セントラル警備保障株式会社

営業・警備・技術の三位一体のデジタル化で重複入力作業と紙報告書を大幅に削減

多岐にわたる業務情報をOne Platformに集約。紙によるプロセスを廃して業務変革を進めたことで、1拠点あたり月間150時間の時短を成し遂げるとともに、全社で54万枚の紙を削減することに成功。

セントラル警備保障株式会社(以下、CSP)は、業務変革とともにSalesforceを導入したことで、紙とFAX文化からの脱却に成功しました。さまざまな業務情報をSalesforceに集約し、すべてを可視化。紙によるプロセスを廃して業務変革を進めたことで、1拠点あたり月間150時間の時短を成し遂げるとともに、全社で紙54万枚の削減を実現しました。
 
 

1. 少数精鋭のチームで”警備業界の過去の常識を覆す

CSPは、施設警備からホームセキュリティまで幅広く手掛ける、セキュリティサービス大手です。設立直後にビートルズ来日公演の警備を任されたことで名を高め、業界3位へと成長。現在は独自の特長を持つホームセキュリティサービス「ファミリーガードアイ」やカメラと画像巡回を組み合わせたトータルなシステム販売を推進するなど、新たなビジネス展開にも積極的です。

警備業界は、その歴史から労働集約型産業と見なされてきています。屈強な警備スタッフが外部の脅威から契約者を守ってくれるイメージです。しかし、社会が成熟してくると、人に依存する警備に加え、センサーの異常検知を起点とする機械警備の重要性が高まってきました。同社も機械警備に力を入れており、契約者施設に設置されたセンサーが異常を検知すれば警備スタッフに出動指示を行う「指令システム」を中心に据えた警備運用を行っています。
長年の運用でさまざまな機能を追加し、成熟度を高めてきた指令システムと基幹システムですが、契約者の機微な個人情報も蓄積し、同社にとっては極めてミッションクリティカルなものになっています。しかし、指令システムと基幹システムの機能改善・追加にはコストがかかるため、現場の運用でなんとか顧客ニーズにこたえようとしてきました。
取締役常務執行役員 管理本部長 兼 経営企画部長 菅野 秀一氏は、「以前に営業を担当していたときに、“この状況はまずい”と感じていました。営業担当者は、お客様の要望を少しでもかなえようとして、お客様に合わせて非常にカスタマイズ性の高い、いわば“あなたの警備パッケージ”を作ってしまうのです。お客様には喜んでいただけるのですが、現場対応で運用する限界が近づいていて、警備の現場は疲弊していました」と話します。

さらに、すべてのプロセスは紙ベースでした。警備スタッフは紙の報告書をFAXで指令センターに送ります。指示も、FAXで来ます。プロセスは幾重にもチェックがあるために長く、さらに数種類の紙の書類が流れます。何度も入力作業が発生し、「だれかが一度入力すると、すべてのシステムに反映される」仕組みはありませんでした。
「経営企画に移ってからも、この課題について考え続けてきました。改善したいと経営に提案してプロジェクトが立ち上がったのですが、全社的に業務を楽にして、もっと会社としての一体感を持とうという思いを持った優秀なメンバーが集まってくれました」(菅野氏)

 
 
 
 
 

2. Sales Cloudによる業務変革と、Platform によるデジタル化を両輪で

菅野氏は営業としての視点で全体を見ていたため、当初検討していた業務変革スコープは営業のペーパーレス化でした。そこに、執行役員 東京システム事業部長 鴫原 公男氏が加わりました。鴫原氏は現場の知見があり、現場変革の課題意識を強く持っていました。

「警備スタッフだけでなく、管理者も疲弊していたのです。警備業法を遵守しながら現場を回し、手書きの報告書をExcelに打ち直していますし、それが何種類もあります。重大な事案があれば、紙の書類を山の中から探さなければなりません。紙の問題というより、人海戦術の問題が大きすぎると感じていました。私もプロジェクトに参加したいと考え、ぜひ営業だけでなく現場も入れてほしいとお願いしました」(鴫原氏)

こうしてプロジェクトのスコープは「営業部門と機械警備プロセスのペーパーレス化および業務効率化」となり、2人を筆頭にプロジェクトは動き始めます。複数のシステムインテグレーターに提案を依頼したところ、各社からSalesforce導入の提案を受けました。警備業務にマッチするのか、当初は疑問だったといいます。

「Salesforceは顧客管理のイメージが強く、ピンと来なかったのですが、提案段階から実現イメージに近いデモを見ることができ、これだといけそうだなと直感しました。警備業は、ビジネスモデルがいくつもあり、営業もチームで動きます。機械警備現場が求めるところはSalesforceを基盤に開発すればデータの連携も取りやすい。これでいこうと決めました」(菅野氏)

 

