コールセンターを立ち上げたい!まず、どこから始めればいい?
コールセンターの立ち上げ手順
既存顧客あるいはリード(見込み客)を対象に、問い合わせや意見の受付窓口となるコールセンター。社外に外注したり内製化したりと、その形態は企業によってまちまちです。
しかし、内製化する場合、ゼロからの立ち上げとなると、なかなかエネルギーが必要になる作業です。まずは、コールセンターを立ち上げるための手順を解説していきます。
1. コールセンターの目的を決める
コールセンターの立ち上げにあたり、最初に決めておくべきことが目的です。
近年、コールセンターは単なる問い合わせ窓口としての役割を超えて、企業にとっての貴重な顧客接点としてとらえられるようになりました。コールセンターの応対品質によって、顧客が企業に対して抱く印象が変化し、顧客満足度や顧客ロイヤリティを大きく左右するという認識が広がってきたためです。
そのため、コールセンターも、業務の目的として「顧客満足度の向上」や「売上の増大」を掲げるようになりました。
こうした状況を踏まえ、まずは、コールセンター設立の目的を明らかにしておきましょう。そして、この目的に沿って部署を構築し、運用していくことが大切です。
2. 現状を把握し、課題を洗い出す
次に行うのは、現状の把握と課題の洗い出しです。たとえコールセンターを設置していなくても、外部からの問い合わせに対して回答する機能は、必ず企業の中のどこかにあるはずです。それは広報であったり、営業であったりするでしょう。あるいは、ユーザーサポートの担当者が置かれているかもしれません。
そうした現状を把握し、前項で解説した目的を、満足できるレベルで達成するには、何をどうするべきか、課題や問題点を調査していくのです。下記の5つにポイントを絞り、それぞれの状況をチェックしていくといいでしょう。
<現状把握の際のチェックポイント>
- 運用のルールとプロセス
- 管理体制
- 組織体制
- オペレーターの教育・フォロー体制
- システム環境
これらの点について確認していき、現状で何が不足しているのか、目的を達成するにはどうすればいいのかを洗い出していきます。
3. コールセンターの全体設計を行う
続いては、コールセンターの全体像をプランニングしていく作業になります。多種多様な作業を行うことになりますが、大別すると、「業務プロセス」「管理方法」「組織」「人材育成」の4つの要素を設計することになります。
それぞれについて、概略をご説明しましょう。
- 業務プロセスを策定する
これから立ち上げるコールセンターでどのような業務を行うのか。それを明確にした上で、それぞれの業務をどのように行うか、業務プロセスを策定します。通常時のオペレーターの業務フローをはじめ、対応の履歴をどのように残すか、定期報告はどのタイミングで行うか、イレギュラーな事態にはどう対処するか…。それぞれの対処方法を検討し、細部まで業務プロセスを設計していきます。 非常時の緊急連絡網の作成や、大規模災害が発生した際の対処法、その後の運用と復旧の方法など、想定できるだけ広範囲に検討し、策定しておきましょう。
- 管理方法を明確にする
業務プロセスが固まったら、次に業務を管理する方法を明確にします。細部まで練り上げられた業務プロセスがあったとしても、それが決められた手順どおりに行われていなければ、期待された成果を上げることはできません。また、思うように成果が出ない場合には、業務プロセスそのものを見直す必要も出てきます。そうした判断を下すためには、マネジメントをどのように行うか、決めておくことが重要です。
具体的なKPIとその目標値を設定しておき、コールセンター全体で共有しておけば、目標達成までの道筋も明確になるでしょう。
- 組織を構築する
コールセンターを開設し、その目的を達成するべく運用していくために、どれほどの工数が必要かを算出して、組織を構築します。つまり、「どのような業務を、どれほどの規模で行うかを計算して、必要な人数を算出する」ということです。
ここでは、コストもさることながら、人材を確保できるかどうかが大きな課題となるでしょう。オペレーター数人規模の小さな組織であれば、さして問題はないかもしれませんが、規模の大きな組織が必要となると、人材やコストの問題が大きな負担になるかもしれません。業務を開始してから後悔することのないよう、慎重に検討しておきましょう。
- 人材育成のプランを作る
コールセンターの応対品質を高く保つには、優秀な人材を確保することが第一です。そのためには、確保した人材のサポート体制と教育体制を、同時に整えておくことが大切なポイントになります。
現代は、どの業界でも人材不足に悩まされています。しかも、コールセンターは離職率が高い職種で、長期勤続者が少ない傾向があるのです。将来有望な人材を育てることと並行して、長く安心して働ける環境を整えておくことも、コールセンターにおいてはとても重要といえるでしょう。
4. 設計に沿って構築・実装する
設計が済んだら、それに沿って実際の構築作業にかかります。このフェーズでは、システムや機器類の導入・設定、運用方法を定めたマニュアルの作成のほか、人材の採用と教育がおもな作業になります。
- システムや機器の導入・設定
