コストセンターとは?売上に貢献する部署に転換させるポイント
コストセンターというと、コストを生み、利益を生まない部署という否定的なイメージが強いようです。果たして本当にそうなのでしょうか?実は活用の仕方次第で、コストセンターも売上に貢献することができるのです。 ここでは、コストセンターの基本知識と、コストセンターが売上に貢献するためのポイントについて解説します。
また、コストセンターと呼ばれる部署は業務効率化の最前線を担う部署でもあります。直近では、AIを活用することが大きなトレンドになっており、会社の業務改善に大きく貢献する余地があります。中小企業の導入事例に学ぶ 誰でも簡単にできる「AI活用術」では、AI導入による業務効率化の成功事例について触れていますので、あわせてご覧ください。
コストセンターとプロフィットセンターの違い
コストセンターとプロフィットセンター。これは、会計用語から生まれた言葉で、経営の立場から「コストと利益」という切り口で使われる言葉です。
企業内では、さまざまな部署をコストセンターとプロフィットセンターに分け、それぞれの特質に合わせた組織の改革やワークフローの見直しなどが行われます。まずは、それぞれの特性と違いについて紹介していきましょう。
コストだけが集計されるコストセンター
コストセンターとは、「業務にかかったコストだけが集計される部門」です。一般には経理や総務、コールセンターなどが代表例で、製造業では生産工場や研究機関もコストセンターとみなされます。いずれも収益を生み出すことはありませんが、消費するコストとその結果として生み出す製品やサービスの品質に責任を持つ部門ととらえることができます。
これらの部門は、単体では外部からの収益を上げるしくみがありません。人件費をはじめ、その部門にかかる費用はすべてコストになります。そのため、全社的な収益を高めるために、コストセンターの業務の圧縮や効率化を推進するとともに作業負荷を軽くし、時間とコスト、労力を削減することが求められます。
利益を生み出すプロフィットセンター
プロフィットとは、利益や収益を意味する言葉です。つまり、コストだけがかかるコストセンターに対して、プロフィットセンターは「業務によってコストだけでなく利益も生み出す部門」ということになります。セールスは典型的なプロフィットセンターですが、マーケティングや営業企画などもこの分類に入れていいでしょう。また、経営戦略室なども、プロフィットセンターと見ることができます。
コストの圧縮が重要なのはコストセンターと同様ですが、それ以上に収益を高め、利益を最大化することに責任を持つことが、プロフィットセンターととらえることができます。
部署名だけで分類することはできない
どの部署がコストセンターかプロフィットセンターか。多くの場合は、部署の名前によって分類されていますが、それが必ずしも正解とは限りません。企業によってとらえ方が違いますし、業務の内容によっても、どちらに分類すべきかが違ってくるケースがあります。
たとえば、コールセンターは必要な人員と設備をそろえ、自社顧客も含めた不特定多数からの問い合わせやクレームの受け皿として機能します。これだけ見れば、コストしかかかっていません。しかし、コールセンターの応対がすばらしく、問い合わせをスムーズかつ短時間で解決できれば、電話をかけてきた相手はどう感じるでしょうか。「この会社の対応はすばらしいな」と思うのではないでしょうか。その結果、企業のイメージが高まり、製品の購入に至ったならば、コストセンターが利益を生み出したことになります。
こうした例は、実は組織の中のあちこちに存在するのです。
コストセンターからプロフィットセンターへの転換
なぜ、そうした動きが現れてきたのでしょうか?
なぜプロフィットセンターへの転換が必要なのか?
すでにご紹介したように、組織の中の一部門を指して、コストセンターと見るかプロフィットセンターと見るかは、企業ごとに判断は異なります。しかし、ある部門が、コストセンターという認識が固定化されていては、その中でとりうる業務改善は「コスト削減」という範囲にとどまってしまいます。
とはいえ、市場での競争が激しさを増す中、企業が生き残るためには、生産性を高め利益を最大化するための業務改革が必要です。そして、その効果をより高めるためには、特定の一部門だけでなく、全社的に取り組まなくてはなりません。
そこで注目されるのが、コストセンターからプロフィットセンターへの転換なのです。
コストセンターからの脱却はできる!
従来、コストセンターとみなされてきた部門に新たな価値や役割を見しだし、それを高めることでプロフィットセンターへと転換することは、実際に可能です。先に挙げたコールセンターをはじめ、研究開発部門や生産工場なども、プロフィットセンターに転換ができます。
肝心なのは、その部門が顧客のために、あるいは利益を生み出すために、どのような価値を提供できるかを見いだすことです。そのためには、従来どおりの縦割りの見方にとらわれず、柔軟な発想で各部門の改革にあたることが大切です。
※参考:サポートコスト24%削減、顧客満足度30%向上を実現する次世代コンタクトセンター、中堅・中小企業向け AI活用ガイド
コストセンターをどのように転換すればいいのか?
では、コストセンターからプロフィットセンターへ転換を図るには、どのようにすればいいのでしょうか?
