営業戦略とは?分析のフレームワークと成功事例、今日から使える具体的な立て方を解説
「思うように売上が伸びない」「営業メンバーの活動が場当たり的になっている」といった課題を抱えていませんか。
市場の変化が速く、顧客のニーズも多様化する現代において、効果的な「営業戦略」なしに成果を上げ続けることは困難です。
本記事では、営業目標を達成し、事業を成長軌道に乗せるための実践的な営業戦略の立て方から、すぐに役立つフレームワーク、具体的な成功事例、そして戦略を実行し成果に繋げるためのポイントまでを網羅的に解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、自社の営業活動を見直し、今日から具体的な一歩を踏み出すためのヒントが得られるはずです。
また、昨今の営業活動では生成AIの活用が進んでおり、営業競争が激しくなることが予想されます。生成AI活用 最新トレンド 〜営業編〜に詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
本記事の要約 |
営業戦略とは、企業が売上の拡大や事業の成長を目指し、計画的に営業活動を進めるための方針や施策を指します。 戦略を立てる際には、まず達成すべき中長期的な目標を明確にし、方向性を決定することが重要です。そのためのフレームワークとしては3C分析や5フォース分析など自社のみならず、顧客や競合の状況をもとにしたものを活用するケースが多いです。 市場調査を行い、製品やサービスに適した顧客層を特定した上でカスタマージャーニーを作成し、顧客の購買行動に合わせたアプローチを行うことで成果の向上が期待できます。 |
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営業戦略とは営業目標の達成に向けた基礎計画のこと
営業戦略とは、利益の増大や事業拡大などの目標を達成するために必要なベースとなる計画のことです。
経営方針やブランディングとも密接に関わるものであり、営業担当者だけでなく、経営者や管理職にとっても重要なものとなっています。
営業戦略をしっかり立てることで目標に向けてスムーズに動けるようになるでしょう。効果的な戦略を立案するには実行可能度や過去の営業に関するデータを活用して、長期的・全体的に計画を熟考することが求められています。
営業戦略と営業戦術の違い
「営業戦略」と似た言葉で「営業戦術」があります。
営業戦術とは「営業戦略で立てた計画をどのように実施していくかを決めること」を指します。一方で、営業戦略は「営業目標を達成するためのベースとなる計画」のことです。
つまり、目標を達成するために立てた計画が「戦略」で、戦略を達成するための手段が「戦術」となります。戦略がないまま戦術を活用しても、思うように成果を達成するのは困難です。
適切適切な戦術を組むには、土台となる戦略が必要になります。
営業戦略の立て方(7ステップ)
営業戦略を立てる手順について解説します。営業戦略は最初に目標を設定し、行動に落とし込んでから検証と改善を重ねます。
- 目標を設定する
- 徹底的に現状分析する
- 明確なKGI・KPIを設定する
- ターゲット顧客の明確化とペルソナを設定する
- カスタマージャーニーを作成する
- 具体的な営業プロセスとチャネル戦略を設計する
- 実行計画の策定と進捗管理・改善体制を構築する
自社の営業戦略の立て方を見直したい方は、ぜひ確認してみてください。
ステップ1:目標を設定する
営業戦略は、まず中長期的な目標を、数値とともに設定しておくことが必要です。
目標が設定できたら、達成に向けて方向性を決めます。方向性を策定する際に、自社の状況を認識したうえで、どのように達成すればよいかを決めましょう。
客観的に目標の達成度を計測するために、KGI(重要目標達成指標)で定量的な目標を設定します。
ステップ2:徹底的に現状分析する
リソース分析 | 自社の営業担当者のスキルレベル、人数、予算、保有している顧客データ、技術力、ブランド力などを洗い出します。何が強みで、何が不足しているのかを明確にしましょう。 |
過去の営業実績分析 | 過去の売上データや成約率、失注理由、顧客単価などを分析し、成功パターンや課題点を抽出します。SFA/CRMを活用している場合は、そのデータを最大限に活用しましょう。 |
SWOT分析の活用 | 自社の「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」を整理します。 |
市場分析 | ターゲットとする市場の規模や成長性、トレンド、顧客ニーズの変化などを調査します。業界レポートやニュース、調査データなどを参考にしましょう。 |
