営業プロセスとは?フレームワークやフロー図、可視化方法を解説
営業プロセスとは、営業の過程/手順/方法を整理し、可視化したもの
営業プロセスとは、営業の過程/手順/方法を整理し、可視化したものです。
営業には、リードの選定や顧客の維持・育成など複数のステップがあります。これらの営業プロセスを可視化し共有することで、営業スキルのナレッジ化/業務効率化/ボトルネックの可視化/部門間の連携強化などの効果が期待できます。
似た言葉に、「営業フロー」があります。営業フローは図で示されることが多く、1つの業務の流れを把握する際に使用されます。新人研修や、フローの改善時に役立ちます。
対する営業プロセスは、各部門間の連携や現状の数値も可視化します。次の章では、営業プロセスを可視化するメリットや必要性について解説します。
営業プロセス可視化の4つのメリット
営業プロセスを整理し、可視化することによる主なメリットには以下が挙げられます。
- 課題、ボトルネックの発見
- 営業スキルの標準化
- 適正な人事評価
- 進捗管理の明確化
営業プロセスは、営業活動に関する手順や条件に加え、数値(リード数/商談中の件数/受注見込金額/受注予定日/受注確度など)も可視化します。成果はもちろん、いつ何をどのくらい行うべきか、課題は何なのかが一目でわかるようになり、進捗やリスクの管理、ボトルネックの改善も行いやすくなります。
売上を上げるには、営業プロセスの可視化が必要不可欠と言えます。
営業プロセスは、複数の情報が複雑に絡み合っています。案件のフェーズだけではなく、活動管理(いつ誰が何をし、顧客の反応はどうだったか)をリアルタイムで可視化出来ていないと、客観的な経過分析が行えず、的確な問題解決にも至りません。商談が成約に至るまでのステップを可視化して、標準化されたプロセスに基づいた適切な営業活動を行うことで、成約率を高めることができます。
次章では営業プロセスの段階別に、「どんな業務を行うのか、何を可視化すると成果に繋がるのか」をご紹介します。
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営業プロセスの基本の6フェーズ
1)リード選定
2)アポイント獲得
3)商談
4)クロージング
5)受注
6)顧客維持・育成
なお、個別の業務については、業務フローを作成して管理する方法が有効です。
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1)リード選定
まずはリード(見込み顧客)から、アプローチ対象を選定します。
最初に、リードの種類を購買意欲や営業のフェーズに応じて分類します。
次に、リードの種類ごとにネクストアクションを定義付けし、共有します。現状把握の正確性が増すと共に、営業活動の組織化やボトルネック解消が促進されるでしょう。
どの種類のリードが、どのくらいの件数/金額になりそうか、どのリードに対していつ何をするのか等、数値で可視化することが大切です。時間軸や受注確度の観点から分析し、行動に落とし込みましょう。
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2)アポイント獲得
電話、メール等でアプローチを行い、アポイントを獲得します。
いつどんな手段で何回連絡したか、ヒアリング項目の何割を聞けてどんな内容だったか等を、数値や言語で可視化します。
連絡が付かなかったときのアクションや、次のステップである商談に進める条件等も言語化しておくとスムーズです。
3)商談
商談の大まかな流れは以下の通りです。
- 顧客のニーズの把握
- 解決策の提示
- 商品、サービスの提案
各フェーズで何をすべきか、何を達成したら次のフェーズに進んだと判断するのか、定義をしっかり決めておくことが大切です。
商談活動において数値化すべき主な項目には、案件数/受注予測金額/受注確度/受注予定日等があります。データが蓄積されると売上予測精度が増し、将来のために今何をすべきか可視化されることでしょう。
4)クロージング
契約の最終段階であるクロージングは、さらに以下の三段階に分けられます。
- テストクロージング
- クロージング
- 契約締結