これは企業規模によってやり方は異なるでしょうし、部門によっても異なります。ちょっとした手直しで転換できる場合もあれば、全社を挙げて取り組まなくてはならないケースもあるでしょう。どの部署をどのように変えていきたいのか、そのためにどこをどう変えればいいのか、まずはそこを見極めることです。
転換にあたっては、部門ごとに目指す形や転換のプロセスに違いはありますが、共通する注意点もいくつかあります。
他部門との連携を意識する
コストセンターからプロフィットセンターへと転換を図るには、他の部門との情報や意識を共有し、スムーズな連携を図ることが大切です。たとえば、最終的に売上という利益を獲得するセールスは、他部門からどのような情報やサポートがあれば営業活動がより効果的になるかという課題意識を、常に何かしら抱えているはずです。そこをうまくつなげられれば、コストセンターが収益を後押しすることで、プロフィットセンターに転換していくことができます。
他部署と連携し、「チームとして収益を上げる」という発想を持つことが、スムーズな転換への第一歩です。
事業戦略を理解する
自分のやるべき仕事をきっちりとこなすことは、どの部署であっても当然のこと。そこからの脱却を図るには、より大きな視点を持ち、自社の事業戦略を理解することが重要です。
「自分が手掛けている日々の業務が、どこでどのように役立っているのか」「生産性の向上や効率追求という目的の中で、どれほど機能しているのか」「自社の目指す方向に合致しているか」「ほかにできることはないか」。
こうした視点を持った上で、他部門と連携し合えば、各部門がお互いにサポートしつつ、それぞれの機能を「収益の最大化」へと向けていくことができるでしょう。
経営的な視点を持つ
コストセンターでは往々にして、コストの圧縮・削減ばかりに目が行きがちです。しかし、コストを圧縮したために、仕事の質やスピードが低下してしまっては、本末転倒です。
プロフィットセンターへの転換にあたっては、コストと収益のバランスを見ながら業務を回していく、経営者のような視点が必要となります。
情報や経験の共有化を図る
コストセンターと認識されている部署をプロフィットセンターに転換する場合、必要な情報にスピーディにアクセスできる環境が不可欠です。コールセンターは典型的な例で、電話をかけてきた顧客の過去の購入歴や問い合わせ履歴、利用している製品に関するデータなどに瞬時にアクセスできないと、それだけ対応に時間がかかり、顧客を待たせることになります。
こうした情報共有には、SFAやCRMといったデジタルツールが最適です。これらのツールは、セールス部門が使うものという思い込みがあるかもしれませんが、必要な拡張機能を組み込むことで、情報共有のためのプラットフォーム、社内の基幹システムとして使うこともできます。
社内の複数の部署で管理されていた情報を一元管理すれば、迅速な対応が可能となり、プロフィットセンターとしての機能を高めることができるでしょう。
コストセンターからプロフィットセンターへの転換例
コールセンター:対応体制の強化による顧客満足度の向上
コールセンターでは、オペレーターが顧客と直接やりとりをすることになります。ここでの対応次第で、顧客が自社に対して抱くイメージは大きく影響されます。長時間待たされて複数部署をたらい回しにされ、結局、疑問が解決できなかったとなれば、顧客は大きな失望を感じるでしょう。反対に、好印象を与えることができれば、自社製品・サービスの顧客となり、さらにはリピーターとなってくれることも期待できます。
それを行うには、オペレーターの対応の速さや正確さといった属人的要素のブラッシュアップに加え、外部からの入電がつながりやすい回線環境も必要です。さらに、顧客自身や製品に関する情報に瞬時にアクセスできる、情報共有システムは不可欠となります。
これらを組み合わせることで、顧客満足度を向上させ、その結果としてプロフィットセンターとして機能することが可能になります。
生産工場:利益率を重視した製品製造を主体的に行う
メーカーとして自社で持っている生産工場は、多くの場合、コストセンターとして機能しています。これをプロフィットセンターに転換するには、工場を自立させ、ある程度の権限を委譲し、その中で「利益を上げる工場」への転換を図ることになります。これは、本社の庇護を離れて自立採算を実現するということでもあります。
コストセンターとしての工場経営では「原価の圧縮、コストの削減」が第一でした。しかし、プロフィットセンターとして機能させるなら、たとえコストがかかっても利益率の大きな製品製造に舵を切るという判断も生まれてきます。
さらに、安価な競合製品との戦いに勝ち抜くためには、高品質や短納期、独自技術など、使える武器を効果的に使うことを考えなくてはなりません。つまり、工場を取り仕切る工場長は、中小企業の経営者のような能力を求められることになります。
これは、工場側にとっては非常に大きな変化です。その大波を乗り越えることができれば、コストセンターからの脱却を果たすことができるでしょう。
自社の収益にどのような価値で貢献できるのかを考え抜くことが大切
コストセンターからプロフィットセンターへの転換。それは、簡単にできることではないかもしれません。しかし、あらゆる分野で競争が激化している現在、この転換を行えるかどうかは、自社の将来にも大きな影響を与えるはずです。
自社の利益の源泉となる顧客に対して、あるいは自社の収益に対して、各部署がどのような価値を提供できるのか。そこから発想すれば、プロフィットセンターへの転換は、意外とスムーズに行えるのではないでしょうか。
そのような取り組みの中では、AI活用が大きな効果を発揮します。中小企業の導入事例に学ぶ 誰でも簡単にできる「AI活用術」の例を参考にぜひ業務効率化の第一歩を踏み出してみてください。