競合分析 | 主要な競合他社の製品・サービス、価格戦略、販売チャネル、顧客からの評判、強み・弱みを徹底的に分析します。競合がどのように市場に対応しているかを知ることは、自社の戦略を練るうえで非常に重要です。3C分析の視点も取り入れましょう。 |
PEST分析の活用 | 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)といったマクロ環境の変化が自社にどのような影響を与えるかを分析します。 |
SWOT分析の活用 | 市場の「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を整理します。 |
収集した情報をもとに、「売上目標未達の原因は何か?」「最も優先的に解決すべきボトルネックはどこか?」といった問いを通じて、自社が取るべき戦略の方向性や克服すべき主要な課題を具体的にリストアップします。
強み・弱み・機会・脅威を掛け合わせて、戦略の方向性を検討するクロスSWOT分析などを行なうのも効果的です。
ステップ3:明確なKGI・KPIを設定する
何を最終目標とするか | 営業戦略によって最終的に達成したい成果を、具体的かつ定量的に設定します。 例:「年間売上10億円達成」「新規顧客獲得数年間100社」「特定製品における市場シェア15%獲得」。 |
なぜその目標なのか | そのKGIが企業全体の経営目標とどう連動しているのか、達成することでどのようなインパクトがあるのかを明確にします。 |
KGI達成へのプロセスを分解 | KGIを達成するために、日々どのような活動をどれくらい行なえばよいのかを示す中間指標を設定します。 例:「月間アポイントメント獲得数50件」「有効商談化率30%」「平均受注単価200万円」「ウェブサイトからの月間リード獲得数200件」。 |
行動レベルとの連動 | KPIは、営業担当者の具体的な行動目標に落とし込めるように設定することが重要です。 |
測定可能であること | 定期的に数値を把握し、進捗を確認できる指標を選びましょう。 |
設定するKGI・KPIは、以下のSMARTの原則の5つの要素を満たしているか確認しましょう。
- Specific:具体的か
- Measurable:測定可能か
- Achievable:達成可能か
- Relevant:経営目標と関連性があるか
- Time-bound:期限が明確か
SMARTの原則の例 | 半年以内に、〇〇業界における新規顧客からの売上を、現状の月間500万円から800万円に向上させる(KGI)。 そのために、月間20件の新規リードを獲得し(KPI1)、 そのうち30%を案件化する(KPI2)。 |
ステップ4:ターゲット顧客の明確化とペルソナを設定する
市場セグメンテーション(市場の細分化) | 市場全体を、共通のニーズや属性を持つ小グループ(セグメント)に分割します。セグメント化の軸には、地理的変数(地域、都市規模など)、人口動態変数(年齢、性別、所得、職業など)、心理的変数(ライフスタイル、価値観、パーソナリティなど)、行動変数(購買状況、使用頻度、ロイヤルティなど)があります。BtoBの場合は、業種、企業規模、部門、役職、抱える課題なども重要な軸となります。 |
ターゲティング(狙うべき市場の選定) | 細分化したセグメントの中から、自社の強みを最も活かせる、成長性が高い、競合が少ないなど、魅力的なセグメントを選び出し、メインターゲットとします。すべての顧客を満足させようとするのではなく、自社が最も価値を提供できる顧客層に集中することが成功の鍵です。 |
提供価値(バリュープロポジション)の言語化 | ターゲット顧客が抱える課題を、自社の製品・サービスがどのように解決できるのか、競合と比較してどのような独自の価値を提供できるのかを明確な言葉で表現します。 例:コスト削減効果、業務効率改善、独自技術による優位性など「〇〇という課題を抱える△△(ターゲット顧客)に対して、私たちの□□(製品・サービス)は、××という独自の価値を提供することで、その課題を解決します」といった形で整理すると良いでしょう。 |
ペルソナとはターゲット顧客の具体的な人物像を、あたかも実在する個人のように詳細に設定したものです。
ペルソナ作成ステップは、以下のとおりです。
1. 情報収集 | 既存顧客へのインタビューや営業担当者からのヒアリング、アンケート調査、アクセス解析データなどから、ターゲット顧客に関する情報を収集します。 |
2. 項目設定 | 氏名、年齢、性別、職業、役職、家族構成、趣味、価値観、情報収集の方法、抱えている課題、悩み、達成したい目標、購買時の意思決定プロセスなどを具体的に設定します。 |