テストクロージングとは、商談の途中において顧客の購入する意思がどの程度あるかを顧客に確認することです。商談中に顧客の購買意欲を確認しておくことで、より成約率の高い商談にリソースを集中することが可能です。
テストクロージングで契約の意欲を確認出来ていたら、クロージングで契約の有無をはっきりと伺いましょう。問題なければ契約条件を確認し、締結に至ります。
契約の最終段階で白紙にならないためにも、事前にリスクを検知し、回避することが大切です。最終承認者や稟議のプロセスなどの確認事項に漏れがないかチェックしておきましょう。
『営業力強化塾“安易な値引き”と“無駄な失注”をなくす3つの質問』では、安易な値引きや失注を減らすために、お客様が営業や提案をどうやって選んでいるのかを解説しています。価格だけに左右されない営業力を身につけるための質問方法も紹介していますので、営業力強化にお役立てください。
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5)受注
受注時の主な業務は以下の通りです。
- 契約処理
- 契約後の流れを説明
- 窓口/体制を説明
- 他部門への引き継ぎ
契約処理時やサービス提供開始時に自社の他部門が関わる場合、社内の情報共有が重要です(経理部門に対して入金日と金額を伝えたり、サービス導入支援部門に顧客が課題に感じている点を伝えたりなど)。
質の高いサービスを一貫して提供するために、全ての情報をシームレスかつリアルタイムで共有・可視化出来る体制を構築することをお勧めします。
6)顧客維持・育成
営業プロセスは受注して終わりではありません。顧客を維持し、さらにリピーターやロイヤルカスタマーへと育成することが、契約更新やアップセル・クロスセル等の売上に直結します。
特に売り切り型ではなく、サブスクリプションのような契約更新型サービスを提供する企業の場合、顧客を成功へと導くことが使命とも言えます。顧客が製品や、セミナーなどのプログラムを活用出来ているかを数値化・計測し、顧客の活用成熟度合いに応じた追加施策を行ってみましょう。
『SaaS ビジネス成功の基礎「The Model」』では、顧客満足度を高めて契約率を低下させる方法を解説しています。LTV(顧客生涯価値)を最大化させる方法を各営業プロセスごとにまとめていますので、売上向上にご活用ください。
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営業のプロセスで活用すべき4つのフレームワーク
ビジネスの現場におけるフレームワークとは、「考えを整理するための枠組み・ひな形」を指します。
フレームワークは、計画立案/問題解決/分析/アイデア出しなどの「考えるシーン」で用いると、論理的・合理的な判断の助けになります。短時間で可視化でき、方向性を定められるようになるでしょう。
ここからは、営業戦術で活用出来る基本のフレームワークをご紹介します。考えるシーンや目的に合わせて適切なフレームワークを選び、活用してみて下さい。
<営業のプロセスで活用すべき4つのフレームワーク>
- BANT条件は、顧客へのヒアリング時に活用出来るフレームワーク
- DMUマップは、顧客のDMU(意思決定関与者)を理解するためのフレームワーク
- FABE分析は、提案段階のプレゼンテーションで活用出来るフレームワーク
- アンゾフマトリクスは、営業戦略を立てる際に重要なフレームワーク
1)BANT条件は、顧客へのヒアリング時に活用出来るフレームワーク
BANT条件とは、顧客へのヒアリング時に活用出来るフレームワークです。
顧客がビジネス課題を認識し、製品やサービスの必要性を感じてもらうために用います。ヒアリングがスムーズに進まない場合、以下のBANT条件の項目を聞くことを目標にしてみましょう。
「BANT」は下記の4文字の頭文字を取った言葉です。
B:Budget(予算)
A:Authority(決裁権)
N:Needs(需要)
T:Time frame(導入時期)
ヒアリング時にBANT条件を聞くことで、失注リスクになり得る項目は何か/回避出来るのかを早期に確認することが可能になります。
