動をうながせます。ここでは、4つのフェーズについて、具体例を混ぜて解説します。

1)Observe:観察

まずは現状を観察し、情報を収集します。このフェーズで重要なのは、外部環境や内部環境、競合他社の動向などを正確に把握することです。情報の収集方法には、市場調査や顧客のフィードバック、社内のデータ分析など、さまざまな手段があります。

たとえば、新商品開発においては、顧客の声を集め、競合他社の商品を分析することで、自社商品の強みを生かした戦略策定ができます。また、自社商品の課題点を分析すれば、改善点の発見につながり、市場競争力を高められます。

2)Orient:判断

「Observe」で収集した情報をもとに、状況判断をするフェーズです。観察した情報を整理し、これまでの傾向や過去の経験則から状況を判断します。なお、このフェーズでは、まだ行動は決定しません。

たとえば、マーケティング戦略を考えるときは、自社の強みや弱み、市場環境の分析結果などから、他社との差別化を図る方向性を仮説として立てるフェーズが該当します。

3)Decide:決定

「Orient」で判断した方向性をもとに、具体的な行動を決定するフェーズです。目標や戦略を設定し、アクションプランを策定します。このとき、リスクや不確実性の考慮も忘れてはいけません。より現実的で、適切な対策を講じることが大切です。

具体的には、判断フェーズで仮説立てしたマーケティング戦略を、実情に照らして有用か検討。必要に応じてブラッシュアップしながら、プランを決定するようなイメージです。

4)Act:実行

「Decide」で策定したプランを実行するフェーズです。アクションプランに従って実際に行動し、成果へと導きます。ただし、実行にあたっては、適宜調整を加え、臨機応変に対応することも必要です。実行を終えたら再び「Observe」に戻ります。

具体的には、「Decide」で決定したマーケティングプランを実行し、結果が出る時点まで遂行するイメージです。なお、このフェーズでは実行した結果の観察は含まれません。2周目の「Observe」に戻ってから観察に取り組みます。

OODAループとPDCAサイクルの違い

OODAはPDCAと似た「1つのサイクルを繰り返し、行動し続けるモデル」ですが、サイクルのあり方や目的などは異なります。ここでは、OODAとPDCAの役割と目的の違いについて解説します。

PDCAサイクルとは?なぜ古いと言われるの?

PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのフェーズを繰り返して実行する、品質管理やプロジェクト管理によく用いられる手法です。継続的な改善を実現するために有効であり、組織や個人の業務にも活用できます。

PDCAサイクルが古いと言われる理由は、考案された背景と現代のビジネス環境との差にあります。PDCAサイクルは、もともと日本の戦後に提唱された手法であり、ある程度、時間をかけて改善策を考えることが前提となっています。しかし、時代とともにビジネス環境の変化はスピードを増し、PDCAのスピード感では対応が難しくなっているのです。

PDCAサイクルについては、以下の記事で詳しく解説しています。OODAを実施する前に、ぜひ一度目を通してみてください。

OODAループとは役割・目的が違う

OODAループとPDCAサイクルの違いは、それぞれの役割と目的にあります。OODAループは、競争環境下での意思決定に重点を置き、すばやく正確な判断や迅速な行動をとるためのフレームワークです。それに対してPDCAサイクルは、品質改善に重点を置き、プロセスを繰り返すなかで、問題点の特定や改善策の考案を図ることを目的としています。

この違いは、それぞれのループプロセスからも見て取れます。PDCAでは、実行フェーズのあとに評価・改善フェーズがありますが、OODAは実行が最終プロセスとなっていて、その後に生じた結果を観察するところからプロセスが再開します。つまり、PDCAサイクルは腰を据えた改善のための手法であり、OODAループはリアルタイムに対応して行動するための手法と言えるでしょう。

OODAループとPDCAサイクルの使い分け

OODAループとPDCAサイクルは、役割と目的に基づいて使い分けましょう。OODAループは、変化や競争の激しい業界において、スピーディな意思決定や実行が必要な場面に有効です。一方、PDCAサイクルは、品質改善やプロセス最適化、中長期的な改善を目的とした場合に適しています。

両者は併用も可能です。より戦略的な経営やプロジェクト管理を行いたいときは、併用も検討してみましょう。

 
 
 
これからの現場に、OODAループ
“慣習”を見直すフレームワーク
 
現場の状況判断はOODAループ、組織の管理にはPDCAサイクル。この組み合わせが、強い組織と柔軟な現場を実現。詳しくはダウンロードしてご覧ください。

OODAが活用できる3つの場面は?