3. ストーリーの付与 | ペルソナの1日の行動や製品・サービスを認知してから購入に至るまでのストーリーを描写することで、よりリアリティが増します。 |
ペルソナを活用することで、以下のメリットが得られます。
- 営業チーム内で顧客イメージを統一できる
- 顧客視点に立ったメッセージやコンテンツを作成しやすくなる
- 製品開発やサービス改善のヒントが得られる
- 顧客の課題やニーズに寄り添った提案が可能になり、成約率向上に繋がる
ステップ5:カスタマージャーニーを作成する
カスタマージャーニーとは顧客が購買行動を行う際の情報収集や意思決定の道筋を整理したものです。
顧客がどのような流れで製品の購入を検討するのかを整理することで、どのタイミングでどのようなアプローチを行うのかを明確にできます。
一連の顧客のアクションを細分化し顧客への購買の動機づけ、手法を検討します。
例えば、顧客の行動を「購買前」「購買時」「購買後」のように時間軸で分け、行動や感情などを詳細に予測していきます。
ステップ6:具体的な営業プロセスとチャネル戦略を設計する
営業プロセスの標準化と最適化 | 見込み顧客の発見(リードジェネレーション)から、育成(リードナーチャリング)、商談、受注(クロージング)、そして顧客維持・拡大(リテンション、アップセル・クロスセル)に至る一連の営業プロセスを設計または見直します。 各プロセス段階での具体的な活動内容や判断基準、必要な情報、担当者を明確にします。 各段階のKPIを設定し、ボトルネックを発見・改善しやすくします(例:リードからの案件化率、商談からの受注率など)。 |
営業チャネルの選定と組み合わせ(チャネルミックス) | ターゲット顧客が情報を収集し、購買を決定する際に利用するチャネル(オンライン:自社ウェブサイト、SEO、広告、SNS、メールマガジン、ウェビナーなど/オフライン:訪問営業、電話、展示会、セミナー、ダイレクトメールなど)をリストアップします。 リーチできる範囲、コスト、即効性、情報伝達力など、各チャネルの特性を考慮し、自社の製品・サービスやターゲット顧客に最適なチャネルを組み合わせます。 たとえば認知獲得やリード獲得、商談創出など各チャネルに期待する役割とKPIを設定します。 |
営業ツールの活用検討 | SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)などの営業ツールを導入・活用することで、営業活動の効率化、情報共有の促進、データにもとづいた意思決定が可能になります。どのプロセスで、どのツールが有効か検討しましょう。 |
ステップ7:実行計画の策定と進捗管理・改善体制を構築する
アクションプランの作成 | 上記のステップで決定した戦略・戦術を、具体的な行動レベルまで分解します。「誰が」「何を」「いつまでに」「どのように行なうか」「必要なリソースは何か」を明確にしたアクションプランを作成しましょう。 |
リソース配分と役割分担 | 人員、予算、時間などの限られた営業リソースを、優先順位の高い活動やチャネルに効果的に配分します。 たとえばインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど、営業チーム内での役割分担を明確にし、連携体制を構築します。 |
進捗管理とKPIモニタリング | 設定したKPIを週次、月次など定期的にモニタリングし、目標達成に向けた進捗状況を可視化します。 定期的な営業会議などで進捗報告と課題共有を行ない、問題があれば早期に対策を講じます。 |
PDCAサイクルの確立 | 戦略を実行(Do)し、結果を検証(Check)し、改善策を検討・実施(Action)するPDCAサイクルを継続的に回します。市場環境や顧客ニーズの変化に合わせて、戦略を柔軟に見直し、最適化していく姿勢が重要です。 成功事例や失敗事例を組織内で共有し、学びを蓄積していく仕組みを作りましょう。 |
営業戦略に役立つ6つの分析手法(フレームワーク)
営業戦略を立てる際によく使われるフレームワークについて解説します。
- 3C分析
- ランチェスター戦略
- パレートの法則
- SWOT分析
- ファイブフォース分析
- PEST分析
営業戦略をスムーズに立案するためにも、以下を読んで活用してみましょう。
3C分析
3C分析は、3つの視点から行う分析方法で、成功するための事業計画を導き出すために用いられます。「顧客(Customer)」「競合相手(Competitor)」「自社(Company)」の3つについて、それぞれ分析します。
顧客の分析
顧客の分析では、主に以下の3つを分析します。
- 市場規模
- 市場の成長性
- 顧客ニーズの変化
マクロ、ミクロそれぞれの視点から、市場環境の状況を明らかにします。