クロージングが弱い営業は、この初期段階の進め方に課題があることが多く見受けられます。顧客の課題と自社の提案をマッチングさせるためにも、時間をかけて突き詰めることが大切です。
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2)DMUマップは、顧客のDMU(意思決定関与者)を理解するためのフレームワーク
DMU(Decision Making Unit)とは、顧客のDMU(意思決定関与者)を理解するためのフレームワークです。
DMUマップは、その名の通りDMUを地図で示すことでわかりやすくなります。役職や関係性に加え、意思決定のフローを可視化します。使用者、影響者、決定者が役職と関係ないことも多々あるので注意が必要です。
DMUマップを用いると、商談時に誰にどんな提案をすべきか明確になります。「クロージング時に急に新たなDMUが現れて契約白紙に」というリスク発生の防止に役立つでしょう。
3)FABE分析は、提案段階のプレゼンテーションで活用出来るフレームワーク
FABE分析は、提案段階のプレゼンテーションで活用出来るフレームワークのことです。
FABEは下記の4項目の頭文字を取った言葉です。顧客にFABEの順序通り提案すると、コンセプトを分かりやすく伝えることが出来ます。
F:特徴(Feature)
A:利点(Advantage)
B:便益(Benefit)
E:証拠(Evidence)
プレゼンテーションがわかりにくい人は、FABEの順に提案すると、顧客に話を聞いてもらいやすくなるでしょう。
また、顧客上層部の説得材料としても、FABE分析は有用です。先ほどのDMUマップで可視化した意思決定関与者に対し、それぞれの立場に合わせたFABE分析を端的に伝えるなど、応用することで活用の幅がさらに広がります。
4)アンゾフ マトリクスは、営業戦略を立てる際に重要なフレームワーク
アンゾフマトリクスは、企業が成長戦略(営業戦略)を策定する際に用いるフレームワークです。
アンゾフマトリクスは、以下の4つの戦略から成り立っています。このマトリクスを利用することで、企業はどの市場や製品に焦点を当てるべきかを明確にし、効果的な成長を目指すことができます。
- 市場浸透:既存の製品を既存の市場でさらに販売する戦略
- 新製品開発:新しい製品を開発し、既存の市場に投入する戦略
- 新市場開拓:既存の製品を新しい市場に販売する戦略
- 多角化:新しい製品を新しい市場に販売する戦略
企業は、自社の強みと市場の機会を分析し、適切な成長戦略を選択することが重要です。リスクとリターンのバランスを考慮し、企業の資源や能力に合わせた戦略を立てる必要があります。
アンゾフマトリクスを使用することで、自社の現状を把握し、将来の成長の方向性を検討することができます。
営業プロセスはSFA活用で可視化し、営業活動の効率化ができる
営業プロセスの可視化に労力を費やすあまり、営業活動が疎かになってしまっては本末転倒です。
そこでSFA(営業支援システム)を導入し活用すると、営業プロセスをより簡単・正確に、さらに詳しく可視化することが出来ます。
SFAは営業業務を仕組み化・標準化し、営業活動の効率化を図るためのツールです。
SFAには以下の管理機能が備わっています。
- 案件に関する情報を俯瞰出来る「案件管理機能」
- 日々の営業活動を管理する「活動管理機能」
- 顧客の情報を集約して一目でわかる「顧客管理機能」
- 商談のプロセスを管理する「商談管理機能」
SFAを導入すると、営業は優先順位の高い業務、つまり商談に集中出来るようになります。
今まで営業が集計/分析/報告書作成/共有ミーティングに割いていた時間と工数は、SFAによってぐっと圧縮されます。さらに、自動かつ正確に可視化された情報がリアルタイムで組織全体に共有されるため、売上予測精度向上によるボトルネックの解消や、属人化していた営業活動のチームプレー化も期待出来ます。
営業プロセスの定義や可視化のメリットについて解説しました。
今回の記事を参考に、ぜひ自社独自の営業プロセスの可視化・共有にトライしてみて下さい。加えてフレームワークやツールを活用すると、情報整理や可視化、成果に繋がる速度が飛躍的に加速することでしょう。