こうして、営業部門にSales Cloudを導入し、機械警備現場はPlatformで開発するという方向性が定まることになります。Sales Cloudの導入により、顧客への提案から受注までのプロセスはすべてSalesforce上で管理できるようになりました。受注情報は自動的に基幹システムに登録されるため、漏れもなくなり、顧客情報を基軸としたワンプラットフォームに情報が統合されたことで、二重三重の情報入力に無駄な時間を割くこともなくなりました。ワンプラットフォームにデータを一元化し、瞬時に状態の可視化を行える事は、連携Salesforceの大きな強みだと感じました。

一方の機械警備現場は、既存のプロセスを変える必要はありません。紙の報告書を廃し、すべてを電子化するためのシステムをPlatformで作り上げたことになります。プロジェクトのハイライトは、指令システムとの接続でした。指令システムはミッションクリティカルな独立システムですが、関係部門の協力を得たことで、最大数分のタイムラグはあるもののセキュアな方法で、ニアリアルタイムの同期を取れるようにしました。こうして、「指令に対して現場がどう対応したか」という履歴は、警備スタッフがその場でタブレットやスマートフォンに入力し、すべてSalesforceに集約されることになります。

Salesforceを中心に指令システムと基幹システムとの連携を取り、大幅な業務効率化を成し遂げました。営業部門はSales Cloudの導入と同時に業務の見直しを図り、シンプルで効率的な業務へと移行。機械警備現場は、1拠点あたり150時間の業務時間削減を成し遂げました。また、これまで紙の山を探していた重大な事案の最終報告書作成にかかるリードタイムは、1~2か月から1日以内へと大幅に短縮し、翌日の会議資料として使えるまでになりました。

 
1拠点あたり月間150時間の時短を実現
 
 
 
 

3. 更なる警備業務品質向上とともに、業界初のデータドリブン経営を目指す

2つの部門における業務変革が成功したことで、他業務への展開も進んでいます。技術部門は、従来Excelで行ってきた警備機器の在庫管理と仕入れ管理の仕組みをSalesforce Platformで開発。同部門では、駅などに置かれているAED(自動体外式除細動器)の保守業務も行っていますが、この新たな仕組みにより、同社が管理する数万台すべてのAEDの使用期限を一覧できるようになったのです。人の生死にかかわるため神経を使う機器の更新プロセスを万全のものとすることができました。

警務部門は、機械警備に加えて鉄道警備にもSalesforceを適用しています。これまで警備スタッフは、業務終了後に紙で報告書を書く必要がありましたが、タブレットとスマートフォンを利用して事案があるたびにリアルタイムに報告できるようになりました。その結果、業務報告はデジタル情報としてSalesforceに蓄積されることになります。

これがペーパーレスの拡大に役立ちました。鉄道を運営するJR東日本はCSPの大株主の1社で、親身になってくれる顧客でもあります。CSR/SDGsの観点からも今回のペーパーレスの取り組みに賛同してくれたため、膨大な紙の報告書提出をなくし、デジタルデータでの納品とすることになりました。こうした取り組みも含め、同社が今回のプロジェクトで削減した紙は、A4換算で年間54万枚に及びます。

情報がSalesforceに集約されたため、必要な情報へのアクセスが容易になりました。その結果、すべての担当者・管理者は人海戦術に頼らず迅速に資料を整えられるようになり、経営の意思決定も大幅にスピードアップしました。

例えば、警備業法を遵守した経営をするために、日々起きたことを毎朝の経営会議で確認するというプロセスがあります。そのため、前日に起こったインシデントを、翌営業日の朝に報告できるようにする必要がありました。紙とFAXの時代には、管理職が交代で早朝出勤し、全国のインシデントをまとめて経営資料を作る必要があったのですが、すべてがデジタル化されたため、紙の報告書を読んで、情報をまとめなおす必要はなくなり、管理職は時間を有意義に使えるようになりました。

 
デジタル化により全社で54万枚の紙を削減することに成功

「これは本当に大変でした。連休明けが当番の場合、前日の夜に出勤して朝までかけて資料を作ることもありました。今回のプロジェクトで本部の管理職に最も喜ばれたのは、これかもしれませんね」(鴫原氏)

今後は、警備領域での更なる活用や会計システム、周辺システムのデータ集約したデータ分析への展開など、やりたいことは大量にあります。データは、すべてSalesforceで可視化できるようになります。貴重なデータを経営に役立つ情報へと昇華させることが、経営から求められるようになりました。

菅野氏は、「経営の考え方も変化してきました。“これからはデータをどう生かすかだ!”と熱弁されるようになったのですが、数年前には考えられなかったことです。経営者の思いにこたえるためにも、CRM Analyticsの活用を含めて、今後もプロジェクトを一歩ずつ前へ進めていきます」と話してくれました。

 
 
※ 本事例は2023年3月時点の情報です
 
 
 

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