競合相手の分析
競合相手の分析では、以下の観点から強みと弱みを分析します。
- 競合相手の事業規模
- 製品・サービス
- 獲得シェア
この分析では、「結果」と「要因」が分析の軸としてよく使われます。 たとえば、売上高やシェアは「結果」であり、それを実現した「要因」がどこにあるかを探るのです。他社の成功要因がわかれば、自社に取り入れたり、差別化を図ったりというアクションにもつなげられます。
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自社の分析
顧客と競合相手の分析結果を基に、自社がどのような施策を打てるのか、戦略を立てていきます。ここでは、後述するSWOT分析がよく用いられます。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略とは、弱者の視点と強者の視点、それぞれの角度から分析を行い、自社に合った戦略を組み立てる手法です。「弱者の戦略」とも呼ばれるように、中小・零細企業や個人事業主でも実践しやすく、自社の価値を高められます。
ある業界でシェア1位、つまりナンバーワン企業になろうとすると、資金力や開発力、人材など、豊かな経営資源が必要です。弱者である中小企業には、容易なことではありません。しかし、細かくカテゴライズされた「限られた市場」であれば、不可能ではありません。
高級食パン専門のベーカリーや、バリアフリー工事専門の工務店など、特定のニーズに特化した専門性をアピールし、ブランドと認知度を高める成功例がよく見られます。大手企業が資源の多さを活かしにくい、小さな市場でのトップを狙う戦略です。
パレートの法則
「80:20の法則」とも呼ばれる、パレートの法則を分析に活用して、選択と集中の判断材料に用いることが可能になります。
たとえば、パレートの法則によって以下のような事実を発見でき、分析することでどのような行動をすれば利益向上につながるかを把握できます。
事実 |
分析した結果 |
売上の8割が、全体の2割のリピーターによって得られている |
2割のリピーターがどんな特性を持った層かを分析するとマーケティング効率を高められる |
2割の営業成績のうちの8割が、2割の営業担当者によってもたらされている |
2割の営業担当者のノウハウを分析し、チーム全体に反映すれば、営業力の底上げを図れる |
なお、パレートの法則を使う際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 分析したい対象に、この法則が成立しているかどうかを確認する
- なぜ成立しているのかを明確にする
この2点に留意すれば、さまざまな業務で効率化やパフォーマンスの向上を図れます。
SWOT分析
SWOT分析は、自社の強みと弱みを把握し、外部環境と照らし合わせて分析できるフレームワークです。
社内外に存在するプラスとマイナス、それぞれの要素を客観的に把握することで、どこに勝機があるのかを見つけるために使われます。
自社製品をSWOT分析にかける場合は、まず自社製品の「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」の要素を書き出します。これが、内部環境に存在するプラスとマイナスです。次に、外部環境のプラス要素として「機会(Opportunity)」を、マイナス要素として「脅威(Threat)」を書き出します。
これらの要素を4つに区分したマトリクスに書き込み、それぞれのマトリクスを掛け合わせて、戦略を立案していきます。
たとえば、「強み×脅威」なら「強みを活かして、脅威を避ける方法は何か?」「弱み×機会」なら「弱みによって失っている販売機会を逃がさない方法は?」と考えることが可能となります。
SWOT分析を活用するうえでの注意点は、以下のとおりです。
- 目的を見失わないフレームワークを使うこと自体が目的にならないように注意する
- 客観的な情報をもとにする希望的観測や主観的な思い込みではなく、データや事実にもとづいて各要素を評価する
- 要素の定義を明確にする何を「強み」とし、何を「機会」とするのか、チーム内で共通認識を持つ
- 具体的に記述する「コミュニケーション能力が高い」といった曖昧な表現ではなく、「〇〇という製品説明スキルが高く、顧客からの信頼が厚い」のように具体的に記述する
- 分析だけで終わらせずに、クロスSWOT分析などを通じて、必ず具体的なアクションプランに繋げる
- 定期的な見直し市場環境や自社の状況は変化するため、一度分析して終わりではなく、定期的にSWOT分析を見直し、戦略をアップデートする
SWOT分析を正しく理解し、実践的に活用することで、自社の営業戦略はより的確で効果的なものになるでしょう。