コールセンターでは、実にさまざまな機器を使います。電話回線を引いて構内交換機を設置し、必要な数の電話機を準備します。また、社内のネットワークにアクセスするための、ネットワーク設定も行います。ここでは、各企業それぞれが定めているネットワークポリシーに準拠し、万全のセキュリティ対策を施しておきましょう。
また、コールセンターシステムやCRMなどのシステムを必要に応じて用意し、それぞれをセットアップしておきます。ハードとソフトの環境が準備できたら、きちんと稼働するかどうか、必ずテストを行うことも大切です。
また、オペレーターの就業環境を整えるためのデスクや椅子のほか、什器や備品などの手配も忘れずに済ませてください。長時間の勤務に備えて、照明や空調なども最適な状態に調整しておきます。
- マニュアルを作成する
設計時に策定しておいた業務プロセスにもとづき、各種マニュアルを作成します。業務マニュアルとしては、基本となるオペレーター用マニュアル、システムや電話機の操作マニュアル、エスカレーションマニュアルのほか、緊急時の対応をまとめたマニュアルも用意しておくといいでしょう。
また、コールセンターを管理するためのマニュアルには、シフトの作成や変更、勤怠管理の手順、KPI管理や品質管理マニュアルなどが挙げられます。
すべてのマニュアルが常時必要というわけではありませんが、策定した業務プロセスに対応したマニュアルは用意しておきましょう。
- 人材の採用と教育
「組織の構築」で決めたプランにもとづいて人材の募集と採用を行い、研修で教育を施します。この教育も、事前に策定しておいた内容に沿って行います。
ここまで来れば、コールセンターの立ち上げも、いよいよ最終段階です。すべての準備が整った環境でリハーサルを入念に行い、習熟を重ねて業務開始に備えます。
コールセンターの立ち上げにあたっての注意点
コールセンターの立ち上げは細かな作業の連続であり、思わぬところで壁にぶつかることも少なくありません。すでに機材や人材を手配した段階で中止することは難しく、損失も大きくなります
ですから、プランニングの段階で十分な検討を重ね、先の見通しを立てることが大切です。
コールセンターの立ち上げにあたり、特に注意しておきたい点を見ていきましょう。
初期・運用のコストは十分か
コールセンターの開設には、さまざまな機器やシステム、什器・備品が必要になりますので、大きな初期費用がかかります。さらに、オペレーターの人件費をはじめとする、運用コストも小さくありません。ですから、できるだけ早い段階で、初期・運用にどれほどのコストがかかるのか、見通しを立てておくことが重要です。
想定している規模に対してコストがかかりすぎるようなら、規模を縮小して開設するか、あるいは開設そのものを断念するか、それとも外部委託という形をとるか、判断が必要になるでしょう。
コールセンターは企業と顧客との接点であり、顧客の声を収集できる貴重な窓口です。そこで収集されるデータを経営に活かすためには、長く続けることが肝心です。
反対に、必要なコストを見越した上で、長く続けられる形態で開設・運用することが、コールセンターにおいて必要なことだといえます。
通信インフラに不足はないか
たとえ小規模のコールセンターであっても、通信インフラは速度・容量ともに十分なものを用意しておくことが重要です。顧客からの問い合わせに対して、クラウド上のCRMにアクセスしたり、ウェブサイトを参照したりする際に、アクセスに時間がかかるようでは、顧客を待たせることになり、マイナスの印象を与えることになってしまいます。また、電話回線についても、多数の着信が入った場合でも十分さばけるだけの余裕は必要となります。
これらの通信環境が十分でないようなら、高速で大容量の回線に入れ替えるところから始めるようにしましょう。
社外サービスの利用も選択肢に
何もノウハウがない状態からコールセンターを立ち上げるというのは、簡単なことではありません。プランニングから構築、業務開始までには多くの作業をこなさなくてはなりませんし、その後も、管理や人材教育など、運用上の課題が数多く待ち構えています。社内のスタッフだけですべてを手掛けるのは、業務開始にこぎつけることすら、たいへんなことかもしれません。
そうした懸念がある場合は、社外サービスを活用するのも賢い方法でしょう。数多くあるコールセンター会社の中には、企業のアウトソースとしてコールセンター業務を請け負うかたわら、自社内でコールセンターの立ち上げを行う企業のサポートを行っているところもあります。企画段階からプロジェクトに参画し、設計から構築の各段階でのアドバイス、人材の研修代行、各種マニュアルの作成やKPIの定義など、コールセンターの開設とその後の運用に関するノウハウを提供してくれます。こうした支援サービスを活用すれば、確実かつ早期のコールセンター立ち上げが実現するはずです。
課題を着実に解決しながら、コールセンターを立ち上げていこう
コールセンターをゼロから立ち上げる、あるいは大幅に拡大するとなると、多くの課題を解決しなければなりません。漏れがないよう、着実に作業を進めましょう。
また、コールセンターは、開設後の運用こそが重要です。業務を通じてノウハウを蓄積するとともに、対応品質の向上を目指し、必要な改善を重ねていってください。