OODAは、変化の激しい環境や先の見通しが立てにくい状況において、とくに強みを発揮します。想定されるシチュエーションとして、以下のような例があります。

  1. 変化と競争が激しい業界や局面
  2. 起業や新規事業の立ち上げ時
  3. 突然の変化にすぐ対応するとき

具体的にどのような活用方法があるのか、それぞれ見ていきましょう。

1)変化と競争が激しい業界や局面

ITやハードウェアなどの変化や競争が激しい業界では、日々の状況をすばやく把握することが求められます。PDCAサイクルでは、対応している間に状況が変化している場合もあり、OODAループの迅速な意思決定と実行が適しています。

この考え方は、自社が置かれている局面の変化スピードにも応用できます。OODAループで観察するのは周囲の状況であり、その原因は言及されません。業界であれ局面であれ、自社がどのような状況におかれ、何をすべきかを迅速に打ち出すことが求められます。

2)起業や新規事業の立ち上げ時

起業や新規事業の立ち上げなど、先の想定を立てにくい状況にもOODAループは有効です。新しいビジネスモデルを構築する過程で発生する課題や問題点を解決するには、迅速な状況把握と対応の決定が求められます。OODAを活用することで、早期解決が期待でき、プロセスを繰り返すことで、ビジネスモデルの改善、成功につながる戦略策定にも役立ちます。

3)突然の変化にすぐ対応するとき

OODAループは突然の変化に対応するときにも適応できます。

たとえば、Orientで部品がいつもより1,000個多い3,000個必要だと判断し、Decideで一時的に工場の稼働時間を増やすとします。しかし、Decideの直後にさらに2,000個の追加受注がありました。

この場合、再度Orientに戻って自社だけでは対応できないことを判断し、Decideで外注での対応を決定します。そしてActに移行し、納品まで実行するのです。

このように、OODAループは途中で前の段階に戻り方向転換ができるため、突然の変化にも柔軟に対応ができます。

OODAのメリット

OODAには主に次のメリットがあります。

  • 状況に対して即応できる
  • 個人の裁量を大きくできる
  • 実戦のなかで試行錯誤ができる
  • 施策をスピードアップできる

状況に対して即応できる

OODAでは現場で即時に状況に応じた対応ができます。OODAを運用する際は、上層部に説明したり許可を取ったりする必要はなく、現場の判断で業務を進められます。

そのため、変化が多く、かつスピードが求められる職場で非常に有効です。

臨機応変に適切な方向へと動いていくことで、社員も変化に順応するスキルを身につけられるでしょう。

個人の裁量を大きくできる

OODAは個人の裁量が大きい点もメリットです。上層部からの指示を待たず、自分で判断して実行できるため、自発的に考え行動する環境を作れます。

裁量が大きいことで責任感も生まれるため、業務の品質向上も期待できます。自分の考えを業務に直接反映できる点が社員のモチベーションになり、生産性の向上にもつながるでしょう。

実戦のなかで試行錯誤ができる

OODAには実戦のなかで試行錯誤ができる柔軟性があります。

プロジェクトの進行中に変化やトラブルがあっても、状況に合わせてすぐに調整可能です。調整後にまだ不具合があっても、スピーディに改善を進めていけます。

プロジェクトをストップして計画や課題を再考しなくてよいため、リアルタイムで試行錯誤しながらより良い結果を目指せます。

施策をスピードアップできる

OODAを導入すれば施策の進行を格段にスピードアップできます。

時間経過にともなって市場が変化したことにより、多数の会議を重ねて決定した事項が覆ってしまった経験はないでしょうか。状況に応じて即座に判断・実行していくOODAでは、このようなことは基本的に起こりません。

顧客のニーズは時にあっという間に変化します。施策の決定から実行までをすばやく進めたいときは、OODAを使ってみましょう。

OODAのデメリット

OODAには以下のデメリットもあるため、導入前によく理解しておきましょう。

  • 中長期的改善や定型作業の改善には向かない
  • 失敗するリスクも大きい
  • 思いつきで行動する社員が増えるリスクがある

中長期的改善や定型作業の改善には向かない

OODAは即応性に重点を置いたフレームワークのため、中長期的改善や定型作業の改善には不向きです。

OODAを活用できるのは、たとえばトラブルが起きたときの修正です。一方、業務効率化や品質向上のように、具体的な修正点がなく抽象的な目標の場合にはあまり効果を発揮できません。