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ファイブフォース分析
ファイブフォースとは「5つの脅威」を意味します。自社や自社製品・サービスをとりまく5種類の外的脅威を洗い出し、それぞれに分析を加えて、自社の優位性がどこにあるかを探り出す手法です。
5つの脅威には、以下のようなものがあります。
- 業界内での競争
- 業界への新規参入者
- 代替品の存在
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
自社の脅威を掘り下げていき、どうすれば収益を確保できるかを結論づけることで、具体的な戦略構築につなげられます。

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PEST分析
PEST分析とは以下4つの要素を分析する方法です。
- 政治(Political)
- 経済(Economic)
- 社会(Social)
- 技術(Technological)
PEST分析は最初に実施される分析であることが多く、外部環境の変化に敏感になり、未来のビジネス展望を予測できるメリットがあります。
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営業戦略を成功させる7つの重要ポイント
どんなに優れた営業戦略を立案しても、それが実行され、組織に定着しなければ意味がありません。多くの企業が「戦略を実行に移せない」「実行しても長続きしない」という課題に直面しています。
ここでは、策定した営業戦略を成果へ繋げるための7つの重要なポイントを解説します。
ポイント1:経営層の強力なコミットメントとリーダーシップ
営業戦略の実行には、経営層が強い意志を持って取り組み、リーダーシップを発揮することが不可欠です。
経営層のコミットメントは、戦略の重要性を社内に示し、必要なリソースの確保や部門間の協力を促進します。また、変革には抵抗が伴うこともありますが、経営層が先頭に立つことで、組織全体が一丸となって取り組むことができます。
具体的なアクションは、以下のとおりです。
- 経営層自らが戦略の目的や意義を繰り返し社内に発信する
- 戦略実行のための予算や人員配置を優先的に行なう
- 定期的な進捗会議に出席し、現場の課題に耳を傾け、必要なサポートを行なう
ポイント2:戦略の徹底的な社内共有とメンバーの理解・共感の醸成
営業戦略は一部の人間だけが理解しているのではなく、実行の主役となる営業メンバー一人ひとりが深く理解し、共感している状態を目指します。
メンバーが戦略の背景や目的、自分自身の役割を理解することで、主体的な行動が促され、戦略実行の精度とスピードが向上します。
具体的なアクションは、以下のとおりです。
- 戦略発表会や説明会を丁寧に実施し、質疑応答の時間を十分に設ける
- 戦略の概要だけでなく、なぜこの戦略が必要なのか、メンバーにどのようなメリットがあるのかを伝える
- 定期的なミーティングや社内報などを通じて、戦略の進捗状況や成功事例を共有する
ポイント3:具体的な行動計画への落とし込みと明確な進捗管理
抽象的な営業戦略を、具体的な日々の行動レベルにまで落とし込み、その進捗を可視化して管理することが重要です。
行動計画が曖昧だと何から手をつければ良いか分からず、戦略が形骸化してしまいます。進捗管理は、計画通りに進んでいるかを確認し、問題があれば早期に対処するために不可欠です。
具体的なアクションは、以下のとおりです。
- 戦略目標(KGI)から逆算して、各部門・各個人の具体的な行動目標(KPI)とアクションプランを設定する(「誰が」「何を」「いつまでに」行なうかを明確にする)
- 定期的な進捗報告ミーティング(週次、月次など)を設定し、KPIの達成状況を確認する
- SFA/CRMを活用して、営業活動の進捗やKPI達成度をリアルタイムで可視化し、ダッシュボードで共有します
ポイント4:関連部門との連携強化
現代の営業戦略において、特にマーケティング部門との緊密な連携は成功の鍵となります。また、製品開発やカスタマーサポート部門との連携も重要です。
部門間の連携が取れていないと、リードの質が低かったり、顧客へのメッセージに一貫性がなかったりといった問題が生じ、戦略全体の効果が薄れてしまいます。
具体的なアクションは、以下のとおりです。
- 定期的な部門間ミーティングを設定し、目標やKPI、顧客情報、施策の進捗などを共有する
- リードの定義や質(MQL、SQLなど)について共通認識を持つ
- MA(マーケティングオートメーション)ツールとSFA/CRMを連携させ、リード情報や顧客の行動履歴をシームレスに共有する基盤を構築する
ポイント5:戦略実行に必要なスキル習得のための教育・研修制度の整備
新しい戦略を実行するためには、営業メンバーが新たな知識やスキルを習得する必要がある場合があります。
メンバーのスキルが戦略の要求レベルに達していなければ、どんなに優れた戦略も実行できません。継続的な学習機会の提供は、メンバーのモチベーション向上にも繋がります。
具体的なアクションは、以下のとおりです。
- 新しい戦略や製品知識、営業手法に関する研修プログラムを実施する
- ロールプレイングやOJTを通じて、実践的なスキルを育成する
- 外部研修やセミナーへの参加を奨励する
ポイント6:戦略目標の達成を促す適切な評価制度とインセンティブ設計
営業メンバーの行動を戦略の方向に導くためには、評価制度やインセンティブが戦略目標と連動していることが重要です。
人は評価される行動を優先する傾向があるため、評価基準が戦略とズレていると、メンバーは戦略にもとづいた行動を取りにくくなります。
具体的なアクションは、以下のとおりです。
- 戦略目標(KGI・KPI)の達成度を評価の主要項目に組み込む
- 単純な売上金額だけでなく、新規顧客獲得数、クロスセル率、顧客満足度など、戦略上重要な指標も評価対象とする
- 戦略に貢献したチームや個人を表彰する制度や、目標達成に応じたインセンティブ(金銭的報酬だけでなく、昇進や新しい挑戦機会の提供なども含む)を設ける
ポイント7:定期的な効果測定と市場変化に合わせた柔軟な見直し
一度策定した戦略が永遠に通用するわけではありません。定期的に効果を測定し、市場や顧客の変化に合わせて戦略を柔軟に見直し、改善していくことが不可欠です。
市場環境は常に変化しており、当初は有効だった戦略も時間と共に陳腐化する可能性があります。PDCAサイクルを回し続けることで、戦略の鮮度を保ち、持続的な成果創出を目指します。
具体的なアクションは、以下のとおりです。
- 設定したKPIを定期的にモニタリングし、目標との差異やその原因を分析する
- 四半期ごとや半期ごとに戦略レビュー会議を実施し、戦略の有効性や市場環境との適合性を評価する
- 顧客からのフィードバックや市場の最新トレンドを常に収集し、必要に応じて戦略目標、ターゲット顧客、アプローチ方法などを修正・改善する
- CRMに蓄積されたデータを分析し、データドリブンな意思決定にもとづいて戦略を軌道修正する
これらのポイントを意識し、組織全体で取り組むことで、営業戦略は単なる計画書ではなく、日々の活動を導き、着実に成果を生み出す強力な羅針盤となるでしょう。
営業戦略のフレームワークを活用した4つの事例
営業戦略のフレームワークを活用してどのような分析ができるかを以下の4つの事例で紹介します。
- 星野リゾート(3C分析)
- Apple(SWOT分析)
- SaaS業界(PEST分析)
- ユニクロ(ファイブフォース分析)
それぞれどのように分析できるかを詳しくイメージできる内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
星野リゾート(3C分析)
要因 |
概要 |
顧客(Customer) |
|
競合相手(Competitor) |
|
自社(Company) |
|
Apple(SWOT分析)
プラス要因 |
マイナス要因 |
|
内部環境 |
【強み(Strength)】
|
【弱み(Weakness)】
|
外部環境 |
【機会(Opportunity)】
|
【脅威(Threat)】
|
SaaS業界(PEST分析)
要因 | 概要 |
Policy(政治) |
|
Economy(経済) |
|
Society(社会) |
|
Technology(技術) |
|
ユニクロ(ファイブフォース分析)
脅威 | 評価 | 概要 |
業界内での競争 (既存競合他社) |
高 |
|
業界への新規参入者 |
中 |
|
代替品の存在 |
中 |
|
売り手(サプライヤー)の交渉力 | 低 |
|
買い手(顧客)の交渉力 | 中~高 |
|
ファイブフォース分析によってユニクロは、2つの特徴があることがわかった。1つ目は、業界内での競争が激しく、競合との顧客獲得争いが激化していること。2つ目は、売り手の交渉力が低く、優位な立場で交渉が可能になっていることです。
今後、ユニクロが売上を増やすには、業界内での競争に巻き込まれないポジショニング戦略とよりコストパフォーマンス高めた生産に取り組み、買い手への交渉力を高めることが必要になります。
営業戦略におすすめのツール
策定した営業戦略を効果的に実行し、その成果を最大化するためには、適切なツールやテクノロジーの活用が不可欠です。2025年現在、特にAI技術の進化は目覚ましく、営業活動のあり方を大きく変えつつあります。