中長期的改善や定型作業の改善には、PDCAのように別なフレームワークを使ってみましょう。

失敗するリスクも大きい

OODAは失敗のリスクを理解して運用しましょう。

OODAは現状を観察してすばやく判断していくフレームワークで、前例の検証は含みません。前例を振り返れば避けられる失敗があったとしても、OODAでは失敗の過程も含めてフレームワークを展開していきます。

OODAのメリットはスピード感です。失敗に気づいたらすぐに前のフェーズに戻り、方向転換をしましょう。

思いつきで行動する社員が増えるリスクがある

思いつきでの行動が増えるリスクもOODAのデメリットです。

スピード感を意識するあまり、観察をおろそかにして十分な裏付けがない状態で行動してしまう社員もいるでしょう。

思いつきの行動を繰り返しても、労力を消費するだけで改善を見込めません。スピーディに動くことを重視しつつ、観察をおこたらないことが大切です。

OODAを導入するときのポイント

OODAを職場に導入する際は、次のポイントを大切にしましょう。

  • 情報共有の場を設ける
  • 権限を持つ社員を少しずつ増やしていく

情報共有の場を設ける

情報共有の場を設け、方向性を都度確認しましょう。

OODAは個人の裁量が大きく、スピーディに進行します。その分、適宜細かい情報共有がなければ、会社と社員の認識がどんどんズレていってしまうことがあります。

最終的な目標のリマインドと方向性の確認のため、社内チャットやSNS、掲示板などを利用して最新の情報は常に共有しましょう。

権限を持つ社員を少しずつ増やしていく

OODAの運用に慣れてきたら、権限を持つ現場の社員を少しずつ増やしていきましょう。

決まった社員のみが権限を100%持っていると、ほかの社員のモチベーションや成長の機会を奪ってしまうリスクがあります。

スキルのある社員や意欲の高い社員には積極的に権限を分けていき、OODAを活用しながら成長の場も広げていきましょう。

OODAを活用するときの注意点

OODAを活用するときは、次の点にとくに注意しましょう。

  • ビジョンをあいまいにしない
  • 情報を取捨選択する
  • 能力のある管理職が必要
  • 修正を忘れない

ビジョンをあいまいにしない

はっきりとしたビジョンの共有を大切にしましょう。

明確なビジョンがないと判断基準があいまいになり、判断が遅くなってOODAを効果的に回せません。また、会社と社員との間で認識のズレが生じ、トラブルに発展する恐れもあります。

会社としてのビジョンをきちんと共有し、正しい判断基準を社員に理解してもらいましょう。

情報を取捨選択する

観察のフェーズで情報を収集するときは、必要な情報の取捨選択を意識しましょう。情報が多すぎると状況判断に時間がかかり、OODAを活かせません。

必要な情報だけを選んで分析する力が必要なため、ビジョンや目的、課題をよく理解していることが大切です。

能力のある管理職が必要

OODAでは管理職の決断力とリーダーシップが重要です。

現場で権限を持つ管理職の決断力がなければ、OODAを導入してもスピーディな業務遂行はできません。また決断後のリーダーシップが不足していれば、社員は自信を持って業務に臨むのが困難となります。

OODAを導入する前に、管理職に十分な能力があるか確認しましょう。

 
 
 
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修正を忘れない

どれほどスピードを意識していても、修正の時間はしっかり設けましょう。

OODAは短期間で回していくため、一度に複数の修正箇所が発生することがあります。修正箇所を1つでも残したままOODAを回していると、OODAの効果を十分に享受できません。

修正の確認と改善は必ず行い、より良いOODAを回していけるようにしましょう。

OODAとPDCAを上手に使い分けよう

OODAは状況判断や意思決定を迅速に行うためのフレームワークで、激動の状況が続く現代のビジネスシーンを「走りながら考える」ための武器です。従来のPDCAでは環境変化のスピードに追いつかない場面でも、OODAによるリアルタイムの状況把握と柔軟な対応なら、最善の方法を導き出せるかもしれません。

OODAループを繰り返すことは、実戦的な経験と知識の蓄積にもつながります。限られたリソースのなかで最適な判断をしつつ、組織を強化するためにも、現代ビジネスにおいてOODAを使いこなすことは必至と言えるでしょう。

OODAを導入する際は、明確なビジョンを共有することや観察のフェーズで情報を取捨選択すること、修正の時間をしっかり設けることが大切です。現場の管理職の能力も重要なため、導入前の社員教育も忘れないようにしましょう。

 
 
 
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現場の状況判断はOODAループ、組織の管理にはPDCAサイクル。この組み合わせが、強い組織と柔軟な現場を実現。詳しくはダウンロードしてご覧ください。
 
 

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