ここでは、営業戦略を強力にバックアップする主要なツールと、その活用ポイントをご紹介します。
1. SFA (営業支援システム) / CRM (顧客関係管理システム)
SFA/CRMは、営業活動における情報の一元管理、プロセスの標準化、顧客との関係強化を実現するための基幹システムです。
SFA/CRMの主な導入メリットは、以下のとおりです。
営業活動の効率化 | 顧客情報や商談履歴、行動履歴などを一元管理し、報告業務の削減や情報検索の迅速化を実現します。 |
情報共有の促進と属人化の防止 | チーム全体でリアルタイムに情報を共有し、担当者変更時のスムーズな引き継ぎや、組織的な営業活動を可能にします。 |
顧客理解の深化 | 顧客とのあらゆる接点情報を蓄積・分析することで、より深い顧客理解にもとづいたパーソナライズされたアプローチが可能になります。 |
データにもとづいた意思決定 | 営業活動の進捗や成果を可視化し、データドリブンな戦略修正や的確なマネジメントを実現します。 |
AIによる営業活動支援 | 最新のSFA/CRMには、AIが搭載され、次の最適なアクションを提案したり、見込みの高いリードを自動でスコアリングしたりする機能も備わっています。 |
SFA/CRM選定の際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 自社の営業課題や事業規模、業種特性に合っているか
- 営業担当者が直感的に使える操作性か
- 将来的な事業拡大にも対応できる拡張性やカスタマイズ性があるか
- 他のシステム(MAツール、会計ソフトなど)との連携はスムーズか
- 導入支援やアフターサポート体制は充実しているか
2. MA (マーケティングオートメーション) ツール
MAツールは、見込み顧客(リード)の獲得から育成(ナーチャリング)、選別までの一連のマーケティングプロセスを自動化し、質の高いリードを営業部門へ効率的に供給します。
MAツールで獲得・育成したリード情報をSFA/CRMとシームレスに連携させることで、マーケティング部門から営業部門へのスムーズな情報伝達が実現し、機会損失を防ぎます。
また、営業活動の結果をMAツールにフィードバックすることで、マーケティング施策の精度向上にも繋がります。
SFA/CRMとの連携による主な効果は、以下のとおりです。
- 営業担当者が有望なリードに集中できる
- リードの興味関心に合わせた適切なタイミングでのアプローチが可能になる
- マーケティング活動と営業活動のROI(投資対効果)を正確に測定・評価できる
3. データ分析ツール / BI (ビジネスインテリジェンス) ツール
営業戦略の成果を客観的に評価し、継続的に改善していくためには、蓄積されたデータを分析し、そこから洞察を得ることが不可欠です。
営業戦略において、分析すべきデータの例は以下のとおりです。
- 営業KPIの達成状況(売上、成約率、平均単価、活動量など)
- 顧客属性データ、購買履歴データ、Web行動履歴データ
- 市場トレンドデータ、競合情報データ
データ分析ツール/BIツールは、これらの膨大なデータを収集・統合・可視化し、専門知識がなくても直感的に分析できるように支援します。ダッシュボード機能により、リアルタイムで状況を把握し、迅速な意思決定を可能にします。
ツールの導入だけでなく、データにもとづいて判断し行動する文化を組織全体で醸成することが重要です。そのためには、経営層のコミットメント、データリテラシー向上のための教育、成功体験の共有などが求められます。
これらのツールやテクノロジーを効果的に活用することで、営業戦略の実行精度を高め、変化の速い市場においても競争優位性を確立し、持続的な成長を目指せます。自社の課題や目指す姿に合わせて、適切なツールの導入・活用を検討しましょう。
最適な営業戦略を立てるにはSFAの活用を
営業戦略を成功させるには、目標を設定し行動に落とし込んでから検証と改善を重ねなくてはなりません。
達成できる可能性の高い営業戦略の策定にはフレームワークの活用がおすすめです。フレームワークを活用するには自社の営業プロセスを可視化する必要があります。SFAを利用することで、営業プロセスの可視化が容易になり、迅速な意思決定が可能となります。
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また、以下からお問い合わせも可能ですので、SFAの導入を検討している人は、お気軽にご相談ください。

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